社説

文字サイズ変更
この記事を印刷
印刷

社説:対テロ支援 民主党も整理できていない

 衆院予算委員会で10日、野党側の質問が本格化した。民主党は党首経験者3人を立て、福田政権と対峙(たいじ)する姿勢を見せたが、肝心の新テロ特措法案をめぐっては踏み込んだ議論に発展しなかった。

 なぜか。インド洋における海上自衛隊の給油活動を全面否定し、アフガニスタン本土での部隊活動になら武力行使を伴っても参加できるという小沢一郎・民主党代表の主張が、同党のスタンスを混乱させ、政府への追及力を鈍らせているのではないかと考える。

 この日、民主党の菅直人代表代行は海自から間接給油を受けた米空母キティホークがイラク戦争の開戦前にペルシャ湾に入っていた点をただし、政府の情報開示が不十分だと批判した。

 岡田克也副代表は、アフガンでカルザイ政権が成立し、米国の自衛権行使とは言えなくなって以降の海上阻止行動がどんな取り決めで実施されているかを突いた。

 いずれも重要な論点ではあるが、政府が提出を予定している新法案にどんな問題点があり、民主党はどのような対テロ支援策が妥当と考えているかを聞くことはできなかった。安全保障の論客である前原誠司副代表は、この問題について質問すらしなかった。

 臨時国会の焦点であるのに、民主党が小沢氏の「地上部隊参加」論で揚げ足を取られるのを嫌い、深入りを避けたとの印象を与えたことは否めない。

 小沢氏は、現在の給油活動について「米国の自衛権行使に日本が参加することは集団的自衛権の行使であるから憲法違反」と断定するとともに、「国連の平和活動に参加することは、たとえ結果的に武力の行使を含むものであっても憲法に抵触しない」と主張している。そのうえでアフガンをめぐっては国連決議に基づく国際治安支援部隊(ISAF)に「参加したい」と月刊誌で表明した。

 日本は「国連中心主義」と「日米基軸」を外交原則に掲げながら、さまざまな場面で対米優先に偏りがちなことは事実だ。このため、この機会に安全保障の原則を再点検しようという小沢氏の問題意識は理解できる。

 しかし、多くの死者が出ているISAFにただちに自衛隊が参加するというのは論理の飛躍がある。小沢氏自身、国連中心主義と日米同盟は矛盾しないと述べているのに、給油はだめでISAFはいいというのは分かりにくい。

 高村正彦外相はこの日、自衛隊派遣の制約条件をただした岡田氏に「だから、そう簡単にISAFなんかに行けないんですよ」と切り返し、岡田氏はあえて反論しなかった。小沢論文への戸惑いを示す象徴的な場面だった。

 作戦開始から6年たっても終結の見通しが立たない給油活動を、政府はいつまで継続するつもりなのか。民主党はそれを追及し、他に効果的なテロ対策があるならば党内で問題点を整理し対案を示すべきである。そうしないと、国会での対テロ論議はどこまで行ってもかみ合わなくなる。

毎日新聞 2007年10月11日 0時08分

社説 アーカイブ一覧

ニュースセレクトトップ

  • 王監督、続投固まる
  • PS3値下げもWii優位変わらず
  • 黒谷友香が未来カー体験
  • 「あなたと合体したい」の謎
  • 再婚キンコン梶原に男児誕生
  • 松山ケンイチ、永作にぞっこん

エンターテインメントトップ

ライフスタイルトップ

 

おすすめ情報