シェフのひとりごと

日記とレシピ
北へ
北へ

いまいましい夏の思い出は心の闇に消え
秋風と共に平穏な生活が少しずつ訪れた。

という事は一ミリもなく、相変わらずの多忙。

私がフレンチのシェフになってから、
季節の中でも特に秋という時期を大切にしてきた。
やはり冬、ノエル(クリスマス)が一年の作品の
集大成の発表の場と考えているわけで、
その一年のすべてがノエルにかかっていると
いっても良いくらい。

その前の秋というのは気温もブルゴーニュの
地下カーブの温度に近く、ワインを飲むに最適の
気候。
自然の恵みも豊富で、料理も落ち着いて楽しめる
季節。
草木や風もどこか切なく感じ、なぜか日常の生活も
センチでアーティスティックなようた゜。

そんな季節は心を落ち着かせ、感性の癒しと
蓄えをするのがいい。
そして冬のノエルにボルテージをもっていくわけだ。

今の時間におわれる生活じゃ、せっかくの秋を
楽しめない。
かといって、どうにもならない。どうしよう…

よし、一人でがんばった御褒美に連休とろう!
そして、北へ行こう。

はじめは二日の連休の予定でいたが、
メルマガでお知らせしたときは、なぜか
一週間の連休と書いてしまった。

む無意識って怖い…

と、言うことで!北へ行ってきた。

最初は一人で山に行き、熊と戦ってやっつけて
ニュースにでて一躍有名人になろうと思ったが、

シェフのフライセット

うずら亭の親方も行きたいというので温泉にした。
宮城県に知人がいるので現地で落ち合い、
親方のあいてをしてもらい、私はひとり渓流釣り
でもと思っていたのである。

東北自動車道をレッツゴー!親方が後部座席。
私が助手席、運転席は?なんとカミ!
カミッチョ、ナイス!ついてきたのか、旅費は
俺もちか…

長旅でぐったりしたが渓流についてやる気まんまん!

久しぶりのフライフィッシングで楽しくて仕方がない。

あー早くフライぶんぶんふりまわしてー!
魚全部釣ってやるー!

カミよ絶対釣れないぞ

カミはお子ちゃま釣りせっとでルアーをなげている。

シェフーこれでいいんですよね、?
これで釣れますよね?

あー、それで釣れるよ、がんばりな。
(そんな仕掛けじゃ絶対釣れるわけねーよ)
と心に思い、釣り開始!

なんと言っても釣りで生活してた経験をもつ私。
プロを超えた天才釣り氏の私。ムフフフフ(=_=)

マス、山女、岩魚、完全制覇!楽しい!

フライはもう、七年ぶりか、腕は落ちてないな。

そういえば初めて渓流釣やったのもこのへんだな、
有名な滝つぼで釣したんだっけ、たしか一時間くらい
滝を降りていったな。

その滝の上流は古い神社があり観光になっている
と、言うことで、みんなで御参りすることになった。

シェフここはなんの神様が祭られてるんですか?

カミッチョ、ここは釣の神様だ、あと、料理の神様もいるぞ、
だから、ちゃんと御参りしろ(うそ)

そうですか、じゃあ、

真剣なまなざしでお宮の前に立ち、何お祈るんだか
賽銭を投げるカミッチョ。
眼がこわいぞ…

それっ、ちゃりんちゃりん(賽銭の音)

見事に賽銭箱に入らず大爆笑のシェフ!

ううぉー神様に拒否された!

カミッチョ、それがお前の人生だ。。。。
何をお願いしてんだ


そしてお約束の絵馬。

シェフ、本当に料理の神様ですよ、調理人志願の絵馬がありますよ!

よし、おらっちも書き終わったぞい、そいつの下にしばってやろう。


………シェ、シェフ、ぼ僕はなんて言ったらいいのか………

吉田君、りっぱな調理師になれよ、なんならカイユに来い。
シェフの絵馬


そして滝つぼの近くで名物の豆腐を食べお茶でいっぷく。
ここ降りて釣したんだお

しかし、俺はあの滝つぼ降りて、真下で釣したのか…
やはり我ながら只者ではないな。


| chef | シェフの日記 | 22:14 | - | - |
試練
試練

さて悪夢は覚めず現実が始まった。

幸いにもうずら亭の親方は回復に向かい
一日に二時間くらいなら仕事が出来ると
言うことで、ランチは親方と二人でやることに
なった…やるのか(-_-;)

朝っぱらぱらからか、カイユに行き出来るだけの
仕込みをし、チャリでダッシュ 、うずら亭のランチの
仕込み、そしてランチでオーダーとって水出して
伝票つけて親方に冷蔵庫からの材料を受け取り
料理して、料理運んで、さらに水だして、食器下げて
会計して、たまにスマイルまでする。
そして戦争のようなランチタイムが終わると
スーパーダッシュでカイユに戻り仕込みが
始まる。結局オープンの時間に間に合ったことは
一度も無い。

カイユを手伝ってくれる人もいないわけではないが
まさか、こんな私事で迷惑かけるわけにもいかないし
バイトじゃ所詮バイト。やはり一人でやるしかないのだ。
逃げ道なし。

内心どきどきしながら、いらっしゃいませ、とダンディー
にお客様を向かえ。お客様三名様でらっしゃいますか、
私は一名です。なんてギャグなど言えず。

おしぼり出して、メニュー説明して、ワイン説明して、
食前酒出して、料理作って、ワインついで、料理出して、
洗物して、伝票つけて、フランス語のスペル間違えたりして、
料理作って、料理作って、料理作って、料理作って
料理作って、料理作って、料理作って、料理作って
い、いらっしゃいませーって言って
おしぼり出して、メニュー説明して、ワイン説明して、
食前酒出して、料理作って、ワインついで、料理出して、
洗物して、伝票つけて、フランス語のスペル間違えたりして、
料理作って、料理作って、料理作って、料理作って
料理作って、料理作って、料理作って、料理作って
かか会計して、ででで伝票つけわすれて…
ちよっとあせって、厨房でこけたりして、
たまに気を失ったりする毎日だ。

さすがに夜九時も過ぎると電池が切れ掛かり
10時ころにはトランス状態になる。

だがそんな私を心配して常連さんたちが
心から励ましてくれる。
本当にお客様あってのカイユだと感激してしまう、
の、だ、が、なぜか深夜にあつまる…

また、地元の奥様や商店街の奥様たちも
心配して、よく差し入れしてくれたりする。
はじめはドリンク剤など元気がでるもので
とても助かったが、なぜか、最近漬物やら
煮物、餃子、こないだは秋刀魚。手作りの
お菓子とか、しかも食べたらアドバイスして、
とか材料もってきて作り方教えて!なんて
方向が変わって来た。料理教室か…

まぁそれだけカイユは愛されているのだろうが…

毎日最低16時間は一度も座ることは無い。

やばい…もたない…でも生活かかってる…
どうする。店しめるか…
そんな自問自答のなか、だっ第三の眼が開いた。

そうかチャンスだ、新たな境地が見えた。
振り返れば俺はいつも、一人だった。
今までが甘えてたんだ、このチャンスを
乗り越えればさらにしぇふぱわーアップ!

よし、毎日メニューを変えよう!
世の中のフレンチシェフよ、真似できないだろう!
と、いうかしないか。

必ず日々進歩するはず、日々さらに料理は美味しくなる
はずだ。理論上は。

集中力をさらに点に絞る。
ベースになるフォン(出汁)の作り方からさらに
手をかける。さらに仕込みの速度を倍にすれば
今まで以上のものが出来る。

はははなんだ、理屈じゃ、簡単だ
はははははは\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?

しかし人間て不思議だ。
そんなこんなでもう二ヶ月が過ぎた。
やってやれた。多少サービスに行き届かない
ところはあるにせよ、本当の一人体制の料理、
一から完成までの全ての工程を一人で納得
行くまでかけた料理は今までとは違うものに
なってきた。もうある意味完成と思っていた
自分の実力はまだ未完成でありまだまだ
新しい感性が自分の中にあると思うと
武者震いまでしてきた。
さらにさらに美食を追求できる!
浅野の野菜と房総のカルパッチョ
スペシャリテ 牡蠣の冷製
白浜産 ブダイのナージュ


人間追い込まれると第三の眼を開くんだな!

今の修行の現状に感謝だな!

ん、誰に感謝だ?


とりあえず、隣の草履やの親父に感謝しておこう。



| chef | シェフの日記 | 22:04 | - | - |
事件!
事件!

マイッタ、いや本当にまいってしまった。
こんな事ってありえるのか…

まだ、梅雨まっさかり、近所の紫陽花が満開の頃、
十年来のお客様で子供から老人までを対象にした
学習塾をやっているカワイ先生からの紹介で
若い見習いコックがいるのだが職を面倒みてほしいと
相談された。

ちょうどその頃、弟子のカミもカイユでホールの仕事を
一年きっちりやり遂げたところ。
勿論カミはコックとして十年のキャリアをもち、とりあえずは
どこに出しても恥ずかしくはない実力はつけていた。

そろそろ一緒にキッチンに立って料理の仕事をやらせる時期。
そこで、カミと話あったところ、カイユでその見習いをホールと
して採用しようと決まった。
しかも、その人物は女性である。
ご存知のようにたった六坪という、フレンチレストランと
しては世界最小クラスの店で、しかも畳二枚分もない
キッチンでカミと男同士仕事をするのは、とても嫌だが
弟子思いのシェフとしては、嫌々承諾した。
というか、カミのプロファイリングにのった様だ。
まぁ職場に女性が入るのも、ある意味潤滑剤になる
だろう。

紹介者のカワイ先生というのが、これまたファンキーで
熱血なのだが、私は無条件で信頼をよせている人物。
その人の推薦なのだから私も、無責任に職を紹介するくらいなら
是非カイユで面倒見させていただきます。と言うことになった。

よし!これでカイユも三人体制。少しは楽になるな!




しかし…面接をかねて食事に来た彼女はあまりの
レベルの違いに自信喪失したらしく、申し訳ございません…
との事。

おそらくカミが影でいじめたのだろう。
と言うのはジョークだが、結局何も変わらないカイユ。

その後も何人かの人を面接したが即戦力にはなりえず
結局何も変わらないカイユ。

弟子のカミもそろそろコックの人生で転換期を迎える
年頃に差し掛かっている。今このときを大切に過ごさなければ
料理人としての力量が決まってしまう。

勿論仕込みはカミと二人でやっているが結局は
カミはホール兼コックだ。

そう、カミにとって今料理に専念できる場所が必要である。

私にとっても週三回はメニューを変えてるわけだから
いくらカイユが小さい店だからといって、一人というのは
キツイ。やはりカイユ三人体制をつくらねば…


そんななか、うずら亭の親方が体調を崩して
しばらく静養することになってしまった。
弟子のアリと相談の結果夜の営業は仕方が無くしばらく
やめることにして、ランチだけはやろうと言うことになった。

私とアリで…

結局私は朝っぱらぱらから、うずら亭ランチをやって
きりのよい所でダッシュでカイユの仕込みに追われる
日々が続いた。

体と精神が疲れる日々が一月ほど続いた頃
ふと、考えるとカミにとってはなにも変わらない
状況。

これはマズイ、カミにとって今が大切なとき、
確かにカイユにとってカミの存在は大切だが…

苦渋の判断の結果、カミを最後の仕上げとして
またもや修行に出す事になった。
カミにとってはまたもや辛い日々になるだろうが
必ずプラスになると言うことで、というより
師匠の言葉は絶対なので北の方にすっとんで
行った。

後日北の方のオーベルジュ で働いてる
カミは余裕すら見せていたので、もうすでに
頭角を現したようだ。

まずは良かった…もう、ひとまわり大きくなったら
戻そう。そん時はスーシェフだ。



さてさて、アリと始まったカイユ、うずら亭のランチ
の後スーパーダッシュでカイユに戻り必死に仕込み…

アリはうずら亭の深夜営業がなくなり、念願かなった
カイユという事で、いつに無くハイテンションの日々。

どうやら知人にはソムリエの資格までとると豪語している。
全くたいしたアリである。

そんな激務の中、アリが近所のデパートの食堂に
横綱ラーメンという巨大な物体があるので食べに
行く、いや、挑戦したいといってきた。

せっかくのご招待なので嫌々挑戦!

量よりあまりの質の悪さに私は即ギブ、
完全制覇のアリ!
良かったね、アリ君、願いがかなって、
さぁ早く帰って店の準備しよ、

すみません、シェフ、なんか体がしびれるんですが、

はっ?食あたり?そんなわけないだろ、俺平気だよ、

すみませんシェフ、平気っす。

まぁ、平気だと思うけど気になるからちよっと病院行ってこいよ、

まるで何事もなかったような顔をして、病院から戻ったアリ。

どうだった?平気か?

はい、なんでもないそうです。なんか勘違いだったみたいです。

勘違いって?体のシビレはどうした?

はいっ?体のシビレ?自分そんな事いいました?

はっ??何、お前病院になにしにいったんだよ。

ちよっと熱あったんですかねー。はははー。

はっ?まっまーいーや、早く店あけるぞ。

その日の夜、店の片付けをしている時、アリが
相談したいことがあると、言ってきた。

どうした?ソムリエ試験の事か?

いや、違うんです、実はここの所自転車に乗ってると、
よく車にはねられるんですよ、

はっ!車に!お前平気なの。

はい、この二週間で三回もはねられたんで…

たいした事はないらしいが、脛にはたしかに
痣がいくつかある。特に事件性はないのだが
警察にも言っているらしい。

だから一応魔よけの塩をもってるんですが、
あまり効き目ないみたいで…

なんじゃそりゃ!そんな塩どどどこで、
効き目なんかねーよ、捨てちまえそんな塩。

そうですよね…

そ、そうだこのアリという男、心に病をもっていたんだ…
でもこの何年出てなかったのに。

それから数日後お客様の切れの良いところで早じまい
して焼肉でも食べに行こうということになった。

アリはいつになくハイテンションで焼肉を食べている。
最近はパスタにはまっているらしく色々質問してきた。
料理人同士のよくある会話がつづき、さて、帰るか。

アリ君、明日のうずら亭のランチさっきカイユで仕込んだから
俺が朝、持っていくよ。

いや、シェフ、自分が帰りにうずら亭に持っていきます。
ちよっとランチの在庫確認したいんで。

そう、じゃ頼むよ。

これが最後の会話だった。

翌朝うずら亭に行くとアリの姿は無い。
と、いうより、仕込んだ料理はちゃんと冷蔵庫に入ってる。
そして、在庫と朝買う予定のメモ書きまで置いてある。
アリの荷物も上着も財布さえ置いてある。
 
あれっ、買い物でも行ったか?財布忘れてるよ、まったく
しょっちゅうこんな事やってんなアリは…

しかし待てど暮らせどアリは来ない。
電話も留守電になってしまう。
結局夕方になっても戻らない、カイユも私一人では出来ないし
しかし、何やってんだ…

もしや…持病の心の病。

九州の田舎から出て単身一人暮らしのアリのアパートへ行った。
偶然となりの住人が出てきて、ここのところアリは家には
帰ってないという。
すぐその足で警察にも行ったが全くもって事件性はないらしい。

事故、宗教、拉致、いろんな事が頭をよぎった。
ただ仕事がいやでバックレならまだ仕方がないが、
あまりに理解できない。いくら心の病があったとしても。

それから毎日昼夜を問わず聞き込み捜査をした。
そして私達のしらないもう一人のアリが出るわでるわ。

あっちゃこっちゃで経歴偽って、問題をおこしていやがった。
そして一、二年周期で完全リセットでドロン。

知人の精神化の先生に聞いたところそういう人は
いるらしい。まさにそれだ。

やられた。

たとえ心の病気をもっていたにしても
周りをまきこんで迷惑かけるのはゆるせない。
しかも時間をかけて人をだますのはありえない。
それが病気だから、といってもゆるされる事ではない。

ありえない。

が、全て含めて今の現状は私が責任とるしかない。
仕方がない、浅はかな私が悪いのであろう。
もう、罪を責める気持ちは無い。仕方がないのだから
願うならば、二度と同じ被害者は出さないでくれよ。

ただ絶対に許せないことがある。
奴は自分の包丁ですら全て置いていった。
初めて奴と会った店のとき、頼まれて
仕方なしに浅草まで包丁を選びに行った。
しかもその包丁は全く手入れをせずボロボロで
あった。



全く私の人生の中で最大に情けない話だ。
はぁーーーーーーーーー
明日からどぼじよ………\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?





| chef | シェフの日記 | 21:43 | - | - |
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< October 2006 >>

このページの先頭へ