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日本ヒップホップ史上、もっとも強靭なヒップホップ探求者のひとり、ZEEBRA。そして、彼の楽曲「Stop Playin' A Wall」のリミックスを手掛けたこともある関西発ダンスミュージック・オーケストラ、A Hundred Birdsのリーダー、DJ YOKU。自身の衝動を音楽に叩き込むふたりの感性が、いま交錯する。

日本ヒップホップ史上、もっとも強靭なヒップホップ探求者のひとり、ZEEBRA。そして、彼の楽曲「Stop Playin' A Wall」のリミックスを手掛けたこともある関西発ダンスミュージック・オーケストラ、A Hundred Birdsのリーダー、DJ YOKU。自身の衝動を音楽に叩き込むふたりの感性が、いま交錯する。
■ZEEBRAさんはヒップホップ、そしてYOKUさんはハウス。ふたりの地場は異なるわけですが、どういう接点があるのでしょうか? ZEEBRA 俺の楽曲をリミックスしていただいたんです。でも、お会いするのは今回が初めてで。ずっと、お礼を伝えたかったんですよ(笑)。 YOKU いやいや、こちらこそ依頼してくれて、うれしかったです。 ■その楽曲とは、先日発表されたZEEBRAさんのシングル「My People feat. 加藤ミリヤ」に収録された「Stop Playin' A Wall」ですよね。 ZEEBRA そう。以前からハウス・リミックスをどうしても作ってみたかったんですよ。それでスタッフからハウス・クリエイターの方々をいろいろ紹介してもらって。そのなかにAHBも作品も入っていたんです。彼らが作る音楽を聴いてみたら、「こういうサウンドもいいよね!」って思えて。すごく惹き込まれる感じがあったんですよね。 YOKU 僕らもお話をいただいたときは、ホントうれしかったですよ。だって、ZEEBRAさんはAHBと同様、クラブ・シーンで活動する方なのに、広い分野で名を馳せているじゃないですか。かっこいい音楽を作りながら、マスで活躍しているのがすごいなと。 ZEEBRA ありがとうございます(笑)。 YOKU 僕個人的にヒップホップも好きなんですよ。20年前ぐらいは大阪でヒップホップDJの方ともパーティーをやっていたんです。だから、ZEEBRAさんから声をかけていただいたのが、余計に感慨深いというか。 ■YOKUさんはZEEBRAさんの楽曲は、(リミックスを施す前は)聞いていましたか? YOKU 有名な曲は自然と耳に入ってきていましたよね。聴き込むという感覚ではないですが、いろいろな場所で流れてくるから 。 ■ZEEBRAさんはAHBのサウンドを聴いた際、どういった印象を持ちましたか? ZEEBRA じつは最初、ハウス・リミックスを考えたときは、AHBのサウンドとは少しかけ離れたものをイメージしていて。アーマンド・ヴァン・ヘルデンみたいな、ディスコやヒップホップの要素が混じっていて、かつちょっと攻撃的な音というか。でも、AHBのCDを聴いてみたら、すごくよかったんだよね。それで即決で、お願いして……。 ■音楽ありきで、AHBをセレクトしたのですね。 ZEEBRA うん。ただ、俺の音楽をいつも聴いてくれているリスナーに対して、あまり突飛なことをやりすぎてしまうのは自己満足でしかないと思っていて。でも、AHBの手法はヒップホップのファンも気に入ってくれそうなリズムだったり、サウンド観があるような感じを持ったんだよね。 ■なるほど。確かにおっしゃるとおり、ZEEBRAさんとYOKUさんの作る音楽には、ブラックミュージックの根柢にあるファンクネスみたいなものがあるように感じます。それがおふたりを繋いだ要因でもあるのかなと。 ZEEBRA そう、そこなんだよね! ハウスもヒップホップも同じようなヴァイブスが確かに流れている。 YOKU ヒップホップのトラックには、ハウス・クラシックスをネタとしてサンプリングすることも多いでしょ。ヒップホップとハウスは水と油ではなく、溶け合うから使われるんでしょうね。 ■クラブ・カルチャー黎明期などは、ヒップホップもハウスも一緒にミックスされていたことも、同様の感覚があったからだと思います。 ZEEBRA 俺もヒップホップのみを聴いてきたわけではないから、自然と多彩なサウンドを求めてしまう部分もあって。一時期はラテンやジャズにも傾倒していた。だから、俺にとっては、ハウスもヒップホップの延長線上にあるんだよね。加えて、生音のサウンドも大好きで。もともと自分が持っている音楽性と、昔から聴いてきたジャズやファンクなどは絶対にリンクしていると思う。 YOKU 今回リミックスとして収録されたのは、インストゥルメンタルのバージョンなんだけど、ホントはZEEBRAさんのパーティー・ラップをのせたヒップハウス・バージョンも作っていて。最終的にはインストのほうが収録されたわけだけど……、僕としてはラップをのせたヒップハウスが作れたのが、とても大きいことだった。歌ではなく、単語単語に音をのせていくという作業がすごく楽しくて。AHBでは表現できないようなリリックだったから、新たな感覚があったというか。 ZEEBRA いいですね、俺もラップ入りのハウス・トラックを作ってみたい! YOKU 絶対にいいものができますよ。 ZEEBRA それも本格的なものにいきたいっすね(笑)。ヒップホップ・トラックを、単純に(BPMを)早めてもおもしろくない。しっかりとしたハウス・トラックを作って、それに合わせたリリックを書いて、ラップをのせてみたいですね! YOKU うん、うん。単にBPMを上げてもダメだよね。やっぱホンモノのヒップハウスを作るなら、トラックもラップもそれに沿うものでないと。 ■じゃあ、AHBが奏でる生の音に、ZEEBRAさんがラップをのせるというのはいかがでしょうか? 個人的にはぜひ聴いてみたいのですが(笑)。 YOKU 僕ら自身もそれは聴いてみたい! あっ、そういえば、「Stop Playin' A Wall」をリミックスしたメンバーにはストリングス隊が4人いて、トップに岩谷という先導者がいるんですよ。大きなオーケストラでも演奏するし、数々の賞もとっている敏腕なんですけど、彼がZEEBRAさんのファンらしくて……。今回、ZEEBRAさんのリミックスというお話をいただいたときも、「絶対にやるから、他の仕事入れないで!」って言ってました(笑)。彼もリミックスではなく、本格的な共演を絶対にやりたがりますよ。まぁ、大騒ぎするでしょうけどね(笑)。 ZEEBRA いやいや、俺でよければ、絶対に参加したい! 日本に限らず、世界的にだと思うんだけど、15年前ぐらいはクラブ・ミュージック自体が発展途上で、すべてのジャンルからの影響を同等に吸収していた。でも、それぞれが確立されてくると、別物と考えられるようになってしまったんだけど、いまは少しずつ変わってきている感じがあって。時代も文化も巡って、もう一度、すべての音楽がひとつになるムーブメントが起きると思っているんだよね。俺もその動きの一翼になりたいというか、そういう新しくておもしろい音楽を作っていきたいんだよね。 YOKU おっしゃる通り、昔はハウスのDJといえば、6〜7時間プレイするのが当たり前だったでしょ。長い時間プレイすればするほど、音楽の幅もホント広くなるんですよ。ハウス、ヒップホップ、レゲエなんかの組み合わせでプレイする重鎮も多くて。でも、最近は2時間セットなんかが主流で、いろんな引き出しを見せることが難しいんですよね。 ■とはいえ、YOKUさんはハウスという分野のなかで、いろいろな要素を出そうとしているような。 YOKU 僕はかけたい曲があれば、かければいい、という姿勢なので(笑)。でも、そういうアティテュードのDJは増えているような気がするんですよね。その意味でも、クラブ・ミュージックはクロスオーバー化が進んで、昔のような時代の動きに戻っているのかもしれませんね。 ZEEBRA ラップも本来はそういうものだと思うんですよ。自分の感じたままのことを言葉にして、言いたいことを言うべきもの。以前、アフリカイスラムの社会で、MCがドラム&ベースにのせて語っている場面を見たことがあって。そのラップの入れ方は、俺たちがいわゆるパーティーでラップをしている雰囲気と似ていたんですよね。4つ打ちという音楽のなかで、遊ぶというか。そういえば、KEN-BOやKANGOがハウスのクラシックスをプレイしているときに、横でMCをしていたな〜、なんてことを思い出したり(笑)。 YOKU ビートだけのトラックで、ラップをするんですよね。 ZEEBRA そう、その場で思いついたリフレインを言って、その言葉を理解してほしいみたいな部分がある。 YOKU いいですね、サンプリング的な感覚というか。それも人力によるサンプリングだから、ヴァイブもさらに増していくんですよね。 ZEEBRA その場のノリで、普段なら想像もできないような言葉がうまれたりすることもあって。現場にはまだまだ可能性があるということですよね。 ■CDを通して、音楽を伝えることと、実際に現場で訴えることは、やはり違うと。 YOKU そうですね。AHBもまさに現場発進だったんですよ。SAL SOULを目指せ、という感じで、10年前から30人編成のオーケストラでやっているんですけど、初期はMCをつれて現場をまわったこともあったんですよ。楽曲の途中や、繋などで、ラップをしてもらっていた。それがいつのまにかなくなってしまったんだけど、あれはあれで楽しかったですね。ちなみに、ZEEBRAさんは生バンドでラップを奏でたことなんかは? ZEEBRA 俺は去年のツアーで、初めて生バンドを連れてまわったんですよ。その際のライブが自分としてもすごく良かったから、今年のツアーでもバンド体制でやって。 ■ZEEBRAさんのツアーが収録されたDVD『THE LIVE ANIMAL 06〜The New Begining〜』を拝見したのですが、生バンド・サウンドのせいか、ソウルやジャズ・シンガーのような抑揚を体感できました。 ZEEBRA やっぱり、自由性が高いんだよね。セッション感覚で、作り上げることができる。でも、バンドがいいから、DJとのセットはやらないってわけでは全然なくて、両方それぞれの魅力があるってことを実感しますね。いまのヒップホップがサンプリングもあるし、オリジナルで制作するパートもあるように、ライブも両方があってこそなのかな。 YOKU うん。いまはリアルタイムでサンプリングすることも可能だし、やれることの幅が広がっているんですよね。 ■ヒップホップもハウスも同等に、進化を続けていくという音楽だと。 ZEEBRA ヒップホップ、ハウスに限らず、いまある音楽はほとんど完成されている、っていう人がいるけど、全然そんなことはなくて。昔の音楽シーンみたいに、さまざまなジャンルがクロスオーバーすることも進化のひとつだと思うし、だから、おもしろいんだよね。 |
ZEEBRA●じぶら 95年、伝説のヒップホップ・グループ、KING GIDDRAのMCとしてデビュー。同グループ解散後、97年からはソロ活動を開始し、翌98年にファースト・アルバム『THE RHYME ANIMAL』を発表。クリエイティブなトラック群と、変幻自在なラップを贈り続け、日本ヒップホップを黎明期より牽引してきた。そしてこの度、待望のニュー・アルバムに先駆け、RIZEのボーカル、JESSEを招聘した「Not Your Boyfriend」をリリース。ヒップホップとロックのカリスマ同士が久々に接触し、大きな話題を集めている。 http://www.zeebra.jp/ JESSE(RIZE)との共作を完成 新アルバムへ向け、胎動開始 ZEEBRA 「Not, Your Boyffriend feat.JESSE(RIZE)」 PONY CANYON ¥1050(税込) バンドセットでフロアをロック 全国5大都市ツアーを収録したDVD ZEEBRA 『THE LIVE ANIMAL 06〜The New Begining〜』 PONY CANYON(DVD) ¥3780(税込) DJ YOKU(A Hundred Birds)●DJよく(あ・はんどれっど・ばーず) 9年、関西を中心にDJ活動を開始。その後、単身渡英。帰国後はよりソウルフルなサウンドを求め、96年、30人編成の生バンド、A Hundred Birds(AHB)を結成 する。00年にWAVE MUSICより「BATONGA」を発表以降、ファースト・アルバム『Fly From The Tree』(05年2月)やセカンド・アルバム『TO THE EdEN』(07年03月)なども好評を博すとともに、「フジロック」などにも出演。ライブ・バンドとしての実力も発揮している。まもなくカバー・アルバムが発売予定。 http://www.ahbproduction.com AHBの真骨頂でもある カヴァー曲をコンパイル A Hundred Birds 『Mynah』 FOR LIFE MUSIC ENTERTAINMENT/GUT ¥2600(税込) 11月7日発売 |