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劇団四季は、ミュージカルを中心に全国で年間約2530公演を行う日本最大の劇団。1967年には株式会社化し、全国展開やロングラン公演など、観劇人口の拡大を目指した活動を続けている。四季代表取締役社長の小澤泉氏に話を聞いた。
昨年12月1日、東京・汐留に電通四季劇場「海」がオープンした。首都圏で3番目、全国では6番目となる劇団四季の専用劇場だ。こけら落とし公演のミュージカル「マンマ・ミーア!」は、発売初日で12万枚という売り上げ記録を達成し、早くも九月までのロングラン公演が決定している。
四季の最大の特徴は、日本で唯一複数の演目の中から、一定の間隔で上演するレパートリー・システムでロングラン公演を実施しているという点だ。ロングランは、あらかじめ期限を切らず、長期間にわたり一つの演目を興行するシステム。舞台装置や演出料などの固定費の減価償却期間が過ぎれば、観客動員が利益につながり、その資金を顧客の発掘活動に投入できる。減価償却期間は、「ライオンキングの場合で約2年」だという。
専用劇場がロングランの鍵
四季は83年のミュージカル「キャッツ」でロングラン・システムを日本で初めて導入して以来、「オペラ座の怪人」をはじめ様々な演目で公演を続けてきた。東京・浜松町の四季劇場「春」で98年のオープン時から公演を続けている「ライオンキング」は、すでに日本記録を更新中だ。
ロングラン公演を実現する上で壁となるのが、江戸時代から続く1か月興行だ。興行界では劇場を1か月単位で借りる方式が慣例となっているが、この解決策として、四季は自前の専用劇場を開設している。
93年に初めての専用劇場、札幌JRシアター
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をオープンして以来、東京、大阪、名古屋、福岡の四都市に6か所の専用劇場を展開してきた。来年秋には関西の新拠点として、大阪に2つ目の専用劇場の開設を予定している。「専用劇場はどうしても人口の集中する大都市になってしまう。しかし、国内の演劇マーケットはまだまだ発展途上。観客を発掘するためには、全国で公演の幅を広げていく必要がある」と小澤社長。地方公演の多くは、公共ホール等の既存の施設を使用しているが、一昨年には仙台、広島、静岡の公共ホールでもロングラン公演を実施し、地方での布石も打っている。
今後はオリジナル作品も
個々の俳優ではなく舞台を重視する「作品主義」の考え方もロングランを支えている。演劇界では、スターの動員力に依存するスター・システムが主流だが、「四季では俳優全員がスターと考えている」。これは一部の俳優に依存することなく、公演数を増やすことができる。オーディションで新人を発掘、養成しながらロングラン公演を実現させている四季ならではの考え方だ。
演目の選定も重要な要素だ。「観客の発掘には、内容面で一日の長がある欧米作品の上演は欠かせない」との考えから、「美女と野獣」、「ライオンキング」でディズニーと提携するなど、海外作品の導入を積極的にはかってきた。現地での公演と間をおかずに上演できるのも、海外で日本のマーケットが認知されてきたことが大きい。「日本も視野に入れてミュージカルが制作されるようになってきた。これまでの実績もあり、パートナーとして四季を選んでいただいている」
しかし、海外作品はロイヤルティーをはじめコストが高額となる。「今後はオリジナル作品にも力を入れていく。現在オリジナルの割合は35%だが、50%程度までに引き上げたい」。99年の「ミュージカル李香蘭」や一昨年の「異国の丘」など、四季にはオリジナル作品のヒットも多い。
土台を支える会員組織
観劇環境を整え、観客の支持を得る取り組みも積極的に行っている。「創作活動と同等のエネルギーを観客動員活動に注いでいる」。一例が、公演告知やチケット流通網の整備だ。
83年の「キャッツ」では、初めてフジテレビ、ニッポン放送とタイアップし、大きな宣伝効果を上げた。以来、四季ではこの手法を継続し、四季劇場「春」「秋」や京都劇場での公演告知をJRグループと共同で行うなど、劇場開設や公演時にはメディアをはじめ様々な企業とタイアップし宣伝活動を行っている。
チケット流通網は、「キャッツ」公演時にぴあと導入した電話予約に続き、2000年からはオンラインによるチケット予約を開始。現在、オンライン予約は、チケット購入者の半分から3分の2を占めている。
観客の発掘にとどまらず、固定客の確保にも注力している。この一翼を担うのが、会員数約15万人を誇る有料会員組織「四季の会」だ。優先予約などの特典に加え、劇団の運営に積極的に会員の声を取り込む。観劇時の託児サービスの導入などは会員からの声に応えたものだ。こうした取り組みの成果もあり、会員の3分の2が年1回以上来場し、四季の土台を支えている。
年間250万人の観客を動員する四季。しかし、「ライオンキングなどこれまでのヒットの多くは、演目名で観客を呼んでいる側面が大きい」と小澤社長の目は厳しい。「今後は四季なら期待を裏切らないという、『劇団四季』のブランドで観客を動員できるようにしていきたい」
(園部)
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