王者内藤大助(左)に「負けたら切腹するよ」と宣言した亀田大毅(右) |
「負けたら切腹」。WBC世界フライ級14位の亀田大毅(18=協栄)が前代未聞の公約を掲げた。同級王者・内藤大助(33=宮田)とのタイトル戦は11日、東京・有明コロシアムでゴングが鳴る。決戦前日の10日、都内で行われた調印式と計量で両選手は初対面。敵意むき出しの舌戦を展開し、大毅は切腹宣言で王者を挑発、一方、内藤は「アンチ亀田の国民の期待に応える」と余裕で必勝を宣言した。
懸念された乱闘はなかった。しかし、大毅の挑発的な「先制口撃」で、会見場は一触即発の緊張感に包まれた。
大毅「負けたら切腹するよ」
内藤「本当にやんの? 負けたら絶対にやれよ。なにで切腹すんの?」
大毅「お前がもってこいや。お前負けたら切腹するんか」
内藤「おれはしないよ」
史郎トレーナー「そんなんで成立するか」
大毅「思いが違うねん。根性ゼロや」
内藤と亀田一家の間には、数年前から険悪な空気が漂っていた。日本フライ級王者だった内藤が、日本人と対戦しない亀田兄弟をメディアを通じてたびたび挑発。一方、亀田の父史郎トレーナーは内藤を「ゴキブリ」と切り捨てた。対戦決定後は調印式まで1度も顔を合わせないように周囲も配慮してきたが、初顔合わせと同時に、お互いこれまでの思いが噴き出した。
舌戦には記者席に紛れ込んだ兄興毅も参戦した。内藤が大毅の印象について「ないです」と返した直後だった。
興毅「国民の期待に応えたれよ」
内藤「おれの会見やってんだよ」
興毅「応えたれ、応えたれよ、しっかりな」
内藤がアンチ亀田が増えていることを意識して「国民の期待に応えます!」とのメッセージを添えてつくったポスターを、興毅は攻撃的な口調で皮肉った。
もっとも両選手とも強気発言には、万全調整の裏付けがある。33歳1カ月の日本人最年長防衛を目指す内藤は、600キロを走破。若い挑戦者に負けない体力をつけた。一方、18歳9カ月5日の同最年少世界王座奪取を狙う大毅も、メキシコと日本で100ラウンドを超えるスパーリングを消化。キャリア不足を豊富な実戦練習で補った。
調印式での服装も対照的だった。大毅はハーフコートと靴を金色で統一した派手ないでたち。内藤はグレーのジャージー姿だった。
大毅「金は輝いとるからや。王者はそんなもんや。スター性が違うやろ。内藤君これ着ても似合わんと思うわ」
内藤「それを着て似合う人もなかなかいないと思うけど」
会見後、挑戦者の切腹発言について王者は笑いながら言った。「勝ったらぜひやってもらいましょう」。一方で「でもあの勘違いが怖い」と引き締めることも忘れなかった。【田口潤】
|