中医協の診療報酬改定結果検証部会(部会長=遠藤久夫・学習院大教授)が10日にまとめた調査結果(速報)によれば、2006年の診療報酬改定で新設された「医療安全対策加算」を算定する医療機関の大半が、この加算を算定するために配置が求められる専従の医療安全管理者の人件費を、現在の点数で賄うのが困難な状況にあることが分かった。
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医療安全対策加算は、医療機関による医療安全のための組織的な取り組みを評価する狙いで、06年の前回改定に伴い新設された。院内の医療安全部門に専従の「医療安全管理者」を配置し、医療安全に関する職員研修を計画的に実施している場合などに、入院1件当たり50点(1点は10円)を算定できる。
医療安全管理者の職種について厚生労働省は「医師、看護師、薬剤師等の有資格者」としており、他の業務との兼務は認めていない。 同部会がまとめた調査結果によれば、医療機関が医療安全管理者に支払っている人件費(給与12カ月分と賞与)は「750万円以上1,000万円未満」が40.3%で最多になり、これに「500万円以上750万円未満」の25.0%が続いた=図1=。また医療安全管理者の人数は「1人」が89.1%を占めた。
専従管理者1人分の人件費をこの加算だけでカバーすることを想定して単純計算すると、500万円としても年1万回算定しなければならない計算になる。 ところが、医療機関による同加算の算定回数(今年6月分)を見ると、「200回未満」と「500回以上1,000回未満」がそれぞれ全体の29.5%で、「200回以上500回未満」が25.3%だった=図2=。「1,000回以上」は7.2%に過ぎず、現在の点数設定では同加算で専従管理者1人分の人件費をカバーすることが困難な状況を示唆する結果になった。
土田武史委員(早稲田大商学部教授)は「本来はこの加算で1人雇えというのが趣旨」と述べ、「人件費にペイするような算定回数になっているのか」と質問した。
厚労省は「非常にアバウトな計算」とした上で「平均在院日数(の短縮)で病床がどれだけ回転するかということなので、一定の(病床)規模があればペイできる」と答えた。
検証部会は調査結果を中医協総会に近く報告し次の改定に反映させる方針で、今後、議論になる可能性もある。
調査は医療安全管理対策の実施状況や専従管理者の配置による効果を把握する目的で、06年7月時点で加算を届け出ている医療機関1,073施設を対象に、今年7〜8月にかけて実施。640件の回答を得た(有効回答率59.6%)。
専従管理者の配置時期を聞いた質問には全体の41.3%が「06年度」と回答。専従管理者を配置している医療機関でのMRSAによる分離患者数の平均値は、「06年1〜3月」の50.2から「07年1〜3月」には47.2に減少した。耐性緑膿菌による分離患者数も1.2から1.0に減った。しかし、同期間に発生した事故件数の平均値は50.6から53.4まで逆に増えた。インシデント件数も283.6から311.2に増えていた。
遠藤部会長は「客観的に把握できる院内感染は減っている。それなりの成果があるのではないか」と評価した。インシデント件数の増加については「新しい体制ができて、いわばあぶり出されてきたと考えられる。もうしばらく様子を見ないと結論は出ない」との見方を示した。
更新:2007/10/11 キャリアブレイン
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