政府の地方再生に向けた戦略を一元的に立案し、実行する「地域活性化統合本部」が発足した。同本部を中心に関係省庁が連携し、十一月中に「総合戦略」をまとめ、来年度予算編成に反映させる方針だ。
統合本部は政府の都市再生、構造改革特区推進、地域再生、中心市街地活性化の四本部を一本化した組織で、全閣僚がメンバーを務める。本部長の福田康夫首相は初会合で「地方再生に全力で取り組むことが内閣の最重要課題だ。実効性あるものとなるように政府一丸となって対応するように」と力を込めた。新組織立ち上げで、政府として取り組む意欲は見えてきた。
地域関連四本部は小泉政権下で設置されたものだ。都市再生本部は都市の魅力や国際競争力を高めるため、防災拠点や物流施設などの整備を推進し、構造改革特区推進本部は地域限定の規制緩和を実施した。地域再生本部は雇用創出につながる行政サービスの民間委託などのプログラムを策定し、指定地域の再生を図った。中心市街地活性化本部は補助金の重点配分で衰退する地方都市などのまちづくりを支援してきた。
一元化の狙いは、政府一体で地方の活性化に積極的に取り組む姿勢をアピールすることにある。福田首相は参院選で与党が惨敗したことなどを受け「地方の声に耳を傾ける」と地方重視の姿勢を打ち出していた。やっと具体化に向けて動きだしたといえよう。
「総合戦略」を中心となって策定するのは、地方再生担当相を兼ねる増田寛也総務相だ。今後の方針としては、国と地方の定期的な意見交換をはじめ、予算のばらまきをせず、省庁が横断的に取り組む―などを挙げている。施策に地方の声を取り入れるため、自治体の首長や民間の有識者を「参与」として統合本部に参加させ、意見を求めるという。ぜひともそうした声を具体的な施策に反映させてもらいたい。
地域間の財政力格差や税財源の偏在の是正など課題は多い。増田総務相は衆院予算委員会で、地域の財政力の格差について「地方消費税の充実と合わせ、法人二税についても国、地方の配分の在り方を見直して地方税の偏在是正に努める」と答えた。
公共事業中心の旧来型の予算のばらまきではなく、省庁とも調整を図りながらどれだけ説得力ある総合戦略を打ち出せるのか。付け焼き刃的な施策の寄せ集めでは納得できまい。経済財政諮問会議とのすり合わせもあり、時間は限られている。福田首相の強いリーダーシップが求められているのは言うまでもない。
検察による取り調べ状況を録画したDVDが証拠として採用された公判で東京地裁が初めて判決を言い渡した。保険金殺人の共犯とされた被告は捜査段階で犯行を認めたが公判で否認し、検察側が自白の様子を録画したDVDを証拠として提出していた。判決は被告の事件への関与を認定し、懲役二十五年を下した。
検察当局は取り調べの適正さを示し、迅速な審理を実現するためとして各地検で取り調べの録音・録画を試行的に行っている。東京地裁は別の強盗殺人事件でも録画DVDを証拠採用している。
日本では取り調べの密室性が高い。自白の強要につながり、冤罪(えんざい)を生む要因と批判されてきた。日弁連をはじめとして捜査の可視化を求める声は強く、検察は昨夏から録音・録画を始めた。
一方、警察は可視化に消極的だ。取調官と容疑者の信頼関係が築けなくなり、暴力団員などの場合は内部情報が得にくくなるなど捜査上の支障を理由に挙げている。
それでも警察庁は、捜査の可視化を含め刑事手続きの在り方を検討する最高裁と日弁連、法務省・最高検の法曹三者による協議会にオブザーバーの形で先週から参加した。考えを変えたのではなく立場を説明するためという。
だが、捜査の可視化は世界的流れといえる。国連の国際人権(自由権)規約委員会は日本に導入を勧告している。加えて近く裁判員制度が始まる。供述の任意性が問題になった時、専門知識のない裁判員は判断が難しい。迅速で分かりやすい裁判の点からも可視化は進めるべきだろう。
実施例を踏まえて警察も加わった協議会で検証し、制度化する方向で議論を進めてもらいたい。
(2007年10月11日掲載)