2007.03.17 Saturday
極上のワイン
極上のワイン
仕事の話でその日は午後から都内で打ち合わせだ。 折角都内まで出たのだから、難しい話はさっさと済ませ、 たまには一人都内のレストランを物色するのも悪くは無い。 思いのほか話はすぐ終わり、いよいよ久々の食べ歩きだ。 すでに頭の中ではシャンパンの泡が私を魅了していた。 ところが帰り際先方の方から呼び止められた。 シェフ、この後の予定はどうなんですか？ ええ、この後ちよっと大切な用事があるので帰りますよ。 (酒を飲むことだが) そうですか、実は是非お連れしたいレストランが近くに あるのですが、どうですかね？あまり時間はとらせないですが、 いやーちょっとシャンパンが‥というか‥喉が渇いちゃって、 ちょこっとだけですが飲んでもいいならお供しますが‥ あぁ、シャンパンでもなんでもご馳走しますよ、そのかわり お願いがあるのですが、実はあるワインを鑑定してほしいの ですよ。勿論ギャラは支払いますよ、そのレストランの代金 持ちますから、お願いしますよ。 そこまで言われちゃ断るわけいかないですね、 今日は飲みますからね覚悟してくださいよ！ そこは隠れ家というのにふさわしい少し古びた小さなレストラン。 まずはグラスシャンパン！かんぱーい！って‥ん‥ あれ、これなんてシャンパンだ？飲んだことないな そうなんですよ、シェフ、この店のオーナーが知り合いなんですが かなりのワインコレクターで何十年もかかってそろえたらしく 品揃えも半端じゃないんですよ、このシャンパンもおそらく 日本では取り扱ってるとこないらしいですよ。 今日のお願いというのはある赤ワインを飲んでもらって そのワインが本当に価値あるものかシェフに見てもらいたいのですよ。 はぁーでしたら銘柄言ってもらえば大体わかりますよ、もし僕がしらなくても 電話一本ですぐ調べられますが‥ いや是非シェフにブラインドでテイスティングしてもらいたいのですよ。 はぁー、ひょっとして僕の事試してます？試されるのって好きじゃないんですよ。 いやいや、試すとかじゃなくて、もしそのワインをシェフが飲んで本当に最高だと 思うなら、是非今度はそのワインに合わせて料理を作ってもらいたいのですよ。 私が今最高にはまってるワインなのですがシェフがあまり気に入らなければ 私の味覚もたいしたこと無いなってことですから。 いや、ワインでも料理でも人それぞれ好みがありますからねー まぁいいですよ、美味しいシャンパンご馳走になったし‥ じゃあとりあえずこのシャンパンボトルでもらってもいいすか？ いいですよ！ ついでにこの三陸産あわびのカルパッチョキャビアとウニ添え という恐ろしい前菜頼んでいいすか？ もちろんいいです。 じゃあこのキャビアと半熟卵ってやつにオプションでフレッシュトリュフ たっぷり、てなんかとてつもない金額の料理頼んでいいすか！ どどうぞ‥ギャラですから‥好きなの頼んで下さい。 よし！おまかせあれ！どぉーんと来いって感じっすよ！ ここぞとばかり、シャンパン２本に高級白２本でアワビ トリュフ、ウニ、キャビア他多数！ いゃー、いいすね！サイコー！ シェフ‥そろそろ問題のワインのんでみてくださいよ‥ あっはいはい！すみません、どれすか 火星人の頭くらいあるどでかいブルゴーニュ型のグラスに いれてきたその赤ワインはうっすらレンガ色。 照明があまりに暗く色がはっきりしないが、年代ものか？ ブルゴーニュ型のグラスに入れてきたってことはブルゴーニュ じゃん。 まず香りを‥‥ん、 んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん！ なんじゃこりゃ！す ご す ぎ る。 これはブルゴーニュじゃない、ボルドーだ、しかも二十年以上は 熟成している、なのにまだ力強い、なのに繊細だ。 どうです？シェフご存知ですかこのワイン。 ちょっと待ってください今頭の中の引き出しを整理してますから。 この感覚‥なんだ、確かに記憶にあるぞ、んんんんん年代物 だな、んんんんんん絶対二十年いや三十年は経っている。 間をとって二十五年か、なんちって。 もしや、あれれれれれ！ わかりました！こここここれもしかして ぺ と り ゅ す！！！！ ペトリュス年代は1980年くらいじゃないすか！ おおお！さすがシェフビンゴ！ さすがですねー当たりです。 ま じ す か ！ 何年ぶりだぺとりゅす！あれ‥ でも1980て生産してたのか？ ええなんでもここのオーナーが当時現地で買ったらしいですよ。 そうですか、すばらしいですよこのワイン。ここのところはっきり言って もうフランスワインにはあきらめていたのですが、何十年ぶりに 感動しましたよ。 いや、しかし凄いですねシェフ、よくわかりましたね。 僕は、料理でもワインでも感動する様な物と 出会ったときは そのロケーション全てを記憶すんですよ、いつ、誰と、どんな場所で とか、それが一枚の写真というか、絵のようなものになって頭の中の 引き出しに整理される感覚なんです。ワインなんてあとは数式みたいなもんで 色とか熟成香とかを基準のワインから割り出してはじき出すんですよね。 もっとも感動するようなものに出会ったら理屈ではなく瞬間的にその場面が フラッシュバックするような感じなんですよ。 ほーそんなもんですか、ところでこのワインに合わせて料理を今度作ってもらえませんかね？ もちろん！是非。ただ高いですぞ！一皿でこのワインと同じ金額いただきますぞ。 えっ！そんなに！ 当然です。このワインに負けない感動をあたえる一皿ですから。安いもんですははははは わかりましたよ、その時はお願いしますね。心して食べますよ！ どーんと来いっす！ はぁーっ美味すぎるぞいこのワイン！ |
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