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2007年10月12日

◎落札率88.1% 「一般競争」拡大効果はっきり

 石川県の入札制度改革で、対象金額を「五千万円以上」に引き下げた今年度上半期の一 般競争入札の落札率が全体の率を下回ったのは、一般競争入札を拡大すれば、まだまだ落札率が低下することを示している。

 県は全国知事会が入札改革指針で示した「一千万円以上」まで段階的に引き下げる方針 とは言え、全国的には既に県発注工事を原則一般競争入札にしたり、一千万円未満に広げた県もあり、石川県の取り組みはまだ道半ばと言える。価格以外の要素を加味する総合評価方式の試行件数は増やしているが、評価の仕組み以上に大事なのは一般競争入札をさらに拡大することであろう。

 県は今年四月から、制限付き一般競争入札の対象を「五億円以上」から「五千万円以上 」に拡大し、今年度上半期に行われた三十八件の落札率は88・1%となり、全体(予定価格二百五十万円超の工事)の93・1%を下回った。県が「制度改正で公正な競争が促された」と認める通り、落札率を下げるには一般競争入札の拡大が最も有効である。

 県は十月から、一般競争入札の対象をさらに「三千万円以上」に引き下げたが、福井県 は全国知事会の指針より踏み込み、現行の「七千万円以上」を来年度から「二百五十万円以上」に拡大する。また、富山県は十月から「二千万円以上」に改めた。石川県は実施状況を見極めながら「一千万円以上」にする予定だが、その時期を早く明示してほしい。

 一方、総合評価方式の試行件数については昨年度の三十四件から今年度は百件程度に拡 大するという。「技術力」など価格以外を評価項目にすることは談合がやりにくくなり、不良工事を防ぐ狙いがあるが、あまりに要件を厳しくすれば一般競争入札の趣旨にそぐわなくなる。一般競争入札の拡大で競争性を高めながら、工事の品質確保にも知恵を絞ってもらいたい。

 県が今月から評価項目に新たに加えた「地域精通度」は、工事現場近くの企業に評価点 を与えるものだろう。が、地元業者の育成を図る狙いは理解できるとしても、これも特定の業者を有利に運ぶためなどと疑われ出すと、根底から入札制度改革と矛盾することになり、総合評価方式の適切な運用が望まれる。

◎被災者支援法改正 修正協議の格好のテーマ

 大規模災害の被災者を支援する「被災者生活再建支援法」の見直しで、与党と民主党が それぞれ改正案を用意し、対立する形になっている。与党案は過去の災害に適用されず、能登半島地震や中越沖地震の被災者が対象外になるのに対し、民主党案は〇七年以降の災害に遡及して適用し、両地震の被災者も含むのが大きな相違点である。両地震の被災者が生活再建の真っただ中にあることを考えれば、遡及適用が被災地の実情にかなっている。自民党は法律論として遡及適用は難しいとの見解を示しているが、国会で与野党の修正協議を行い、民主党案のよいところを取り入れる努力を望みたい。

 衆参両院で与野党が逆転した「ねじれ国会」の下、与野党が対立に終始していては、い つまでも国の意思決定が行えず、国民生活に支障をきたすことになる。国会が分断された状況では、与野党が真剣に協議を行って合意点、妥協点を見いだし、よりよい法案にしていく作業が不可欠である。被災者生活再建支援法の改正は、そうした与野党の法案修正協議の格好のテーマといえる。

 自民党は、野党の法案への対処の仕方として▽事前協議で修正し、委員長提案による成 立をめざす▽丁寧な審議に臨み、その結果を受けて修正か否決か継続審議かを判断する▽法案の矛盾点などを追及し、参院通過後に衆院で否決する▽法案の付託に反対する―の四段階の対応を考えているという。現行の被災者生活再建支援法に関しては、与党も民主党も使い勝手の悪さを指摘し、支援内容の拡充で一致している。遡及適用の違いを除けば、改正案の内容に大差はなく、修正協議で速やかな成立が可能な法案である。

 民主党は早期の衆院解散・総選挙に追い込む戦略といわれるが、その手段として対案を 提出し、与党と対立するばかりでは、国民の支持は広がらないのではないか。

 「ねじれ国会」は、おそらく次期衆院選後も続くだろうとみられるだけに、与野党協議 はますます重要性を増す。与野党が真摯に話し合い、官僚が用意したものとは違う法律を国会でつくっていく姿を国民に見せることは、政治の信頼回復のためにも大事なことである。


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