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【社会】

男性の無罪確定 冤罪で服役 捜査経緯は触れず

2007年10月11日 朝刊

無罪判決後、記者会見で質問に答える柳原浩さん=10日午後、富山市の富山県弁護士会館で

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 富山県警に強姦(ごうかん)などの疑いで誤認逮捕され、二年余り服役した後に無実と分かった柳原浩さん(40)の再審判決公判が十日、富山地裁高岡支部であった。藤田敏裁判長は「当時の自白は信用できず、有罪を立証する証拠がない」として無罪を言い渡した。 

 検察側が上訴権を放棄したため、柳原さんの無罪は即日確定した。

 判決で藤田裁判長は、無職大津英一被告(52)=強姦罪などで公判中=が柳原さんによるものだとされていた二事件の犯行を自供し、DNA鑑定などの物証もあると指摘。「真犯人は大津被告で、柳原さんの自白は信用できない」と述べた。

 二事件のうち強姦未遂事件については「犯行時間帯に柳原さんが自宅で電話をかけていたことを裏付ける証拠がある」として、当時の捜査の中でアリバイが成立していたことを認めた。

 判決言い渡し後、同裁判長は「無実で服役したのは気の毒でした」と柳原さんに声をかけた。公判で柳原さん側は、捜査の経緯を明らかにするために二回、県警の捜査員の証人尋問を申請していた。しかし、藤田裁判長は「裁判は罪の有無を決める場だ」として却下。判決でも柳原さんが疑われることになったいきさつに触れなかった。

 判決後に富山市内で記者会見した柳原さんは、国家賠償訴訟などを通じて、県警側の責任を追及する考えを示した。

心からおわび

 吉田光雄富山県警本部長の話 無罪判決が決定したことで、あらためて柳原浩さんに対し、心からおわび申し上げます。

再発防止に努める

 佐野仁志富山地検次席検事の話 柳原浩さんをはじめ、ご家族の方、被害者の方など、関係各方面に多大なご迷惑をおかけしたことを心からおわびする。本件を肝に銘じ、今後基本に忠実な捜査をさらに徹底し、再発防止に努める。

<メモ>富山冤罪(えんざい)事件 タクシー運転手だった柳原浩さん(40)=富山県氷見市出身=が2002年4月、同市内で3月に起きた強姦未遂の疑いで県警氷見署による任意の調べを受けた。最初の2日間は否認したが3日目に自白し、逮捕された。同市で1月に起きた強姦事件でも再逮捕され、富山地裁高岡支部は同11月、懲役3年の判決を言い渡した。柳原さんは約2年間服役、逮捕から仮出所までの約2年9カ月間、自由を奪われた。06年11月、別の女性暴行事件で県警の取り調べを受けた大津英一被告(52)が2事件を自供し、冤罪が発覚。07年1月、県警と地検は誤認逮捕を公表した。地検支部は同2月、大津被告の有罪確定前という異例の速さで再審請求した。

 

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