つめを磨くやすりで鍵を解錠され、自転車を盗まれる被害が相次いでいる。神戸市内では一年で、この手口を使ったとみられる中高生数十人が窃盗容疑で摘発された。かつては、鍵をペンチで壊したりドライバーでこじ開けたりする手口が主流だったが、「百円ショップで入手でき、持っていても怪しまれない」と急速に広まっているという。(飯田 憲)
狙われるのは、馬のひづめに似ている形状から「馬蹄錠(ばていじょう)」と呼ばれるリング型の鍵を付けた自転車。駅前の駐輪場などで自転車を盗んだとして、中高生の少年数十人が兵庫、垂水両署に窃盗の疑いで摘発された。
署員が自転車に乗った少年を職務質問したところ、自転車に盗難届が出ていることが発覚。少年らは百円ショップで購入した長さ十センチ程度のやすりを鍵穴に入れて盗んでいたことを認めた。
いずれも単独犯だったが「ニッパーやドライバーを持っていると怪しまれるが、やすりは目立たない」などと供述の内容が似ているため、県警は中高生の間で急速に広まっているとみている。
鍵メーカーも対策に取り組んでいるが、ホームセンターなどで販売される低価格の中国製自転車の大半が馬蹄錠。県警によると、県内の自転車盗は今年九月末で、前年比横ばいの一万六千百七十七件。平均し一日に七十件近い被害が出ている。約六割にあたる九千百四十三件の大半が馬蹄錠とみられる。
被害の拡大を抑えるため、兵庫署は十日、初の試みとしてワイヤ状のロック千個を無料配布し、二重施錠を呼びかける啓発キャンペーンを行う。