減らせぬ首長退職金 事務組合一律算定 公約実現できず2007年10月09日06時18分 財政難の中でいざ首長の退職金を削減しようにも、ほかの市町村と組織した「一部事務組合」に事務をまかせているため、思うように実現できない自治体が相次いでいる。給与月額を元に組合で一律に算定式が決まっており、自分たちで額を勝手に決められないからだ。代替策としてボーナスカットでのぞむところもある。 高知県では、35市町村のうち26市町村が「高知県市町村総合事務組合」で退職金事務を実施。市町村は首長を含む職員の給与月額の2、3割程度を組合に毎月納付し、組合は組合条例で定めた算定式にのっとって退職金を払う。首長の算定式は「退職月の給与月額×100分の500×年数」となる。 同県津野町の場合、05年に初当選した明神健夫町長は任期4年で1348万円。これに対し、町議から「町財政が厳しい中で高すぎる」との声が続出した。町議会は9月14日、26市町村の特別職の退職金について50%以上の削減を求める意見書を全会一致で採択し、事務組合に出した。 しかし、組合の議員12人はほかの市町村の首長と議長が務める。組合関係者からは意見書通りに削減される可能性は低いとの声が出ている。 総務省市町村課などによると、何らかの退職金事務をおこなう一部事務組合に加入する自治体は06年7月時点で、全1820市町村のうち約8割の1510になる。複数の自治体が財源を共有することで、退職金額が急増した時などのリスクを分散するのが狙いで、組合は昭和20年代から全国で相次いで設立された。退職金額の算定式は、退職月の給与や、給与月額の平均をもとに組合条例で決められている。 だが、財政難や、退職金削減を選挙公約に掲げた首長の誕生で、ここ数年、制度への疑問の声が目立ち始めた。 愛知県一色町では06年1月、退職金の7割削減を唱える都築譲氏が当選。しかし、同町の加入する「愛知県市町村職員退職手当組合」の条例がネックとなるため、本来の給与月額66万6000円とは別に、退職金算定用の給与月額を26万4000円と定め、7割減の実現をはかった。組合への負担金はこの給与月額に基づいて組合に積み立てた。 組合は本来の給与に基づく負担金を払うべきだと主張し、平行線のままだ。都築町長は「税金から支出している以上、退職金を決めるのは町民であるべきだ」と話す。 工夫の末、退職金カットにこぎつけた自治体もある。「埼玉県市町村職員退職手当組合」に加入する春日部市は、石川良三市長が自身の選挙公約で「退職金2割削減」を掲げた。退職金の算定基準となる退職月の給料月額を2割削減する規定を06年3月に市長の給与条例に盛り込み、退職金を削減できるようにした。 一方、06年10月の市長選で「退職金半額」の公約を掲げた大塩民生氏が当選した兵庫県川西市も「県市町村職員退職手当組合」の条例が壁になった。このため市長は07年度からの期末手当をカットすることにした。 PR情報この記事の関連情報社会
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