CIAのスパイだった岸信介元首相（安倍前首相の祖父）と朴正煕（上）
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アジア、いや、世界的にも日本の親米度は抜きん出ている。大義なきイラク戦争をいち早く支持したのは小泉首相（当時）であったが、その極め付きの対米追随姿勢は自民党の宿命だろう。
何故なら、自民党がテロ特措法延長などで金科玉条に掲げる「日米同盟の強化」は１９６０年の日米安保条約に基づくが、それに調印した岸信介首相（当時）が米ＣＩＡのスパイだったからだ。
Ａ級戦犯容疑者として巣鴨拘置所に収監され、死刑を覚悟していた岸が突然、釈放され、旧敵国に忠実な親米派に変身し、十数年後に首相にまでなったのは戦後日本憲政史最大の謎とされてきた。
その謎解きをしたのが、ピュリッツアー賞を受賞したニューヨーク・タイムズのティム・ワイナー記者の『灰の遺産 ＣＩＡの歴史』だ。
http://www.amazon.co.jp/Legacy-Ashes-History-Tim-Weiner/dp/038551445X/ref=pd_bbs_1/249-2549327-6969909?ie=UTF8&s=english-books&qid=1192059936&sr=8-1
さわりの部分を時系列で整理すると以下のようになる。
ＣＩＡは自民党を取り込むため、情報提供に対する報酬の形で将来性のある自民党政治家に資金を与えた。金の運び屋は米人実業家が担い、その中には再建中の自衛隊に武器を納入したロッキード社重役が含まれていた。
岸は１９５５年に自由民主党を結成し、幹事長に収まるが、ＣＩＡの工作を利用して保守勢力を糾合した。そうして政権トップを目指した岸は、安保条約の改定を米国に約束した。岸との連絡役になったのはＣＩＡのケース・オフィサーであるクライド・マカヴォイであった。
１９５７年３月、岸が首相になる日、国会では安保条約に反対する動きが顕在化していた。それについてマカヴォイは「岸と私はその日のクーデターを流産させた」と次のように語った。
「米国と日本は合意に向かって動いていたが、日本共産党は投票が行われるこの日、国会で反乱を起こす計画を立てた。それを社会党本部職員の通報で知った私は、天皇に謁見する予定だった岸に緊急秘密会談を申し入れ、モーニングにシルクハットの装いで現れた岸に、共産党が国会で反乱を企てていると教えた。国会では午前１０時半か１１時に食事などのため審議を中断させ休憩することになっていたが、岸は休憩を取るなと自民党議員に命じ、自民党以外の議員が退席したすきに法案を採決した」
１９５７年６月に岸は訪米し、新任の駐日大使に決まっていたマッカーサー将軍の甥・ダグラス・マッカーサー２世と会って、米国が権力基盤強化を助けてくれれば、日米安保条約は成立し、左翼を押さえることができると語った。そうして、内密の支払いではなく、ＣＩＡによる恒久的な財政支援を求めた。
アイゼンハワー大統領は自民党有力者へのＣＩＡ資金提供を承認した。相手によっては米企業からの献金と思わせ、少なくとも１５年間、４代の大統領にわたって資金提供は続いた。
岸と同じＡ級戦犯容疑者であった賀屋興宣もＣＩＡのスパイであった。賀屋はＣＩＡの秘密作戦で１９６８年の総選挙で中軸の役割を果した。
以上が要旨だが、日本の戦後憲政史を書き換えかねない衝撃的な内容を含んでいる。
ＧＨＱ司令官のマッカーサーが対日政策を民主化からソ連との冷戦に対抗する反共の保塁として再編成する方針に転換し、岸らＡ級戦犯を次々と釈放し、ＣＩＡのスパイにしたことは一般論としてはこれまでも知られていた。
『灰の遺産 ＣＩＡの歴史』は、岸と接触していたＣＩＡ要人の赤裸々な証言を通して岸スパイ説を裏付けたと言える。
自民党は米情報機関の出先機関であり、それを通して戦後日本の政治は操られてきた、と言われても反論しがたい衝撃的な内容だ。
チリのアジェンデ社会主義政権を倒したピノチェトらの軍事クーデターの背後にＣＩＡがいたように、ＣＩＡは世界中で政権転覆、操作に介入してきた。
西側先進諸国で旧敗戦国であるドイツ、イタリアでもその影響力が強く残るが、日本ほど露骨ではない。
日本の特殊性は、ドイツ、イタリアでナチスやファシストの追放が徹底したのと対照的に、岸を先頭にした旧軍国主義者がＣＩＡの支援で政界復帰を果たし、戦後政治の主導権を握ったことである。
それが戦後の日本政治を歪ませたのだが、例えば、ＣＩＡのスパイであった岸が「対米自立、自主憲法制定」を掲げ、自民党是になったことは一見して矛盾する。それが岸の“悲願”と庇う見方もあるが、正体を隠し、国民を欺く偽装であった側面があったことは否定できまい。
岸自身が「満州国は私の作品」と述べたように、満州国産業部次長・総務庁次長として関東軍参謀長であった東條英機と近く、東條内閣の商工大臣、軍需次官（軍需大臣は東條兼務）として国民を「鬼畜米英」相手の戦争へと煽った張本人がかつての敵のスパイになる劇的な変節については、Ａ級戦犯として生死与奪の権をマッカーサー元帥に握られていた岸が生き残るには、それしかなかったと弁護する見方もある。
そのＤＮＡが二世、三世の世襲政治家を通して自民党に受け継がれ、保守系右派(ジャパニーズ・ネオコン)を形成し、「ブッシュの戦争」に過ぎない反テロ戦争に埋没する小泉＝安倍政権という極端な対米追随政権を生んだ。
安倍前首相が掲げた「戦後レジームからの脱却」が、実質は親米ながら憲法を押し付けと否定するなど反米的要素も混じり、舌足らずで分かりにくいのは、尊敬する祖父・岸の屈折した心情を受け継いだからとみられる。
ブッシュ大統領にテロ特措法延長を誓いながら僅か４日後に政権を放り出した安倍首相の頓挫は、そうした忌まわしい過去にケジメを付けよとの、歴史からの警鐘とも読める。
参院選で厳しい民意の審判を受けた自民党は、この際解党するか、最小限、党名変更で再出発する必要があるのではないか。
もっとも、黒白をはっきりさせる原理原則論からはそれが筋とは言え、既得権益を後生大事に抱え、グレーゾーンを好む日本的風土では、賛反入り混じった複雑な潮流を引き起こし、現在の政局にも微妙な影を落としているように見える。
恐らく、米国に操られる外交に最初に異論を唱えた日本の首相は田中角栄であった。
田中は日中国交回復を仕掛けてキッシンジャー国務長官を怒らせたし、対北朝鮮外交でも新基軸を打ち出そうとしていた。ロッキード事件で失脚するが、『灰の遺産 ＣＩＡの歴史』によると、ロッキード社はＣＩＡの運び屋であった。ロッキード事件が田中角栄追い落としを狙ったＣＩＡ陰謀説を補強すると言える。
角栄の薫陶を受けた小沢一郎氏が、自民党幹事長まで務めながら自民党の解体を主張して党を割り、細川政権樹立の原動力になった背景も、そこかしこ浮かび上がってくる。
民主党代表となって国連中心主義を主張し、インド洋での海自艦の給油活動は「憲法違反だ。ブッシュの戦争に加担できない」としているのは、一種の意趣返しかもしれない。
あるいは、ＣＩＡに操られた日本憲政史にケジメを付けようとしているのかもしれない。そうだとしたら、後世の「対米自主外交史」の１ページを飾ることは間違いなかろう。
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韓国大統領選�＼こ�初の携帯電話投票「モバイル選挙」で盛り上がる
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ＩＴ先進国の韓国で、携帯電話を使って大統領予備選の投票を行っている。政党選挙としては世界初のＩＴ民主主義の試みであるが、政治離れを起こしている若い層で急速に関心が高まっている。
韓国で「モバイル選挙」と呼ばれる携帯電話投票を実施したのは、与党系の大統合民主新党の党公認大統領候補予備選で、９日の第１次投開票は有効投票数３万票、投票率が７６％に跳ね上がった。
これまで８地域で地方巡回党内選挙を行ってきたが、南北首脳会談に話題性を奪われ、国民の関心は低く、投票率が２０％〜３０％台にとどまっていただけに、関係者を喜ばせた。
投票内容も変化し、トップには３６・５％を獲得した孫鶴圭（ソン・ハッキュ）元京畿道知事が躍り出て、これまで１位であった鄭東泳（チョン・ドンヨン）元統一相候補（３３．５％）を押さえた。３位は李海チャン（イ・ヘチャン）元総理（３０．０％）であった。
累積得票数は、鄭候補が５万８１２９票（４１．７％）、孫候補が４万５５００票（３２．６％）、李候補が３万５９２６票（２５．７％）となった。
とは言え、得票数がいずれも数万単位に留まっているように、どの候補も注目度、人気度で野党候補の李明博前ソウル市長に大きく遅れを取っている。
その救世主になるかもしれないと、民主新党関係者の熱い視線を集め始めたのが携帯電話投票だ。
党員などによる投票とは別に、一般市民から公募する選挙人を事前に決めるが、関心の高まりを物語るように、その数が２０万人に達しつつある。
最終集計のある１５日までにあと２回予定されているが、関係者はそれとともに選挙ムードを一挙に高めて統一候補を選出し、野党候補を追撃する作戦を練っている。
５年前に盧武鉉氏を大統領に押し上げた最大の功労者は、ネットに大集合した若いボランティア支持集団・ノサモであった。
韓国はネットとともに、携帯普及率でも世界トップクラスだ。「モバイル選挙」が新たな旋風を巻き起こすか、ライバルの野党候補も息を殺して見つめている。
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北朝鮮の核無能化とテロ支援指定国家解除の手続き同時開始、年内終了は確実。福田訪朝しか日本に打開策はない。
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マコーマック米国務省スポークスマンは９日、核専門家で構成される実務チームが１１日に訪朝し、一週間滞在して寧辺（ニョンビョン）の３核施設の年内無能力化の準備作業を開始すると発表した。
北朝鮮の朝鮮中央通信も５日、「０７年末までに核施設を無能力化し、行動対行動の原則に従って米国はテロ支援国指定と敵国通商法適用を解除する」と伝えた。
６か国協議１０・３合意に基づく北朝鮮の核無能化とテロ支援指定国家解除に向けて米朝は足並みを揃えており、年内終了は確実な状況だ。
拉致問題を理由にテロ支援指定国家解除に反対する日本は、苦しくなった。
拉致問題については、福田首相の要請を受けて盧武鉉大統領が南北首脳会談で提起し、金正日総書記が「これ以上はいない」と説明したことで「進展があった」と解釈され、クリアされたからだ。
しかし、見方を変えれば、福田首相の電撃訪朝の条件が熟しつつあるとも言える。
マコーマック米国務省スポークスマンは同日の記者会見で、実務チームはソン・キム国務省朝鮮部長をチーム長に米中ロの核専門家８名で構成され、北朝鮮側と寧辺の３核施設の無能力化について具体的な計画を詰め、後続チームに引き継ぐと明らかにした。
米国が北朝鮮に対して大規模食糧支援を行うと伝えられていることについては、「そのような計画は知らない」と、公式に確認することは避けた。
http://www.yonhapnews.co.kr/politics/2007/10/10/0503000000AKR20071010005100071.HTML
チーム長のソン・キム朝鮮部長は韓国系で、先月も５日間訪朝し、寧辺核施設を視察しながら北朝鮮関係者と無能力化案を協議している。
ヒル米次官補は３日、「議会とこの問題（テロ支援国家指定と敵性国貿易法適用解除）について４日から議論を始める。北朝鮮とも来週実務グループ会談を開いて、細部協議を行う」と述べていたが、キム朝鮮部長らを送り込むことで、無能力化とテロ支援国家指定解除などを同時に行っているとみられる。
なお、テロ支援国家指定解除はブッシュ大統領の裁量で可能だが、敵性国貿易法適用解除は議会との協議が必要だ。日本大使館のロビーもあって議会には共和党を中心に反対の動きが出ているが、多数派の民主党は昨年の中間選挙でブッシュ政権の対北朝鮮強硬政策を批判し、対話路線への切り替えを促していたことから大勢に影響はあるまい。
３日に発表された６か国協議１０・３合意書について、日本政府は「不満だが、仕方がない」（高村外相）、「テロ支援国指定解除の時期は明記されていない」（福田首相）とかすかな期待をつなぐが、これでは認識が甘すぎ、後手に回るしかない。
１０・３合意書は、無能力化を２段階に分けたことが如実に示すように、米朝妥協の産物である。
第一段階として、北朝鮮が０７年１２月３１日までに寧辺の５０００キロワット実験用原子炉、再処理施設（放射化学実験室）、核燃料棒製造施設の無能力化を完了するとしたのは、年内に具体的な成果を挙げたい米国に北朝鮮側が譲歩し、その対価として、米国がテロ支援国指定と敵国通商法適用を解除するというものだ。
つまり、両者は同時履行の関係にあり、前者が早まれば後者も連動して早まる。
また、それに応じて５か国による重油１００万トン相当の経済的補償も完了する。
ブッシュ大統領は「拉致を忘れない」と福田首相にも電話で約束したが、盧大統領が南北首脳会談で提起し、金総書記が「これ以上はいない」と説明したことでクリアされた。
それは日本に対して韓米共同で配慮した一種の“通過儀礼”とも言えるが、日本のメディアも共同通信が、米政府筋が金総書記の追加説明を「協力姿勢」と評価し、今後は拉致解決に固執しないことを明らかにしたと伝えている。
http://topics.kyodo.co.jp/feature41/archives/2007/10/post_676.html
米側は初期の段階では、横田めぐみら８人について北朝鮮側が「自殺、病死、交通事故死、中毒死、水死」したと日本政府に通告したことに、「到底信じられない」（米政府高官）と認識していた。家族会、「救う会」が度々訪米して訴えたことも効果があった。
拉致問題の存在をようやく知った段階であるから無理もないが、北朝鮮との対話が開始され、北朝鮮側から「日本は死んだものを生きて戻せと主張している」と直接に説明を受ける中、生存説を信じるものは無くなった。現に、ヒル国務次官補は６月の電撃訪朝前に会談した佐々江・６か国協議日本代表に「横田めぐみの遺骨の再鑑定」を打診していた。
福田首相は９日午前、「世論の支持を得られない」として日本独自の制裁措置延長を閣議決定した。政局としては理解できないことはないが、対話中心の６か国協議の流れに顔を背け、一人制裁に固執することで孤立化を深めるだろう。
韓国の聯合ニュースは、米政府が北朝鮮に対する大規模食糧支援の方針を決め、米機関が北朝鮮国内に事務所を設置して直接、配給とモニタリング活動を行う計画を北朝鮮に打診したと報じた。また、米国際開発局（ＵＳＡＩＤ）が今月末から４民間団体を通じ北朝鮮の病院に数百万ドル（数億円）の発電機を提供するとも報じた。北朝鮮のテコンドー団体が初めて米国入りし、ニューヨークフィルの来年一月ピョンヤン公演の話も進み、関係正常化への地ならしが始まっている。
韓国は南北首脳会談で１２０億ドル規模と暫定推定される対北経済協力案を北朝鮮側と協議しており、中国、ロシア資本との進出競争が始まっている。
やや言葉はきついが、６か国協議参加国の中で、日本は「何を考えているのか分からないミステリアスな国」になりつつある。
「感情的な拉致問題で、核問題解決を妨げている」との批判も出ている。
再三指摘しているように、日本の持ち時間は重油支援の最終期限である１１月中旬頃までとみられる。この時点までに参加を決めないと、「文句ばかりで、何も義務を果たさない」と６か国協議での参加資格を疑われ、発言権はなくなる。
６か国協議で四面楚歌の福田首相に妙案はあるのだろうか。
幸か不幸か、盧大統領が日朝交渉再開を勧めたことに金総書記は「日本の出方を見守る」と前向きの姿勢を示している。福田首相も９日夜、「今のところはありませんけどね。それは交渉の状況いかんだ」と訪朝に言及した。
北朝鮮は安倍前首相は相手にしなかったが、福田首相に対しては「ピョンヤン宣言に責任を負える人物だ」と評価し、受け入れる可能性は十分にある。
これしかないのではないか。
現実論として訪朝しても、金総書記が「これ以上いない」と言明した以上、拉致被害者を連れ戻す可能性はないが、泥沼状態になってきた拉致問題に相応のケジメをつけることは出来る。
客観的にみれば、日本の安全保障、国益にとっては核・ミサイルの方がはるかに重大な問題であるから、その点での不安を除去し、国民に理解を求めるしかなかろう。
結果を出せば国民は理解すると思われる。
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“ジレンマ” 「拉致日本人はこれ以上いない」は事実としても、日本社会には強い感情的抵抗がある
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いかにもタイミングが悪かった。これでは「自分の政権で拉致問題を解決したい」との意欲を見せた福田首相も動きにくかろう。
盧武鉉大統領の訪朝に特別随行員として同行した文正仁（ムン・ジョンイン）延世大教授が、８日、ソウル駐在の外国メディアとの懇談で、南北首脳会談で金総書記が「拉致日本人はこれ以上いない」と語ったことを明らかにした。日本の各メディアは事実だけを伝え、以前に比べ自制的だが、一部テレビ局が「冗談じゃない」（みのもんた氏）などと伝え、世論は「嘘だ」といった感情的な反発を見せている。
これでは福田首相も動きにくい。１３日に迫った制裁措置の延長を決めたのは世論の手前、無理からぬ面があるが、北朝鮮が反発するのは必至で、落としどころを探すのが難しくなった。
文氏によると、盧大統領が「過去の問題を清算し、日朝国交正常化を目指す」との福田首相のメッセージを伝え、「日本人拉致問題」と直接的な表現を使って解決を促したのに対し、金総書記は「拉致日本人はこれ以上いない」と述べた。盧大統領は拉致問題にはそれ以上言及せず、「朝日関係が改善すれば南北経済協力によい影響がある」と指摘すると、金総書記は「それは同意する。福田政権の出方を見守りたい」と述べたという。
また、金総書記は韓国人拉致問題については「志願して北朝鮮側に渡り、我々も歓迎儀式をやって受け入れた」と主張し、韓国人拉致被害者はいないとの従来の立場を繰り返した。
文氏は南北首脳会談に同席せず、同席者から聞いた話と断っている。
青瓦台（大統領府）報道官も８日の定例記者会見で、「首脳会談で扱われた議題は関連国には知らせるが、メディアにはすべてを公開しない」と、否定も肯定もしなかった。
しかし、文氏は前回の首脳会談にも参加した数少ない一人であり、盧大統領の外交ブレーンとして国際安保特命大使を務め、すべてを知る立場にあるから、金総書記の発言は事実であろう。
金総書記が拉致問題に言及するのは０４年７月の小泉第二次訪朝以来であり、その意味は小さくないが、問題は、それを明かしたタイミングである。
盧大統領は訪朝直前に福田首相から要請を受け、金総書記との会談で単刀直入に持ち出した。「拉致は解決済」とする金総書記としては愉快な話ではないが、福田政権との対話には前向きの姿勢を見せた。
６か国協議１０・３合意に署名し、北朝鮮との対話を進めたい日本としては、一定の評価が出来るもので、福田首相が感謝の意を表したのは当然である。
だが、安倍前政権の負の遺産である拉致問題という棘がチクリとうずく。
福田首相は５日夕、盧大統領と電話で１０分間会談した。大統領は「拉致問題を念頭に日朝関係を前進させるよう働き掛けた」と報告、首相は謝意を表明した。会談後、首相は記者団に「（金総書記からは）日朝関係は解決したいという期待があるような返事だった」と述べた。
その一方で、韓国は外交通商省の沈允肇次官補を特使として日本に送り、高村外相に会談の詳細を伝えている。それに対して高村外相は、記者団に「（金総書記は拉致解決に）前向きではなかった」との認識を示し、「北朝鮮が進展させるべきだ」と語った、という。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2007100500916
福田首相はともかく、高村外相の反応は解せない。「北朝鮮は拉致被害者を全員返すべきだ」といった発言を他でしているが、そうした安倍流の認識では北朝鮮との対話は困難である。
北朝鮮の政治文化を知っていれば容易に分かることだが、絶対的な統治者の金総書記が「いない」と断言している以上、北朝鮮で生存できる可能性はない。横田めぐみ生存説を唱える人たちは、金総書記が慈悲深い人物であると、どこかで幻想を抱いているようにみえる。
今回、日本は盧大統領の手を煩わせ、借りが出来た。高村外相は日本のいう拉致解決とは何か、韓国側に説明するのが筋であろう。また、政局ではなく、本当に横田めぐみらの生存説を信じているのなら、その根拠をつまびらやかにせねばならない。
横田めぐみの遺骨を偽物とした細田鑑定は、英科学誌「ネイチャー」が否定している。金銭目的で情報を提供していた安明進・元北朝鮮工作員の生存証言は信憑性がない。それ以外に何があるのか、少なくとも６か国協議参加国には示す義務があろう。
家族会が反発するのは、被害者感情として理解できる。
だが、一国の外交が特定の集団への人情論で動いては困るのである。
外交はあくまでも現実主義的に国益を追及すべき場であることは、二言するまでもなかろう。
とは言え、拉致問題を首相ポスト獲りに最大限利用した揚句に、テロ特措法延長などで行き詰まり職務放棄した安倍前首相と、福田首相は姿勢が異なる。
官房長官時代に田中・アジア太平洋局長とともに小泉第一次訪朝を実現し、蓮池薫氏ら拉致被害者５人を帰国させ、日朝ピョンヤン宣言調印に努力した。大局的に地域の平和と安定を考える立場から、官房副長官であった安倍氏が北朝鮮側との約束である拉致被害者５人の「一時帰国」を破って対決路線を主張したことには、異論を唱え対立した。
その経緯を知っている北朝鮮側も福田政権との対話には前向きであり、歪んだ対北朝鮮外交を本来の軌道に戻す上で適任者と言える。
その意味で、盧大統領の仲介は日朝が仕切りなおしをする上で有益であったが、福田首相が現実的な対応を練る前に金総書記の「拉致日本人はこれ以上いない」発言が漏れ、世論を必要以上に刺激してしまった。
日本世論も以前に比べれば大分冷静になりつつあるが、家族会への同情は依然として強く、政権基盤の弱い福田政権も無視できないだろう。
その一方で、米国は「北朝鮮は、横田めぐみらの生死を誠実に説明する必要がある」との立場から、今回、金総書記が盧大統領の質問に応えたことを「拉致問題で進展があった」と評価し、次は日本側が応える番だとしている。
もはや、二兎を追うことはできない。「生存者なし」も視野に入れた現実主義的な対応が必要だ。日本側が拉致問題で対話を拒めば、北朝鮮側は「日本は拉致問題を口実に敵視政策を続けている」として核兵器を温存しようと動き、核問題解決は難しくなる。
「日本の最大の安全保障上の脅威」（読売）とする核問題解決を優先させるか、感情論的な拉致問題解決にこだわるか、福田首相の決断が注目される。
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南北首脳会談�ｂ塞韲訛臈�領の支持率急伸（５４％）、大統領選への影響必至
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南北首脳会談前、日本では「盧武鉉大統領はレームダック化しており、実質的な意味はない」「大統領選を有利に運ぶのが狙いだ」との類の見方が多かった。
「韓国が経済支援するから金正日体制が延命し、拉致問題も解決できない」といった社会的気分があるから、どうしても斜めに構えてしまうのだが、八つ当たり乃至は逆恨みでしかないことは、福田首相が盧大統領に電話で拉致問題での協力を求めたことが示している。
とはいえ、「大統領選を有利に運ぶのが狙いだ」の方はまんざら外れてはいない。
小泉前首相の二度の訪朝が政権浮揚効果を秘めていたように、外交を内政と絡めるのはある意味で常識とも言えるが、二ヵ月後に迫った大統領選における与党候補の不人気にやきもきしていた盧大統領は、予想以上の支持率急伸にほくそ笑み、青瓦台の奥で新たな秘策を練っているだろう。
盧大統領の支持率は、「不人気にあえいでいる」と日本で伝えられているほど悪くはなかった。６か国協議で韓国が存在感を示す中でじわじわと上がり、ＫＢＳテレビの世論調査で８月末に３５・１％であった。もっとも、「韓国を史上最強の経済に引き上げた」と自負する盧大統領としては大いに不満であった。
それが、金正日総書記との首脳会談から戻った４日、５３・７％に跳ね上がった。ＳＢＳテレビの調査でも４３・４％と、９月末より１３・２ポイント上昇した。
前回指摘したように、南北首脳会談で「予想以上の成果」を挙げたためである。
ＫＢＳ電話調査では「成果があった」が７５・９％（ＳＢＳ６７・３％）と、国民の大半が支持した。産経新聞などが「韓国民は冷ややかに見ている」と伝えていたのは皮相的で、二回目となれば興奮ばかりして入られない。具体的な成果が上がるかどうかを、注視していたのである。
同調査によると、南北合意で最も評価する具体的成果としては、「金剛山面会所での南北離散家族常時面会」２４・１％、西海の共同漁労水域設定と平和協力特別地帯設置」１８・４％、「終戦宣言推進」１６・２％、「ソウルー白頭山直行路開設」１２・２％の順であった。
だが、南北合意文（２００７年南北頂上宣言）については、「南北関係発展のため具体的で水準が高い」２９・６％とする一方で、「北の核廃棄，拉北者、国軍捕虜問題について具体的な言及がなかった」６６・４％と多くの国民が不満を抱いている。
今後の展開を見守るということであろう。
http://news.kbs.co.kr/article/politics/200710/20071005/1436647.html
盧大統領が３日、マスゲームの「アリラン」公演を観覧したことについてはどうであったか。
保守派は「北朝鮮の体制宣伝に乗せられる」と非難し、一部検察幹部は「韓国大統領の観覧は国家保安法上問題がある」と反対していたが、大統領は「北の考え方を知るのも必要だ」として押し切った。
さて、国民の審判だが、中央日報のジョインス風向計の３日のアンケート調査によると、「賛成」６３・３％、「反対」２２・９％であった。３０代７３・４％、大学以上学歴者６７・８％、与党系の大統合民主新党８８．４％に賛成が多かった。反対は５０代以上２９・３％、野党ハンナラ党の支持者３２％で相対的に多かった。
明らかに盧大統領に追い風が吹き始めている。退任は来年２月だが、その前、年末の大統領選に何らかの影響力を発揮したいところだ。
ＫＢＳ調査では、与野党有力候補の支持率は野党ハンナラ党の李明博（イ・ミョンバク）前ソウル市長が８月調査より１・３増の５２・２％に対して、与党系の大統合民主新党の鄭東泳（チョン・ドンヨン）元統一相は４・５ポイントアップしたものの、７・８％に過ぎない。
しかし、それは盧大統領には想定内であったろう。
鄭元統一相はかつては意中の候補の一人であったが、ウリ党を脱党してからは距離を置いているからだ。かつての最大与党ウリ党は内紛で消滅し、その後も与党系は大統合民主新党と民主党に分裂し、それぞれ統一候補を選ぶ予備選を実施しているが、不毛の対立を繰り返し、国民の失望を買っている。
野党候補に勝つには、新たな統一候補が必要な状況だ。
今や李前ソウル市長の支持率５２・２％をしのぐのは、盧大統領の支持率５３・７％しかいない。
二選禁止規定により盧大統領は出馬できないが、自己への支持率を票に結びつけることはできる。
大統領選に影響力を行使できるもう一人の大物が、全羅南北道で今でも圧倒的な支持を誇る金大中前大統領だ。二人が組めば大統領選の帰趨を決めると、与党圏内で期待感が高まっている。
それとともに浮上しつつあるのが第三の与党統一候補であり、金大中前大統領と盧大統領との間にはすでに一定の了解が出来ているとの情報もある。
韓国大統領選はそれ自体がドラマであり、公示一ヶ月前後して新たな風が吹く。
盧大統領としては、南北首相会談、副首相会談、国防相会談を重ね、対外的には米中を手玉に取って３か国首脳会談もしくは４か国首脳会談を済州島に招請し、０７年南北頂上宣言を具体的な成果に結びつけてさらに国民の支持を取り付け、その継承者として第三の与党統一候補につなげていきたいところであろう。
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