伊万里市と有田町の公立病院統合計画は、新病院の建設場所が「市町境界の有田町側」に決まったが、今度は建設・運営費での両市町の負担割合をどうするかという課題が浮上している。財政の硬直度を示す経常収支比率が県内最悪の有田町と同ワースト2位の伊万里市とあって、新たな負担が膨らめば、財政健全化の成否をも左右しかねない。開業予定の2009年4月まで残された時間が少ない中、互いに負担を抑えたい両市町の厳しい交渉が予想される。 (伊万里支局・末広浩)

■財政深刻な両市町 厳しい交渉は必至 両議会「できるだけ少なく」

 ■基準複数

 新病院は、共に老朽化した伊万里市立市民病院(64床)と有田町立有田共立病院(165床)を統合し、同町二ノ瀬に建てる。懸案の建設地は両市町が折り合う形で9月に決定した。

 新たな課題は、新病院の建設費(用地代含む)と施設運営費の負担割合をどうまとめるかだ。

 割合を決める基準には、(1)人口に比例させる「人口割」、(2)負担を同一とみる「平等割」、(3)現在の両病院のベッド数に応じた「病床割」、(4)利用患者の人数や診療報酬点数で換算する「利用割」‐などがある。

 両市町はこうした基準を組み合わせ、建設費と運営費の負担割合を決める予定。既に両者間で内々の交渉が始まっているが、双方の主張には相当開きがあるという。

 ■ワースト

 交渉の難航を予想させる数字がある。県が発表した2006年度の県内市町決算によると、両市町の経常収支比率は有田町が102.8%、伊万里市が100.2%。同比率は75%以下が望ましいとされ、高いほど一般財源に余裕がないことを意味する。つまり新病院建設は、県内でも財政が厳しい自治体同士の共同事業となるのだ。

 このため、負担割合の行方には両市町議会も注目。9月議会の一般質問でも「200床を超える病院なら、建設だけで60‐70億円かかると思うが、負担はどうなるのか」(伊万里市議)「できるだけ(わが町の)財政負担のない方法で」(有田町議)と執行部は厳しい突き上げを受けた。

 伊万里市議の1人は「人口割一つをとっても単純計算なら、伊万里は有田の2.7倍。だが、市北部の市民の多くは今でも唐津市の病院に行っている。過剰な負担は許されない」と指摘する。

 ■別の鬼門

 加えて伊万里市にはもう一つ鬼門がある。統合対象である現市民病院の累積債務問題だ。

 新病院への統合は負債解消が前提となるが、市は9月議会で、返済すべき累積債務は約5億8600万円と公表。市民病院の不動産を売却できなければ、一般会計で負債の一部を肩代わりせざるを得なくなる恐れもあるという。

 開業予定まで1年半。負担割合が決まらなければ、新病院の運営に当たる一部事務組合の設立や用地買収はできない。両市町は10月中にも協議をまとめたい考えだが、双方の住民を納得させられる成案を見いだすのは容易ではなさそうだ。

=2007/10/11付 西日本新聞朝刊=