北へ��
夜はちょっと豪華に、渓谷の高級温泉ホテルに宿泊した。
地元に住む親戚と合流し夜はちょっとした宴会になった。
大型の温泉ホテルと言うこともあって料理は期待して
いなかったのであるが、これが、なかなか美味しかった。
旅行の時は必ず、シェフトラベルセットを携帯して行く。
グラス類(ワイン、シャンパン、ジョッキ等)とソムリエナイフ、
シルバー類一式、まな板、包丁類、塩、オイルなどの最低限
の調味料。
勿論、シャンパン、白、赤ワイン数本とウィスキーなどの
酒類も。
旅館やホテルの食事は所によって食べるに耐えられない
代物が出る時があるので、そんな時は現地で食材調達して
自分でつくる。
だが今回は食事もなかなかというもので、小宴会も盛り上がり、
いざ二次会へ！
シェフ、このホテルワインバーがあるみたいですよ、ちよっと
行ってみませんか？
あー、でも観光ホテルのワインバーじゃ高いだけで、しょっぱい
んじゃないの。
でも、せっかくだから、ちょっとのぞいてみましょうよ、駄目だったら
グラスワイン一杯で出てくればいいじゃないですか。
まぁそうだな、とりあえず、手持ちのワインもなくなったし、
軽く行ってみるか！(この時点ですでに五本のワインをあけていた。)
豪華な木目調のグランドピアノがなんとも目を引き
カウンターメインにシックなソファー席、奥にはなんと、蔵を改装した
個室まである。期待とは裏腹にとてもセンスのよいワインバーであった。
シェフ、なに頼みます？グラスワインそんな種類ないすねー
どれどれ、ちょっとメニュー見せてちょ！
お！おお、タケダのスパークリングあるじゃん、！
もぅ10年ぶりだよ、こんなところで出会えるなんて！よし、これボトルで
たのもう。
えっ、あんなに飲んだのにまたシャンパンからですか？しかもボトル！
早速注文すると、支配人なのか美人のソムリエールが挨拶してきた。
シャトータケダ後存知なんですか？かなり、ワインお詳しいのですね。
(シェフ) えぇ、まぁ、ちょっとワインオタクてやつですかねぇ。
(カミ) はいっプロですから！
おおまぇ …波風たてるなお…
プロの方なんですね、申し訳御座いません。ところでこちらのワイン
セカンドなんですょ、今タケダさんところも二代目がついでるらしくて
セカンドラベルも生産してるんで、値段も抑えて、だいぶリーズナブルに
なりましたね、飲み口もよいですよ。
えっ！セカンドなんて作ってるの！じゃあ普通のタケダは？
はいっ、当店でも、一本しか在庫がないんですよ、残念ながら。
よしっ、せっかくだから両方頂戴よ、これも何かの縁だから
記念に両方飲むよ。
シェフ、シャンパンボトルで二本も飲むんですか！
おぅ、そうだお！凄く良いワインだ、カミも飲んで味記憶しておけ。
唯一世界に誇れる日本産スパークリングワインだ。
昔アムールをやっているころシャトータケダという生産者に会いに
わざわざ山形まで行ったっけ、武田さんはキュウリに味噌つけて
飲むと美味いと言っていたな。
懐かしい味がした、セカンドも若干ライトだがガス圧も十分でなかなか。
無理に注文して出してもらったモロキュウもなかなかの相性で楽しかった。
お酒お強いのですね、次のシャンパンお注ぎいたしましょうか？
(シェフ) はい、お願いします。
(カミっちょ) いや！結構。僕がやります。プロですから！
お、おまぇ…気もいから…。おねぇさん注いでくれるってのに。
いや、プロですから、僕がやります。
そ、そうか、じゃあ頼むよ…。
まぁ、温泉もよかったし、食事も良かったし、ワインバーもソムリエールの
お姉さんも美人だし、楽しいな！よしっ、ご機嫌になってきたお、！
カミっちょまだワイン飲むか？好きなの頼め！
はい、次はまずマルゴー、行ってラトゥールも飲みたいですね。
おおおおおお、まままるごー、らとぅーる…こ、これ、セカンドとはいえ…
おっおし、どんと来いよ、せっ折角だ飲むぞ、かかかかカミ、飲むぞ！
いいんだな、本当にいいんだな！
はいっ、ご馳走様です。
でも、なんだな、カミっちょ景色もいいし、ワインも美味いし最高だな。
はいっ、でもシェフ、なんか奥の個室のカラオケうるさくないですか、
気分壊れますよね。
すいません、あのカラオケの音なんとかならないですかね、
申し訳御座いません。通用口の扉防音なんですが、多少音漏れ
してしまうんで、折角のムード台無しですよね。本当すみません。
あぁいいよ、ムードっても男同士だし、温泉だからしょうがないよね、
と、そこえ、浴衣のはだけた、中年親父一向が酔っ払って注文
してきた。おぅ、ねぇチャンなんかつまみ持ってきてくれよ。
あっちにもこっちにも気を使って誤る美人ソムリエール。
本当に日本の酔っ払い親父は最悪だ。特に集団になると
さらに酷い。
まったく、嫌ですね、日本の男は、しかも酔っ払いおやじは！
ところであのグランドピアノ音出るでしょ？
はいっ、結構いいやつらしいのですが、誰も弾けないんで
オブジェ になってるんですよ、勿体無い話ですけど。
よしっオラッチが日本男児としてダンディーな酔っ払いおやじ
の姿を見せてやるっちょ！まだおやじじゃないけどな！
久し振りのグランドピアノに座る。
あれ、なんだ、この感覚…目が回るような、体が金縛りにあうような…
鍵盤が重く硬く感じる 。
自分の意思とは違く、指が滑るように動き出す。
なんだ…なんか恐怖を感じる。
だが、心地よい。音が綺麗だ気持ちも良い。
どれくらい弾いたかわからないが、凄く綺麗な感覚が残った。
ふと見ると浴衣のはだけたよっぱらいおやじも含め
みんなが注目していた。
すみません、勝手なことして、ちょっと酔ったかな。
凄いですね、以前ピアニストにたのんで弾いてもらったとき
なんか、扱いずらいし気味の悪いピアノだって言われて、
それから誰も弾かなくなったんですよ。
凄い綺麗な音でした、みんな見入ってましたよ。
いや、お恥ずかしい、でもあのピアノなんかありますね、
僕、そういうのよくわかるんですよ、ていうか、よく、
巡り合うんですよね、ちゃんと手入れしてやってください。
まぁ最後にダンディーに閉めたことだし、カミっちょ帰るか。
いゃ、向かいの居酒屋まだやってるみたいすよ、行きましょう！
まっまだ飲むのかよ、俺の金でおおお！