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【ゆうゆうLife】医療 産科医不足に挑む(下)健診と分娩を分業 (2/2ページ)
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産科医不足でも、高い水準の産科医療が確保できると、オープンシステムは広がりを見せている。厚生労働省は7都県をモデル自治体に認定。中でも、浜松市は全国で最も運用が進んだ地域という。
聖隷浜松病院では昨年、主に地元の4開業医と連携し、オープンシステムで250件の分娩を扱った。同病院の年間分娩数の6分の1を占める。
利点は分娩のリスク軽減。総合病院で分娩が行われるため、「始まってみないと、何が起こるか分からないお産」に、万全の医療体制で臨める。早期に異常が見つかれば、かかりつけの産科開業医に病院で分娩を扱ってもらうことも可能だ。
浜松市に住む波多野綾さん(28)は7月上旬、長男の琳太郎ちゃんを出産した。妊娠が分かった昨年11月、開業医の健診で子宮口にポリープがあると分かった。オープンシステムで、市内の県西部医療センターで琳太郎ちゃんを帝王切開で取り上げてくれたのは、開業産科医だ。
「帝王切開と説明されて不安がよぎった」という波多野さんだが、「信頼する先生で、すぐにお任せする気になれた。事情を知らない他の先生では不安だったと思う。大病院での分娩というのも安心だった」。
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しかし、オープンシステムでは、予定が決まっている帝王切開以外は、かかりつけの産科医が分娩に立ち会えないケースが多い。そこに違和感を感じる妊婦も少なくない。
市内に住む竹田香織さん(31)は2児の母。最初の子はオープンシステムで産んだが、第2子は、健診と分娩を同じ医師に頼みたいと、クリニックで産んだ。
竹田さんは正常分娩だったため、オープンシステムでは病院の産科医が分娩を扱う。「初対面の人に処置されたのは、何となく嫌だった」と話す。オープンシステムの良さは理解している。「大病院での分娩は安心だし、開業医のケアも細やか。『何かあったらいつでも電話して』って」。それでも、違和感がまさったという。
加えて、オープンシステムでは、総合病院と開業医の信頼構築が欠かせない。しかし、「信頼構築は道半ば」という声も聞かれる。ある産科医は「オープンシステムはいわば分業体制。信頼構築には、分娩に対する責任と報酬、両面のバランスが必要だが、まだ手探りの状態」と指摘する。
聖隷浜松病院の鳥居副院長は「ハイリスクでも、病院に任せきりにしないで、きちんと責任を果たしてくれる開業医との連携を大事にしたい。それが結局、システムのメリットであるきめ細かな健診と分娩の安全性につながっていく」と話している。