我慢を知らない若者では勤まらない
先日訪問したある会社のベテラン技術者が嘆いていた。 「私たちの職場の構成員を見ると、正社員は3分の1以下。大部分が派遣社員とパート・アルバイトと外国人労働者の混成部隊。その人たちに技術を教えるのだが、彼らが将来ライバル企業で働くかもしれないと思うと、もうひとつ熱が入らない。 また、彼らも“次の職場では、こんな技術、役に立たないかもしれない”と思っているためか、積極的に覚えようとしない。このままでは我が社の技術は遠からずなくなってしまいますね」と嘆いておられた。 確かにここ10年ほどの間に雇用の流動化が異常なほど進展した。ありとあらゆる職場で、パートや派遣社員の数が大幅に増えた。しかし当然のことながら、彼ら、彼女らはいつ「他の会社に変われ」と言われるかもしれないから、正社員に比べると愛社精神は薄いだろう。そのような人々が大勢を占めるような職場で、日本が得意にしてきた「すり合わせ型の技術」を維持し、伝承していけるかどうかは、はなはだ疑問だ。 最近の工場の日本回帰現象の裏には、日本の雇用制度の弾力化があったのは確かだ。つまり、不況になったら簡単に労働者を減らせるようになったのである。だからこそ、日本に工場を建てることがリスキーでなくなり、日本立地が進んだということがある。
「新卒だけの入社式は不公平」しかし、パートや派遣、アルバイトが増えているということは、若者が会社に正式に就職しなくなったことの表れでもある。会社に就職できず、仕方なく派遣会社やアルバイト斡旋会社に登録して、その日その日の仕事を得る人生を送っているという若者は少なくない。 若者が社会への第一歩を踏み出そうという時に、力を発揮する場所が与えられないというのは本当に気の毒だ。かつての日本の大企業は中途採用をほとんどしなかったのが、最近はむしろ中途採用が当たり前になって、(中途採用の方が即戦力になる!)新卒の需要が相対的に薄れたということもあるらしい。 そういえば、私の知り合いの社長は「4月1日の入社式を今年からやめました」と言っておられた。「中途入社の社員の方が数が多いのに、新卒だけ盛大に入社を祝うのは不公平だから…」というわけだ。
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