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高齢者医療 根本から制度見直しを '07/10/11

 来春予定されている高齢者の医療費負担増の凍結が与党内でほぼ固まった。七十〜七十四歳の窓口負担の二割への引き上げ(現行一割)と、会社員の扶養家族になっている七十五歳以上からの新たな保険料徴収は、先送りされることになりそうだ。

 先の自民党総裁選で、福田康夫首相は「お年寄りに安心を」と公約に掲げていた。凍結はその具体策の一つである。老年者控除の廃止、納税額で決まる介護保険の保険料のアップなど、急増している高齢者負担を緩和するのが目的だ。ほっとしている高齢者もいるかもしれない。

 検討を進めている与党プロジェクトチームは、九日の会合で、凍結期間を半年とするか、一年とするかを話し合った。法改正が必要となる一年以上は、国会審議などの日程上難しいため、見送った形だ。先送りされても、わずかな期間にすぎない。

 凍結に伴う財源を、どこから出すか決まっていないのも気に掛かる。厚労省の試算によると、七十〜七十四歳の窓口負担を一割のままにした場合、国は年間約千三百億円の財源確保が必要となる。七十五歳以上の新たな徴収分も、約四百億円を国が肩代わりすることになるという。

 舛添要一厚生労働相は補正予算を念頭に置いているようだ。ただ、財政健全化へ向けて、歳出削減を進めてきた政府の方針には反することになる。国民の目を意識した、場当たり的なばらまきといった批判もある。

 もともと、高齢者の医療費負担引き上げを柱とする医療制度改革は、高齢者医療費の増加で苦しくなる保険財政の安定化と、現役世代との負担のバランスを図るのが狙いだった。七十歳以上で現役並み所得のある世帯は、昨秋先行して、三割負担となっている。

 しかし、世代間の負担公平というだけで、高齢者医療をとらえていいのだろうか。

 二〇〇七年版高齢社会白書によれば、高齢者間の所得格差は現役世代間より大きいという。年金などで、ぎりぎりの生活をする世帯もある。そうした人たちにとって、窓口負担の引き上げは死活問題である。

 「凍結」を契機に、制度改革のあり方自体を抜本的に見直すべきであろう。給付と負担をどうするか。小手先の対応ではなく、長期的な視点から議論を深めていく必要がある。




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