昆虫や植物などに存在する天然の糖で、細胞を乾燥から守る効果がある「トレハロース」を細胞内に取り込ませる働きがある遺伝子を、農業生物資源研究所(茨城県つくば市)が突き止めた。細胞内のトレハロースの量を自由に制御することを可能にする成果で、長持ちする切り花や乾燥に強い作物づくりなどへの応用が期待される。
アフリカの半乾燥地帯に生息するネムリユスリカの幼虫は、カラカラに乾燥しても、水で戻すと1時間以内に復活する。乾燥すると細胞内にトレハロースが爆発的に増え、たんぱく質などの成分や細胞膜を保護するためだ。しかし、細胞に人為的にトレハロースを取り込ませることはできなかった。
同研究所はネムリユスリカを使い、トレハロースが増える時に特定のたんぱく質を活発に作り出す遺伝子を確認。この遺伝子をアフリカツメガエルの卵母細胞に注入したところ、細胞膜部分に特定のたんぱく質を作り出し、そのたんぱく質がトレハロースを細胞内に取り込んでいることが判明した。この遺伝子がネムリユスリカだけでなく、トレハロースを作らない哺乳(ほにゅう)類など他の生物でも働くことも分かった。
同研究所の黄川田隆洋主任研究員は「トレハロースは、骨粗しょう症の予防などにも効果があるとされ、農業分野のほか医療など産業分野での貢献も期待できる」と話している。【石塚孝志】
毎日新聞 2007年10月8日 21時38分