◎能登丼を名物に 「高岡コロッケ」に学びたい
食材から食器まで、徹底して能登にこだわるという「能登丼」のアイデアは、新たな地
域ブランドを生み出す面白い試みだ。能登の豊かな食材を、「丼」という庶民的な料理の共通項でくくる発想がいい。
ただ、全国で続々誕生している「ご当地グルメ」を定着させ、知名度を上げていくのは
、そう簡単なことではない。地元の味を「名物」に育て上げるノウハウを学ぶなら、隣県に格好のお手本がある。官民一体で「高岡コロッケ」を売り込んでいる高岡コロッケ実行委員会である。民間の知恵を活用して大掛かりな広報戦略を練り上げ、情報誌の発行やマップ製作、ホームページの創設などを次から次へと展開していく手法は大いに参考になるだろう。
高岡コロッケの良さは、だれよりも高岡市民が興味を持ち、楽しんでいる点にある。単
なる観光客誘致のための話題づくりだったら、これほどの成功を収めることはなかっただろう。能登丼についても、観光客向けと考えず、自分たちの食生活を見直し、新しい郷土料理をつくるというような意識で取り組んでほしい。
県と能登の二市二町でつくる奥能登ウエルカムプロジェクト推進協議会によれば、能登
丼の定義は、▽奥能登産のコシヒカリ、水、地物の魚介類、野菜を使う▽能登産の器、はしを使う。使ったはしはプレゼントする▽健康、長寿、ヘルシーにこだわる、などであるという。十二月から二市二町の宿泊・飲食店に共通のブランドマークを付けて、提供するというが、この程度の取り組みでは、冬の観光キャンペーンの域を出ないのではないか。能登丼を賞味するのはもっぱら観光客という発想であり、「食べる人」と「つくる人」がはっきりと分かれてしまうような料理ではつまらない。
高岡コロッケにせよ、讃岐うどんにせよ、ご当地グルメの代表格は地域の人々に愛され
、支持されているものばかりだ。地元の祭りで、一日一万個以上を売り上げた実績が高岡コロッケを全国区に押し上げる原動力になったように、外よりも、まず内に目を向ける必要がある。
民間が旗振り役となり、高岡コロッケの名は連日のように地元紙に登場している。この
話題づくりのうまさもぜひ参考にしたい。
◎飲酒運転追放 取り締まりを緩められぬ
氷見市の職員が観光宣伝で出張した岐阜県で公用車を運転中、酒気帯び運転の現行犯で
逮捕されたことに続き、今度は七尾市の課長が酒気帯び運転の疑いで任意で調べられていたことが発覚した。
飲酒運転の罰則が強化され、対象も拡大された改正道交法が施行されたが、なお飲酒運
転が絶えない事実から、飲酒運転を非として自制する自覚が向上したとはいいがたいのではなかろうか。
飲酒運転をなくすには、取り締まりが最も有効であると思われる。だから飲んだら乗ら
ない、飲んだら乗せないといった心構えが向上するまでの間は取り締まりを緩められないといえる。
身近な経験からすると、このごろは「車の運転」を理由に挙げると、飲酒をすすめられ
ることがなくなったようだ。これはいい傾向だ。しかし、こうなると、本人の自制が唯一のブレーキということになる。
いわゆる「性善説」に立って、いきなり自制心をあてにするのは現実的でなかろう。や
はり当分は警察の取り締まりを強化し、飲酒運転をなくしていくのが効果的だ。
そもそも改正道交法は、全国的に飲酒運転による悲惨な事故が続いたから必要になった
のである。
いわれるように、アルコールは知覚、運動神経、記憶中枢、自己制御の働きをつかさど
る大脳の新皮質に作用するため、判断力が低下し、正確な動作ができなくなり、遠近感が鈍くなる。自己制御が鈍ることから速度を出しすぎたり、運転が上手になったように錯覚したりする。
いちいち事例を挙げるまでもなく、飲酒運転は運転者自らの運命を大きく変えることに
つながりかねないし、それ以上に、事故を起こすと、他人を奈落に突き落とすことにもなりかねないのである。
公務員の飲酒運転事故が相次いだことから、自治体は服務規律を厳格にし、処分を強化
した。それだけでなく、石川県内灘町などでは役場にアルコール検知器を備え付け、公務前日に飲酒した職員が公用車を運転する前に自主的に測定するなどで飲酒運転抑止に努めている。こうしたことも飲酒運転追放につながる。自治体に工夫を求めたい。