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特養に入れない!!(上) 入所選考は公平か (2/2ページ)
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厚生労働省は平成14年、特別養護老人ホームへの入所について、介護の必要度や家族の状況を考慮して、必要性の高い人から優先的に入所させるよう、各都道府県に通知した。
しかし、通知には強制力がない。介護の必要度や優先順位の考え方も自治体によってさまざまだ。中には、「住まいに困窮している」の得点が高く、「要介護3」でも住む家のない人が、自宅のある「要介護5」の人を軽々と飛び越える自治体もある。
東京都内に住む介護福祉士の溝上恵子さん=仮名=は「特養の入所は介護の必要な優先順で決まる」という大原則に懐疑的だ。「表向きは介護の必要な優先順だけど、特養は入所者を選んでいると思う」という。
仕事で接した特養入所者の多くが「要介護3で家族がいた人」だったからだ。それなのに、身寄りがなく、認知症で火の不始末を何度か起こしたのに、入所先がいつまでも決まらない人もいる。
溝上さん自身、同居の母が最近、特養に入所した。母は要介護3。まひや軽い認知症はあるが、トイレや食事の介助は必要ない。家には介護に協力的な10代の子供もいる。
しかし、溝上さんの自治体の特養待機者は1000人以上。「区内すべての特養に申し込んでも、5年は待つ」のが通説だから、「早いうちに待機者リストに載せておくだけでも、と思って」(溝上さん)申し込みをしたのだ。
ところが希望の1カ所に申し込んだだけなのに、2年で入所できた。溝上さんは「母が最優先されるべき人とは思えない。施設の面接では『呼び出したらすぐに来られるか』といった質問ばかり。緊急時の身元保証人の有無が入所を左右すると感じた」と話す。
「いつになったら、特養に入れるのか」。そう思いながら、介護度の重い高齢者を日々、自宅で介護する家族は多い。介護保険がそんな高齢者や家族の助けになれないなら、何のための介護保険なのか。明日は、自治体によって入所への関与が違う実態をお伝えする。