「干物女」をご存じだろうか。「飲んだ日は化粧を落とさず服も着替えず寝る」「ジャージー、Tシャツで近所へ買い物」「服と下着をまとめて一緒に脱ぐ」
話題となったテレビドラマ「ホタルノヒカリ」の主人公・雨宮蛍の生活ぶりだ。主人公は働く二十代女性。自宅ではジャージー姿、週末も合コンなどには目もくれず直帰、休日も「食っちゃ寝生活」で恋にも興味ない枯れた生活から「干物女」と呼ぶそうだ。
こうした女性は最近の二十代に多く、主人公に共感するという。確かに「自宅ではジャージー姿でビールを飲む。普通ですよ」という同僚女性もいる。「ぐうたら生活」をこよなく愛するのだが、これは女性の「オヤジ化」の新形態といえないだろうか。
仕事が忙しければ駅の立ち食いそばをかき込むし、疲れて家事もしたくない。ストレスがたまるから酒も飲みたくなるだろう。こうした女性の生活ぶりは、そのまま働く男性の“生態”でもある。
干物女を軽蔑(けいべつ)したり、あきれているわけではない。むしろ共感する。女性の社会進出が進み、男性同様に仕事を持つ女性が増えたことの裏返しではないか。大げさに言えば、男女共同参画が進んでいる証左といえるかもしれない。
だが働く女性が増えたといっても、雇用が不安定な非正社員という差別はある。育児休業は相変わらず「女が取るもの」という意識だ。働く女性を支えるには男性の家事も避けて通れない。内閣府の男女共同参画に関する世論調査では、妻やパートナーがいる男性の家事分担は、掃除5・2%、食事の支度2・1%。まだまだ分担しているとはいえない。 (鈴木 穣)
この記事を印刷する