「週刊バイオ」第76号 オムロン 顔認証:
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Web情報媒体『週刊バイオ 第76号』



なぜ、世界最高精度の顔認証技術を、
オムロンが開発できたのか?

そこには、1933年、立石電機製作所を
創業した「立石一真」の、確固たる
経営理念と、未来予測手法
【SINIC(evolution)理論】
があったからなのです!

【センシング&コントロール】の
オムロン株式会社
オムロンの出入管理用
顔認証装置は、近赤外線
を顔に照射しているので、
真っ暗闇でも照合可能です
お勧め関連ホームページ

 読者の皆さま、こんにちは。
 
 顔認証技術の取材も、日本女子大学、NECと続き、第3回目となりました。
 今回号は「オムロン」さんです。

 オムロンの顔認証ビジネスは、もう6年を迎えました。この業界では古株に当たりますね。
 それに、オムロンという会社自体も、知らない人はいないと思いましたので、会社紹介は省いてしまおうかと考えたのですが、いやいやしかし、調べてみると、オムロンという会社は古いけど、考え方は意外と新しい会社なのです。

 体温計や駅の自動改札機を作っている会社だけが「オムロン」ではなくて、調べれば調べるほど、「オムロン」という会社の真髄は、相当深いことが分かりました。

 これ、SONYやホンダ技術研究所よりも深く、松下電器産業に匹敵する程の【哲学会社】であります。
 大学を作るにしても、会社を作るにしても、「建学の精神」や「創業の精神」って、非常に重要ですよね。
 オムロンの「創業者の精神」は、かなりの哲学的です。

 「精神は物に宿る」と言いますが、結局のところ、オムロンの顔認証技術が世界No.1である理由は、オムロンの全社員の背筋を貫いている、「創業者の精神」に由来しているのだと、今回マックポートは強く思うのでありました。

●今回取材に協力して頂いた方は、

○オムロン株式会社 ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネスカンパニー
  交通ソリューション事業部 東部営業部 セキュリティ課 

●顔認証P/J担当課長(主幹) 宮田 博文さん
●顔認証マーケティング担当(主査) 土肥 基さん

のお二方です。

宮田博文さん 土肥 基さん
  
1.立石一真物語

(1)序


 【社会のお役に立とう】─の信念から、他の人の考えつかぬInnovationをつぎつぎと手掛け、常人の考えおよばぬ経営手法を創設してみせ、しかもそれらに、見事なほどのネーミングの妙まで示してみせる。これほど数多くの事象を試み、そのすべてを独自のものとして事業に穫り込んだ人物も少なく、その凄まじさは、比すもののない人生舞台といえましょうし、創りに創った生涯でした。

(以下参照)
http://www.omron.co.jp/history/kazuma/index.html
(2)生い立ち
 一真は一九〇〇年(明治三十三年)九月二十日、熊本城に近い熊本市新町三丁目で、鎮西鎮台(後の陸軍第六師団)の記念品用であった伊万里焼盃を製造販売する立石熊助・エイ夫妻の長男として生まれました。

 幼時は恵まれた生活でしたが、新町小学校一年生の明治四十一年三月二十六日、父・熊助が亡くなるとともに家業は衰退、母・エイは下宿屋を開業、幼い一真も家を助け新聞配達を始めました。

 この時に貧の辛さと働きの大切さを知り、同時に祖母・幸の葉隠精神による躾(しつけ)をうけ、戸主(トップ)の責任と自覚、強い独立心が培われました。

 幼時の一真は、肥後もっこすさながら、きかん気のやんちゃ坊主で、「よく遊び、またよく遊んだ」といいます。幼い日々に思う存分遊んでこそ人脈は広がり、ロマンは育ち、そのこころの襞(ひだ)が創造(想像)力を生み出す基となる、と述懐しています。

 オムロンの社風=企業文化に〈まず、やってみる〉があります。一真はその語録のなかで「ものごと“できません”というな。どうすればできるかを工夫してみること」と述べています。できませんと言ってしまえば安易だし、それでおしまいです。いい加減にせず、どうすればできるかを考え抜いてこそ頭は鍛えられ、人間は成長します。この姿勢は終生、変わりませんでした。

 また、ものごとを真摯に考え、他人と一味違うクリエーティブな発想を大事にしましたが、これも当時に読んだ「人間の頭は鉄の器と同じで、使わねば錆がくる。よく使えば使うほど光を備えてくる」という寸言からでした。

(以下参照)
http://www.omron.co.jp/history/kazuma/page01.html
(3)独立
 大正十年、同校を卒業し兵庫県庁に電機技師として奉職、社会人の第一歩を踏み出しました。そして、同十一年十月、学友の紹介で(株)井上電機製作所に入社、アメリカで開発された“誘導形保護継電器”の国産化開発に取り組み、このとき身につけた技術が立石電機(現オムロン)創業の基礎となりました。

 昭和四年十月の世界大恐慌で不況風が吹き荒れ、翌五年に肥後もっこすの反骨精神も手伝い同社を希望退職。個人で実用新案をもっていた家庭用品のズボンプレスをもとに、京都市下京区(現南区)四ツ辻九条下ルに“彩光社”を設立し、自転車で京都市内はもちろん、遠く大阪まで飛び込みで訪問販売。またナイフグラインダを考案、東寺の縁日で露店販売も行ないました。この苦闘のなかで、販路の確保、取引条件の整備、説明販売、広告などの大切さを身につけました。

(以下参照)
http://www.omron.co.jp/history/kazuma/page02.html
(4)創業
 苦しい商いのなかで専門の電機産業への意欲は高まる一方の昭和七年、学友の示唆から誘導形保護継電器と油入電流遮断器を組み合わせレントゲン写真撮影用タイマを開発。商機近接こそと大阪は東野田に立石電機製作所を創業、オムロンの基礎を築きました。

 このとき、七転び八起きの願いをこめ立石電機の社章(立)を自らデザインしています。
 昭和十年、当時としては画期的な電気雑誌OHMに「継電器の専門工場」の一ページ広告を載せたのも時代への先見性からでした。大口注文も得るようになり、翌十一年に西淀川区の野里に二百坪もの工場を建設、さらに十二年には東京進出をはかりました。

(以下参照)
http://www.omron.co.jp/history/kazuma/page03.html
(5)オートメーション企業へ
 昭和十六年、東大航空研究所からマイクロスイッチ国産化の依頼があり、部品の可動バネのベリリウム銅など研究を重ね、同十八年には国産初のマイクロスイッチの製品化に成功しました。一真によれば「世の中Badと決めつけるのはたやすい。しかしNeed Improvement(改善の余地あり)でなければ、創造の将来はない。“まずやってみる”がわれわれが築き上げてきた企業文化なのだ」と。この開発は戦争の激化のため、商売として成り立ちませんでしたが、この時の研究開発の技術が戦後、オートメーション時代に入り業界のパイオニアとしての評価を受ける基となりました。

 一真は「生産こそ祖国復興の基本。とくに技術革新こそが経済発展への道だ」と語り、マイクロスイッチリレー、温度スイッチ、圧力スイッチなどを開発、販路拡大を図りました。

 昭和二十七年、オムロンの未来を左右する決定的瞬間が訪れます。  わが国の能率学の草分け上野陽一先生から「これからの商品はオートメーションを前提として設計しなければ……」という話と、西医学、西式健康法の創始者・西勝造先生からサイバネティクスという書物を紹介されたことです。新しい時代のマーケットは?とソーシャルニーズを探り続けていた一真には、この二つの情報こそが未来を切り拓くキーだと閃くものがありました。

 翌二十八年九月、日本電機工業会が企画した米国中小電機工場視察団にも積極的に参加、初めて渡米。自分の目で米国オートメーションの実情を捉え、併せて企業のバックボーンである

(1)宗教
(2)パイオニア精神


についても多くを得ました。

 帰国すると即、日本にオートメーションの時代が到来すると企業経営の改善策を検討、技術開発・管理・生産体制・販売体系など全社的な組織の抜本見直しに注力しました。

 一真は「条件整備さえ先行させれば、企業は自ら成長する。その条件は

(1)経営理念を明確に打ち出す
(2)人間の本能的行動に従う
(3)本能的行動が企業を伸ばすよう施策目標をつくる
(4)働き甲斐のある環境をつくる
(5)全員参画のシステムをつくる
(6)社会のニーズを素早く捉える
(7)常に自主技術の開発に努める


の七つだ」と説いており、そのように実行したわけです。

(以下参照)
http://www.omron.co.jp/history/kazuma/page04.html
(6)社憲
 一真は“何か毅然たる経営方針は?”を模索。昭和三十一年、経済同友会で「経営者の社会的責任とその実践」をテーマに研究し、企業は利潤追求のためのみにあるのではない、社会に奉仕するために存在するのだと結論。これを
われわれの働きで、
われわれの生活を向上し、
よりよい社会を作りましょう。
の社憲としてまとめ、同三十四年五月十日の創業記念日に、社の内外に示しました。

 「われわれの生活とは、小乗的には全社員の生活であり、大乗的には全人類です」と、全社員が朝礼時に唱和、自覚して仕事にかかわり、社外にも全社員の名刺に印刷、私どもはこの精神で働いていますと広報させました。社名がオムロンになり、世界に四つの本社体制になろうとも、この社憲こそが、変わらぬオムロンマンの精神といえましょう。

(以下参照)
http://www.omron.co.jp/history/kazuma/page06.html
2.SINIC理論

 Seed-Innovation to Need-Impetus Cyclic

 1970(昭和45)年、オムロンの創業者である立石一真によって構築された未来予測手法のSINIC(evolution)理論は、社会と技術、科学の関係を円環的にとらえることを中核概念としています。

 新しい技術が生まれると、その科学から種(Seed)をもらって、新しい技術が開発され、それぞれが社会を革新(Innovation)していく。また、社会から出てくる要望や必要性(Need)に対して、それを満足させるために新しい技術が開発されることもある。さらに、この技術が科学に刺激(Impetus)を与えて、新たな科学をつくり上げることもある。このように、【科学】、【技術】、【社会】の3者間には、2つの向きの円環的な関係が成り立っているという考え方です。

 この3者の円環的な関係が、原始社会かららせん状に進み、農業社会や工業社会を経て、現在に至るプロセスを歴史から証明し、その延長線上に未来社会を予測しているのです。


 現在、私たちが生きる今は、工業社会の最終段階の「情報化社会」として位置づけられています。

 「最適化社会」とは、その先にある「自律社会」に至る、かけ橋のような社会としてとらえられており、工業社会において最も価値の高い「生産と効率の追求」と、成熟を迎える中で人々が気づき始めた「生活と生きる喜びの追求」という2つの価値観が、社会の中でさまざまな葛藤を繰り返し、自律への調和に向かう社会と説明できます。

(以下参照)
http://hrnet.co.jp/html/sinic/index.html

 今回、オムロンさんの取材をさせて頂きまして、上記の図を勉強させて頂けたことが、一番有難かったのかなーっと思ったりもしています。
 
 故・立石一真さんによると、これからの社会は、以下のようになると予言されています。

時代
(マックポート推測)
1961年

1980年
1981年

2000年
2001年

2020年
2021年

2040年
2041年

2060年
社会 自動化社会 情報化社会 最適化社会 自律社会 超自然社会
科学 制御科学 サイバー
ネティックス
バイオ
ネッテックス
サイコ
ネティックス
サイキックス
技術 自動制御技術 電子制御技術 生体認識・
生体制御技術
精神生体
認識技術
脳心理
認識技術

 これは非常に驚きです!
 
 1970年の昔に、既にこのような予言をされていることに、本当に驚きました。
 いまは2004年、正に【生体認識】の時代ではありませんか!

 今後の流れと致しましては、やはり【サイコメトリクス認証】の時代がやってくるのですね。
 これはマックポートやSONYが予言していることと、ピタリ一致致します。

 さすがはオムロン創業者だけのことはあると思います。

 この図を見ても分かる通り、オムロンさんは「バイオメトリクス認証ビジネス」に参入することが、1970年の段階で、すでに運命付けられていたのです。

3.オムロンの顔認証の歴史

(1)アメリカのベンチャー企業と技術提携で新事業

 オムロンは、1997年12月に米国のベンチャー企業であるEyematic Interfaces, Inc.(アイマティックインターフェイセズ社:サンタモニカ、カリフォルニア州)と画像による顔認識技術に関しての技術提携をおこないました。
 ここで取得した技術をもとにオムロンは、エレクトロニック・コマース等の決済システムでの本人照合や、空港や税関などのセキュリティ・チェックなどの幅広いアプリケーションの開発をすすめています。

(2)オムロン顔認証技術の特徴

 アイマティック社の技術は、「CCDカメラ等の画像入力装置で取り込んだ人の顔画像を解析し、あらかじめ登録されている顔データや写真などと照らし合わせ個人を識別する技術です。

 照合は、取り込んだ顔画像の中に数10個のデータ比較ポイントを設定し、各ポイントの特徴量を解析した結果と、登録されている特徴量データ(数人から1,000人単位まで)を比較することでおこないます。

 また、この技術の特徴は、使用者本人が意識すること無く自然な状態(歩いていたり、機械に近づいてきたり)のままでも識別が可能である点で、他のバイオメトリクス技術では難しかった、新しい分野での技術応用が可能になります(ウォーキング型顔認証が可能)。

(3)オムロン顔認証技術の生い立ち

 オムロンが技術提携したアイマティックインターフェイセズ社は、南カリフォルニア大学(USC:University of Southern California)の研究者が中心となり1997年10月に設立されたベンチャー企業で、同社が保有する画像による顔認識技術(Visual Interface Technology)は、同大学と独Ruhr-University in Bochumの研究室で10年近くにわたり研究されてきたもので、米国陸軍研究所のFERETプログラムの中で1996−1997年に行われた顔面照合アルゴリズムコンテストにおいて、最も高い識別性能であると評価されたものです。

(4)用語解説

 FERET(FacE REcognition Technology)

 米国陸軍研究所が1993年に開始した画像による顔認識技術の開発プログラムで、アルゴリズムの開発、評価、研究機関への資金提供、コンテストの実施などをミッションとしている。膨大な顔画像データベースを保有し、数回のアルゴリズムコンテストを実施している。
 このテストは良好な条件だけではなく、顔を傾けるとか、1年前の登録画像で評価するなどの意地悪テストも含まれていて、技術を総合的に評価するものである。
 コンテスト参加研究機関にはUSCのほか、MIT、Rockefeller Univなどアメリカでの優秀な顔画像識別研究機関が参加。

(5)オムロンのバイオメトリクス事業は、なぜ顔なのか?

 最大の利点は、離れたところから識別が可能で、識別/照合のための動作が不要なことです。

 これまでのバイオメトリックの手法では、照合するために、装置に接触する、あるいは、近づく必要があり、照合動作を強要するものでした。そのため、使用する人にとって、多少なりとも苦痛を伴うものであり、幅広い人に受け入れてもらうには課題がありました。

 顔による照合を使用した場合は、これらの動作が全く不要であり、数m離れたところからでも照合が可能で、離れていても自動的に顔画像を取得し、照合することが可能です。たとえば、歩きながらドアに向かっていくと、登録した人だけドアが開き、未登録の人ではドアが開かず入ることができない、と言ったことが可能となります。

 また、このような識別/照合が可能になることで、応用分野が限りない広がりを持ちます。銀行やホテルで、離れたところから重要なお客様を自動的に検出し、担当者に知らせたり、将来的にはスーパーで迷っている子供を自動的に見つけだすことができるかもしれません。そのような可能性を秘めた技術が顔面照合です。

(6)技術概要

 基本的には、コンピュータを用いた画像処理・認識技術の応用です。 今回の提携先であるEyematic Interfaces Inc.のアルゴリズムは、そのユニークさで学会でも注目されています。大きな特徴は、2つです。

@ガボールウェーブレット(Gabor Wavelet)を用いた特徴抽

 ウェーブレットという画像処理手法を用いて、顔画像を処理し、顔画像の濃淡やシャープさなどの顔の特徴データを取り出します。(ウェーブレットは信号解析、画像圧縮に用いられる手法で、小さな波を表現したものです。周波数と位置情報をまとめて解析するのに適しています。)

Aグラフマッチング

 
顔の目、鼻、口、輪郭などにあわせて、グラフと呼ばれるポイントにおいて、顔の特徴データを計算し、登録データと比較することで照合を行います。

(7)オムロンは、なぜこの技術を選択したのか?

 ユニークな特徴量とグラフマッチングの技術は様々な画像の悪条件に対して他のアルゴリズムより優れています。たとえば

● 顔の傾きに対しては、グラフを傾いた顔に応じてあわせることで、識別可能です。(30度くらいまで)
● 濃淡情報だけでなく、様々な特徴情報を取り出しているので、明るさの変化に対しても、性能劣化しません。
●髪型やめがねなどの、変化に対しても、必要なグラフを抽出、計算することで、識別可能です。

4.オムロンの顔認証技術

(1)顔認証とは


 私たちは、人と出会ったとき、視覚により相手の顔を見ることによって誰であるかを識別しています。  これをコンピュータを用いた画像処理・認識技術により自動的に行うことが"顔認証"です。

 つまりCCDカメラなどの入力装置から取り込んだ人の顔画像を解析し、あらかじめ登録されている顔データや顔写真などと照合して個人を識別する技術です。


 この技術を"顔認識"と呼ぶ場合がありますが、オムロンでは以下の様に区別しております。

・顔認識
・・・・・顔またはその部位の位置・傾き/形状/状態などを認識する行為(顔の位置検出など)

・顔認証・・・・・顔認識の技術に加え、特定の人間であるかどうかを認証する行為


(2)顔認証の処理シーケンス(オムロンの顔認証エンジンの場合)


No. 処理内容 説明写真 説明
顔画像の入力  スキャナーからの写真読み込みやデジタルカメラからの画像入力などの静止画の入力だけでなく、カメラやビデオからの動画入力も可能です。
顔の位置検出  フェイスファインダー(顔のラフな輪郭検出)画像全体に、ノード数が少ないグラフをベースとして、様々な大きさのグラフを当てはめて、顔検出を行います(グラフマッチング)。
顔の特徴点の
位置検出
 顔のラフな位置から、顔部分を切り出し、顔の大きさを正規化し、詳細なグラフを当てはめて、顔の特徴点の位置を詳細に検出します。
特徴量の抽出  各特徴点から、ガボ−ルウェーブレット変換を用い本人固有の特徴量を抽出します。
照合処理  すでに登録されているデータと照合します。

●グラフマッチング
 顔の特徴を表すポイントに、グラフと呼ばれるパターンを配置し、正確な顔の特徴点を見つけ、そのポイントごとの特徴量を登録データと比較、照合する手法です。

ガボールウェーブレット変換
 信号解析や画像圧縮に用いられる手法で、変換対象から、ウェーブレット波形を利用して、その波形が持つ特徴(周波数成分など)のみを取り出すことが可能です。


(3)顔認証の特徴

No. 項目 説明
心理的負担の軽さ  顔を見て誰であるか判断することは、ふだんから人と人の間で自然に行っている認証行為です。
 よって指紋などと比べても心理的抵抗が少なく、もっとも親しみやすい個人認証ということができます。
特別な動作が不要  距離が離れていても認識することができます。
 ユーザが何も身につけることなく、かつ能動的に意識して認識されるように行動しなくても、自然に歩いているだけで認証できるのは「顔」だけです。
ステータス性  顔で認証されることは、「顔パス」ということばに代表されるように、一種のステータス感があります。
不正抑止効果  顔画像や映像が記録できる、または記録されるかもしれないということから、不正・犯罪に対する心理的抑止効果があります。
他の技術との併用

 同じカメラを使って、顔認証以外の認識を兼用して行うことができます(視線認識等)。


5.オムロンの顔認証技術「OKAO Vision」の説明

(1)顔検出

 複数の様々な大きさの顔の位置を、正確かつ高速に検出することが可能です。
 顔が360°どの回転方向にあっても検出することができます。
(2)顔器官検出 (3)顔器官&輪郭検出
 顔器官(目、口)の両端
点や中心点等の位置を
高速・高精度に検出する
ことができます。
 あご、目、口の輪郭や、
眉・鼻の位置を高速・高精
度に検出することができま
す。

(4)性別・年代・人種推定
 顔画像から性別、年代(10才未満、10代、20〜30代、40〜50代、60代以上の5年代)、人種(アジア系、ヨーロッパ系、アフリカ系)が自動で推定できます。

(5)顔画像最適補正(OKAO ツルツルソフト)

 顔の肌の色と領域を正確に検出し、その顔が最も美しくなるように顔の色・明るさ・質感などを最適に補正します。

6.「OKAO Vision」のアプリケーション(ソリューション)

 現在のところ、「OKAO Vision」の標準製品は、

(1)入退室管理システム 「Face Key」
(2)ソフトウェア開発キット(ライブラリ)SDK 「FaceReco

(3)組込みコンポーネント


の3つしか、オムロンでは用意しておりません。

 しかし、この3つの基本コンポーネントを利用して、様々な応用アプリケーション(ソリューション)が開発され、世の中で活躍しています。
7.入退室管理システム 「Face Key」

(1)入退室管理システム「Face Key」の概要

 「Face Key」は、個人の”顔”という生体情報を利用して本人照合を行います。
 現在一般的なセキュリティシステムに使用されるカードやパスワードなどと違い、盗難、偽造、紛失の心配がなくなります。
 「Face Key」は、ボタンを押すだけで、本人か否かの識別/照合を素早く処理し、煩わしい操作をすることなく入退室が可能になります(1対N認証が基本です。Nは最大500まで)。

 顔の変化(髪型、髭、メガネ、化粧など)に対しても優れた認証技術で、的確な識別を可能にしました。


(2)入退室管理システム「Face Key」の特徴

@経年変化の自動補正機能付き

 一般的に顔は、成長とともに変化します。
 「Face Key」では、利用中に認識率の低下を自動的に検出し、履歴画像から登録データの更新を促しますので、登録データベースの最適化が簡単に行えます。

A照明環境に左右されません

 特殊なカメラ(近赤外線カメラ)を使っているので、消灯されていても認識することができます。
 夜間の巡回時にも問題ありません。
光量ゼロ。真っ暗闇の中でも、顔認証を行うことができます。

B入室者の履歴に顔画像が残りますので、不正侵入者の後日追跡が可能

 顔画像を残していることを明示することにより、犯罪を抑止する効果が期待できます。


(3)「Face Key」の適応身長

 Face Keyを操作する人の身長は、約140cm〜190cmの方に限ります。これはカメラが1つしか付いておりませんので、仕方の無いことですね。

 もし子供の利用が多い場合は、下の方にもう一台設置すれば問題は解決します!
 または踏み台を置くという手もありますね。

(4)「Face Key」の操作部名称と構成



 1台の【制御部】(オムロン製パソコンPOSレジ用Windowsパソコン)で、最大2台までの【操作部】を管理可能です。
 ただし【制御部】は、最大1台までの電気錠制御盤を制御するための接点出力しか出力できません。

 よって【制御部】に2台の【操作部】を接続した場合、1つの扉において【入室】と【退室】の両方を顔認証を用いて行う場合にのみ有効です(以下の図を参照のこと)。




(5)「Face Key」制御部の画面イメージ

Face Keyの制御部は、オムロンのパソコンポスレジ端末を利用しています。
Windows2000で動作しています。液晶タッチパネル画面付きです。

 管理面からみても顔認証だから可能になる利点があります。
 アクセス者の入室/退室日時に加え、その時の顔画像が履歴データとして保存されます。
 履歴データはMOディスクに保存可能です。

運用中画面 顔データ登録画面 履歴データ表示画面
 左側画像は現在画像、右側は最新の履歴画像です。
管理者は、常にアクセス者の顔を画像により確認できます。
入退室許可者の登録は、
容易な操作でおこなえます。
(最大登録人数:500人)。
 履歴データには、アクセス者の顔画像が保存されますので、事件・事故等の追跡が容易になります。
 履歴データの顔画像を登録データにも使用できます。
(最大履歴データ保存件数:10,000件)

(6)「Face Key」制御部の優れた機能

@一括履歴データ検索
 
 各ドアアクセス者の顔画像付履歴データの収集。履歴データの分類・ソートも可能です。

Aマルチアロケーション機能

 任意の箇所で登録した顔データを、他の箇所に配信可能です。

B最適画像の自動抽出と更新

 履歴データから最適顔画像を自動的に抽出し、最適な画像を登録データとして自動更新が可能です。

最適画像の自動抽出と更新画面です。顔認証の精度が悪くなってきた場合、上記の画面の
【更新要】欄に★マークが表示されます。顔画像は随時履歴データとして保存されています
ので、自動または手動により、顔画像の照合用テンプレートデータを更新することができます。
この機能により、顔の経年変化による認証率の低下を防止しています。
なお、
照合用テンプレートデータは、最大8枚まで登録可能です。

8.ソフトウェア開発キット(ライブラリ)SDK 「FaceReco

 FaceRecoRシリーズは、顔認証機能を組込んだアプリケーションを開発するためのソフトウェアライブラリ製品です。
 用途に応じて、5つのラインナップがあります。
No. SDKの名称 説明
FaceReco SEARCH
 監視カメラ映像中の複数の歩行者を同時検出し、登録されている人が通過したことをリアルタイムに認証する機能です。
 監視カメラを使ったセキュリティ管理や来店者管理などの用途に利用可能です。
FaceReco LIST
 入力顔画像に対して、複数の顔画像を類似度の高い順にソートする機能です。
 これにより、顔による検索機能をもった画像データベースを構築可能です。
FaceReco VERIFY
 二つの顔画像を入力し、その一致度を200段階で評価する機能です。
 カメラ入力画像と免許証写真等のスキャナー入力画像を照合することで、本人確認などの応用が可能です。
FaceReco NET
 パソコン操作者をCCDカメラを用いて1対1照合する機能です。
 より高いパソコンのセキュリティ機能を実現します。 システムはクライアントサーバ型のほか、スタンドアロン型でも構成可能です。
FaceReco ACS  カメラユニットとソフトウェアライブラリがパッケージになった、開発キットです。
 カメラユニットには近赤外線照明を内蔵していますので、多様な場所での使用が可能です。

(1)FaceReco SERCH(監視システム向け顔認証ライブラリ)とは?

 監視カメラ映像中の複数の歩行者を同時検出し、顔画像データベースとリアルタイムに照合する顔認証ライブラリです。

 ロバスト性の高いガボールウェーブレット+グラフマッチングをベースにしており、監視カメラ映像においても高い認識性能を実現しています。

 顔画像データベースは、監視カメラ映像からの入力のほか、身分証明書や免許証写真からのスキャナー入力、デジカメからの静止画入力などが可能です。

(2)FaceReco SERCHの構成

(3)FaceReco SERCHの応用事例

@入口に設置し、VIPをチェック
A入国時に、指名手配犯との照合
B顔検出時のみ、監視カメラ画像を記録
C迷子や行方不明者の検索
Dリアルタイムの人数カウント

通常のCCDカメラで撮像した顔画像を、リアルタイムで認証することが可能です。
数万、数十万の顔データベースから、瞬時に検索します。

(4)FaceReco LIST(Identify型顔認証ライブラリ)とは?

 
 入力された顔画像に対して、DBに登録されている顔をキーに似ている顔画像を含むデータを検索するためのライブラリ製品です。
 FaceReco SERCHの静止画バージョンと考えて頂くとよいかもしれません。


(5)FaceReco VERIFY(Verify型顔認証ライブラリ)とは?


 2つの顔画像データ(基準顔画像および照合顔画像)を入力して照合し、それらが同一人物であるかどうかの照合度合いを出力します。


(6)FaceReco NET(PCセキュリティ向け顔認証ライブラリ)とは?


 パソコンのクライアントサーバ方式で顔認証を行うためのライブラリ製品です。


(7)FaceReco ACS(出入管理用・顔認証ライブラリ)とは?


 顔認証ライブラリとカメラユニットのパッケージです。
 カメラユニットには照明を内蔵していますので、多様な場所で使用可能です。

9.顔認証専用組込みボード

 ついに、顔認証専用組込みボードが発売開始されました!
 パソコン不要で、様々なアプリケーション機器を低価格で開発できます!!


(1)特徴

@PCベースで既に多くの好評を得ている顔認証エンジンの認証精度と同等の精度を、コンパクトなボード上で実現可能としました。

A本体ボードのみで、画像取得から登録/識別までの処理を実現します。

B1対1(Verify)認証と、1対N (Identify)認証の両方の認証が可能です。

CFace Keyで培った照明制御機能を内蔵していますので、安定した顔画像の取得を実現しています。

D目、口の座標を出力できます。

(2)アプリケーション開発例


ドアホンへの組込み デジタルレコーダー
への組込み
決済端末への組込み
ドアホンに組込めば、登録者の
キーレスエントリ、非登録者の
自動拒否などの高機能を
追加できます。
監視システムに組込
めば、ハードディスク
レコーダーから、
顔画像のみをサーチ
できますので短時間で
検索が可能となります。
CAT端末や、ATMなどの
決済機器に組込み、
顔履歴を残すことにより、
よりセキュリティの高い
システムを実現できます。

10.DSP顔認証ライブラリ

 顔認証エンジンがDSPライブラリになりました!

(1)特徴

@PCベースで既に多くの好評を得ている顔認証エンジンの認証精度と同等の精度を、DSPライブラリで実現可能としました。

A1対1(Verify)認証と、1対N (Identify)認証の両方の認証が可能です。

B顔検出・認証など、各機能ごとの利用が可能です。

C対象DSPは、テキサスインスツルメンツ社製C6000プラットフォームです。

D目、口の座標を出力できます。


(2)アプリケーション開発例


組込みボード カメラへの組込み ロボットへの組込み
各種組込みボードに
DSPを搭載し顔認証機能
を追加する事ができます。
カメラに、顔認識機能を
組込み人を認識させて、
その人にピントをあわせ
たり、人をトラッキング
して、撮影する事が
できます。
ロボットや、コミュニケー
ション機器に組込み
個人を識別する事が
できます。

11.マーケティング

 オムロンの顔認証技術や顔認証製品の説明をしただけで、すでにかなりのボリュームとなってしまいました。
 顔認証分野においては、日本を始め、世界を先導しているオムロンは、製品もバラエティー豊富ですね。

 それでは最後に、オムロンのマーケティング戦略について分析してみたいと思います。

(1)ノーリツ鋼機株式会社様がオムロンの顔センシング技術を標準採用

 ミニラボシステム機器のパイオニア、ノーリツ鋼機株式会社がオムロンの顔センシング技術「OKAO Vision(おかおビジョン)」を、2004年2月より標準採用しました。

 ノーリツ鋼機のデジタル技術とオムロンの顔技術を組合せ、写真店でのプリント時に、より的確な輝度・色補正を自動的に行ないます。


 一般写真においては、人の顔や体を中心として撮影されていることがほとんどです。

 逆光環境下で撮影されたフィルムにおいては、今までは、フィルム全体を露光UPすることしかできませんでした。
 この場合、露光を上げすぎると、全体的に白っぽくなってしまい、人の顔や体が真っ白く写ってしまうケースが多かったため、思い切った露光UPはできませんでした。

 しかし、オムロンの顔の位置検知技術を用いることで、顔の露光と周りの風景の露光を比較して、顔や体が綺麗に浮き上がるように、思い切った露光調整をすることが可能となりましたので、今まで以上に美しい写真を現像することができるようになりました。
(顔部分だけの露光を抽出することで、フィードバック制御をすることができるようになりました)。

 このビジネスは、【顔の位置検出技術】までを提供しており、【顔認証技術】までは提供していないため、純粋な意味で【バイオメトリクス認証ビジネス】と言うことはできないかもしれませんが、誤認証などのリスクも無く、技術的にはリスクの少ない、無難な稼ぎかしらと言った感じですね。

 オムロンはノウリツ向けのビジネスで、年間4億円を売り上げているとの情報です。


(2)キャノンのプリンター

 
キャノンは、年間1,000万台のプリンターを製造・販売していますが、このキャノンのプリンター全てにも、オムロンの「OKAO Viosion」が搭載されています。

 顔のシミ、ソバカス、肌荒れを目立たなくする【OKAO ツルツル】ソフトが搭載されており、赤目補正にも対応しています。

 デジタルカメラで撮り溜めたデータの中から、特定の人物が写っている写真をピックアップする便利ツールも、キャノンのホームページからダウンロードすることが可能です。

 オムロンはキャノン向けのビジネスで、年間3億円を売り上げているとの情報です。


(3)「おかおネット」

 
オムロンは2002年4月17日より、カメラ付き携帯電話で利用可能な顔エンターテインメントサービス「おかおネット」を開始しています。

 この「おかおネット」は、顔をテーマにした5つのコンテンツから成り立ち、カメラ付き携帯電話でサービスを利用できます。自分の撮影した顔写真をメールに添付して送信することで、オムロンの顔認証技術により、

(1)開運!人相占い
(2)キレイの素(メイクアップアドバイス)
(3)おかおマーク工房(顔画像マーク描写)
(4)かおチェキ!(顔の特徴分析)
(5)おかおランキング(顔のパーツ比較)

の5つのサービスをWeb画面にて見ることができます。

● コンテンツの内容

(1)開運!人相占い
 送られてきた顔画像から顔認識技術により、顔の特徴点を抽出し、顔型・目・鼻・口の4つの各部位の大きさとバランスで開運度を診断します。

(2)キレイの素
 自分の顔をよく知り、その上で自分をより美しく演出してもらう為のメイクアップアドバイスを提供するコーナーです。
 送られて来た顔画像から顔認識技術により、その人の顔に合ったメイクアドバイスと恋愛診断をお届けします。

(3)おかおマーク工房
 顔画像に用意されているマークを自動的に最適位置に描画することで、感情をさらに強調したり、誰かになりきったり、マークとのアンバランスさに思わず笑ってしまったりと、顔をモチーフに楽しく遊んでもらえる工房です。

(4)かおチェキ!
 新感覚のおかお分析コーナーです。
 送られて来た顔画像を最新の顔認技術によって分析し、そのおかおの形、口や鼻の大きさなどからあなたの顔に潜んでいる魅力をズバリ言い当てます!

(5)おかおランキング
 顔のパーツ(目、鼻、唇 等)は、人それぞれです。目の大きな人、離れている人エラの張っている人など顔のインパクト度を判定します。あなたの顔のインパクト度はさて、第何位でしょうか。
 送られて来た顔画像から顔認識技術により、顔の特徴点を抽出、顔型・目・鼻・口の大きさとバランスで種目を競います。

●サービス利用料  月額200円(税別)〜

 オムロンは、これまで培ってきた顔認識技術に改良を加え、新たに開発した「ネットワーク型高精度顔認識技術」によりカメラ付き携帯電話での低画質、低解像度の顔画像であっても、高精度・高速の認識ができます。

 この新技術により各コンテンツのサービスを運営します。
今後、2人の写真からモーフィング技術によって子供の顔を合成するサービスや顔写真から似顔絵を作るサービス、写真や似顔絵が口を動かして喋るサービスなどを計画しています。

 オムロンはOKAO NETビジネスで、年間500万円を売り上げているとの情報です。


(4)性別・年代・人種推定


 コンビニエンスストアで買い物をする場合、レジにておいて、商品のバーコードを全部読み終えて、最後に合計ボタンを押して、支払い合計金額がポスレジに表示されるわけなのですが、この最後の【合計ボタン】は、実はお客さんの【性別と年代】ボタンを押した後でないと、押せない仕組みになっています。

 0〜10歳の男性、11〜20歳の女性、21歳〜30歳の男性、31歳〜40歳の女性のようなボタンが、男女それぞれ8個ほどポスレジに装着されており、このボタンをアルバイト店員が押すことで、どのような年代の方が、どのような商品を嗜好しているのか?というマーケティング情報が取れるのであります。

 しかし、アルバイトやパートの店員の【性別・年代ボタン】の押し方判断(基準)は、人それぞれ・かなりファジーなところもあるみたいで、商品嗜好の今以上の正確な情報を得るためには、【性別・年代】判断を機械にやらせるしか方法はありませんね。

 このようなニーズに答えるために、オムロンでは、顔認証ではなくて【性別・年代・人種推定】技術の精度UPにも奔走しているとのことでした。

 しかし、今現時点では、コンビニを始めとした採用実績はないとのことです。


(5)徘徊者保護支援システム


 痴呆症の病気になった患者さんが入院している病院では、昼間でも夜中でも、病院の中を徘徊してしまう患者さんが多くいらっしゃいますね。

 病院の中を徘徊する程度ならまだ良いのですが、病院から外に出て行ってしまうと、交通事故に遭遇してしまうケースも多々あり、大変危険です。

 とはいうものの、看護婦さんはみなさん非常に忙しくしており、徘徊患者さんだけの看護をするわけにもいきません。。。

 こんな病院の悩みを解決するのが、オムロンの顔認証技術を利用した【徘徊者保護システム】なのです。

 このシステムの仕組みは至って簡単でありまして、徘徊患者さんの顔を予め登録しておきます。
 その後に、CCD監視カメラを、病院の出口に設置します。上の写真の真ん中のポール型の製品です(照明付き)。

 お医者さんや看護婦さん、お見舞いに来た人や出入業者の人は、顔データを登録していませんので、病院の出口に差し掛かっても、このシステムは何も作動致しません。

 しかし、顔データを登録してある徘徊患者さんが病院の出口に差し掛かった時には、事前に登録してある顔データであることを認識して、ナースセンターへ【ナースコール】を発報するのです。

 これは、いわゆる【ブラックリスト認証】といわれる顔認証方式ですね。

 残念ながら、このシステムも、未だ導入実績はないそうです。


(6)セキュリティーゲート


 上記の写真は駅の改札ゲートのように見えますが、切符を差込む口はついておりません。

 このゲートは、一般企業の通用口で利用されている【セキュリティーゲート】と呼ばれるものでありまして、非接触ICカード(社員証など)を近付けることで、ゲートをパスすることができます。

 このゲートもオムロンが開発しているのですが、非接触ICカードの代わりに顔認証でゲートをパスすることができるというのが、この装置です。

 原子力発電所や空港施設で利用されるのだと思いますが、この製品もこれから販売されるとのことでした。

12.マックポート本音考察

 オムロンさんの顔認証の記事を書いていたら、何でこんなに長くなってしまったのか不思議に思いました。
 書いても書いても書き足らないのです。

 顔認証というものは、カメラで撮影された一般の風景の中から、【顔】を探し出すところから始まりますので、他のバイオメトリクス認証技術と違って、数倍〜数十倍の難易度の画像処理技術が必要となります。
 その反面、顔認証までの処理工程が多い分、認証まで至らない過程で、複数のビジネスが成立することも見逃すわけにはいきませんね。

 全てのバイオメトリクス認証技術の開発に言えることですが、認証エンジンの精度を高めるためには、数多くのサンプル画像が必要となります。
 顔認証においては、1万枚でも10万枚でも、多くの顔写真が必要となるのです。

 オムロンでは、現在までに100万枚の顔画像写真を収集したと言っています。

 ただし、実際に認証エンジンの精度向上に利用できる顔写真は、照明強度や撮像距離、性別や年齢、顔の角度などの【属性データ】が、正確に付属していなければならず、ただ単に顔が映っている写真だけでは、【評価用データ】とは言えません。

 また評価用データには、一枚一枚、人の手によって、目や口、鼻の位置などをプロットしていく必要があり、極めて根気の要る作業となります。

 このような作業を終えて、初めて【顔認証のためのサンプルデータ】と言えるわけですが、オムロンでは現在までに、約1万枚のサンプルデータを作り上げたとのことです。

 オムロンの顔認証ビジネスの売上についてですが、FACE KEYなどの、顔認証までを行う製品については、実はまだあまり売れ行きは芳しくありません。

 出入管理用顔認証装置のFACE KEYは、定価98万円ですが、年間80台程度しか出荷されていません。
 これは指紋や静脈認証装置に比べると、【価格が高いから】という理由から来ると言われておりますが、オムロンが原価低減開発に積極的でないのは、顔の【認証ビジネス】までは時代が追い付いて来ていないからだとも言えそうです。

 ちなみに昨年度のオムロンの顔認証ビジネスの売上は、約5億5,000万円。2004年度は11億円になる見込みだそうです。

 オムロンの顔認証ビジネスの売上を詳しく分析してみますと、その8割方が【顔の位置検出技術】や【お肌ツルツル技術】で占められており、【顔の認証技術】は、未だ2割程度と低水準に留まっています。
 協力会社が開発した、オムロンの顔認証技術を利用したWindowsログオンソフトも、まだまだ立ち上がっていないとのことでした。

 今年度より顔認証の営業部隊を拡大し、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の全国6箇所の主要営業所に、オムロンの顔認証営業部隊を1名〜2名配置して、オムロンのカードシステムと顔認証を、総勢20名の営業マンで勢力的に拡販することとなりました。

 また京都の研究所には、顔認証専門のエンジニアが約30名も常駐しており、出入国管理から携帯電話コンテンツサイトまでを、日夜開発しています。

 出入国管理のおける電子パスポートで、顔認証技術が必須事項で利用されるとのことで、マックポートではここ数ヶ月間、顔認証に特化した取材をしてきました。

 数々の顔認証エンジンメーカーを取材するうちに、「やっぱりオムロンで決まりかなー?」って思う瞬間が何度かありました。

 とにかく、オムロンには顔認証に関する実績が豊富にありますからね。

 お客さんがいてもいなくても、とにかく顔認証ビジネスを多方面にクリエイトしてきており、その豊富な開発経験が、確固たる認証精度を作り上げ、お客さんからの信頼を勝ち得ているのだと思います。

 顔認証に限らずとも、バイオメトリクス認証技術を利用した【セキュリティー】ビジネスは、誤認証のリスクをどう捉えるかで、重いメーカー責任を負う可能性があります。

 損得勘定を優先していたら、今の段階では、バイオセキュリティービジネスは止めた方が得策ですね。
 しかしオムロンでは、儲かるからやるのではなくて、創業者が1970年に打ち立てた【SINIC理論】に則って、顔認証を始めとしたバイオメトリクス認証ビジネスを勝手に独走していますので、私たち一般ビジネスマンには想像も付かないほどの高貴な使命感を、感じずにはいられません。

○儲かりそうだから
○思いつきで
○競合他社がやっているから
○たまたま同様の技術を保有していたから

などなど、オムロンはそのような生半可な意識ではありません。

 彼らは、必ずや顔認証技術で成功するのでしょうね。ビジネスを行うとは、オムロンのような生き方を言うのでしょう。

 オムロンは、顔認証技術を追いかけているのではなくて、もっと精度の良い顔認証技術を求めているのでもなく、

 正しく、【顔認証技術とともに生きている】 = 【顔認証を生きている】

のだと思います。

 自分たちが何故、顔認証技術の仕事に従事しているのか?その答えを、従業員一人一人が理解をし、そしてその使命を受け入れたオムロン社員一人一人の結束がパワーとなり、他社の追随を許さない技術レベルを導いたのだと思います。

メーカー名
(製品名)
顔認証方式 開発元
NEC
(NeoFace)
摂動空間法
適応的領域混合マッチング法
NEC
オムロン
(Face Key)
ガボルジェット集合への射影弾性
グラフマッチング方式
南カリフォルニア大学
東芝
(FacePass)
制約相互部分空間方式 東芝
米アイデンティックス
(米ビジョニクス)
(FaceIt)
局所的特徴方式 ロックフェラー大学
米e.true.com
(True Face)
ニューラルネットワーク方式 米e.true.com
米Visage
(Face PASS)
固有顔方式 MITメディア研究所
グローバル・セキュリティー・デザイン
(Face Vital)
周波数解析からの特徴点抽出方式 九州工業大学

Presented by
株式会社マックポートバイオセキュリティー
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■工事担任者免許・アナログ一種・デジタル一種(アナログ・デジタル総合種)
<総務省>AU98A01154(地方電気通信監理局で照会可)

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