貯蓄

本年は定率減税は完全廃止されますし、いずれは消費税率の引き上げが現実のものとなりましょう。さきにここに記しました相続税の基礎控除の減額、株価評価の改正、相続税課税最低限の引き下げを行って相続税申告対象者を大幅に増やし、相続税収入を1.5兆円から3兆円にすることを目標とする改訂も俎上に登りそうです。高齢者をターゲットとした増税も進みます。
政府税制調査会は2004年11月「個別税目の課題 − 相続税」の中で、次のように述べています。

(略)近年、経済のストック化が進む中、人口構成の高齢化を背景として、資産保有において高齢者層の占める比重が高まっている。また、所得、消費、資産等の多様な課税ベースに適切な負担を求めていく観点、特に今後の消費税率の引き上げに向けた議論なども考慮すると、資産の再分配機能を有する相続税の役割は一層重要となる。(中略)これらの点を踏まえ、より広い範囲に適切な税負担をもとめるため、相続税の課税ベースの拡大に引き続き取り組むことが課題である。

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この項は月に一度手を加えるのを原則としています。この作業で、経済を中心として政治を振り返ることもできます。一番大きい意味は自分の金融資産の全体を点検し、1円に至るまで現状を詳細に把握し、生活全般の修正ができることです。

私の貯蓄のベースになっているのは、退職金もありますが、それよりも、若くその日の食べ物にも困っていた時から、現在もなお続けている収入の一割貯蓄です。インフレ時代には貯蓄してもドンドン値打ちが下がるから意味ないよと思ったこともありましたが、結果はインフレ当時かなり高い利息が複利で付いてきたので、デフレ時代のいま、その果実をすこしばかり享受しています。最近高齢者の犯罪が増えていますが、多くの場合経済的に行き詰まっての犯罪が多いのです。イソップのアリとキリギリスの物語はやはり正しいと思います。消費が振るわないので政府は貯蓄は罪悪といわんばかりの宣伝をしますが、惑わされてはなりません。何事も自分の頭で納得してから。高かった日本の貯蓄率も高齢層の取り崩しが進みつつあり、前年よりも改善されたとはいえ2003年は7.4%と米国並みラインまで低下していますが、若年層では20%程度で依然として高いといわれます。貯蓄はそれ自体が目的物ではなく、心おきなく必要なときに使い、心の余裕を持つために必要なのです。2006年10月金融広報中央委員会の発表によりますと、貯蓄ゼロ世帯が全体の22.9(昨年度23.8)%ですが、そういう世帯でも点検すれば必ずしも必要でない物品の購入や調理済み食品の購入など無駄は無いのでしょうか?持つものと持たざるものの二極化を批判して責任を自分以外の所に転嫁してはいないでしょうか。貯蓄を持つ世帯での平均残高は1,073万円(昨年1,398万円)です。二極化はますます進むでしょう。お金のいる事が突然やって来ますから、その時に備えて、わたしは多少無理してもデフレ下であれインフレ下であれ貯蓄することを経験上お勧めします。予期しない事態が出来するのが人生ですが、若いときから独自のライフ プランを自分なりに持ち、老後に備えて多少は計画的に資金をこつこつと準備していくことをおすすめします。一生を振り返るとそんなにけちなことはしてこなかったつもりですが、資金運用にも心がけると思いの外に準備できるものです。1929年生まれの私は基本的には国に頼ることは考えていません。むしろ頼りすぎると危険だと思っています。自律的ですべて自分で責任を持つことを基本にしましょう。国が自分だけではできないことをしてくれるのは感謝しています。現在の介護保険・健康保険などとかくの批判はありますが、やはりありがたい制度だと思っています。しかしかって「御国のため」といって個人の生活を制約し、自由を奪い、とどのつまりが一枚の赤紙で有無を言わさず生殺与奪の権限を国が行使した苦い思い出は焼き付いているのです。

日本では以前、年金制度の崩壊を前にして、国会で株価回復の期待も込めて日本版401K(確定拠出型年金法案)が成立しましたが、同時テロの発生以前からITバブルの崩壊でアメリカは株安に見舞われ、さらにテロ以後エンロンの倒産でエンロン社社員が401Kで破産に近い損失を受けています。他の一般401K加入者もアメリカ経済の不透明さからかなりの衝撃を受けました。これは明日の日本の姿かも知れません。アメリカでも消費熱は後退しているのです。アメリカでは住宅も投資対象と考えられていたのですが、もはやピークを過ぎ今後バブルの崩壊が見えています。サブプライム住宅ローン(信用力の低い人を対象とした高金利型の住宅ローン)の一つであるニューセンチュリー・ファイナンシャルは2007年4月2日会社更生手続きを申請し、経営破綻しました。住宅ローン市場の崩壊が始まりました。個人の倒産も増加の一途を辿っています。最近ではサブプライムローン関係のクレジットが証券化されていたため世界の金融界を脅かし、現在のアメリカおよび世界の株価変動の大きな一因となっています。
それはさておきアメリカでの株価変動が、いまなお世界の経済・株価に大きいインパクトを及ぼしています。ニューヨークのテロから六年、相変わらずブッシュ大統領は原因の解決も図らずドン・キホーテが風車に戦いを挑んだようにテロへの戦いを大声で叫び続け、国連無視のイラク戦争を敢行しましたが、内政から目をそらさせようとするブッシュの企てに対し、アメリカ国民もこの間の中間選挙では共和党に対し、ブッシュに対しNOを突きつけ政策転換を余儀なくさされました。

日本の景気は、かなり良くなってきましたが、国内の経済改革は未完で、減損会計を初めとして会計処理原則の変更が始まっていますから、デフレは当面まだ完全解消には時間が掛かるでしょう。UFJ銀行の吸収問題に代表されるように危惧は地方銀行で益々増大しており、政府提案の金融機関に公的資金を予防的に投入する「金融機能強化法案」が2004年4月23日衆議院で可決されています。2006年8月その第一号として200億円〜300億円の公的資金の注入を紀陽銀行が申請しました。金融危機はまだ解消はしていないのです。近頃は原材料値上がりの影響を受けてインフレや国債依存経済に致命的な打撃を与えかねない金利の上昇という現象も表舞台に姿を現しかけていますが、この変化は一時的なものではなく、大きなターニングポイントを緩やかに迎えつつあると見ています。最近まで日銀の基準金利引き上げが政府の圧力で見送られましたが、常識はずれの低金利では円の価値の下落がさけられず、やっと引き上げが始まりました。イギリスのブレア首相も2007年6月退陣し、日本でも小泉さんの退場がありブッシュの盟友の退場の時期を迎えています。冷泉彰彦氏のレポートからはアメリカの空気も転換しつつあります。世界史は転換期を迎えています。選挙の年で政策的にひとまず増税はストップしていますが、国の財政も破滅的で、年金制度や今後介護制度も財政的に行き詰まって来ると予想されますから、国民への負担は重くなり、内需は抑えられデフレ傾向は続きながら、一方でインフレ的な物価の上昇が徐々に進むという厄介な事態を予想します。米国も日本も決して安心できる情勢ではありません。

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それはさて置き私の貯蓄内容に目を移しますと、9月28日現在で預金26.2(先月は27.2)%,公社債0.0(先月は0.0)%,株式65.5(先月は65.4)%、投信0.4(先月は0.4)%,外貨MMF4.3(先月は3.3)%、野村MMF3.7(先月は3.7)%です。被成年後見の家内の資産の内、株式所持は家庭裁判所から不適切との指摘を受けたので処分し、中央三井信託の定期預金スパートに預けています。日本人の資産に占める株式の比率平均も今年一年でかなり増え16.9(昨年度7.9、一昨年度6.7)%になりましたが私の資産に占める株式の比率は少し増え65.4%(先月64.9%)で、少し異常な高率かも知れません(野村総研の発表ではいわゆる富裕層のリスク性資産は財産の60〜70%ですからそう異常でもないのかも知れません)。なお現在の所有株で、年間の株式配当は約40万円になります。臨時収入として重宝します。外貨MMFは豪ドル、ニュージーランドドルと英ポンドですから、現在、利率はそれぞれ年利5.960%、7.559%、5.543%です。国際的にはこれが普通の一般的金利です。毎月約1万円の分配金があります。国内の野村MMFは0.555(先月は0.525)%です。外貨MMFは為替が絡みますから原則は長期保有して為替の動きを洞察するべきものです。為替相場の変動も激しいのですが、基本的に日本銀行が基準金利を相当引き上げない限り円安の流れは解消しないとわたしは見ています。日米だけが両国の状況を反映して貨幣価値が相対的に下がっていますが、産油国の余剰資金は英ポンドに流入していますし、豪、ニュージーランドには金利先高感があり、この傾向はこれからも続くでしょう。野村MMFは医療費だけに使う予定の予備費的なもので為替相場の影響を避けて信託しています。毎年12万円を追加積み立てしていきます。


国内株式は9月28日現在、日経平均16,785.69円(先月時点では16,569.09円)で、今月末にやや上昇しました。

どう見ても日本の金融システムは諸外国と比べて、根元が腐っているといっても良い状況が続いています。ですから、改革を加速せざるを得ません。2004年9月には金融機能強化法が施行され、予防的に公的資金の地方銀行への投入が可能になりました。投入にあたって金融庁のチェックに服さなければなりませんから、銀行にとってはなるべくこの法律の適用は受けたくないのですが、公的資金投入は地方銀行にまで波及してきました。公的資金の導入を恐れる各大手銀行は資本金の積み増しで乗り切ろうと増資に踏み切りましたが、中には取引先に資本引き受けを依頼するところもあり、相変わらずの体質です。2003年5月17日りそな銀行は公的資金の導入を要請し、同日金融危機対応会議が開かれ、2兆円の資金投入が決定され、事実上国の管理下に置かれました。注目されたのは銀行側の繰り延べ税金資産の算入にあたり、監査法人が資産算入の過大を指摘し、それによって銀行が公的資金導入申請に追い込まれたことで、他の金融機関でも同じような事態が起こらないとも限りません。早くも他の銀行でも繰り延べ税金資産の算入圧縮とこれに伴う資本増強は既定の路線となってきましたが、金融問題解決の上では一歩前進だと私は評価します。りそなホールディングス(HD)は2005年1月公的資金の一部を返済する方針を固めました。国が公的資金で買い取った普通株を買い戻す形で、3月末までに額面で25億円前後を返済します。2006年6月三菱UFJが公的資金を完済しましたが、2006年7月にはみずほフィナンシャルグループの完済が報じられました。三井住友フィナンシャルグループも公的資金の残額6950億円を2006年10月完済しました。また三井トラストホールディングスも現在の公的資金残高4,322億円の内320億円を返済すると発表しました。額は少ないものの、公的資金返済の第1弾で経営の危機は脱しつつあると見られます。大手銀行は確かに不良債権の整理が進んでいることの証しでもありましょう。2006年8月現在の公的資金の状況は別表の通りです(預金保険機構年報などによる)。
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資本積み増し必要の理由は次の点です。「要管理先債権」とは、ゼネコン、不動産、流通の大手など業績低迷で返済が滞りがちな企業向けの債権のことですが、全国銀行の要管理先債権残高は03年3月期末で計16.6兆円でした。破綻(はたん)の可能性が高い「破綻懸念先」の引き当て目安が70%なのに対し、「要管理先」債権は30%と引当額が少なく、銀行は「破綻懸念先」認定を甘くして「要管理先債権」としているのです。金融庁は「割引現在価値(ディスカウント・キャッシュフロー=DCF)」という方法で要管理先債権を査定する方針を固めましたが、銀行は唐突なルール変更だとぼやいたものです。しかしこの方式の採用によって不良資産の「引き当て」も個々の資産に対する合理的な引き当てが可能になり、「要管理先」から「破綻懸念先」に移行するものが出て来て、銀行は高率の引き当てを迫られます。銀行はこの問題「要管理先」債権の整理を進めて相手を倒産に追い込むか、そうでなければ「破綻懸念先」と認定して引き当てを増やさねばならず、UFJ銀行のように資本金の不足を生じるのです。自ら増資の道を講ずるか、さもなければ公的資金の注入は避けられなくなりました。 2004年4月27日も金融庁は大手11行の大口融資先133社のうち22社を「破綻懸念先」以下に格下げしています。
2006年12月国際決済銀行は新BIS基準を実施しました。この基準は融資先の格付けや融資規模も引当金算定に組み込むリスク管理の強化を促す内容になっていますから、なお一層不良債権の処理を促すものとなっています。新Bis基準は金融庁の監督強化と金融機関側の情報ディスクロージャーの強化も求めています。

りそな銀行では役員給与の50%カット、行員給与の30%カット、大幅な人員整理ということですが、他の銀行でも実情を見ればこの程度の改革を迫られているというべきでしょう。現在の日本の規模では金融機関が多すぎる感じです。
これまでの政治の先送り基調もこれ以上の赤字財政の余裕は消え、終着駅に差し掛かっています。地方への補助金交付も減り、格差は地方と都市の間で著しくなってきました。格差は自分を他人と比較することで生まれる認識です。しかしすべての人が他人と異なる生活観の上で生活しているのですから異なる見返り(格差)が生まれてもそれは当然のことだと思います。それを政治的に格差をなくしようとすると一方で不公平の気持ちを生み出すでしょう。何によらず個人の意識に政治が強権的に臨むことは私の好むところではありません。政治は個人がそれぞれの気持ちでフルに生きていけるような社会的環境の整備に努力するべきものだと思います。戦時のようなすべてが政府の手に委ねられた状態はお断りです。

2003年は「戦争の年」とブッシュ大統領は宣言し、国連無視のイラク攻撃を3月始めました。アメリカを「神の恩寵の国」と称するに至ってはユダヤ人の抹殺を計ったヒトラーの人種的優越思想と変わらず、キリスト教原理主義ともいえるブッシュの考え方はイラクのフセインにも勝る危険きわまりないものです。この調子で神に選ばれたアメリカが宣言すれば何でも先制攻撃の対象に出来ると言うのは物騒な話です。私は膨大なイラク戦費の支出(2005年8月現在ニューヨークタイムズはこれまでの戦費2500億8000万ドル、これからの5年間に掛かる戦費4600億ドル、退役兵に掛かるコスト3100億5000万ドル、戦費赤字の利息2200億ドル、戦争による原油の値上がりを仮に5ドルとみて米経済へのマイナス効果1100億9000万ドル合計1兆3700億2000万ドルと見積もっているよう)ですが、これがアメリカの経済を圧迫し、現在の経済回復を一時的なものとし、いずれはたいへんな事態が現れることを恐れます。アメリカでもまもなくベビーブーム世代が定年を迎える時期がやってくるので、年金問題が大きい問題となってきています。アメリカの景気は、当面は見かけ上持ち直していますが、双子の赤字の復活したアメリカ経済は楽観を許しません。ドルへの信認が弱まり、ロシアも外貨準備にユーロの組み入れを増やしましたが、各国中央銀行の外貨準備高に占めるユーロの比率は00年の約18%から06年には約25%に拡大しているといいます(毎日新聞大阪2006.08.29朝刊)。中国人民銀行は2006年11月保有外貨中のドルの比率を減らしユーロを増やすと言明しました。カタール・アラブなど産油国中央銀行もユーロの割合を増やしています(しんぶん赤旗2006.12.31)。私は今後まだユーロは高くなり為替差益が生まれると見ています。最近の状況を総括すればイラクの今後に見られるように、すべて不透明の中に明確な羅針盤はないままに推移しており、アメリカの現状も基本的には「砂上の楼閣」で、このままでは経済的倒壊の危険はむしろ増していると言えます。イラクの混乱は鎮静するどころかますます激しくなり、アメリカは再びベトナム同様の撤退をいずれは覚悟しなければならなくなるでしょう。2006年9月1日のアメリカ国防総省報告書は「イスラム教スンニ派が主導する武装勢力の攻撃がイラク市民に集中し「内戦への危険を高めている」と述べました。国連の前事務総長アナン氏もイラクが内戦状態にあると述べています。民主党のリード院内総務は「イラクでの戦争を終結させ、テロとの戦いに勝つために新たな方向に舵を切る時だ」と発言しています。こういう事態になれば多額のドル債を抱えてアメリカと歩調を揃えている現在の日本の姿勢では、最期にアメリカと心中するような羽目に落ち込むかも知れません。私から見れば「テロとの戦い」のスローガン自身が眼を真実からそらせるための意図的なものであると思っています。

小泉内閣の政策については発足当時抱えていたいろいろの経済問題の克服にはあの路線も必要であったように思います。しかしその結果いろいろの問題も生まれてきています。現在直面している地方税・介護保険料・医療保険料の急激な引き上げ、それに連鎖的に起こってきている福祉関係の給付の切り下げは、私のような老人には深刻な不安の気持ちを抱かせます。しかし800兆円にも及ぶ財政赤字を抱えている現状では昔のような給付は望むべくもありません。結論としては各自が自分の裁量で自衛するしか方法はなさそうです。企業の業績は上り坂なので、株価の上昇や配当金の受け取りの形で減収をカバーしようという気持ちが正直なところあります。ただまだまだ政府側で削れる余地が見られますから政府を監視していく姿勢を強めなければなりません。

これまでの小泉政治を振り返ると、古い自民党的なものが大幅に壊れましたが、この点は小泉さんの成果であったと思います。最近では格差問題などで小泉政治の負の部分がクローズアプされてきましたが、ここ数年の難局を乗り切るために小泉・竹中チ−ムの打ってきた手法はやはりあの時点では必要であったのではないでしょうか。どうやら日銀も基準金利を引き上げ、金融も正規の路線に徐々に復帰するでしょう。小泉さんも引退しました。これからは、新しい時代に入ると思われます。国民は小泉・竹中仕様の改革路線との決別を望んでいるのに安倍さんは相も変わらぬ改革を叫び、総スカンを食らったのが今回の参議院選挙でした。政治的にも変更を余儀なくされるでしょう。内閣が変わっても財政再建問題はなにも変わらないのですから、今後ますます国民の負担は大きくなり、我々の生活へのしわ寄せはきつくなりこそすれ楽にはならないでしょう。医療費負担・介護負担の増も含め大増税路線も開始されています。これに対する国民の反撃が今回の参議院選挙でした。

私から見て小泉さんの政治のもっともよくなかったのは、現憲法無視の風潮を醸し出したことです。強い米国依存の強化は我が国の防衛力のアメリカの戦略への組み込みを許し、戦後の平和憲法政策を事実によって壊してしまいました。北朝鮮の存在もこの風潮を助長するのにフルに利用されました。自衛隊のイラク出兵は海外での武力行使による問題解決への道を慣らしています。60年前の深刻な反省などどこ吹く風、軍備を否定してでもユニークな平和国家を創るのだという戦後の新しい日本を否定してしまったかに見えます。私の別館ホームページで見られるように、原爆の悲惨を唯一体験した幣原元首相の核戦争へのおそれはなくなってはいないのです。今度大規模戦争が起これば原爆の悲惨が現実化することは明らかです。戦争の危険は小さい内にもみつぶし、現憲法の大道を全世界の人々が尊重する流れを創らなければなりません。その日本人がこの大道を自ら否定し戦争に荷担する道へ向き始めたのは小泉さん、安倍さんの責任です。糾弾しなければなりません。

アメリカのFRBは先月の公定歩合を0.5%引き下げに続いてフェデラルファンド(FF)金利も9月18日0.5%引き下げました。その結果アメリカの株価は大幅に上昇し日本の日経平均も19日朝には500円以上値上がりしました。FRBの短期金融市場への資金供給は9月27日の発表では380億ドルに達しています。サブプライムローンによる市場の資金不足への対策です。サブプライムローン騒動でむしろ金利は引き下げたいのですが、一方原油高をはじめとするインフレ圧力があるので引き上げも予想されFRBは矛盾に陥っている現状です。わが日銀は最早金利面からのコントロールを放棄したような姿勢で消費者の金利収入を犠牲にしたまま、銀行の収益の伸張を計っているように見えます。金利「ゼロ」は質的にも大きい意味を持ち、ふたたび金利面で日銀が支配力を復活するのは容易ではありません。いずれは日銀も基準金利引き上げの動きを加速しなければならなくなるでしょうが、待ち受けるのは膨大な国債価格の低下による大混乱です。国の借金が金利の増加で返済不能に陥るかも知れません。それにしても預金金利の低下による庶民資産の損失が慢性化していますね。銀行の未曾有の収益が報じられて東京三菱UFJ銀行での旧頭取への退職金各1億円の支払いが話題になっていますが、預金者庶民の利息低下による損失の回復を放置する姿勢には義憤を感じます。日本の預金金利がせめて3%にならない限り、まともになったとはいえません。まして過去の損失補填のためにここ数年銀行は法人税を納めないのです。せめて法人税を払わない内は政党への政治献金や旧頭取への給付は見送るべきでしょう。

外交面では日中国交回復25周年にも小泉さん自身の訪中はできず、公的な日中関係が冷え切りました。これは小泉さんの誤った歴史認識による靖国参拝のためです。自分の「我」にとらわれて首相としての政治の大道を誤ったからです。 竹島問題をきっかけに日本に対する姿勢を変換した韓国も靖国参拝を問題としていますし、少子高齢社会を目前にして対アジア関係の改善なくしては、わが国の将来は開けないのです。自衛隊の海外派遣、有事法制で熱を上げるよりも考えなくてはならないと思います。陸上自衛隊のサモワからの引き上げは実現しました。浄水活動など資材と技術を現地に譲渡して、さっさと帰国する方が現地のためです。航空自衛隊・海上自衛隊の引き上げが棚上げされむしろ米軍支援活動が強化されているのはもってのほかの行動です。チェイニ−副大統領がもっとイラクに日本はできることがあると来日した直後、政府はイラク援助資金を多額拠出しています。イラク再建特需のおこぼれを狙っているのでしょうが、中国・アジアの諸国と友好して貿易を伸ばし、13億人の中国市場への進出でも真剣に考える方が景気回復と少子高齢下の日本経済に役立つのではないでしょうか。例えば財務省の2004年7月貿易統計速報を見ても輸出入ともアジアのウエイトが大きいことがわかります。対米輸出1兆1990億円に対しアジア向け輸出2兆6305億円。輸入も対米5594億円、対アジア1兆8793億円です。このように既にもう大きい変化の時期を迎えていることは明らかです。現実に鉄鋼は中国・アジアの需要で持ち直しています。成長を続ける中国市場を意識して、日本の中小企業でも中国への進出が盛んだという報告をNHKで見ました。貿易赤字の中にあるアメリカも不況と戦争体制の中で基本的にドルの値打ちも下がりだし、逃げ出した資金はヨーロッパや日本に向かう気配も見られます。2002年7月16日、遂に為替相場で1ドルが116.26円、1ユーロが116.95円になりユーロの方が高くなりました。記念すべき日です。最近はこの現象が加速し1ドル=0.706165ユーロ(2007年9月28日)となっています。円の価値も現在1ドルは115.22円(先月116.39円)、1ユーロは163.23円(先月159.05円)前後で推移しています。今月は円高がたびたび進みましたが、これは一時的なものだと思っています。日本の基準金利が引き上げられない限り円は国際的に見て低価値ですから、円高になるわけは基本的にはないと見ているからです。もし噂されるようにイラク以外の産油国が石油代金決済にユーロを(注参照)採用することにでもなれば、ドルの値下がりは益々進むと思います。アメリカに同調してイラクに派兵をしないと日米安保にひびが入るといいますが、日本が持つ膨大なアメリカ債と日本基地のウエイトを考えればアメリカこそ日本に逃げられては大変な事態になるのをよく知っているはずです。米国の金利引き上げは日本が既に保有する大量の米国債に膨大な評価損を発生することを予想しなければなりません。私は外国へ投資をする場合、当面は、アメリカではなくて英、オーストラリア、ニュージーランドにしています。

2007年5月三角合併が解禁されました。こうして日本の会社も世界的な視野を持って経営していかなくては容易に外国の企業の吸収合併を受けることになります。外国の企業が100%出資の子会社を日本に作り、この子会社が他の企業の買収を親会社の株式との交換でできることになるからです。まずこのことを頭にたたき込んでおく必要があります。2007年3月期の株主総会の空気は昔と比べて大きい変化が起こり出しました。

さて、今月を振り返って強く記憶に残るのは、サブプライムローン騒動です。この騒動は1ヶ月の間未解決のまま続き、10日の東京株式市場では、全面安商状に地合い悪化。平均株価は一時1万5691円88銭(前週末比430円28銭安)まで下げ幅を拡大し、取引時間中では8月20日以来の1万5700円割れとなりました。欧米に広がるサブプライムローンの崩壊で市場に大混乱を生じています。8月31日ブッシュ大統領は、ローンの借り手の一般消費者の救済策の概要を発表して日本でも株価はかなり戻しましたが、予断を許さない状況です。アメリカのサブプライムローンの焦げ付きが表面化し、7月26日は一時アメリカの株価は−450ドルを記録し、27日も−208ドルでした。日本でも野村ホールディングスが6月で累計720億円の損失を出したと発表、住宅ローン担保証券事業からの撤退を検討中といいます。日本の株式市場も影響され、市況は大幅に悪化しました。11日財務省の発表で外国人投資家の株式買越額は3ヶ月連続で増え6月は1兆1千401億円となりましたが、近頃は逆に引き上げが進んでいるようで日本の株式市場も低調です。2000年度1兆8520億円の売り越しであった外国人投資家が2001年以降は毎年大幅の買い越しを続け2003年以降2006年を通じての買越額累計は36兆1642億円に達していたのです。9月12日財務省の発表では8月の外国人投資家による日本株取引は1兆2709億円の売り越しでした。これは過去最高額です。一方日本人投資家もこの間売り越しで短期の視野で少し上がると売りに転じる弱さを見せています。今月はサブプライムローン破綻の影響がどこまで及ぶのか不安が世界を見舞い積極的な動きは乏しく日経平均も低調を続けました。外国為替証拠金取引(FX)をはじめ借入金で相場を張っていた人々にとっては深刻なマイナスを経験している人も多いことでしょう。個人としては借り入れゼロで運用しているので帳簿の上で下がったからと言って別にどうということもありません。アメリカの中間選挙で下院は民主党が過半数を制し、上院に於いても党以外の選出議員が民主党と歩調をともにすると共和党の上院支配が成り立たなくなったと言うことです。明らかにブッシュの政策は破綻し、イラクに於いても戦略の変更を余儀なくされている事態が発生したことです。所得格差の拡大も民主党支持の拡大を招きました。アメリカの基準金利引き上げの見合わせがあり、またお金の流れの変化からアメリカの株価も不安定な動きを見せています。2007年1月自民党の税制調査会が来年度の税制について、きわめて企業に優位な税制を提示したことで一般庶民の私としては、とてもうなずける案ではないのですが、一方で投資をする私の立場では譲渡に伴う利益や配当利益の10%減の現行税制が1年延長されるのは歓迎で、急激な市場の変動をさけるためにも、また国際的な水準から見てもある意味で妥当かもしれません。全般に景気は停滞し、物価は今後、次第に上がる傾向にありますから、基準金利引き上げの速度もやや鈍るでしょう。政治的にはレバノン紛争が中東の安定に疑いを生じ、アメリカのイラク増派も展望を欠いていますから、全世界の株価も展望を欠いています。そこへ持ってきてのこのサブプライムローン騒ぎです。考えてみるとこの日本にはおかしな後遺症が今なおたくさん残っています。世界の基準金利が上がってきていますのに、この間までゼロ金利から動けず、一方で銀行は未曾有の利益を上げています。基準金利の復活は所詮は避けられず、その上で正常な株価の形成もみられるでしょうが、当面株価は低迷すると思います。株価の消長にはいろいろの議論がありそれぞれにもっともな点はあるのですが、私は家の修理も終わって当分現金の必要もなさそうなので、このところいったん銀行に入れた預金で私の目で見て安いと思われるいくつかの銘柄を買い戻しています。村上ファンドやさらには日銀福井総裁のように直接間接に株価に影響を及ぼしうる人が株に投資して運用したり、インサイダー取引をして不正に利益を得るようなファンドに投資するのと、我々が株を買うのとは本質的に違うのです。株で儲けることは容易ではありませんが、自分の考えに従って資産保有手段として株式投資はある程度続けたいと思っています。私の判断では日銀が基準金利を引き上げたと言っても銀行の普通預金金利はまだ0.1%程度ですから、貯蓄預金や郵便貯金をかなり引き出して野村の外貨MMFに入れ替えています。いずれも3〜7%強の利回りで、日本の金利とは比較にならないのです。1ヶ月で1万円以上の利息が付きます。為替が購入時より円安で為替利潤がありますが、いずれもかなりの期間持ち続ける予定です。2007年4月1ユ−ロが160円になりましたのでユーロMMFは全額売却し、このところ復調してきたソニ−の購入に充てました。また豪MMFも一部ソニ−の購入に充てました。

日本のアジアからの孤立が小泉さんによって更に進みました。いうまでもなく小泉さんの靖国認識が原因です。靖国問題は歴史認識の問題ですから被害を受けた国々には正に国交問題なのです。このことが分からない総理を持つ事は悲劇的です。安倍首相は自分の考え方を出すのを控えて村山談話・河野談話を継承すると述べてひとまず中国・韓国との首脳外交を回復しました。こうしないと孤立化は救いがたく進みます。日銀の量的緩和政策の廃止でも急激に金利を引き上げるコトは出来ないでしょうが、明らかに金融政策は大転換をし、0%金利の時代は遠からず消えていくでしょう。会社の正しい業績の把握をしない投機的マネーゲームは私の採るところではありません。石油の高騰に由来する局部的な価格高騰を契機として、物価の上昇が進むでしょう。世界ではごく普通の4%金利が日本で現実のものとなるには数年掛かるでしょう。現在郵便局の定額貯金でも100万円預けて一年後の利息は300円ですからおかしな国です。それでいて2007年3月期も主要各銀行利益はともに過去最高のなのですから、不良債権処理も預金者の犠牲の上に処理されたのです。日銀のこの政策変更をもっとも恐れているのは政府で、国債利息の高騰を恐れているのです。しかしこのような利息ゼロというような不条理なことがいつまでも許されるはずがありません。早晩金利の上昇は避けられないでしょう。

政府に必要なのは本当の弱者に対する国としての温かい施策ですが、弱者に対する対策は著しく欠けています。地方と都市の格差も大きく先般の参議院選での自民党・公明党の大敗を招きました。来年四月からは70歳〜74歳の医療費負担も2割に引き上げられるのを始め、老人に対する収奪は恐ろしく進んでいます。しかし私は基本的には国に頼りすぎることなくそれぞれ個人が自律的に自由に生きることを望みますから、一度は通らなければならない道かとは思っています。社会主義では無い現在の体制の中では産業界の持ち直しがないとすべてがうまくゆきませんし、この再生の動きに小泉・竹中路線は貢献したと思っています。

地球温暖化と二酸化炭素の問題は深刻で、ロシヤの京都議定書批准から、わが国もいよいよ二酸化炭素の削減にとりくまなければならなくなってきました。環境税の導入には反対が強いのですが、導入は逆にエネルギーの効率的使用を進める技術面での発展を促すことが考えられます。石油の需要は増える一方で、現在も石油埋蔵が新しく発見されているとはいうものの、いずれは枯渇の時期を迎えることは明らかです。むやみに増産することはできないのです。化学産業では現在石油は不可欠ですが、そのためにも少なくとも自動車燃料としての石油消費は抑えられなければなりません。バイオエタノールの自動車燃料化がクローズアップされてきましたが、他方食料資源との相克が語られるようになってきました。この潮流を変えるには燃料電池の一日も早い実用化が待たれます。全体としてのエネルギーは電気で、問題が多いとはいえ究極的には原子力によって作られた電力の利用しかありませんが明らかになってきた原子力発電所での臨界状態の出現隠匿はまかり間違えばチェルノブイリ事件を起こしかねない危険があり、手放しで原子力歓迎とはいきません。核融合も含めて健全な原子力発電の研究が進むことを期待しています。

アメリカの独善的な、ありもしなかった大量破壊兵器発動の危機を「錦の御旗」としたイラク攻撃は基本的には立派な他国侵略戦争でしたから、ゲリラ戦の様相は強まる一方で、いずれは破綻に向かうでしょう。現在アメリカ兵の死亡が戦死・事故死を含めると2007年9月17日には開戦以来3,773人を突破しました(米国防総省)。アメリカ国内からも撤兵の声が大きくなっています。莫大なイラク戦費は追加支出を促し、赤字の増大を招いています。この赤字は到底放置できないレベルになってきているにもかかわらずゲーツ国防長官は来年度のイラク・アフガン戦費として1900億ドル(約22兆円)の支出を議会に要請しています。

さてわたしの貯蓄の約2割を占める国内預金は9月28日現在減少しましたが、主に郵便局預金を外貨MMFに預け変えたからです。国内預金の内訳を見ますと、35.6(先月34.7)%はビッグを主とする信託銀行預金、15.9(先月15.5)%は現在までの簡易保険払込額、26.2(先月27.1)%は郵便局(定額貯金、家内の福祉定期、など)、5.7(先月5.5)%は病院建設協力預金(無利息、無保護)、1.7(先月1.7)%が金貨、2.6(先月3.5)%が貯蓄預金を主とする京都銀行、医療費基金(野村MMF)12.3(先月12.0)%となっています。病院建設協力預金の利息が無利息になったので一部を解約し、別個に野村證券に医療費基金を設定しました。信託銀行のビッグが遠からずなくなると思われますから、この預金の新たな運用先をじっくり考える必要が出てきました。ヒットの募集はなくなりました。

今後転居を迫られるときが来ると予想されますので内容の大きい書き換えが必要になると思いますが、現時点での遺言は現金・預金・投信は家内に、株式は子供に相続させることにしています。

やっと気付いたことですが、一般論としてはデフレやリストラが進行しているとき株式や投資信託は値が下がるものだと思って間違いありません。株式はインフレに強いといわれますが、それはインフレに順応して値が上がるということで、裏返せばデフレに対しても同様の反応を示し、企業の収益が落ちますから株価の低下が起こるのが当然です。その上近頃は確定拠出年金の施行に伴い、日本でも2004年12月末で3491社、加入者は112万9000人で2005年度には200万人を超える見込みです。2003年3月末では約360企業でしたから、この間約10倍の急増です。デフレで運営に巨額の損失をもたらした厚生年金基金の代行運営を返上する会社が増え、また2003年3月決算では、株式含み損が営業益を凌ぐ状況となり、保有株式の売却を迫られましたが、会社の株式処分は最近の株価上昇でストップしたものと思われます。個々の会社・個人の力量ではどうにもならないもっと大きな流れが大きい意味を持ちます。その意味では資産運用もすべて個人の責任にするのは誤りで、個人の努力には限度があるというべきでしょう。2002年7月、私が大幅に投資信託を処分し、株式に乗り換えたのはこの着想からです。株式にはまだ個人の発想の余地があります。

個々の株安の原因にはいろいろあります。現在のクラレの株価はまだ安値と見ていますが、かなり上昇してきました。日本株低迷の原因としては、アメリカ株価の不安定さに加えて、会計基準の変更で国内では銀行以外でも退職金・退職年金関係の積み立て不足解消が避けられず、また2001年9月期から保有株式の時価評価も始まりましたから、決算ごとの時価損益が業績に大きく反映され出しました。これを避けるためにも、持ち合い株が放出されています。日生基礎研究所によると、市場全体に占める持ち合い株式比率は金額ベースで1987年には45.8%でしたが2003年には24.3%、05年18.3%と減っています。金融機関が保有する企業の株式は、1996年には7.9%でしたが、2003年には3.0%に下がっています。事業会社保有分も1987年の10.7%から2003年には3.8%(内1.2%は銀行株、2.3%は企業株)に下がっています。以上が国内の環境で、株安への底流と言えます。一般会社でも連結決算に伴う不良債権処理のための引当金積み上げ増が起こっています。優秀な会社ほど現状を早急に改めようとして決算内容を当面見かけの上で悪くしていることも大きいように思います。こういう点に注目しますと遅ればせながら会社は政治とは無関係に会計処理の変更から構造改革を進めざるを得なくなっており、すでに真剣な改革が相当進んでいる会社もあると見るべきでしょう。会社ではありませんが、各地の住宅供給公社の取得土地価格の杜撰さから来る経営危機や第三セクターの全般的な危機も、原価会計から時価会計への移行で、経営内容があからさまになったからです。時価会計制度は恐ろしく実効的な影響を発揮しています。結論としては、会社はそれぞれが、なかなか個性的に動いています。金利の上昇とともにおそらく株価の二極化、つまり上がる会社と止めどもなく下がる会社に分かれ、日経平均だけで論じられない事態に入って行きつつあります。中小企業で倒産が増えるのも注目されます。

これは投資に今までになく先行きの研究と持ち株については辛抱が必要なことを示していると思います。こういう厳しい時期ほど、よい製品を持つことがまず前提ではありますが、それだけでは駄目で、21世紀に入って変わっていく産業構造・世界情勢を睨む経営者の力量が試されている時代だとも言えそうです。しっかりした経営者がいてしっかりした将来展望が出来、独創的な製品を開発する力を持つところは今日の株価の変動に杞憂するよりも、むしろ業績がいずれは伸びるだろうと期待しましょう。住友特殊金属時代から NEOMAXに変わってからの株価の躍進に、この例が見られます。日本はこれまでの横並びで別段独創的な経営者を必要としないようになっていた社会の崩壊を迎えています。投資にあたってもその会社がどういう特徴ある製品を持ち、経営者がどういう実績を作ってきたか、どういう方針を持っているかを検討し、特にこれからの新しい成長の芽を持っているか、育てているかが重要なポイントだと思います。その上で納得がいったら気長に投資する時代に入ったというのが私の見解です。業界共通の見通しとして私は燃料電池が次第に現実化していく過程に入りつつあると感じています。たとえばその時に備えてガス会社は水素供給を計りつつあるようですし、クラレなどはメタノール電解膜で効率のよいものを重点目標の一つにしているように見えます。神戸製鋼所の天然ガスからのCO除去技術も注目されます。わたしは今なお株価は高値圏だと思っています。今、株を買うのはもう手遅れとは思いますが、慎重に検討しているとクラレ・日立金属・ソニ−のようにまだまだ伸びる芽を持った会社もあり、ここは買いです。

正直に言うと私の頭のどこかにも再び大幅な経済の伸張を描いているかも知れないのです。しかし地球環境の問題からもエネルギーの消費を減らす方向ですし、エネルギーの使用を減らすと言うことは、もはや、かっての経済的伸張ではなくて現在のような抑圧された経済を正常と考えて舵取りせざるを得ないということではないでしょうか?まして日本では実際に人口減少が始まりました。これは日本社会のあり方の根本的変革を迫ります。デフレの原因の一つは少子高齢化です。21世紀の日本はこの少子高齢化が国のあり方を決定するでしょう。いま考えていること 62(2001年01月)−−21世紀を迎えて−これからの日本−−もご覧下さい。

唯一の希望は中国・インドをはじめアジア諸国の今後の発展が期待できることで、これにわが国がどう関与していくかが将来を握ります。/b>

私の保有する投信の外資系のものの大半は処分しましたが、長く保有しているものはトータルで見れば損は出ていません。わが国でも年金制度としてアメリカの401Kに類する確定拠出型年金法が、2001年10月から導入されていますが、2004年1月末現在、企業型の承認規約数は707件、加入者数は約66万といいますから、まだ少ないと言えます。拠出年金の非課税拠出限度額の引き上げが実施されますから、今後やや弾みがつくものと思われます。団塊世代の大量退職に伴って投資信託を通じてかなりの資金が市場に継続的に投入され、実体を伴わないバブル的要素を抱えながら、平均的には株価に多少の弾みはつくでしょう。401K導入企業に情報や商品を提供する各種運営管理機関設立の動きが強まっていますが、積極的なのは証券会社のようです。永年護送船団方式で過ごしてきた個々の銀行・保険も参入を計画していますが、日本の証券会社・銀行・保険の運営管理能力については「脚下照顧」と言いたいところです。 この経済収縮期に失敗すると委託した庶民はとんでもない事態に直面するでしょう。収入のところにも書きましたように、401Kは決して老後に備えた年金制度として好ましいものではないと思うのですが、これからの少子高齢化では、現行の公的年金制度の維持は困難で、個人として別の老後設計がどうしても必要で、他人任せでない株式運用も考えなければなりませんから、株価の動きの考察も必要です。
401Kなどでアメリカ家庭の4割が直接間接に株式を持つといわれます。大統領選を控えて減税策を打ち出したブッシュ政権下、多少経済の活発化が見られますが、株価の暗雲を経験したアメリカ国民も貯蓄性向を強めています。日本では401K導入に伴っていずれは同じような一時的株バブル現象が多少現れてくるでしょうが、経済が活性を取り戻さない限りアメリカ国民と同様の失望を味わうことになりましょう。401Kを採用する人は社会の動きとそれなりの金融商品の学習が必要で、運営管理機関任せでは泣きを見ます。運営管理機関はまず自社の利益確保が目的なのです。

2004年4月の法改正で日興コーディアルグループは投資顧問子会社をスタートさせ、証券会社の投資顧問業兼務が始まっています。また新光・一吉・藍沢はラップ口座の導入を計画しているようです。ラップ口座では投資一任契約の上資産運用を完全に委ねるもので、手数料は資産の残高に応じて支払うのです。従って投資運用の成果に応じて手数料が高下する点では合理的なのですが、契約高が大和証券の場合5,000万円、新光証券が2,000万円、野村もファンドラップで最低1,000万円セパレートリー・マネージド・アカウントで3億円になっています。また手数料は資産残高に応じているので資産運用上の損失が出ても手数料は取られるのです。やはり取扱機関の利益という点では委せ切りは危険です。資産運用利益に比例していわば成功報酬を求める方式優先にならないとおかしいと思っています。この点新光証券資産運用ラップBタイプの報酬体系が年間残高の2.0%の固定報酬+元本超過分の20%の成功報酬になっているのは肯けます野村証券も固定報酬制では最大で運用資産の0.4049955%、実績報酬併用制では最大で運用資産の0.2024925% + 運用益の積み上げ額の10.5%となっています。

敢えていえば個人も資産運用に習熟・研究を要する時代(注に日商岩井の例)に入ってきています。しかし株式との付き合いには骨董の購入と同じような所があります。つまらない骨董を買って痛い目に遭い、発憤してこの失敗を糧にして、工夫し、眼を養って次に備えなくてはならない点が似ています。ただしよほど頭の切り替えの巧みな人以外は、私の考えでは、55歳までは自分の本業に頭をフルに使うために株式にのめり込むことは止めておくのがよいと思います。株式は関係する情報を集め分析するのにかなり頭がいり、エネルギ−を使う作業だからです。最後は決断できるかの問題で、その決断の責めは自分が負うしかありません。楽なものではありません。
私は投資のために借り越しはしない主義で、すべて自分の裁量で生み出した手持ち資金で、投資は生活費とは別勘定でいわば預貯金の分野で独立させて運営しています。従って先物取引や証券会社からの借り越しで投資することはしていません。

庶民生活の二極化も避けられないでしょう。かといって所得の再配分を社会主義的手法に委ねることは支配層の官僚的な汚職の温床を作り、社会の不活性問題を引き起こすことを、あまりにも多くわれわれの世代は歴史で見てきました。

わたし程度の持ち株でも日々株価残高は10万円単位で増減します。損失が100万円を超える日もたまには出てきます。ですから心理的に1円たりとも損はしたくない人は絶対に株式に手を染めてはなりません。いくら預金利息が低いといってもマイナスではありません。私のかっての資産損失約1000万円は株を手がけたためです。それでも私が株式を保有したのは、株価の動きが経済の動きの生きた指標になるので、経済の動きを、損得の懸かった体感的な味わい方が出きるのと、資産保有の形としての面白みからです。没後の財産分配にも不動産より簡単です。ですから少し値が上がった、下がったからといって売ったり買ったりはしません(こういう姿勢ですからかなりの含み損をそのまま抱えることになったりするのですが。尤もケインズの株投資の結論は“割安な優良株を、数を搾って長期保有する”ことだったそうですが、同感です。現在盛んな端金稼ぎのデイ・トレーダー的株取引をするつもりも私にはありません。あるファイナンシャルプラナーは「株式投資は恋人選び。信じられる相手と長く付き合い、その結果、お互いが大きく成長するもの」といっていますが一つの見識でしょう。)。投資先の情報に絶えず気を配り、情報を分析して総合的に判断し、将来性に投資する事を原則としています。以前アメリカの株価、特にIT関連のナスダックの暴落に伴って日本の株価も暴落しましたが、基本的には株価はその会社の業績を反映するものだという自明のことを改めて思い起こさせてくれました。特に投機家でないわれわれは、一時的に評判になった、業績の裏付けのないバブル株に、タイミング悪く、というのは何によらず評判になっているときはもはやピークを過ぎているのです。(いま考えていること 134(2003年05月)もご覧ください。)後手に回った形で手を出せば、いずれは痛い目に遭うことを見せてもらい、良い経験をしました。少なくとも3年後に眼を向けてその会社がどのようになるかを検討することはそれ自体が楽しいことです。あなたが3年後にこの会社は発展すると思って投資し、3年後にもし予想通りの成果を収めておれば、精神的にも資産評価の上でも満足が得られるでしょう。先にも言いましたように、現在私は日立金属、ホギメディカル、ソニーと三洋電機に期待をかけ持株も増やしましたが、さて結果はどう出るでしょう。これまで10年も無配の続いた神戸製鋼など駄目だと思われたこともありましたが、神戸製鋼株式からは持ち続けたおかげで現在479万(先月は469万)の含みを生じています。私は投資はしますが投機はしません。私の経験からすると、個々の会社の特色を詳しく分析し、これといった特色を持った会社は長い目で見れば必ず発展します。現在投資で注力しているのは三洋電機とソニーです。両者とも5年もすればおそらく芽を吹き返すと思っています。その理由はまず三洋の製品は思いの外堅固で耐久性もあり、技術的にはなかなかのものがある点です。不採算部門を大胆に整理して(まだまだいろいろなものに手を出しすぎている感じ)、二次電池・太陽電池といった長所の見られる部門に注力すれば必ず黒字への転換は可能です。ソニーも有機ELとブルーレイに魅力を感じます。問題は経営者の力量にあると見ています。三洋電機もソニーも経営者が変わったので今後の動きが楽しみです。神戸製鋼は発電の固定利益が大きく、また合金、特殊鋼の面での技術的すごさがあります。日立金属はNEOMAXを吸収合併し、ネオジウム磁石で優位な地歩を確保しました。ホギメディカルはオペラマスタ−に組み込むことによって当該病院の効率を高め、ホギとしても強い顧客との連携を持ち得て経営的に有利な立場になります。クラレの持つユニークな独自性のある研究開発能力は群を抜いたものがあり無視できません。クラレでは現在もたついていますが注目しているのは無機ELの今後です。ここにはあえてあげていませんが三洋化成も高齢化とアジアへの進出で吸水性高分子の分野でこれからも発展が見込まれます。西部瓦斯は燃料電池時代の到来とともに水素供給源の天然ガスの取り扱いに期待を持ちます。これらの特色が私の投資指向を支えます。テレビのデシタル化も目前ですし、ソニーはまだまだ問題が大きいのですが、世界的に今なお持っている大きいネームバリューが財産です。投資姿勢の結果がリターンに変化をもたらし、格差をもたらしたとしても自分の洞察の当否の結果とする心境でなければ投資に手を出してはなりません。

株も村上事件に見られるようなインサイダー取引、政府の意向を汲んだ公的資金(社会保障審議会年金資金運用分科会の年金資産配分計画や公的保険などの資産運営計画による)の投入があり、必ずしも正直とはいえないのですが、経済の動きを反映する指標性は好きです。また、流動性が高く、上場会社の株なら、原則的には、いつでも成約当日も含めて4日後には市価で現金化できます。

このところ直接投資を促進する為に株式等譲渡益課税の改正が盛んでした。かって多くの人が使っていた源泉分離課税も2003年3月31日で廃止され、新しい源泉徴収制度が特定口座でりようできるようになりました。株式譲渡にあたってはこれらの新しい措置の研究が必要になってきました。政府税制調査会が2003年4月15日、金融小委員会を開き、預貯金の利子や株式の配当収入と、株式譲渡に伴う損失とを通算した上で課税する「金融所得の一本化」を検討することを決めましたが、投資の優遇はこれからの税制改革でも間違いなくクローズアップされるでしょう。目を離せない所です。政府税調は05年の金融所得課税一本化は見送ることを決めましたが、2005年以降、公募株式投信と株式譲渡益との間では損益通算は可能になっています。詳しくはたとえば金融庁の「証券投資がより身近に・・・・」をクリックしてご覧ください。損益が相殺できるのは限られ、預貯金の利子は相殺の対象外とされる見通しで、適用されるのは“形を装った納税者番号”と見られる“選択制の「金融所得番号」登録”をOKした人に限られるかも知れません。一度番号をもらうと返上できず、節税にならない年も金融取引を申告しなければならなかったり、番号を伝えずに口座を開設したり株式売買などをすると罰せられるなど、使いにくい面も出てくるかも知れません。やはりアメとムチの匂いがします。ともあれ個人の資産についても流動性の乏しい不動産から、現金や換金性の高い資産(キャッシュフロー)の運用を、考慮に入れなければならない時代に入ったのですね。不動産の証券化も進んでいます。一面、株は運用を誤ると、無価値な一片の紙切れになることも考えて置かねばなりません。短期の株価の上下に一喜一憂する人も、株はやめておいた方が良いのです。


しかし株式を持つと、現実に資産価値の変動を体験しながら、どういう銘柄を組み入れるか考えるので、結構経済に真剣な、本気の関心が持てます。インフォシークの企業情報(中でも業績予想)ヤフー ファイナンスは使いやすく、参考になります。

現在関心を持っているのはホギメディカルクラレ日立金属ソニー三洋電機、それから神戸製鋼三洋化成です。株式投資優遇の例でもありますが、大きい利益の出ている「特定上場株式等非課税適用」分がNEOMAXと神戸製鋼、ホギメディカルにはありましたので、2005年9月には先ずNEOMAX1000株を処分しました。無税の利益(253万)確定をすると共にクラレ、ホギメディカル、三洋化成、三洋電機、ソニー株を買い増しました。2006年1月にもNEOMAX1,000株を無税処分しましたが、342万円の利益がありました。これは家の修理に当てました。また、神戸製鋼3万株の保有はわたしのポートフォリオでのウエイトが高すぎるので、2005年1月184万の損失が出ましたが1万株は処分し、これを原資にクラレ500株とホギメディカル200株を購入しました。神戸製鋼も持ち株の内5000株は非課税の対象なので2006年3月一株457円で売却しました。売却益は203.3万(手数料別)残り1万5000株の平均購入価格は一株110円となり、2007年09月28日現在の神戸製鋼含み益が479(先月469)万円なのです。

実は前にお年玉に金のインゴットをくれたY君宅でホームシアターを見せられその迫力を知り、彼から今年もお年玉をもらったので、これをベースにホームシアター投影機とスクリーン・暗幕を購入しようと思い立ち、不足分を三洋電機株1,000株の売却で賄ったのです。

クラレは大会社ではありませんが、技術面で他にみられない世界に通じる新製品を次々に生産化し、技術にすばらしいものを持っています。東レ・帝人・三菱レーヨンなどは炭素繊維にその収益を依存しているようですが、クラレにはユニークなものがあるのが魅力です。ノーベル物理学賞の道を開いたスーパーカミオカンデでは1万本を超す観測用センサーのうち6割が事故で壊れ、製造を担当した浜松ホトマル社は「補強のためアクリルのカバー」をクラレに要請し、クラレ技術者らが半年間、板の製造と成型の際の温度条件や添加剤の成分を様々に変え、試行錯誤を重ねた結果、13ミリの厚さで紫外線を85%通すカバーを完成しています。この研究の副産物かも知れませんが、柔らかい伸びちぢみするアクリル樹脂の今後の発展は注目に値します。あるいはまた火星に着陸した米航空宇宙局(NASA)の探査車着陸時の衝撃を和らげたエアバッグは、クラレの合成繊維「ベクトラン」でできていて、繊維の強度は鉄製ワイヤー並みと言われます。

ベクトランは現在年600トンですが、1,000トンに生産を拡大する予定で次第にクラレの主力製品の一つになりつつあります。用途に応じた高度の生産ノウハウを要するので現在技術的に高い日本国内のクラレ西条でだけ生産しています。同繊維は世界でクラレだけが生産技術を持つというポリアリレート系ポリエステルで、七割を輸出しています。工場内で使う防護手袋や水産用の網などが主用途ですが、イヤホンコードなど耐水性と強度が要求される製品向けにも需要が拡大しています。さらに金属代替品としても用途拡大が期待され、樹脂の補強剤としても期待されています。これもクラレの技術のユニークさの例になるでしょう。2012年までに年産3000トン体制に増強する予定です。

  もともとは繊維会社ですがレーヨン事業からは撤退しました。ポリエステル繊維からも撤退を決めました。海外から安い品が入ってくるからです。すでに連結営業利益構成比では繊維関係16%に対し化成品・樹脂関係が71%、機能材料・メディカル関係が13%に達しています。市場の業種分類でも繊維から化学に移される日が来ました。2007年10月1日です。

ダイオキシンの発生で塩化ビニール系樹脂が問題になっている現在、この会社は塩素を含まない樹脂で、独自の製品があるのも注目されます。それはエバール樹脂で焼却時ダイオキシンを発生しない特徴もあり、ガス遮断性(ガスバリヤー)樹脂と呼ばれ食品包装材や冷蔵庫の高性能真空断熱材としても利用されています。さらにプラスティックスには錆びない、軽い、形状が自由という長所があるので、自動車のガソリンタンク用素材、床暖房用パイプ、最近では食品包装関係で用途が拡大して世界的に利用が進んでいますが、中でも日本とヨーロッパ、アメリカで進展が見られます。シェアーは現在世界の70%ですが世界的に増産体制を進めています。2006年1月三菱化学グループの日本ポリエチレンは、高密度ポリエチレンとクラレのエバールを積層した自動車用燃料タンク用樹脂の売り込みを強化すると報ぜられています。また、このエバールを使った人工腎臓も透析時に患者の炎症反応や発熱が起きにくいので、クラレメディカルは川澄化学工業と提携して「高機能型」人工腎臓の新機種「エバブレンEK」を共同開発し、2005年秋、製造・販売を開始しました。生産能力は年産二百万本。今後、計二割弱の国内シェアを拡大したい考えです。2007年10月1日にはそれぞれの子会社旭化成メディカル(85%)とクラレメディカル(15%)は統合し「旭化成クラレメディカル」が誕生する予定でしたが、公取との調整が終わらず当面延期されます。
景気の回復との関連では一般に設備投資の伸びが乏しいことが暗い話題ですが、エバール樹脂については2000年10月にも生産設備を起工し、またヨーロッパ(ベルギー)にもエバール樹脂の生産工場を建設し(EVAL Europe N.V.)ましたが、すでに増設も完成しヨーロッパ全域にエバールを供給しています。世界全体の連結売上高を2003年現在の300億円/年から、これを5年後には600億円/年に倍増する予定です。アメリカでも生産ラインの増設を図り、年2万3000トンから4万7000トンに倍増します(EVAL COMPANY OF AMERICA:略してEVALCA社)、世界全体で年間生産能力は2004年の57,000トンから2006年度に81,000トンに高める計画です。エバールは日本や米国、欧州で年率10%を超える成長が続いています。最近、従来は堅いため複雑な形状に向かなかったエバールを、加工しやすく、食品の形状に合わせたフィルムや容器などに使えるように改良することに成功し(エバールSP)、アメリカではスーパーで生肉の包装などに需要が伸びています。アメリカでは自動車メ−カーの不振で車向けが減少気味ですが、食品向きの需要が増えているので、現在の生産量を50%増やし2007年春にも35,000トン態勢を実現し、さらに08年には47,000トンに引き上げる予定です。国内では約十億円をかけて岡山事業所(岡山市)に設備を新設、2004年9月から年5000トン生産を開始しました。食品包装関連で27,000トン、ガソリンタンクなどの工業用用途で8,000トンの需要を見込み、売り上げ予想は2005年度50億円、2007年度には100億円を目標としています。2005年9月9日この岡山事業所で火災を起こしましたが、その影響は小さいと私は見ています。

レトルト食品の新包装材「クラリスタ」のことが2005年8月報ぜられました。レトルト食品の包装材は現在アルミ箔とガラスを蒸着した透明フィルムがありますが、ポリエステルフィルムの両面に厚さ1マイクロメートルの薄膜を貼り付けこの薄膜中 にナノメートルレベルのケイ素系無機物を分散してあります。この無機物が酸素の侵入を防ぎ、酸素透過率が従来の半分以下となっています。玉島事業所で2006年7月から年間5000uのペースで生産に入ります。レトルト包装材の世界市場は5億u現在その大部分はアルミ箔。クラレはこの「クラリスタ」を武器に3年後のシェア50%(売上高18億円)を狙っています。

また2001年7月9日、スイスの化学メーカークラリアント社のポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルブチラール(PVB)事業の買収を発表しました。PVAは紙加工材や接着剤などに、PVBは自動車・建築用安全ガラス中間膜や特殊塗料などに使われます。これまでの会社クラレスペシャリティーズヨーロッパは2006年12月クラレヨーロッパGmbHと合併しました。年間生産能力はクラリアント社の生産設備をすべて引き継いでPVAが5万トン、PVBが1万6000トンになる見込みで、これによりクラレの欧州におけるPVAシェアは、現在の10%弱から40%に高まります。PVA事業はビニロン以来のクラレ基幹事業のひとつです。桜田一郎の発明したビニロンを工業化したのはクラレですが、工業化後も苦難の道を歩んできました。これが克服できたのは発ガン性のアスベストの代替品として45%はセメントの補強剤として建築土木界で使われるようになったからで、これまで石綿対策が遅れていた中国や東南アジア、南米などでも需要が本格化する見通しで、近く生産能力を15%引き上げる計画で、07年3月期から始まる次期中期経営計画にも盛り込む方向です。2005年度のビニロンの売り上げ予想は250億円と繊維部門の稼ぎ頭になる予想です。  販売面でも攻勢をかけ、06年3月期中に石綿規制が強化される見通しのブラジルやアルゼンチンといった南米各国で、新たにビニロン繊維の販売に乗り出す予定です。

クラレは2008年半ばを目処に年度中には、光学用ポバールフィルムの生産規模を引き上げ1億3600万平方メートルにします。投資規模は約100億円。これは液晶テレビ大型化などで偏光フィルムの世界需要が年率30〜40%のペースで増加しているためです。アメリカの調査会社ディスプレイサーチによると2005年1億7500万台であった大型液晶テレビ販売台数が08年には2億8200万台になると予測しています。クラレは世界で約90%のシェアを持つていて、技術流出を防ぐため海外生産はしていません。玉島工場(岡山県倉敷市)ではポバールフィルム生産の二ライン体制を整え、需要拡大に対応する考えです。
クラレはその上2005年12月6日、液晶画面のコントラストが最大で2割向上する高機能光学フィルムを開発したと発表しました。普及が見込めるフルハイビジョンテレビなど高品位テレビ向けです。「LCD用偏光フィルム向け光学用ポバールフィルムVF―PE」は液晶テレビやパソコンなどに組み込んで画面から出る光の方向を一定にし画像を表現します。クラレの新たに開発した高分子材料を利用し、フィルムを構成する高分子の重合度を上げて画面を鮮やかに見せるコントラストを改善したのです。この発明はクラレの収益にも大きい影響をもつものと見ています。
2007年8月、ポバールフィルムがグループの収益の柱に育ったため、生産もクラレ本体で手掛けることにし、ともにクラレが全額出資しているクラレ西条(愛媛県西条市)とクラレ玉島(岡山県倉敷市)を会社分割し、両社の社員432人のうち西条の180人、玉島の60人をクラレに戻すことにしました。
 
2007年4月の発表によると、クラレは液晶ディスプレーのバックライトの厚さを従来に比べ六割程度に薄くできるシートを開発しました。アクリル樹脂製の微小な半円形マイクロレンズを使い、バックライト光源の光を効率よく前方に向けられるのです。従来のように光を拡散させるシートなどを複数重ね合わせずに済み、バックライト部分の厚さは0.6ミリメートルと従来の1ミリメートルから大幅に薄くなります。バックライト装置の市場規模は全世界で2000億―3000億円程度と見られており、今回の新シートをテコにクラレはバックライト関連市場で約一割のシェアを狙っています。新しいシートでは軽量化や液晶ディスプレーの価格を下げられる点も注目されます。
 開発したのは直径40マイクロ(マイクロは百万分の一)メートル程度の半円形のマイクロレンズと拡散シートを機械で張り合わせて製造するので、従来構造のバックライトに比べ工程が短縮でき、材料費や加工賃を含めたコストも従来比で1〜3割減らすことが出来、また、レンズによる光の全反射を利用するため光の取り出し効率を約2割引き上げられます。

環境関連では西条工場内に年産3000立方メートルのPVAゲル「クラゲール」量産設備を設置、2005年には年産1万2000立方メートルと早くも4倍増産を視野に入れています。クラゲールは直径4ミリメートルの球状ゲルに20マイクロメートル程度の細孔が広がる多孔質構造をもち、細孔にバクテリアを生息させ、これを処理槽などに散布して排水を浄化するものです。

最近話題になったのは特殊なポリウレタンTPUの40%増産です。この樹脂はゴムのような弾性を持ちながら射出成形出来る特徴を持ち、自動車の配線ケーブルの被覆材やエンジン周辺のホース類向けに需要が伸びています。また家電製品の部品素材にも用いられています。倉敷事業所の現行年産1400トン規模の設備はストップさせ代わりに鹿島事業所に2000トンの新設装置が2006年12月には稼働開始します。

また、クラレが世界で初めて開発したノナンジアミンとテレフタル酸の重合ポリアミド樹脂「ジェネスタ」も、電子部品・携帯電話部品や自動車部品などとして優れた耐熱性(融点306℃)・対摩耗性を持つことが認められ、本来金属が用いられていた部品(例えば自動車のヘッドライトギア)にも軽量のジェネスタが使われるようになってきました。ジェネスタ事業推進部は2005年4月から所属する機能材料事業部から独立してジェネスタ事業部に昇格しました。1999年年産300トンからスタートしましたが、現在は4,500トン。この生産を2007年8月には5,500トンに、また、2010年には2.7倍の1万2500トンに引き上げます。このために、約100億円投資して生産設備を増強します。これはヨーロッパで鉛使用の規制が強化され鉛ハンダよりも高温の必要なハンダが使われるようになり部品の素材が高い耐熱性を持つものが必要になってきたためです。売上高で言いますと60〜70億円から200億円に増えます。
最近この「ジェネスタ」の繊維化に成功し、高温の状態でも耐久性を維持できる新繊維として、高温消毒される食品部門や手術部門の衣料に進出が期待されています。「特許を抑えていますからクラレの看板製品の一つとなるでしょう。」と前に書いたことがありますがその通りの歩みです。

その他、2004年4月30日柔軟なアクリル樹脂の製造が発表されましたが、これもクラレらしい画期的なもので、これまで試験プラントで年間三百トンを生産していましたが、新規需要が見込めると判断し、2007年から鹿島製造所に約六億円を投じて、安定供給できるよう増強し、二〇〇八年前半に生産能力を現在より六六%増の年間五百トンにします。
 アクリル系熱可塑性エラストマーは透明性があり、しかもゴムのように手で曲げられる特徴があります。供給体制を整えるのに伴い、子会社のクラレプラスチックス(大阪市)を通じて、アクリル系熱可塑性エラストマーとポリ乳酸樹脂を混ぜ合わせた軟質ポリ乳酸樹脂を拡販します。シート材やターポリン(防水布)のほか、靴のソール(靴底)部分の材料などに用途を広げます。市場開拓を急ぎ、生産規模を年間千トンに引き上げる考え。アクリル系熱可塑性エラストマーの売上高は二百億円程度と見られます。
クラレが手掛ける熱可塑性エラストマーは現在はスチレン系の「セプトン」が主力で今後の加硫ゴムや軟質塩ビに変わる需要の伸びをねらって、2007年3月増産を発表しています。アメリカの子会社セプカが年間生産力を1万2千トンから1万8千トンに引き上げる計画で、国内の鹿島事業所の年間2万3千トンとあわせると4万1千トンになります。今後はこのスチレン系 と並んでアクリル系にも力を入れるのでしょう。

   熱可塑性エラストマーやポバール樹脂などの化成品・樹脂部門はクラレの中核事業で、〇八年三月期に同部門の売上高は二千三百五十億円を見込んでいます。
また2003年1月から本格販売されたミクロレベルの技術から生まれた高級ポリエステル繊維<ソフリナ><アマレッタ>シリーズは<パーカッシオ>の誕生で、天然皮革に近い質感が増し、人工皮革衣料や資材向けの生地として注目され、ゴルフシューズやパソコンのマウスパッドにも使われています。人工皮革の分野ではクラリーノも有名ですが、靴を始め学童用のランドセルも7割がクラリーノを使っています。2007年4月の発表では「天皇杯・皇后杯全日本バレーボール選手権大会」の女子用大会オリジナル球としてクラリーノを使ったミカサ社製「MIKASA」バレーボールが採用されました。2006年12月の発表では原料に特殊なポリウレタンを活用して高耐久性にしたクラリーノを開発しドイツでも採用されたと言います。この製品を使ったランドセルは9万300円という高価格で発売されます。

クラレは2005年12月15日、製造時に使う有機溶剤の量が従来の百分の一で済む環境配慮型の新しい人工皮革を開発したと発表しました。これは1965年に世界初の高機能人工皮革「クラリーノ」を発売して以来、40年ぶりの新製品というべきもので製造工程数も1/5に減り、製造コストを削減できます。新製品は「ティレニーナ」とよばれ、衣料品や自動車のシート、半導体研磨剤などが用途です。開発したのは従来品と同様、ナイロン繊維、ポリエステル繊維を芯(しん)に、水溶性のポバール系樹脂で覆った構造。従来は紡糸工程で繊維の周囲を覆っている樹脂を溶かすのに有機溶剤を使用し、残った超極細の繊維を芯にして人工皮革をつくっていましたが、新開発品では繊維を覆う樹脂を水で溶けるものに変更したため有機溶剤をほとんど使わず、全体の工程数も減らせたのです。  岡山事業所(岡山市)で06年6月から量産。初年度に50万平方メートル、三年後に500万平方メートルの量産を見込んでいます。

中興化成工業(東京)は高周波無線通信向けの新しいプリント基板材料を開発しましたが、この材料樹脂はクラレ製の液晶ポリマーです。

不織布分野では「フレクスター」の開発が報じられました。この不織布はスチームジェット技術と独自素材を用いたもので素材や加工技術の運用によって高吸収材、クッション材、伸縮材、吸音断熱難燃材など特色のある不織布になります。
子会社のクラレクラフレックスで作っている「カウンタ−クロス」は業務用フキンとして乾きが早く汚れが落ちやすいというので2007年1月現在不織布業務用フキンとして約70%のシェアーを持つということです。クラフレックスはスーパー繊維の一種で高耐熱性を特長とするPPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維を、<マジックテープ>のフック部とル−プ部の両面に使用した高耐熱性面ファスナー<ニューエコマジック>耐熱タイプを開発し(特許申請中)、2007年3月1日より新発売します。消防服のファスナーなどに使われ、従来持っていた部分的な耐熱性の欠如をカバーするでしょう。

クラレに必要なのは次のヒット製品ですが、2003年中期経営計画の見直しに伴って研究開発体制の強化を打ち出し、光デバイスなど六つの重点研究を設定しました。国内ではディスプレー材料などを開発するオプトデバイス商品開発センターを新設し、そこでの成果を速やかに中条事業所で生産化する作戦です。

2005年1月4日の日経産業新聞によると、液晶パネルのバックライト部分を一体化製造することをクラレは2005年4月から始める(ミラブライト)ということです。加工工程を簡略化するのみでなく、パネルの映像の画質も向上するということで、さしあたっては15インチ換算月産10万セットでスタートしますが、08年には月24万セット年商30億円の事業に育てるということです。

2005年10月13日クラレは茶谷産業との共同研究で超高輝度無機EL材料の開発に成功したと発表しました。これは一大ニュースとなりました。従来の青色無機ELの駆動には100〜200ボルトの交流電源を必要としましたが、この材料は3〜10ボルトの直流で動き、しかも輝度は従来の無機材料が100カンデラ/uであったのに対し、35万カンデラ/uもあり有機ELの1000カンデラ/uをも凌いでいます。耐久性は大きく、今後白色ELの開発も進め、2006年秋にはサンプル出荷、2008年3月期には1000億円の売り上げを見込んでいます。2006年4月無機ELを事業化するために、クラレと茶谷産業は折半出資会社「K・C ルミナス」を設立しました。その後いっこうに実現しない事業化にいらだちを示す株主もみられ株価の低迷も起こっています。クラレの発表では当初の2006年秋のサンプル出荷も、未だ想定した開発段階に到達していないということで、今後この会社をクラレの主導下に置き、開発力の強化を図ることとし、2007年3月22日のてこ入れ策では出資比率をクラレ90%とし、社名もクラレルミナスと改め、社長も交代させました。クラレは液晶テレビパネルが大きな収益源となっていますが、この発光源に画期的な無機ELを使おうと思っているのでしょう。無機EL が成功しなくても別段困ることはないのでしょうが、成功すれば画期的な液晶パネルが誕生します。クラレルミナスの新社長櫛田浩一氏はその経歴から見ると、少なくともこの無機ELの企業化が可能なのかどうかの最終判断はできる人だと私は見ています。

今後の中国の発展をにらんだ布石も行われており、クラレの中国進出は急ピッチで進み出しました。浙江省嘉興市の人工皮革「クラリーノ」を生産する禾欣可楽麗超繊皮(嘉興)は、クラレの出資比率は33.4%、年産400万トンです。また、メタクリル樹脂キャスト板生産設備(3000トン/年)を生産する可楽麗亜克力(張家港)は、クラレグループの全額出資です。5億円を投じて新工場を建設しましたが、これは富裕層が増加し、またマンション建設ラッシュで浴槽需要が急増しているため高級バスタブなどの需要に当てるためです。アクリル樹脂を原料に作る人工大理石の量産にも入る計画です。また、寧夏自治区の世界有数の良質無煙炭鉱山のある石嘴山に建設していた活性炭製造工場(可楽麗化学環境化工)は2005年9月8日竣工しました。当初は年産1000トンですが、2009年末には5000トンを、将来的には10,000トンを目標としていて大部分は脱臭・下水浄化用に日本へ輸出されます。活性炭の世界市場は75万トン/年程度ですが、クラレケミカルは現在耐久性の高い高性能の活性炭を年産3万7,500トン製造しています。

活性炭に関連しての話題に子会社のクラレケミカルが活性炭を利用した窒素発生装置を拡販するというニュースが見られます。これまでは食品の保存や青果の鮮度保持、ビールの搬送などで窒素は使用されてきましたが、最近では無鉛ハンダの基板実装などで窒素が必要なことから、基板メーカーなどに販路を拡大するのが目標です。鶴見工場は年産22500トンですが、2006年7月にはフィリピンの合弁会社の年産能力を1万トンから1万3000トンに増やします。2006年3月期の20億円の売り上げ見通しを三年後に30億円に、10年後には250億円に増やすことを目標にしています。窒素発生装置「クラセップ」は、装置に取り込んだ空気中の酸素分子を、活性炭の表面の微細な穴で吸着し、粒径の大きい窒素分子と分離する仕組みで、最高で99.99%の高純度の窒素ガスを製造できるといいます。規模にもよりますが、「クラセップ」の方が液体窒素より低コストで済むといいます。また備前市の工場ではハイブリッド車の補助電源やパソコンのバックアップ電源向けに需要が伸びると見られる電源用活性炭の性能向上のための技術開発に力を入れるようです。備前工場の年産能力22,500トン。
2007年2月摩耗しにくく再生可能な球形活性炭の製造に成功したことが発表されました。寧夏自治区石嘴山の「可楽麗化学環境化工」で製造し鶴海工場(岡山県備前市)で仕上げます。

さらに未来を指向したものとしては2004年4月、初めて海外での研究拠点をテキサス州に新設し、ナノテクノロジー(超微細技術)を活用した新素材の開発に取り組んでいます。この分野での成果を待ちたいところです。

2007年10月クラレは三井物産と共同でカ−ボンナノチューブをポリエステル糸に均一に塗りつけて帯電防止性の高い衣料用繊維を開発したと報告されました。「ナノ素材」の消費財への応用として注目されます。カーボンナノチューブは通常の炭素より導電性が1万倍高い特性を持つのです。年10億円以上の売り上げを見込んでいるようです。
この分野の成果かどうかはあきらかではありませんが、クラレは燃料にメタノールを使う「ダイレクトメタノール(DMFC)」方式の小型燃料電池分野に参入します。この方式では、メタノールから取り出した水素イオンが電解質膜を通過する際、発電します。従来の膜は穴の大きさがまちまちで水素イオンだけでなくメタノールも通過しますので、メタノールに押しのけられる分、通過する水素イオンの数が減り発電効率が悪い難点がありました。開発された電解質膜は高分子膜加工技術を応用し、メタノールに比べて直径が小さい水素イオンを選択的に透過させる超微細な「水素イオンチャンネル」を表面に形成したもので、水素イオンの透過度を従来の1.5倍に高めると同時にメタノールの透過量を6割に抑えました。ますます高機能化する携帯電話の電源として小型燃料電池は将来が嘱望されていますので、クラレは2008年から電解質膜と電極を一体化した「膜・電極接合体(MEA)」を事業化し、2010年に100億円弱の売り上げを見込み、新事業の柱にする予定です。2007年01月の発表では膜厚を30マイクロメ−タ−に抑え、出力は約1.3倍にした電解質膜の開発に成功したようです。

クラレは5年前に撤退したレーザーディスク事業の表面加工技術を活用し、細胞培養できる超微細チップを開発しました。これはニッケル製の金型を使ってポリスチレン樹脂基板上に数マイクロ(マイクロは百万分の一)メートル〜数百マイクロメートル単位の凹凸を形成。凹凸で囲まれた三次元立体空間が生体の細胞壁の役割を果たし、生体内と似た環境で細胞や組織を培養できるのが特徴です。EUが2009年までに動物実験を禁止する方針を打ち出しており、クラレは世界の動物実験市場を七兆円、再生医療市場を十兆円と推定。動物実験からの代替や、病気や事故で機能を失った組織や臓器を再生する「再生医療」への応用を進め、2010年以降年間百億円の売り上げを見込んでいます。新しい培養基として北大や岡山大と共同実験を進め、その有効性をすでに確認しています。2005年7月には発売を始め、2年後に100万セットに伸ばす予定で、成果が期待されます。

クラレのいろいろな面を見てきましたが、2007年3月期は原油高の影響がありましたが、連結営業利益は過去最高となり前年同期比5.07%増の402.2億円となりました、純利益も5.79%増の224.1億円になりました。配当も2006年3月期高以降8円50銭となり今期は通算18.5円(前年15円)になりました。2008年3月は通期で20円の配当が予定されています。現在の株価はクラレの潜在力の割にはまだ低いと、私は思っています。

2005年10月クラレが研究開発体制に「儲からない研究は続けない」という方針を提起したと報ぜられました。期待売上高が10億円以下のテーマはすべて見直しの対象となり、研究者も市場を意識しなければならないのです。

予てクラレのエバールに化学者として注目していた私は、生命保険の満期金をすべて投入してクラレの株式を1996年3月と97年7月に購入したのですが、2004年4月から単位株数が500株になったのでその後買い増し、合計7,000株になりましたが、家の修繕に伴って将来この古い家から立ち退かなくてはならない日も来る事を考え、株高の今のうちに一定の現金を確保しようと考え、このところ神戸製鋼、三洋化成と共にクラレも2006年3月末7000株のうち5000株を1470円で処分しました。クラレの処分に伴う譲渡益は172万円でした。家の修理も一段落した2006年6月13日2000株、7月10日1,000株、10月17日1,000株を買い戻し、さらにその後買い増しましたので現在の保有株数は7,000株、平均購入価格は一株1,163円となりました。現在買値の125.1%(先月は130.9%)です。将来の売却に備えて購入単価を上げておくのもよいと思っています。

クラレは2006年3月15日3ヶ年計画のを発表しました。この計画では既存の成長分野光学材料(ポバール)自動車部材(エバールを使った燃料タンク)と共にコンデンサーなどエネルギー関連3分野を成長事業に位置づけ、設備の能力増強投資1000億円のうち4割をこの3分野に振り向けるとの事です。この結果3分野の売り上げは2006年3月期末の570億円から09年3月期末には975億円に引き上げられます。この他新事業開発やM&Aに2000億円を設定していますが、この中に無機ELや前に書いた小型燃料電池が含まれています。

クラレは企業買収の目標にされる可能性が高いと判断しているようです。発行済み株式の6.0%に当たる2,300万株(300億円を限度に)の自社株買いを実施すると発表しました。期間1年を掛けます。

日立金属。旧住友特殊金属は、ネオジム磁石のトップメーカーでした。住友特殊金属時代、住友金属が大株主として2,029万2千株を保有していましたが、経営改善のためにその内1,829万株を2003年7月21日、日立金属に売却。住友特殊金属は日立グループ入りし、NEOMAX社が誕生しました。2006年11月7日日立金属は株式公開買い付けに踏み出し、NEOMAX社の100%子会社化に乗り出しました。私のNEOMAXも公開買い付けに応じようかと一端は思いましたが、早めに手を打とうと若干の損失覚悟で2490円で売却し、代金に追加もしてTOBを掛けてきた日立金属3,000株をまず購入し、残金でクラレ500株・シスメックス200株・三洋電機1000株を購入しました。この段階で購入した日立金属はその後株価をのばし、結果的には2割高の公開買い付けに応じた場合よりもゲインがありました。

子会社になった株式会社NEOMAXカンパニー(日立金属が94.2%の議決権を持ちます)が製造するネオジム磁石は世界的に大きい需要があるのですが、原料は鉄・ボロン・ネオジムで、これを燒結後磁力を加えて造ります。原料のうちネオジムの輸入価格は2000年には1キロ18ドル前後でしたが、バブル崩壊後2003年には7ドルに下落しました。それが現在は10ドルに値上がりし、この上昇基調は当分続くと考えられています。これは中国政府が環境問題を理由に2004年7月大半のレアアース精錬工場の操業を停止しているからですが、ほんとうの理由は価格引き上げにあるというのが見方です。2007年6月現在まだ中国でのネオジムの価格の高騰が続いています。前年比3倍になっています。ネオジム磁石はハイブリッド車に必要ですから現在も生産拡大に乗り出しています。2008年までに126億円を投じて生産能力を20%増し480トン程度にするといいます。日立金属ではネオジム合金の調達量は全年同期比14%増と見られています。

NEOMAXはフェライト部門でも新組成の高性能磁石を発明し、ネオジム磁石に比べ費用対効果が優れ量産体制が整備されているとのことです。

日立金属の2007年3月期決算では、売上高6463.1億前年同期比9.4%増、経常利益は516.3億前年同期比14.0%増となっています。配当は前中間期比1円50銭増配で1株5円となりました。

NEOMAX時代、2002年に買った分は非課税の特典がありますので2005年9月15日1,000株を売りました。253万円の利得がありました。この代金で改めてホギメディカル、クラレ、三洋化成、三洋電機、ソニーを買いました。年が明けて家の修理が必要になり、その資金にNEOMAX1000株を4000円で処分しました。342万円の無税利得がありました。その後2006年6月には2200円台に下がりましたので私の目から見ると低く思われたので1,000株を2,270円で購入し最終保有株数は2,000株でした。この売却の収益は2,000株で93万円でしたが、これはこれまでのすべての収益とともに固定化しました。住友特殊金属株として3,000株を保有して以来のこの会社での収益を通算すると688万円になります。

結局11月15日目論見通り、NEOMAXの処分費で日立金属の株式を3,000株購入しました。価格は一株1,230円でした。現在購入価格の115.8%(先月は108.3%)です。日立金属は2007年3月期営業利益は547億円(前年同期比15.2%増)純利益221億円(前年同期比28.5%増)となっています。

ホギメディカルも変わった会社です。72歳のワンマン前社長のもとで手堅い経営を続け、貸借対照表を見ても固定負債で長期借入金と見られるのは13億円で筑波キット工場設備投資資金としての転換社債100億円は2006年3月期には償還される事になっているからです。この新工場は109億1400万円の費用を投下していますが、既に完成し、2003年6月には本格操業に入りました。顧客からの特注品をキットにするのに1万点の部材から数十点を選び出しキットとしてセット化するのですが、この工程を自動化するもので世界に類を見ないものです。特注受注から出荷までを4日間で完了してしまうのです。医療費の圧縮に伴い手術を行う病院が中核化され、そこでは手術の効率化が計られるとの見通しの下、2001年のキット市場規模57億円が今後2000億円!規模に成長するとの予想です。キットは「オペラマスター」と命名され、「オペラマスター」は今後この会社の主力分野とされています。病院とキット工場とを直結する受注システムであるだけでなく、病院の手術予定・人員管理・部門別、患者別、医師別の原価管理機能も備え、これを病院に無償提供することで、新工場を全国の病院の手術用具供給拠点にしようというのが同社の狙いだといえます。2004年1月16日ホギメディカルは、一時、前日比ストップ(500円)安の4390円まで売り込まれました。私の見るところでは医療機関にまだホギの先見的な考え方が受け入れられていないようです。外科手術の領域でもかっての名人技の時代は過ぎ去りつつあり、手術用メスでも替え刃を使い使い捨ての時代になってきました。そこへ現在の看護師不足です。いよいよ院内の人手不足をカバ−するために外注の取り入れを計らざるを得ない時代です。ホギはこのような時代背景に沿った作戦を世間に問うているように見ています。
医療報酬の制度改革、日本医療機能評価機構の認定を受ける病院が増加していますが、認定のためには経営の効率化が必要であり、さらには2005年4月からの改正薬事法などの影響で、受け入れる機関が徐々に増えて来ると思っています。しかも一度受け入れると、もはやこのシステムはその医療機関に絶対的な利便をもたらすことは確実ですから、蜘蛛の巣にひっかかった虫のように抜けることは出来なくなるでしょう。株価も2005年4月29日現在4820円ですが、2005年3月には5320円、7月には5,920円、10月末には6,400円、2006年8月5,320円、2007年6月5,500円と回復の兆しが見えます。

創業以来43年、営業報告書は毎回明るい確信に満ちています。2004年3月期は120億円を投じた新設キット工場の償却費負担があり、純利益は32億2500万円でしたが、2005年には「オペラマスター」が寄与して34億9400万円となりました。2006年3月期には37億7300万円に、2007年3月期は36億円でした。株主資本利益率(ROE)も優秀で、2007年3月期の株主資本利益率(ROE)(一株あたり純資産に対する一株あたりの当期利益)は7.59%(2006年3月期8.56%)、会長の目標は10%で既に2002年3月期の報告でも実現が射程距離に入ったと述べています。他の会社はROE8%を将来の目標としているところも多いのです。持ち株各社について2007年3月期で次の比較表を作ってみると、この会社が資本を有効に使って利潤をあげていることがわかります。また、クラレ、日立金属、神戸製鋼、シスメックスも意外に健闘していますね。三洋電機は少し経営の改善が見られるようになってきました。


	      総資本利益率(ROA)	株主資本利益率(ROE)	総資産経常利益率
 ホギメディカル    6.29(6.69)             7.59(8.56)              10.66(11.03)
 クラレ         4.53(4.53)	          6.45(6.50)               7.38(7.00)
 三洋化成      2.05(2.38)                3.47(3.74)                  5.40(5.99)
 日立金属         3.73(3.16)	           11.66(10.03)                8.72(8.34)
 神戸製鋼         5.08(4.25)	       19.55(18.60)                8.49(8.90)
 ソニー           1.23(1.76)                4.07(6.24)                 2.70(1.65)
 西部瓦斯	      1.17(1.00)                4.92(4.36)                2.14(2.77)
 三洋電機        -2.20(-8.65)             -12.69(-59.51)              -0.63(-6.97)
シスメックス      9.55(8.99)               13.45(12.50)                14.39(14.51)

     ( )内:前年同期

(ホギメディカル株は一株額面50円、売買単位は100株)。1998年甥がこの会社に就職した記念に4770円で300株買ったのが始めでした。2000年末には100株買い増しました。最近この会社はIT化に積極的で、新本社はブロードバンドを使って営業所・工場・研究所が結ばれており、テレビ会議も活発なようです。新キット工場の駆動もITで行われます。前社長である会長の指導が徹底しており、正に会社の成長は会長(持株比率トップで17.5%)の卓越した見通しと決断によるものと思います。今期も、新製品群の売り上げ増大拡大を経営のテーマとし、今後の増収増益に自信のほどを示しています。2000年3月1日東証二部から一部に上場した時に、株価がほぼ7,000円近辺に飛昇し、その後下がりました。ホギの現在の株価低迷は一般的な医療費の圧縮を背景に、2005年3月期減価償却費がピークに達し24億5200万円が予定されるので収益を圧迫すると見られ、新しい成長が期待できるのは2005年3月期以降と2004年春の事業報告に書かれていたのも一因かと思われます。その後ホギは製造ラインに新規に投資を決定しましたので、成果が現れるのは2009年になりそうです。2004年10月12日新たに中期経営計画が発表されました。この計画の終期は2009年3月期となっていますが、これを見ますと、「オペラマスター」プロジェクトに強気で、2006年対応設備39億1500万円、2007年には配送センターなどに44億300万円、2009年には滅菌センターなどに77億300万円の新規設備投資が計画されていて、年々約25億円の減価償却が継続して必要になっています。純利益はこの間2005年3月期の35億4400万円から59億8800万円に着実に増加して行くと予想していますから、ここ数年はたとえ株価が下がり配当が増えなくてもあわてることなく温存して成長を見ていこうと思っています。ともかくオペラマスターの浸透普及にこの会社の将来の命運は懸かっていますが、私は保木会長の乾坤一擲の決断に賭けています。オペラマスターが失敗するとホギは倒れるくらいに重いプロジェクトだと思います。2005年3月期のオペラマスター採用実績は17件でしたが、2006年3月期の実績は34件に、9月期末で53件に留まりました。2007年3月期末目標69件でしたが、伸びは予想を下回り、累契約件数は66件でした。私はいずれ等比級数的に採用が伸びるものと見ていますが、ホギでも08年3月には106件、11年3月には235件を目標にしています。オペラマスターの売上高は2006年3月18億円でしたが、2007年3月期は31億6400万円になり、目標の31億円を上回りました。 オペラマスター売り上げは、今後さらに拡大が見込まれることから、同工場内に専用ラインを新設、従来ラインとあわせて二百施設まで対応できます。社長(現会長)の成約目標は1,000!施設でしたから現在の到達度はまだ低調で、このプロジェクトの未来をどう判断するかが投資するか否かのキーポイントです。

2007年6月28日付で保木潤一専務が社長兼最高経営責任者(CEO)に昇格することになり、保木将夫社長は会長に就任することになりました。かって一端社長に就任させた潤一氏を再び降格させ、将夫氏が自ら社長に復活した歴史を回想しますと、保木将夫氏がオペラマスタ−路線成功の目途を持ち、全責任を子息に譲っても大丈夫と判断したのだと見ています。

医療費圧縮の流れで医療機関の経営が苦しくなっているからこそ、オペラマスターはいずれ広く受け入れられるだろうという私の判断とホギ会長の手腕に懸けた投資で冒険とは思いますが2005年1月と2月、9月に買い増ししましたので、現在持株は1,000株となりました。ここ2,3年、目先の現象にとらわれる投資家も多いことでホギの株価は低迷するでしょうが、3年後には克服されると見ています。投機的動機が私にもあることも否定しません。不織布関係でも新製品を投入しています。株価は現在、買値の104.7%(先月は95.6%)です。平均購入株価は1株5,167円です。これまで株価の上昇を目指して無償交付はしない、配当は増やさず株価に反映させる方針でしたが、2005年3月期から方針が転換され、期末配当金は一株あたり12円から24円になり2005年度の配当金は48円になりました。また2006年6月の株主総会で発効する新しい定款の第45条のAには年4回配当金を支払うことが明記されました。2006年8月31日には第一四半期分として一株20円の配当がありました。現在年間80円の配当があります。敵対的買収に対する防護措置なのかも知れません。

2007年3月期は連結売上高272億9300万円(前年同期比3.25%増)、連結営業利益60億5800万円(前年同期比2.29%減)、連結経常利益61億3900万円(前年同期比4.64%減)と報告されています。純現金収支(フリーキャッシュフロー)は前期比6.4倍の47億円になる見込みで2010年からの新規設備投資140億円も自己資金でまかなえるようです。経営の健全性が見られます。

神戸製鋼は鉄鋼業界にあってメチャメチャ値下がり、株価は一時額面割れもしました。あの大震災でもラグビー部の活動は維持し、インターネットでも、社内の新しい動きを広く紹介し、また、研究活動の成果を発表するなどそのチャレンジ精神が好きで、久しく無配でしたが株を持ち続けました。歴史の長い鉄鋼ですが、やはり産業の根幹であり、アジアへの輸出も盛んです。その上最近の神戸製鋼は新しい展望を持ちうる体質に変貌したと思っています。2007年度の設備投資は前年費15%増(単独)の1,100億円で生産性の向上と高級品への生産シフトをはかると言います。

1998年秋新しい2倍の強度を持つ強い鋼材の研究が業界と科学技術庁の金属材料技術研の共同研究で成功したと報じられました。神戸製鋼の重点戦略材にこの“ハイテン”があります。この鋼板は自動車のエンジンマウントやサスペンジョン用に開発され従来よりも約10%軽い高張力鋼板で、国内40%とトップシェアを握っています。当初神戸製鋼内部でも白眼視されていたようですが、加古川製鉄所の世界最速冷却設備「連続焼鈍設備」でカーボン、マンガンなどの微量添加成分を抑えて加工性を維持した高張力鋼板を実現したのです。2005年秋から生産能力を7割増やし、年産70万トンとなっています。加古川製鉄所(兵庫県加古川市)に二つある鋼板のメッキラインで自動車のボディーに使う溶融亜鉛メッキ鋼板の製造に2006年12月成功し、加工性が高いのですでに国内自動車大手が2007年から採用を決めています。20〜25%の軽量化が可能です。このことが報ぜられた12月26日株価は410円に上昇しました。自動車は国内外の生産好調に加えて、安全性向上と軽量化に向け一台当たりの高張力鋼板の使用量が増加。船舶向けも造船ラッシュにより、日本勢の昨年の鋼材受注量は一昨年に続いて二ケタ増の勢いです。また、2001年からハイテン技術をアメリカ大手のUSスチールに技術供与しています。同社との関連では、2004年11月その年から発足し、高い技術や独創的な物づくりを表彰する「日経ものづくり大賞」の海外部門で、優れた神戸製鋼のメッキ技術とハイテン技術をベースにした米国オハイオ州にある神戸製鋼ーUSスチール折半合弁会社プロテックコーティング社が受賞しています。同社は世界最大規模の溶融亜鉛メッキ鋼板の生産拠点で、北米唯一の抗張力鉄板(ハイテン)も作っています。現地での2004年のハイテン生産量は2002年実績の2.3倍に増やすことも決定しています。工場は神戸製鋼の加古川製鉄所の設備をそのままコピーしています。イタリアの特殊鋼大手ルッキーニ社ともハイテン技術で提携していますから、これで日米欧に亘り自動車業界からの需要に応えられる態勢ができたとみます。

最近、溶接部が割れにくい厚鋼板を開発しました。一般の鋼板は溶接時に加熱すると結晶が大きくなり、固焼きせんべいのように割れやすくなりますが、新製品は加熱時に結晶が細かく分割されるようにしてあります。高層ビルの柱などに使い、2005年度に年間5000トンの販売を目指しています。

高速道路の自動料金収受システム(ETC)などは不要電波の排除が求められます。神戸製鋼と青山学院大学の橋本修教授は共同で、電子機器類の誤作動を防ぐ電波吸収シートの低コスト化に成功しました。開発した電波吸収シートは、ゴム材に厚さ5―20マイクロメートル、大きさが数10マイクロ―100マイクロメートルほどの扁平(へんぺい)形状をした酸化鉄の粉末を練り込んでおり、高価な他金属を添加しなくても酸化鉄の含有量を調節することで、吸収する電波の周波数を調節できたのです。鉄鋼製品の製造過程で発生する酸化鉄はこれまで有効な利用法がなかったのですが、開発した電波吸収シートに使えば鉄鋼製造の原材料費を抑えることもできます。

神戸製鋼は「セグレス」の増産も計画しています。セグレスは鉄粉の中に黒煙や銅を均等に分散させた合金粉末で、焼固めてギアなど多彩な自動車部品を造るのに使われ、高付加価値品で収益が高いのです。

得意の線材では神戸製鋼と金属材料技術研の共同研究で新しい超伝導線材(コイル材料のニオブ・スズ化合物のスズ比率を15%から16%に増やし、それに伴うコイルの亀裂発生を抑える新材料加工法を開発)を開発し、世界最高性能の930メガ(メガは百万)ヘルツのNMRを開発していますが、2005年7月の発表では、東海大学の太刀川恭治教授らの成果をもとにタンタルと呼ぶ金属を活用する製造法を確立。加熱のタイミングなどを最適化し、超電導材を多く含む、高品質で一キロメートルつながった線材を作製することに成功したといいます。電流密度は従来製法に比べて六割以上高く、この線材を使えばNMRの性能が向上し1ギガ(ギガは十億)ヘルツ級の開発に道が開けます。たんぱく質などの解像度が高まり、これまで観察が不可能だった複雑な構造が分かり、薬の設計などに役立つといいます。また2005年1月28日の日経産業新聞は放射線医学総合研究所と共同で動物用の新MRIを開発し子会社での製造販売を始めると報じました。

ホンダは2004年10月7日、高級乗用車「レジェンド」を八年ぶりに全面改良、発売しました。走行状況に応じ四輪すべてに駆動力を配分する世界初の四輪駆動システムや300馬力の高出力エンジンを搭載。「スポーツカーに負けない走り」(福井威夫社長)が売り物だといいます。通常の四輪駆動システムでの駆動力配分は前後、左右のいずれかに限られますが、レジェンドには新開発の「SH―AWD(スーパー・ハンドリング・オール・ホイール・ドライブ)」を採用しています。この電磁クラッチ装置ですと駆動力を四つの車輪それぞれに最適配分でき、カーブを曲がる際の車の安定性が大幅に高まるのだそうです。神戸製鋼はSH―AWD向けに、通常の炭素鋼よりも炭素や窒素を低減させた線材・棒鋼をコイルの芯(しん)(ソレノイド部品)材料として供給。電流を流した際、より強い磁力を得られるため、部品を小型化でき、従来材料に比べ最大約三割軽量化できました。神鋼は「各自動車メーカーに今後採用を呼びかけたい」と意気込んでいます。

直接還元製鉄では米ミドレックス社が開発した還元剤に天然ガスを使う「ミドレックス法」が主流ですが、1983年には米ミドレックス社を買収、完全子会社化しています。最近神戸製鋼はサウジアラビアのハディード社で「ミドレックス法」設備の増設工事を受注し能力を現在の約150万トンから約320万トンに増強し、またアルゼンチンの鉄鋼メーカー、アシンダールでも拡張工事を受注し、生産能力を二五%増の年百二十五万トンに高めます。このほか、カタールのカスコ社でも生産量年150万トンのこの方式の製鉄所を280億円で2005年2月末受注しました。ロシアのLGOK社、マレーシアのライオングループ、オマーンのシャディード社からも受注しています。また米ルイジアナ州の既存設備のトリニダードトバゴへの移設・拡張工事も行いました。直接還元鉄プラントはこのように好調で、年間600億円受注です。
ベネズエラの1987年当時遊休状態にあった製鉄所を、リース契約してミドレックス法で再生し累計1350万トンの製鉄を行い、契約満了で国営ガイアナ開発公社に引き渡しました。世界最初の成功例です。
神戸製鋼は還元剤に石炭を使う新還元溶解製鉄法(ITmk3)も開発しています。2002年アメリカ・ミネソタ州でも州の「21世紀ファンド」からの融資も得て合弁のデモンストレーションプラントの建設計画が開始されていましたが、「メサビナゲット プロジェクト(ITmk3実証プロジェクト)」は2003年5月下旬より実証運転を開始しました。6月7日からは24時間運転で毎時2トンの試験生産を実施しています。2007年からはいよいよ年間50万トン程度の商業生産に入ると報ぜられました。50万トン規模ですと高炉に比べて約2割生産コストを抑えられるといいます。私は新しい製鉄法として大いに注目しています。

2005年5月20日神戸製鋼は中国の中堅メーカー石家荘鋼鉄(河北省)とファストメルト方式(ITmk3よりも製品の品質は劣るようです)の銑鉄製造合弁会社を年内に設立すると発表しました。生産能力は年間50万トンで、2008年春の稼働を目指しています。中国政府はミニ高炉建設を禁止していますので中国で今後も提携先を増やす予定です。今回の計画では、総投資額1億ドルの3分の2を石家荘鋼鉄が、残りを神鋼と三井物産、双日ホールディングスが出資し、生産した銑鉄は石家荘鋼鉄が自動車や機械の構造材となる棒鋼に使うほか、三井物産が中国や東南アジアで販売します。

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神戸製鋼所は1990年代後半から、新製鉄法の技術開発に取り組み低品質の鉄鉱石と石炭に特定の温度とガス圧をかけることで不純物を取り除く技術を確立しました。  当初は採算性などの課題がありましたが、原料やエネルギー価格の高騰で脚光を浴び、従来の製鉄法では使えない低品質の「クズ石」で高品質鋼材を生産できると、資源国から引き合いが多いのです。「鋼材需要増をにらみ、現地の資源会社と組み低コスト生産できる拠点を築くべき」との判断から神戸製鋼は、インドにもITmk3の技術を輸出します。

また、アルミ圧延品の主力工場、真岡製造所ではアメリカのアルコア社と提携してアルミの自動車ボディ材への展開を目指しているのも注目されます。自動車用アルミ板材の生産(2003年現在、200〜300t/月)も2004年には10倍まで拡大する方針です。アルミ鍛造品も自動車部品に採用され始めました。最近マツダの最新鋭スポーツカー『RX−8』のボンネットアウター(外板)パネル、インナー(内板)パネル、リアドアインナーパネルに神戸製鋼のアルミ板材、サスペンションにアルミ鍛造製品が使用されています。車の軽量化は、省エネと燃料電池車開発の立場からも世界的な課題で、まずスポーツカーにアルミ材が採用されたというところでしょうか。先に記したホンダの新型レジェンドも、ボディパネル、ボンネットやフェンダー、トランクリッドなどにアルミを採用することで、大幅な軽量化が図られていますが、日産の新しいミニバン「ラフェスタ」、高級セダン「フーガ」でも神戸製鋼のハイテンのみならずアルミ合金の押し出し材が使われています。 日産は車の5〜10%軽量化を全社目標にしていますが、車体が10%軽くなると燃費が5%削減されるとのことで、世界的な燃費削減が地球温暖化を背景に進んでおり、注目されるのは素材メーカーとしての神戸製鋼との協業を計っていることです。2003年7月 神戸製鋼、三井物産、豊田通商の3社間で、米国で自動車サスペンション用アルミ鍛造部品の製造・販売を行う合弁事業契約が締結されました。資本金1,400万ドルの出資比率は神戸製鋼60%、三井物産25%、豊田通商15%で、新会社「KAAP」はケンタッキー州ボーリンググリーン市に設立されました。その後、2005年6月に操業開始しましたが、2006年4月に2号プレス設備、同年12月には3号プレス設備を追加導入するなど順調に生産を拡大し、既に受注が確定している製品だけで、2008年前半には3号プレス設備の能力が一杯となる見込みです。軽量化効果(鉄鋳造品比▲40%)、運動性能、乗り心地などが優れていることから採用が急激に増加したのです。今回の追加投資は、このような状況を踏まえ決定されたもので、4号プレス設備が稼動する2008年4月にはKAAPの生産能力は28万本/月まで拡大することとなり、需要増に対応した安定供給体制が構築されます。神鋼は合金開発や加工技術に強いので、国内でも八割超のシェアを握っています。 神鋼大安工場のレポートも御覧下さい。
2007年3月30日の発表ではまだ試験生産段階ですが「スプレイフォ−ミング」法で世界最強の引っ張り強度を持つアルミ合金の製造に成功しました。合金技術に強い神戸製鋼らしい発明です。今後短期間で量産可能の見通しで製品はレ−シングカ−等の特殊車両、航空・宇宙機器への応用が予定されています。

自動車のバンパー部に使うアルミ製衝撃吸収部品の量産開始が2006年12月報じられました。当面日産の「スカイライン」向けの14000個/月ですが、2008年には40000個に引き上げる予定です。長府製造所で生産されています。2007年2月バンパ−の一部になる「ステイ」の製造で、アルミのパイプを穴の空いたプレートに固定するのに、パイプ中に電磁コイルを入れこれに強力な電流を流して強い磁場を発生させパイプを外側にむけ膨張させる技術を開発したと言います。これによって溶接が不要になり行程が半減します。今後電磁力によるアルミニウム接合技術が他にも応用される見込みです。
2005年10月24日日経新聞朝刊に次の記事が見られました。“省エネのカギを握る軽量なアルミ素材の鋳鍛造を手がける神戸製鋼所大安工場(三重県いなべ市)には旅客機の窓枠、乗用車部品など高い強度と加工精度が必要なアルミ材の発注が世界から舞い込んでいます。アルミは加工が難しく、日本の鋳鍛造技術が競争力を持っているためです。”

プリント配線板の製造工程で、基材の樹脂板や銅箔の間に挟み、穴を開けるドリルの衝撃を和らげたり、高温でプレス加工する際に層同士がくっつくのを防ぐために、従来鉄材料が使われてきましたが、神戸製鋼所のアルミニウム箔子会社のサン・アルミニウム工業(千葉市)は多層プリント配線板の加工時に使うアルミニウム薄板を拡販します。2008年度までに年間売上高を10億円に倍増します。
 アルミ箔を使うと、ドリル加工の精度が高められ,リサイクルが容易なこともあって、パソコンや家電の配線板でも鉄の代替として採用が広がっています。

「オンリーワン製品」の1つとして、注目されるのは2007年3月28日発表の世界初アルミ微細多孔箔を用いた屋外防音壁です。2007年度上期中に本格的な製造・販売を開始する予定といいます。これは神鋼建材工業鰍ニの共同開発で、2011年度に10億円程度の売上を目指します。
一般的に屋外防音壁は、騒音が直進的に拡散するのを壁により阻止する「遮音部分」と、その内壁側に設けられ、直進する騒音の吸収や、壁または車体に反射された音が拡散するのを防止する「吸音部分」から構成されています。この「吸音部分」に従来から多く使用されている繊維系吸音材料の替わりに、小さな孔を無数に開けたアルミ箔を用い、そのアルミ箔と遮音用のアルミ板との間に適度の空気層を確保した構造としています。将来国の内外を問わず使用が高まるかも知れません。期待出来ると思います。

注目されるのは2006年4月から「溶剤分離法による塩ビ再原料化工場(コベルコ・ビニループ・イースト)」が千葉県で始動したことです。この方式による塩ビリサイクル工場としては我が国最初のものです。

チタン関係では、日本は世界の約4割を生産しています。この国際的優位性を伸ばすため日本の生産各社は共同で新たな生産方式などの開拓を始めています。原料のスポンジ状チタンの溶解から圧延まで一貫生産できるのは神戸製鋼で、溶解の段階で成分調整できるので合金チタンにも強いのです。2004年4月5日英ロールスロイス社が作るエアバス用エンジンの合金チタン製部品2種を納入すると発表。ことにその内の一つ「高圧圧縮機ディスク用鍛造品」は最高の品質“criticalレベル”を充たすものです。年間10億円程度の受注を目標としています。2004年9月1日付で人工関節分野を分離して京セラ(出資比率77%)と合弁会社「日本メディカルマテリアル」を創設しましたが、チタン素材を担当する目論見です。航空機用に開発されたチタン合金KS Ti-9は、ドライバ−として大手ゴルフクラブメーカーに2006年秋以降相次いで採用される模様です。これは2008年から適用される高反発ドライバ−のSLE規制に適合するためです。
神戸製鋼のチタン製品生産能力は現在年間約1万トンですが、50億円を投じて加古川製鉄所を含め、チタン製品の生産にかかわる全三拠点の主要設備を増強し、年産13,000〜14,000トンに高めることが発表されました(2007年1月)。また2007年4月1日付けで加古川製鉄所技術開発センターに「チタン開発研究室」を新設し、チタン製品の技術改良に注力します。
 チタン製品は中国の発電所や中東の海水淡水化プラント向けなどにも需要が増えています。

新日鐵と神戸製鋼はチタンの用途を拡大するための低価格化をめざしています。東京電機大学と東京農工大学などが基礎技術の面で、資金面は経済産業省が支援して、複雑な製造過程の簡素化をはかり、半製品までの各工程を分断せずに実施する「連続製錬法」と呼ぶ製造技術と、チタン合金を組織レベルから制御して強度を高める技術の開発をベースとします。成功すれば飛躍的にチタンの利用が進みそうです。

最近私の気を引いたのは、次世代のアンテナ素材を開発したことです。二酸化珪素にナノサイズの微細な穴を規則正しく並べたもので優れた性能を標榜しています。また2007年8月31日の日経朝刊によると「神戸製鋼所はダイヤモンドを材料に利用した半導体で、高性能な実用的なタイプを開発した。ダイヤモンド半導体は出力や耐熱性能に優れている。次世代携帯電話の基地局など無線通信用や車載用として、半導体メーカーを通じ三年後の実用化を目指す。」という報道も注意しています。 その他少し毛色の変わったところでは、先ず省エネ効率の高いスクリュ−コンプレッサが上市され好評といいます。神戸製鋼は汎用コンプレッサーの最大手ですが、販売会社コベルコ・コンプレッサ25%、神鋼75%出資で.上海に神鋼圧縮機製造(KCMS)を設置、今年度も中型機を700台生産しますが、第2期拡張後は年産3000台に引き上げるといいます。どうやら中国市場を大きく視野に入れ始めたようです。この他放出された熱を油に吸収させこの熱い油で直接エリスリトール粉末を溶解して液状にし比重差を利用して油と分離し、融解エリスリト−ルを運搬して熱交換させるというものです。神鋼環境ソリューションとの共同作業です。アイデアとしておもしろいと思います。この「サ−モウエイ」システムもいよいよ実用化されると2007年3月14日の日経産業新聞は報じています。企業や地方自治体を対象としているようです。これも最近、本社研究所が青色レーザーによる記録に耐えうる次世代DVD基盤を開発したのを全額出資子会社コベルコ科研が商品化に成功したという報告も明るい話題です。コベルコ科研は薄型テレビのアルミ合金ターゲット材料(2%のネオジムを加えてある:ここにも合金に強い神戸製鋼が見て取れる)で世界シェア8割を握り、周辺技術も含め特許を押さえています。また2005年度ハードディスク駆動装置用ディスク基板用アルミ板の25%増産をするため、マレーシアの子会社KPTECに新工場棟建設が発表されています。インゴットの生産量は当初の170トン/年から最近は890トン/年に達しています。また神戸製鋼の開発したニッケル系合金をメッキすると抗滅菌作用の優れた鋼板が誕生しますが、このメッキ技術(ケニファイン)を外部企業に供与することも始めています。用途が広がりつつあり、従来の食品・建築分野に加え、このほど病院やオフィスの喫煙室向けの空気清浄機のタンクや貯水タンクでも本格採用されだしました。2007年2月には関市の鍋屋バイテックが半導体製造装置や医療器械向けにケニファイン処理したネジ・継ぎ手・ボルトなどの販売を始めたという報告もあります。面白い発展が見られるかも知れません。建設機械部門ではイタリアのCNHグローバル社との提携合意が出来ています。また今後急速に燃料電池が現実化するものと思われますが、必要な水素はメタノールや天然ガスから得ようとするのが普通ですが、グループの神鋼環境ソリューションは夜間の余った電気を利用して直接水の電解を行い、生成する水素を貯蔵して昼間の燃料電池に利用しようというもので、中国電力と共同で松江市で実証実験を開始しています。この方式ですと水だけが発電原料であり、廃棄物も水ですから環境保全、エネルギー保全の立場では大いに注目されます。水素の圧縮貯蔵装置にまだ問題があるようですが、アイデアとしては卓抜だと思います。神鋼環境ソリューションはゴミ処理施設であるガス化溶融炉を2003年度福井県で受注しました。鉄鋼の高炉技術の応用だそうです。また、溶接ロボットカンパニーは「ARCMAN−MP」を開発し、ユーザーの設備更新期を狙って初年度で300システムの販売を目標にしています。

2007年3月11日のメ−ルによると、神戸製鋼は溶接材料事業で世界第三位ですが、船舶や橋梁(きょうりょう)などに使う溶接材料の海外生産を拡充する方針で、今年中に年産能力を一割増の年10万トンに増やすほか、船舶などの溶接に適した材料「FCW(フラックス入りワイヤ)」の能力を拡充し、米国では需要増に合わせ、新たな生産拠点を作る方向で事業化調査(FS)に入りました。中国でも今年秋に月250トンの生産を始め、今後さらに生産拠点を新設する方針です。韓国でも今夏に25%増の年2万4千トン、オランダでも来年三月に倍増の年6千トンに生産能力を増やします。これらの増強策で2008年度の普通鋼用溶接材料の世界生産能力は総計12万トン/年に達します。
2004年4月からフル稼働している131万kw発電事業は総投資額は2000億円ですが、この発電量は独立系発電業者としては国内トップです。年間650億円の売上高、関西電力とは15年間の供給契約を結んでいますから、安定した利益として2005年3月期の営業利益は194億円でした。本業を大幅に上回る神戸製鋼を支える安定財源です。自社敷地・岸壁を使うので建設費は比較的安くできたのではないかと思います。電気代の約半分は送電コストといいますから、神戸市内での発電は省エネにも貢献します。売上高営業利益率は高く29.2%です。

2005年8月インドネシアに建設した3トン/日の実証プラントで発熱量4000〜5000キロカロリ−/kgの低品質石炭を140〜150℃の灯油で処理すると約6500キロカロリー/kgに高められることを見いだしました。処理コストは1トン当たり10ドル以下ということで、今後2010年度商業化を目指して5000トン/日の製造装置の開発に進むようです。

自動車のコネクター端子や半導体のリードフレームなどに使う銅板条(コイル状の薄板)は特に自動車向けの需要が好調で、フル生産でも対応しきれない状態が続いていますが、長府製造所(山口県下関市)に約100億円を投じ、2008年度末までに生産量を現行の約一割増の年72,000トンに引き上げます。神戸製鋼は将来の中国の発展を見越して中国進出に熱心なようです。先に記した石家荘鋼鉄との銑鉄製造合弁会社もそうですが、現地に展開している日本や欧米の自動車部品メーカーや電子部品メーカーをターゲットに蘇州市に銅合金の加工工場「蘇州神鋼電子材料」をすでに設立し、5億円程度を投資しています。2006年春に稼働開始、09〜10年には年間6,000トン超を販売、売上高40億円を目指しています。

先年、新日鐵・住友金属と業務提携しグループ化しました。三社は合併は考えていないようです。 最近は持株各社に対しても株価によるゲインもさることながら配当所得にむしろ魅力を感じています。2004年3月から9月にかけて外人株主の比率が3.2%増え、9月には12.0%となっています。神戸製鋼は配当性向を重視する外人株主の影響も今後考えなくてはならなくなりましょう。
新日鐵・住友金属・神戸製鋼の相互株式持ち合いは世界的に進むミタルの買収に対抗するためですが、ミタルがアルセロール合併で粗鋼生産量を1億2000万トンに拡大しましたので日本の鉄鋼大手5社は05年度に比べて7.2%粗鋼生産を増して08年度には8840万トンに増やす計画です。
日本は高級鋼材の生産に優れていて、特にこの鋼材を必要とする自動車業界の需要増に応えられる生産体制の構築につとめています。将来M&Aが俎上に乗ってきてもそれまでに収益力を高め株価の上昇もねらえるでしょう。

神戸製鋼は2007年3月期にはさらに業績が良くなり経常利益1,832億円(前期1,769億円)、純利益1,096億円(前期845億円)になりました。2006年4月13日発表された3ヶ年計画では2009年3月期には経常利益1800億円以上、純利益1000億円以上が挙げられていましたが、1年で達成したことになります。なお、負債資本倍率も2006年3月期の1.2倍が0.8倍以下になると予想されています。総資本利益率(ROA)も3ヶ年計画では現在の4%から5%以上を目的としていましたが、すでに5.08になっています。古い歴史を持つ鉄鋼ですが、研究次第で新しい進歩の余地がいくらでもあるようです。阪神震災をはじめここ10年くらい苦難の中を走ってきた鈴木商店以来の古い歴史の神戸製鋼ですが、2005年9月には創立100周年を迎え、絶え間のない進歩への意欲はどうやら同社を「世界最高の特殊鋼製鉄所」へ押し上げる機会へと誘導しているようです。特殊鋼製材部門には2006年9月世界でも最新鋭のブルーム連続鋳造設備が導入、操業開始されました。高級特殊鋼は生産量の70%は自動車用ですが、広州市にはホンダ・日産・トヨタの乗用車工場があり広州市に隣接する仏山市に神戸製鋼60%、メタルワン25%、協同シャフト、杉田製線各7.5%出資の特殊鋼線材加工工場(神鋼線材加工(仏山))が設立され、2006年7月量産出荷を開始しました。 神戸製鋼所は「神鋼線材加工(仏山)」に圧延設備や熱処理炉、伸線機を増設し、自動車のサスペンションバネの材料となる「磨き棒鋼」と呼ぶ鋼材の生産を倍増させるため、5億円強を投じ、2009年内に生産量を月900トンに引き上げます。製品はニッパツが引き取って現地でバネに加工、現地調達率を上げているトヨタ自動車など日系メーカーに供給する見込みです。 神戸製鋼所はサスペンションバネ用鋼材で国内シェア40%、エンジンの弁バネ用鋼材では世界シェアの50%を握ります。  仏山では自動車のボルト・ナット用鋼材の「冷間圧造用ワイヤ」の量産も始めました。月間五百トンの販売を目指します。また、江蘇省江陰市では主に高級車のバネに使う「オイルテンパー線」と呼ぶ特殊な線材の量産を年内にも始めます。
神鋼は江蘇省にも同種の工場の建設を進めています。眼はアジアに向けられているのです。

 

これまで株を買い増してきましたが、これは2004年春の第二号火力発電所始動に伴う利益や、今後燃料電池車が実用化されるとこの会社のハイテンやアルミ製自動車ボディ材が軽量化の点で注目されるのと、チタン製造のシェアーの進展やこれまでアメリカの会社が独占的に供給してきた使用済み核燃料の貯蔵容器材料に使うホウ素アルミニウム合金の生産を始め、安価なコンクリート製の使用済み核燃料貯蔵容器など鉄鋼会社のなかでユニークに特化したのをおもしろく思っているからです。連結子会社コベルコ建機が中国で進めていた二カ所目の油圧ショベル生産拠点も2005年10月完成し、油圧ショベルの生産能力はこれまでの2倍、4000台/年になりました。これは2008年北京五輪や2010年上海万博などをにらんだものです。しかし2005年9月中間期、コマツや日立建機が海外売上高を前年同期比三割前後伸ばしているのに対し、コベルコ建機は中国での販売減少が響き2.9%減。ヨーロッパでの販売力強化のため、オランダの建設・農業機械大手、CNHグローバルとの連携を強化します。

例えば自動車のエンジンに組み込まれている弁バネ用鋼材は世界の50%を供給し、2006年にも現行弁バネ用鋼材を上回る強度の線材を開発しました。また半導体の内部配線に使うリードフレームの分野で添加金属を減らした新しい銅合金を開発しました。リードフレーム向け銅合金では高誘電率タイプの「KFC]は神戸製鋼が開発したものですが、新しい銅合金は「SPKFC」と呼ばれ5〜10年後には高誘電率タイプの標準になるものと神戸製鋼では考えています。2007年7月から長府製造所で量産が始まります。


神戸製鋼の強みは、「特殊鋼」をはじめいろいろな特徴ある合金の製造にあるように思っています。

1991年9月に1株776円で1000株を買ったのが手始めでしたが、その後株価はどんどん値を下げ、時には額面を割り、はかない期待からナンピン買いを続け、一時は3万株になりましたが、ポートフォリオの構成上1万株は184万1000円の損失がありましたが処分し、クラレ500株とホギメディカル200株を購入したのです。

2006年3月30日457円になったので非課税分5,000株を売却しました。売却純益は203.3万円。この結果残存する1万5000株の平均購入単価は1株110円になり、時価は買値の391.4%(先月は385.0%)となりました。

2007年3月期は一株4円の配当がありました。これは今期の連結決算で売上高1兆9103億円(前年同期比2,430億円増)、経常利益1,830億円(前年同期比63億円増)、純利益1,097億円(前年同期比251億円増)だったからです。

 2007年4月20日神戸製鋼所は天然ガスから高純度の水素を80%回収することに成功したと報告されました。この80%という数字は経済産業省などが2010年の目標としていたものです。水素は燃料電池の普及に必要なものです。  天然ガスを精製して得られる改質ガスには、水素や一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)やメタンなどが含まれます。これまではCOの除去が難しく、水素回収率は70%にとどまっていました。今回このCOの除去効率の向上により、純度99.99%以上の水素を80%回収できたのです。新しい方法は銅化合物を添加したCO吸着剤の開発で、吸着装置の大きさも三割程度縮小できるということで燃料電池車の本格普及にも欠かせないものです。将来を考えると有望な発明です。

ソニーの問題点は「らしさ」の喪失だと思います。ソニーらしさというのは、他社とは独立に技術的な優位性を保つことであり、トリニトロンの発明などに見られたものです。最近はこのトリニトロンの成功が逆に働き、他社のディスプレイ液晶化から遅れを取りました。また、プレーステーションに見られるようなゲーム機路線は私はソニーらしくないと思っていましたが、ソニーコンピューターエンタテインメントの久多良木前社長の言葉を読んで考え方を変えました。「ゲーム機の最も重要な特徴の一つが「リアルタイム性」と「リアル・レスポンス性」の追求にある。・・・最新ゲーム・プラットフォームは常に、最先端技術へのチャレンジの場でもあった。」等々の言葉がそれです。立花隆氏によるとPS3は正にス−パ−コンピューターだと述べておられます。

ソニーが松下と共に推進しようとしているブルーレイ(BR)DVDの尖兵としてゲーム機を利用する動きには今後の成り行きを注目したいと思います。ソニーによるMGM買収も考え、私は映画などBR−DVDなら大容量ですから映画館などでも十分利用できるのではないかと考えています。現状では2006年3月期連結決算では純利益1236(前期1638)億円で、純利益は前同期比24.5%の減となりました。少し芽かなと思った「感動価値の創造」をめざしてスタートした「QUALIA」ブランドの高級品路線もみのりませんでした。営業的には、今後ITのブロード化が進み、テレビ放送も画期的なデジタル化が進むので新規の需要が見込めます。2005年4月13日、欧州における今年の液晶テレビの販売台数を昨年の三倍の百万台強に引き上げる計画を明らかにしたのは多少業績に期待を持たせてくれます。

このように苦況にあるソニーですが、人々のデジタルコンテンツ利用が進むと思うので、この方面でのソニーの占める位置は益々大きくなると読んでいます。日経ビジネス2007年5月7日号によるとストリンガ−会長の哲学は「まずコンテンツやサ−ビスがあり、それを生かすハ−ドを開発する」で、この路線と久多良木氏のSCE(ソニ−エンターテインメント)会長辞任が関係しているようです。2003年11月6日音楽制作事業会社ソニーBMGを独ベルテルスマンと合弁で立ち上げると発表されましたが、それもこの動きの一つの表れかと思われます。ドコモと提携して進める新しいマネー機能を持った携帯電話の開発もあるいは画期的なものに成長するかも知れません。期待が持てます。最近の発表で注目するのは今や代表的な携帯端末となりつつある携帯電話向きに高画質エンジンを搭載し、縦横比16:9のTFT液晶モジュールの開発に成功したことで、今後、携帯電話市場を大きく変えるかもしれないと思っています。
新規研究費の増額は意欲的です。今年度の研究開発費は5,100億円ですが、今後3年間で3000億円をかけて不採算事業からの撤退や人員削減などのリストラを進め、一方で半導体、撮像素子(CCD)など最先端のキーデバイス開発の設備投資と有機EL(エレクトロルミネッセンス)など次世代商品の研究開発に5000億円ずつ、計1兆円を投じます。2007年4月有機ELテレビの量産の目途がついたとの発表がありました。2〜3年には30−40型の薄い有機ELテレビが量産されるかと思われます。

2005年2月7日米IBM、東芝、ソニーは、共同開発を進める次世代の超小型演算処理装置(MPU)の試作品を初公開しました。一枚のチップに人間の脳に相当する中枢回路(コア)を九個持ち、総合性能は一つのコアを持つ最新型パソコン用MPUの十倍といいます。複数コアのMPUは最大手のインテルも開発中で、半導体技術の新しい流れになってきているようですが、4社によるこの次世代MPU「セル」の発表は大きい波紋を広げるかも知れません。年内にIBMとソニーがそれぞれニューヨーク州と長崎県で試験生産に着手、来年から本格生産を始め、東芝も大分工場での生産を検討中でした。しかし最近ソニーはゲーム機PS3用のMPU生産は自社では止め東芝に生産を委ねるようです。売却額は1,000億円といわれます。東芝は新会社を立ち上げるようです。

デルコンピュ−ターなどに使われたソニーのリチウムイオン電池の欠陥は512億円の支出を招き業績に暗雲をもたらしました。現在ソニーは旧経営陣時代の負の遺産のために困難に直面しているようです。この段階を超えなければ未来は開けないでしょう。現在株価はむしろ上がる傾向です。私はまだ克服の可能性を信じて株式を買い増しました。

ソニーの株式は当初日立2,000株売却分代金で2002年10月1日200株を1株あたり5,230円で、同年10月2日100株を単価5,100円で購入したのです。最近では2003年2月25日4,480円で100株を、さらに同年3月6日4,340円で100株、同じく4月9日4030円で100株、さらにオーロラ韓国を売却してソニー株100株を11月10日4010円で買い増しました。今は経営陣が変わったので多少夢も持てるのですが、当時は明るい話題もなく2005年8月22日400株を売却しましたが、ソニーの将来に賭ける気持ちで9月と12月に100株ずつ買い戻しました。2005年12月に買った100株は単価4,530円でした。2006年1月にもBRAVIAの欧米での売れ行き好調を見て、1株5,020円で200株買い増しました。最近では2007年4月有機ELテレビの発表や次世代DVDについてのブルーレイ優位への確信の談話発表、リチウム電池での損失があったにもかかわらず業績の復活、など明るい話題に接し、危機は去ったと判断しましたので200株を1株6500円で買い増し、さらに月末100株を6420円で買いましました。現有株数1000株になりました。資金はユーロの相場が高くなり162円(1ユーロ)になりましたのでユーロMMFの全額売却と豪MMFの一部売却で調達しました。ブルーレイについてはいよいよ増産体制に入ったようです。2007年4月100%子会社のソニー白石セミコンダクタ社で青紫色レーザーの生産能力月産170万個体制を確立しています。 ソニーは現在平均購入株価は1株5,040円で高値買いでしたが最近では株価は約7,000円ですから山は越えたと見ています。現在購入価格の110.5(先月は110.7)%です。新しいウオークマンやBRAVIAの人気からかも知れませんが、だいぶん持ち直しました。BRAVIAはアメリカではシャープを凌いで第一位の売り上げを見せています。07年3月期の営業利益は718億円(前年同期1913億円)、純利益1263億円(前年同期1236億円)でしたが、ゲーム機部門の営業赤字2823億円とリチウム電池の回収費512億円がマイナス要因として大きく働きました。PS3の販売実績は360万台(目標600万台)にとどまっています。久多良木氏退任の一因でしょう。来年2008年3月期のソニー全体の純利益は2320億円と2007年3月期の約2倍が予想されています。

三洋電機は2005年1月ホームシアター設置のためにお金がいりましたので、1,000株を売却しましたが、最近また買増ましたので現在は10,000株を持っています。私自身が家庭で三洋製品を愛用していることも動機です。耐久性の高さも買っています。この会社の過去の動きはデジカメやカメラ付き携帯電話用のCCDモジュールと青紫色半導体レーザーなど基幹部品分野での高い技術力は注目され、過去にはデジカメ生産で世界シェア30%、携帯電話用CCD(電荷結合素子)モジュールで世界シェア50%、ノートパソコン用バッテリーで世界シェア40%になっていました。このOEM生産は供給先の経営によって左右されるという弱点を持っていました。

販売価格低迷による不振に追い風をかけたのは、2004年10月の新潟中越地震です。100%三洋電機の子会社新潟三洋電子に503億円の直接被害を及ぼしたのみでなく売り上げ減少を考慮すると870億円の被害を計上するに至りました。このため05年3月期の連結決算予想黒字140億円は赤字1,715億円に転じました。06年3月期も新計画に基ずくリストラ費用もかさみ2,057億円の連結最終赤字となり、配当も2005年3月期から無配です。2005年9月工場閉鎖売却、人員の大規模なリストラを内容とする新構想を発表しましたが、携帯電話の不振でさらに人員整理も必要になり計画の変更を余儀なくされている現状です。井植系経営陣は退陣しましたが新社長はなお井植一族と近いようですし不透明な点が残っているのですが、ここで経営陣が奮起すれば5年後には復帰ができるだろうと思っています。現在不採算部門を整理し、二次電池や太陽電池など採算がとれる分野に特化しようとしているように見えます。2007年1月6日の毎日新聞朝刊によると、商品名エネループという乾電池型のニッケル水素充電池は好評で、「経営再建の鍵」とされ、月産300万本態勢に移るようですが、私はこの充電池に正極の作りの不完全さを感じています。
三洋の重点生産の対象にリチウムイオン電池があります。2006年も200億円を投じて10%生産を増強しましたが、2007年も300億円弱を投じて15%増産を計ります。ノートパソコン向けのこの充電池は世界シェアーは約40%ですから、再建のためにも主力製品といえます。

当分三洋電機は苦難の道を歩むことになりますが、NEOMAX株の処分額と銀行預金から11月は1,000株180円で、12月も1,000株163円で買い増し、投機的な動機もあって現有10,000株です。 3000億円の優先株発行の臨時株主総会が前に開かれましたが、優先株が普通株になりますと発行株式数が非常に増えますので一株当たり利益が大幅に減ると株主の論議を呼んでいます。07年3月期は、営業利益496億円(前年同期−172億円)、純利益−454億円(前年同期−2057億円)でした。08年3月期の予想では通期純利益+200億円となっています。配当予想は08年、09年ともゼロです。
2007年3月27日先に辞任した野中ともよ会長に引き続いて、井植敏雅社長の辞任が発表されました。後任は社内から昇格人事ですが、今後の経営は大きく方針が変わるものと思われます。佐野社長は収益性の高い充電池や業務用機器に経営資源を集中する姿勢を明確にしており、十一月末に発表する全社的な事業戦略では「携帯電話機事業をどうするかが大きな検討課題」(前田孝一副社長)で今後、他社への売却や事業統合を目指して具体的な交渉に入るようです(8月11日)。今後の成り行きが注目されます。現在も株価は購入価格の71.2(先月は67.8)%です。

◆◆三洋電機の佐野精一郎社長は2007年7月日本経済新聞のインタビューに応じ、次のように述べました。(2007/07/23, 日本経済新聞 朝刊, 11ページ)

 ――携帯電話やデジタルカメラ事業を売却する考えは。
 「現時点でどの事業をどうするということは考えていない。(来年度以降の)中期経営計画に向け11月末に全社事業戦略を発表するが、事業戦略は聖域を設けずに検討する。他社と組んでうまくいくなら、すべての可能性を否定しない」
 ――優先株で増資を引き受けた大株主三社はいずれ株を手放すのでは。
 「三年間の中期計画を達成することで経営基盤や財務体質が固まり、(株式を三洋が引き受けるなど)いろいろな選択肢が出てくる。それくらいの期間が必要なのは三社に理解してもらっている。(中計の最終年度にあたる)10年までは支援をいただかなければいけない」
 ――役員の信賞必罰を徹底するようだが。
 「そうすることで本社がめざしていることが一般社員にも伝わる。詳細は今後詰めるが役員定年制も導入する方針だ」

もう一つ三洋化成も長い目で見て有望株だと思っています。三洋化成は詳しく検討したのでもないのですが、決算期の配当が大きいのと、製品のユニークさ、研究に熱心な会社だというイメージがあったからです。この会社の財務はしっかりしていますし、京都大学桂キャンパスに隣接する桂イノべーションパークに作られる研究所は2007年7月第一期分を着工しました。続いて、2015年ごろまでに第二期分も建設し、最終的に延べ床面積9000平方メートル、研究要員200人程度の規模を見込み、電子材料やバイオ関連などの研究にも力を注ぐようです。
  2003年5月14日第6次中期経営方針を発表していますが、この中には2006年には、ROEを4.2から8.0に引き上げることやEPS(1株あたり利益)を28円から68円に引き上げることも含まれていました。このところの株価低迷、人事異動の動きはこの計画が失敗したと見ています。2007年4月12日第7次中期経営計画が発表されました。また計画倒れにならないか気になりますが、その中には2006年を基準として2010年には@売上高を1220億円から1771億円に伸ばすA連結経常利益を80億円から189億円に伸ばす。ROEを3.8%から10%以上にする。B4年間で540億円を設備投資する。衣浦分工場の設備投資110億円、高吸水性樹脂設備の増設66億円、桂研究所の建設24億円が見られます。わたしが一番念頭においているのは、水分吸収剤関係の製造は今後アジア各国の経済的成長と共に、在来の古い布の利用から紙オムツ利用など大きな需要が出てくると思っていることですからこの計画は私の意に叶ったものです。計画が絵に描いた餅にならないことを願っています。かねて三洋化成工業100%子会社のサンダイヤポリマーが2003年6月から中国江蘇省南通市で建設していた高吸水性樹脂生産の新工場(三大雅精細化学品(南通))が、2005年10月12日本格操業を始めました。主な用途である紙おむつの需要が中国および東南アジアで拡大しており、2万トンの設備はフル稼働の状態。早くも3万トンに生産能力拡大の検討を始めています。
2007年4月には樹脂向きの帯電防止剤の需要が増えているので生産設備を増設し、06年度の売り上げ18億円を10年度に30億円にすると言うのもやや明るいニュースです。

2007年3月期には売上高1224億円(前年同期比12.9%増)経常利益80.2億円(前年同期比1.0%増)、純利益は30.5億円(前年同期比3.3%減 )でした。

現在の住まいが借家で老朽化してきましたのでいずれは立ち退かざるを得ません。そのために価格の不安定な株式から徐々に現金化しておこうと思っています。まず手始めに三洋化成4000株を2006年3月1069円で売却しました。譲渡純益は122.8万(課税は特定口座源泉分離で処理、10.9万円)でした。2006年6月、改めて2000株を購入しましたので現有3,000株で、平均購入価格が一株872円。現在購入価格の84.9(先月は87.7) %です。配当は現在年間15円ですが、10年度には30円を目標にしているようです。

現在世界的に将来のために構造改革を進めている時期だと思っていますから、持ち株の動きはドラマを見るようなおもしろさがあります。必ずしもギャンブルではなくて、私が株を保有する各社は製品にユニークなものを持ち、経営者も独自の考え方を持つという意味で期待が持てます。ただ三洋電機だけがこの点で今後どのように進むか安心が持てません。ITの伸び悩みが見られますが、間違いなくこれからはITを消化して自社の発展と構造改革に取り入れて成功する会社の株がじわじわと値を上げていく時代に入ったと言うのが私の見方です。ホギメディカルはその典型です。

例年1月4日の夕方には、昔教えた同志社高校化学部の新年宴会が設けられます。もう40年以上欠かすことなく続いています。1999年の席上、一人の教え子がわたしのところに来て「先生お年玉上げましょう」といってくれたのが、500gの99.99%純度のgold ingotなのです。正直に言って狐につままれた思いでしたが、彼の真剣な表情に打たれ、そのまま持ち帰りました。彼、Y君はその上「それは明日山崎商店に持っていって現金に換え、西部瓦斯の株を買いなさい」と真剣に言うのです。1月5日はたまたま家内の介護の方は誰も見えない日でしたから、街に出かけて彼の指示通り現金化してきました。インターネットで西部ガス株3,000株を購入しました。本当にこんなことしてもらって良いのかなあY君が西部ガスを勧めたのは株価に対する配当利回りを考えてくれていたようです。株価150円で買って年に現在5円(税込み)の配当がありますから、銀行よりも利回りは良く、たとえ株価の値上がりがなくても、こういう投資も大きな意味があります。さて、東芝がこの会社と提携して、ハウステンボスで西部ガスの供給する都市ガスを使うリン酸型燃料電池を造り、2002年3月まで行っていた200kw実用運転も成功裏に終了しました。ここ一、二年の間に都市ガスから取り出した水素を使う燃料電池方式家庭用自家発電が現実のものになると思われます(注もご覧下さい)。(コージェネレーション【熱電併給システム】)。燃料電池方式ではありませんが、ガスを燃やして火力発電する方式のコージェネレーションに既に大阪ガスは力を入れ、シェアーを伸ばしていますが、これも将来をにらんだ熱電併給の“エネルギー会社”への前奏曲とも見られます。すべてのガス会社の将来は燃料電池への水素源供与にあると見ています。西部瓦斯は2005年9月期連結決算では7億3000万の欠損がでていましたが、2007年3月期は連結純利益は32億4000万円になりました。連結売上高も1535億0500万(前年同期1479億6000万円)で大きく伸びています。今後の革命的なエネルギ−変化、平成20年度家庭用燃料電池の市場投入にも準備が進められています。2006年12月福岡水素エネルギー戦略会議と共同で福岡県知事公舎で家庭用燃料電池の実証試験が始められました。現在株価は買値の179.3%(先月は172.7%)、平均購入株価は1株150円、配当年間5円です。

シスメックスは毎日新聞夕刊に社長とのインタ−ビューが掲載されていました。少々おもしろいと思ったので、深い考えはありませんが、NEOMAX処分額の一部で200株だけ買いました。

DNAチップは今後ガンなど様々な病気の診断に使われると見られ、05年の国内推定市場規模53億円は10年頃には1000億円の規模に成長すると見られています。世界最大手はアメリカのアフィメトリックス社ですが、シスメトリックス社はアフィメトリックス社のDNAチップスの世界販売権を取得しています。シス社も独自のDNAチップスの開発に乗り出しています。
2007年5月、呼吸器感染症のインフルエンザ、RSウイルス感染症、アデノウイルスを10分で簡便に判定するキット「ポクテムSシリーズ」を発表しましたが、このような分野が一つのタ−ゲットかと思われます。
シスメックスの「血液中の幼若細胞測定用試薬に関する技術」が、文部科学省が主催する平成19年度文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)を受賞しました。幼若細胞とは、正常であれば血液中に存在しない未成熟な血液細胞のことであり、特に、幼若白血球の測定は、白血病等の血液疾患および癌の骨髄転移、重症の感染症などにおいて、疾病の診断および治療のモニタリングを行う上で極めて重要です。この発明はすでに社団法人発明協会主催の平成16年度全国発明表彰特別賞を受賞しています。今回の文部科学大臣表彰はこの発明の重要性を改めて証明するものでしょう。

最近の情報で注目されるのは今後1〜2年の内に実用化が計画されている入院患者監視システムです。看護師不足の現状の中で患者の様子を常に院内で使う携帯端末で把握できる機能を持ちます。また

胃ガンの手術時に周囲のリンパ節まで取り除くべきかどうか判定する遺伝子診断技術の実用化に乗り出したのも注目されます。これは胃の周辺にあるリンパ節の一部を切り取り、採取したガン病変近くのリンパ節を装置にかけ、ガンの遺伝子を抽出して増やし転移を判定するもので、約三十分で結果が分かるため、ガン病変の摘出手術中に周辺のリンパ節まで切除すべきなのか、治療方針を決めることができます。

 

2007年3月期は円安の影響もあって海外での好調な伸びがあり、営業利益は前年同期比18.6%増の127.1億円、経常利益は前年同期比13.3%増の135.8億円、純利益前年同期比21.4%増の90.1億円でした。配当は20円/株、2007年9月期も20円、2008年3月20円が予定されています。

2007年5月10日中期経営計画が発表されました。それによると目標を2010年3月期とし2007年3月期を基準に、売上高は1010億円から1400億円に、経常利益は135.8億円から205億円に、ROEは13.4%から13.6%に伸ばします。これまでのROE実績は2002年3月期の3.8が2006年3月期は12.5になっています。検体検査領域とガン診断分野、糖尿病分野での新しい検査技術が重点分野になるようです。

この会社の株は上がり下がりが周期的に起こっているようですが、2007年6月これまでの海外での実績を考え、事業の伸長を期待して100株買い増し300株としました。原資は英ポンドMMFの一部解約です。私の買値は平均4570円。この会社の株価は変動が激しく、現在買値の96.9%(先月は90.8%)です。

ここまでわたしの保有株式の現状を紹介してきましたが、現在の私の保有株式はトータルとして購入価格の122.9%(先月は121.4%)になっています。

ここからしばらく投資信託について書きましょう。

パーセントは私が正味投入した円に対し、現在、仮に売却したときに得られる円金額の割合です。主として外国系国内投資信託から構成されている私の投資信託は外貨建で運用されている物は証券会社からは円に換算されて、報告されてきますから、円安になると見かけの上ではぐんと値上がりします。しかしこれは為替の魔術なのです。外国株を組み入れた投信を見ていますと世界の経済の動きを実感を持って感じられます。アメリカの金利高で米ドルに対し円安になり米ドル資産は大きく値上がりしていますが、私の投資は主として英ポンドと豪ドル資産にしていますので、この二つの通貨に対してはむしろ円安気味で為替差益さえでています。この辺りがどの外貨を保有するべきか大事なところです。
2002年中期、投資信託はアメリカと日本のネット関係株価の暴落と一般的な不振の影響で全般にダメージを受けました。当時さらに低下すると読んでフィデリティ関係の大半を2002年7月1日に売却しました。損害は150万円でした。この損失は一応清算したことにして固定損失化し、当日の残存分を基準にして推移を眺めることにしました。従ってこれから記すそれぞれの投信の損失は2002年7月1日の価格を基準としています。投資信託についてはモーニングスター トータルランキングに投資信託の運用状況が出ています。2004年9月被成年後見の家内名義のものは、私に管理責任がありますので残しましたが、私名義のフィデリティ関係投信はすべて処分しました。その結果、家内の分として現在フィデリティ欧州中小型株オープン79,373口、202,401円(先月79,373口、214,164円)、フィデリティ・グローバルエクイティ23,774口、30,167円(先月23,774口、28,320円)が残っているだけです。両者ともサブプライムローン破綻の影響で値段が下がっています。以前はかなりの分配金がありましたが、最近は全般に不振でいずれも分配金はここ数期ありませんでした。しかし2004年5月31日および2005年5月31日、11月30日、2006年5月30日、11月30日、2007年5月30日にそれぞれ久しぶりにフィデリティ欧州中小型株オープンは1万口当たり100円の分配金がありました。これも景気の多少上向いたことを示しています。専門家が運用してもこの状態ですから、私のような素人が株投資で成果が出にくいのも当然だと思っています。難しい時代です。フィデリティ・グローバルエクイティ投信のポートフォリオは2007年7月31日現在アメリカ株が43.1%ですが、文字通りグローバルでイギリス株9.1%、日本株10.3%、ドイツ6.5%、フランス3.8%、カナダ3.5%、オーストラリア3.3%、スイス3.3%、スペイン1.5%、その他(イタリア・オランダ・オーストリア・フィンランド・アイルランド・ポルトガル・マレーシア・シンガポール・ニュージーランド・マレーシア・スエーデン・ノルウエー・デンマークその他)15.6%ですから、アメリカ株の不振が響きます。しかし、この投信の株式銘柄数は現状普通の個人ではとても保持管理できない270種の株を組み入れています、このあたりが投資信託の妙味でしょう。

他に野村の業種別インデックスファンド(医薬品)を、ゲノムの知識を応用したこれからの医薬の動きに眼を向けたい為に保有していたのですが、値動きも鈍く配当も少ないので2004年10月18日売却しました。損失額は17,211円です。この分も固定化し、また神戸製鋼と、三洋電機・ソニーを処分してさらに固定損失が増えましたが、豪ドルMMFと三井ホールディングス、NEOMAX、神戸製鋼所、三洋化成、クラレ売却に伴うゲインがありましたので+720万円が現在の総固定利益額となっています。

投信はこの様に当面手放したのですが、今後の経済の動きを見てまた買うつもりです。投信の良い点は、少額のお金を日本、中国、韓国、ヨーロッパ、アメリカとグローバルに分散して投資できる点です。日本だけに投資していますと「そごう」騒動ではありませんが、株も急落の危険があります。世界分散投資をお勧めします。なお、投信会社そのものの信用度も勿論考慮に入れて置かなくてはなりません。これらのファンドはすべて外貨建のものを相当組み込んでいます。いづれにせよ外貨預金やこれら外国投信の為替による変動も注視しなくてはなりません。今月は為替差益の影響が現れています。



現在が明治139年、戦後61年の溜まりに溜まった矛盾の変革期として、明治維新にも匹敵する時期にあると見る私からは、戦後をリードしてきたこれまでの古い自由民主党政治の終焉を迎えつつあるとみています。小泉さんの戦略には総選挙で古い自由民主党の脱皮を意図した面も見て取れます。今日の自民党はもはや選挙でも創価学会票に頼らないと勝利を収められず、選挙得票率の低い公明党の言い分を政治の中で尊重しなければならなくなっているのは、2004年政府の年金改革は公明党の提案に沿ったものであることからも明らかです。これまでの自民党の本質は戦中の国家社会主義・既得権益擁護・業界代表の集団ですから、変革期の現実からの何をしなければならないかという要請との矛盾は拡大していたのです。たとえば小泉改革の幼稚園・保育所一体化に最も反対しているのが自民党ですが、保育所には給食施設を同一敷地内に設置することが必要という規定があるようです。その理由に保育所は家庭の代わりだから絶対に園児の身近に給食施設が必要だという古い自民党の人達の論理は理解できません。郵政民営化のもっとも大きい反対勢力は自民党の中にいました。確かに年金問題を放置した小泉さんの取り組みには批判ももっともですが、私は郵政は国家社会主義の最後の牙城と見ていますから、郵政民営化法案の成立は歓迎で、今後は年金問題に焦点を移してほしいと思っています。小泉さんには考えてもらわなくてはならない点も多いのですが、小泉改革によって明らかに古い自民党的なものは大きく壊されたことは、先日の参議院選挙の結果からも明らかです。政府に頼れない、自立という認識が次第に各方面に浸透しつつあるのも大きい変化です。小泉以前の内閣の無駄なバラマキ政策で国債発行残高は増え、後で書きますように既に1536兆円といわれる国民の貯蓄のうち1100兆円以上も、国民が預けた銀行や証券会社を通じて、この穴埋めに流れて枯渇して来ました。このままでは韓国・インドネシアのように外国から、例えばIMFから借り入れの事態も起こりかねません。ここが泣き所で、改革に乗り出さざるを得ないのです。かなり以前の自民党総裁選でも亀井氏は「日本には1400兆円の預金があり、10兆円の国債発行など問題なくできる」と打っていましたが、こういう認識では勝てるわけがないのです。2002年5月31日ム−ディーズの日本国債格付け2段階引き下げはさすがに良く掴んでいます。誰も日本政府のム−ディーズへのボヤキを信ずる人はいないでしょう。S&Pも日本国債を2002年先進国中最低のAAマイナスに下げていましたが2007年7月ムーディーズとS&Pが相次いで日本国債の格上げ検討を表明しました。
安倍内閣の登場は小泉さんの改革路線の継承といわれましたが、それよりも自民党の本質の部分がより鮮明に現れたという印象でした。古い日本への回帰路線は私は受け入れることはできません。安倍さんの古い理念の政治は国民との矛盾がいっそう鮮明になりました。今まで自民党を救ってきた、ある種の懐の深さ、構成員の幅の広さを壊してしまいました。「自由民主党」の「自由」部分が陰を潜めてしまったのです。一見強そうに見える内閣の構成も見方によればイデオロギー的にもっとも自民党の古い部分の結合体とも見えます。参議院選の大敗を受けて安倍カラーはフェイドし、まさに自民党の古い連中の連合体内閣になってしまいました。安倍さんは万事に判断能力が欠けていましたが最後の最後まで頭の鈍さを発揮しました。2007年9月25日安倍内閣は総辞職の日を迎えましたが、まさに来たるべき日が来た感じです。政府の影は薄まり自民党色が強まるでしょう。その自民党が公明党の助けを借らなくてはならない現状です。ある種の弱さを抱えているのです。国民の反撃を強めねばなりません。福田首相の登場は今までの新自由主義路線の破綻の結果です。公明党でさえ政策協議で高齢者医療制度や障害者自立支援法、母子家庭への児童扶養手当削減に対する見直しを主張し福田首相もその検討を約束せざるを得ませんでした。

福田さんも父君赳夫氏に比べて線が細く、大した首相ではあり得ないと見ています。閣僚も再任が多く官房長官を始め安倍色の強い人たちが留任していますから福田色を出せることもなく、たかだか選挙管理内閣の首班と言うところでしょう。少なくとも首相補佐官の解任は福田氏にできるはずで、これもできないような首相なのです。いくら麻生氏と首相の座を争っていたといっても重要な人事についての構想も練れなかったと言うのでは「たかだか選挙管理内閣の首班と言うところ」です。

9年ぶりに参議院では野党民主党の小沢氏が首相に指名されました。これからの法案採決で野党が協力すれば与党の法案を否決できる実感が味わえました。

安倍総理の初めてのブッシュとの会談でも、拉致問題の解決が6カ国会議成功「鍵」という主張にブッシュを引き込もうとした作戦は、失敗に終わりました。ブッシュは6カ国会議は核の問題だと述べ、横田さんに同情はしたものの拉致問題は人間の問題だとしてあくまで人間の心の問題だと安倍さんに同調はしませんでした。("It's a human issue now to me;it's a tangible, emotional issue.")最近はアメリカの一般的空気は大きく変わってきていますからブッシュも変わらざるをえません。イラクでの失敗を認めたくないブッシュはせめて北朝鮮との関係正常化を功績として推し進めざるを得ません。

国旗・国歌のことも一種のナショナリズムとして、新しい体制の構築を意図しているように私は感じます。日本の歴史は天皇を権威付ける時は、野心を持った権力者が自分の権力を強化する手段として天皇の絶対化を行い、天皇の絶対的な権威をバックに利用したことを教えています。一人の人間としての天皇に特別の感情は何もありませんが、私の少年期には、今ここに書いているような天皇制を国政に利用した危険な姿を現実に味わいました。天皇の名の下に多くの若人が神風特攻隊として自爆したことを思うと、中東で起こっているイスラムの自爆攻撃も笑う気にはなりません。

        天は人の上に人を作らず
                                  人の下に人を作らず
     
                                  〔福沢諭吉 ”学問のすすめ”〕

こういうわけで、国歌を“君が代”にすることには、為政者の"君"の解釈次第でその危険を温存するから私も反対です。一人一人の人間が自分の幸福を追求でき、黄色や茶色の髪の毛の若者が自由に闊歩する世の中の方が“君”の世よりも私の性に合います。そういう人たちが集まって作る国−−共和國−−でよいのです。提示された女系天皇容認論をめぐって自民党の中の古い層が鮮明になってくるでしょう。自分を犠牲にしてでも世界のために貢献しようと言う人は、まず言った人自身が黙ってそれを率先実行しなさい。自分はしないで人にそれを要求する人、それは曲者です。与謝野晶子の「君死にたもうことなかれ」が自由に詠える世であってほしいものです。イラク派兵が自衛隊員の募集に困難を招きひいては徴兵制度の復活を見るようになることさえわたしは危惧しています。戦後の民主主義、人権擁護の路線はますます発展させないと国民の不幸を招き、暗い社会になって行くでしょう。学生の奉仕活動を掲げる文部科学省の動きには戦中の勤労動員態勢を思い浮かべるものがあります。

2004年10月28日の園遊会で東京都教育委員を務める棋士の米長邦雄さん(61)から「日本中の学校で国旗を掲げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます」と話しかけられた際、天皇は「やはり、強制になるということではないことが望ましい」と述べました。米長発言は天皇への迎合を感じさせる発言ですが、 この問題を考えるときasahi.com論説主幹若宮啓文氏がコラム「風考計」に書かれていることは参考になると思うので注に収録させて頂きます。

戦争を始める人は征かぬ人

〔毎日新聞 “万能川柳” 相模原 水野タケシ〕

有事法制や個人情報保護法案はないことを望みます。何か戦前の体制に次第に戻っていくような予感がするからです。戦前の治安維持法も名前だけ聞けば必要と錯覚しかねません。しかしその本態は「国民の自由を根こそぎ奪う国家による支配に不可欠な弾圧法案」でした。美名に隠れた国家権力の強化は望みません。いま考えていること 99(2002年03月)―改革、進展と思う―いま考えていること 101(2002年05月)―「備えあれば憂いなし?」―に書きました理由から、わたしは小泉内閣に反対でした。小泉さんの金正日との会見も落ちていく人気の梃子入れのにおいを感じます。この作戦は国民に対しても自民党に対しても一応成功したかに見えましたが、その失敗は今日明らかです。わたしは北朝鮮との約束を守って5人の被害者の方は北朝鮮にいったんは戻すべきであったと今でも思っています。その上で問題全体の交渉を開かせるべきだったのです。交渉の道を閉ざした責任は日本政府にあります。初めから相手をだます作戦であったのなら、5人を返す約束はしてはならないのです。相手との約束を破っては外交は成り立ちません。二度目の小泉訪朝の本質はこの過ちの許しを乞うことだったと見ています。小泉さんは今後の対朝外交は国交回復に主眼を置きたかったのでしょうが、拉致問題がその桎梏(しっこく:足かせ手桎かせ)となって進展を許しません。平壌宣言を読むと「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。」とあり、読みようによっては拉致問題も含めて過去の問題とし、この過去の問題は一応終わりにするとも読めますから、宣言すること自体が早すぎたのだと思います。もし小泉さんが本心北朝鮮との関係を今後は平壌宣言に記された路線で進めようとしたのであれば、拉致問題を過去のものとして拉致家族の意向を無視するだけの政治の冷たさが必要でした。核武装をめぐる六カ国協議を進めるためにもその決心が必要でした。小泉さんの器量ではこの政治の冷たさを持つことができなかったので、かえって日朝間に不信が大きくなり、現在は明らかにデッドロックに乗り上げています。安倍さんは拉致問題対策本部を設置し、自ら本部長になりましたが、拉致問題の解決はそう簡単に進むとは思えません。核実験を契機とした強硬路線と拉致問題の解決は両立するはずがなく、小泉さんの作った不信があるだけにかえってこの問題は解決が難しくなっていると見ています。イラク特別措置法という派兵法案は米国支援以外の何物でもなく、ブッシュべったりの日本外交では国際社会での日本の発言はアメリカの代弁としか見られないでしょう。国連安保理事会への常任理事国入りもとても支持を得られそうもありません。中国・韓国ともに反対を強硬に述べています。

日本証券業協会のまとめでは、現金取引と少ない手元資金でも大口の取引ができる信用取引を合わせたネット経由の売買は、個人では全取引の8割を超え、2006年3月25日の毎日新聞によるとネット専業大手5社の口座数は318万7533口座に達しています。

 ネット取引口座では1日に何度も売買を繰り返し、1円、2円の利ざやを稼ぐ「デイトレーダー」が急速に台頭しましたが、証券会社が一定額までなら何度取引しても手数料が同じという定額制を広めたことも追い風となり、出来高や売買代金がバブル期の数倍に達しています。
株式委託手数料も自由化されインターネットを利用すると安くなりました。証券会社によってはものすごく安くなっています。ネット取引の簡便さから、一日に何度も売買を繰り返す「デイトレーダー」「ネットトレーダー」も増え、株価を揺さぶるところまで来ているようです。これはインターネットの利用を進めると会社としての経費を減らすことができるからで、徴収どころか利用者に還元して顧客を増やそうとする現れです。野村証券の割引率は低いのですが、野村ホームトレードからの情報網はどんどん改善され充実してきました。日経テレコムを無料で利用でき、毎日その速報を読んでいます。日経テレコムにはクリップメールという機能もあり、知りたい事項をキーワードとして登録しておきますと、これに関連した日経系の記事が出た日はメールに毎日配信されます。これは情報入手の手段として大変有用です。また、会社四季報も閲覧できます。今のところ話題に上りませんがペイオフは証券会社ではすでに実現されています。インターネット手数料率はこの5年間で半減し、06年度のネット証券大手5社(SBIイ−トレ−ド、松井、楽天、マネックス、カブドットコム)の手数料収入は前年度比25%減になっています。

それはともかくとして、こうして益々ビッグバンが軌道に乗り、外国の金融機関の進出に伴い、我が国の資産は国際的な市場に投資されて行くでしょう。経済を考える場合、日本だけ考えては誤ります。グローバルに把握することが必要です。なお、家内の保有する外国系投信の一昨年の大幅な値下がりは、これらの投信もハイリスク・ハイリタンをうたっているものは、程度の違いはあるでしょうが、大損したヘッジファンドとよく似た運用−−デリバティブ−−が行われていたためと観ています。サブプライムローン騒動で見られたように債権の証券化は債権の分散を結果し不良債権の行方を把握しにくくしてしまいました。投資信託も短期の上下に一喜一憂する人はやめておいた方がよいと思います。

わたしは特定口座を開設しました。これまで源泉徴収ではなかったのですが、特定非課税分の処理も終わったので、確定申告に必要な売却時の書類を送ってもらえるのを「良し」としたからです。この点では野村證券に保管を託していたのはラッキーでした。具体的に書きましょう。私の古い神戸製鋼の株は例えば1991年に796円で買ったものがあります。証券会社は過去10年間の記録保管義務はあるのですが1991年のものは保管義務外です。この様な株券は株価の安かった2001年10月1日の終値の80%で買値を評価することになります。この時の神戸製鋼終値は57円でしたからこれによって計算すると46円ということになります。実際は796円で買ったのに46円で買ったことにされ、仮に100円で売ると、実際は696円損しているのに54円儲けたことになり所得税を払わなければならなくなります。ところが野村證券は1975年10月1日以降の記録を残していましたので、特定口座での購入額は180円と記録されています。他にもこの様な保有株がありますので、大いに助かりました。

今回の不況は一定の既存枠組みの中での不況ではなく、情報革命・会計基準の変更など社会の抜本的改革を背景に持ち、これまでの日本社会の清算を迫るものですから、この抜本的改革が現実のものとして定着して、その上にそれにふさわしい政治や社会の新構築がある程度進まないと解決しないというのが私の考えです。 自然界の変化を人間の祈りで変えることができないように根幹は経済そのものの正直な動きにあるのです。政治で打つべき手を打たず、ごまかすと結果は必ず破綻し、先々かえって大きな傷口を露呈してしまうのです。不良資産が解消し公定歩合がせめて3%に戻らない限り、新しい体制が出来たとは信じません。これには数年はかかるでしょう。やがて3%に戻る日が来るでしょうが、それは同時に国債の大暴落をもたらしていきます。新しい危機の到来です。現状は東京三菱銀行の普通預金金利が0.001%という信じられない状態です。2000年7月20日の毎日朝刊紙上で、英「エコノミスト」東京支局長N.ヴァレリー氏は現状を分析して、日本経済再生には10年、15年かかるだろうと語っています。そうかもしれません。先に書きましたように産業界では既に会計処理の技術面から大きな変動が徐々に進行していますから、今更自民党内守旧派がイデオロギー的に古い路線に立ち返ろうとしてもそれは最終的には無理でしょう。

以上のように事情は徐々に変わりつつあるのですが、基本的には当分このまま気長に様子を眺めるつもりです。最近は株価の上昇からすでに全く経済情勢が好転したかのような浮かれ気分がありますが、よく見ると金融界を中心としたリストラ、会計基準の変革と不良債権問題の根本的な解決には少なくとも今後数年はかかります。こう書いてから数年経ちますが、日本の会計基準については2007年8月8日財務会計基準機構は2011年までに国際会計基準に合わせると発表しました。それによってM&Aに当たっても合併対象企業の資産評価も簿価評価はできなくなり、時価評価となります。それまではクラレ、ホギメディカル、日立金属、三洋化成のようなユニークな路線を歩いている会社以外、国内株式、国内投信に素人は手を出せないと思います。繰り返しますが、デフレやリストラが進行しているとき、一般論としては株式や投資信託は値が下がるものだと思って間違いありません。株式はインフレに強いといわれますが、それはインフレに順応して値が上がるということで、裏返せばデフレに対しても同様の反応を示し、企業の収益が落ちますから株価の低下が起こるのです。デフレが進行する時には素早く債券や預金に逃避し、インフレになりそうなときは価格の下がっている株や投信に早めに乗り換えるということが巧みにできれば良いのです(今がそういう時期かも知れません)が、我々素人には難しいことです。しかしじっくり眺めていると、仕込むべき新しい優良株が見えてくる時期なのかも知れません

現在、改革のかなり進んでいる企業も見えてきました。2007年3月期の企業収益は大幅に改善されて来ています。リストラの寄与も大きいのですが、企業は失業救済のために活動しているわけではありませんから、これもやむを得ません。私は企業の復活は着実に進んでいると見ています。だからこそ株の新たな購入やポートフォリオの組み替えも着実に進めているのです。時勢の変化に一番遅れているのが銀行です。貸し出しは依然として担保主義が主流ですし、不良債権の真実の公開もせず、帳簿の上での不良債権処理のまま放置してきたこれまでのやりかたはまだ続いています。ですから帳簿上の不良資産は減るどころか株価が下がり地価が下がると増えてさえ来るのです。連結決算の採用で、不良資産をダミー会社に帳簿上で移す処理は出来なくなりましたが、現物の処分が終わらないとバブルの精算は終わりません。雇用面、収入面での庶民への影響は計り知れないものがありますが、経済の実態に即して一度は膿を出し切ってしまわないと解決しないと思っている私は、まだまだ楽観的ではありません。

注目されるのは担保に頼らない融資の烽火が見え始めたことで、2004年4月21日原則として担保も保証も必要としない中小企業に対象を特化した日本振興銀行がスタートしました。 この銀行は東京青年会議所メンバーの出資によるものです。
東京都石原知事も「本来の機能を失った金融システム再生のため、都の信用力を基に負の遺産のない新銀行をつくり、中小企業に生きた資金を提供する」として資金調達に苦しむ中小企業に対し、将来性や技術力を審査した上で無担保でも融資すると言っています。東京都は2005年4月1日、「新銀行東京」を開業しました。その後は他の銀行も無担保融資に乗り出し、「新銀行東京」に信用組合から紹介されてくる顧客層の質などから経営は赤字に追い込まれ、現在融資額は2010億円(目標の72%)にすぎず、融資先についての疑惑もないわけではありません。累積赤字は849億円です。結論的には失敗したと言うべきでしょう。石原知事はこの事態に「進むも地獄引くも地獄」と言っています。

既存の銀行の担保主義も今後導入されるであろうDCF方式や新BISで根本的な変革を迫られるでしょう。今後固定資産について全般的な減損会計の導入(アメリカ・EUでは2005年から導入され、これと歩調を合わせて日本でも2006年3月からの導入が義務化されました。)によって土地の放出も加速し、地価はまだまだ下がり高齢少子社会の到来はデフレをさらに加速するでしょう。これらを避けて通ろうとしてもそれは無理なことです。既に日本でも2003年12月期に竹中工務店が減損会計を前倒し実施し、新日鐵は2004年3月に実施に踏み切るといいます。神戸製鋼も2004年9月期の収益で減損会計を前倒し実施しています。(いま考えていること 130(2003年05月)―馬鹿なことは止せ―も見てください)

日本興業銀行・第一勧業銀行・富士銀行の統合で総資産141兆円の金融持ち株会社“みずほホールディングス”が誕生しましたが、そのトップの顔ぶれは相変わらずです。とても世界レベルの新しいマネージメントができるとは思えませんし、不良債権問題も、導入された公的資金の返済も残っています。UFJグループの最近の動きも世界クラスの金融グループの誕生として慶賀するにはあまりにも処理すべき難問が大きくのしかかっています。私の見るところでは新しい展望でやっていると言うよりも、図体ばかり大きい不良金融グループの誕生で、人員整理、店舗縮減をはじめ、こうまでしないと生き残れないところまで来たのかというのが感想です。公的資金の返済がやっと始まりかけた段階です。これだけ経済の規模が縮小し、これから人口も減るというのに、金融機関やゼネコンの数がまだ多すぎるという思いです。不良資産の実体的処理が終わらないと預金金利も回復せず、銀行も気息奄々の状態が続き市場の活性化も望めないでしょう。この点では公的資金の注入はつぶれるべきものを生かし続けるという難点を持っていました。

2002年4月からは定期預金についてペイオフが始まり、2005年4月からは普通預金についてもペイオフが実施されました。ペイオフになりますと名寄せのために暫時払い戻しが出来なくなりますが、おおざっぱな言い方をすれば個人で何千万円持っていても1,000万円以下に分散していくつかの銀行に預ければ、どうということもありません。ペイオフがこんなに大問題になるのは銀行がペイオフ対象銀行にならないように本腰を入れて不良債権処理をするという事実です。これによって企業の破産が増え、銀行も経営形態を変えなければならないからです。いよいよ銀行を始め金融機関は正念場を迎えるという問題です。個人の預金の問題など従です。

アメリカでは新しい金融改革法が成立し、銀行・証券・保険を傘下に置く持ち株会社がスタートしています。日本でも更に金融システムの改変が進行していくことでしょう。ただアメリカではこれに伴う個人の情報の集中が起こるので、持ち株会社などの情報管理と流出を規制し、また銀行は必ず地域に融資の一定比率を保持しなければならないと言うCRA法も制定され、イギリスでも金融ビッグバンに先立って預金者保護のため制定された金融サービス法があります。このように英・アメリカでは改革は新しい義務を金融機関に課しています。金融ビッグバンは野放しの自由を許してはいないのです。、日本でも2006年6月7日「金融商品取引法」が遅まきながら成立し、2007年中には完全施行されます。これはこれまで分野ごとに証券取引法、銀行法、信託業法、商品ファンド法など商品ごとに規制の法律がありましたが、最近話題の投資ファンドなど規制のかからない分野も出てきたので、包括的に金融商品を一本の法律で規制するために誕生したとされます。商品先物取引の規制が見送られたなど不備がみられますが、株式取引でいったん出した注文を取り消したり、売買株数や株価を訂正する行為を繰り返して株価を操作するいわゆる「見せ玉」行為に課徴金を課するなど、今後の実効性はともかく建前では投資家保護が進んだとされます。金融商品取引法は金融業に対する横断的規制と言うべきもので、証券取引法の抜本的改正という性格になっていますから、どちらかというと金融商品取引業者に対する規制と言うべきかと思えます。

日本ではまだまだこれまでの規制が解除されず、これまでの利権擁護を仕事にする所謂「族議員」の活動は社会進歩のブレーキになっているのですが、基本的には公共事業を始め経済の仕組みに大胆な構造改革を進めないと、長い目で見て現在の苦境からの脱出は出来ないでしょう。竹下内閣や小淵内閣のバラマキ政策は民間の不良資産の肩代わりになり急激に国の赤字を大きくしたのです。根本的な、大胆な改革は失業をはじめとする社会的な問題を発生します。しかし、犠牲を伴ってでも改革の手は緩められないところに来ています。社会の変化から落ちこぼれ、取り残されていく人々への対策が必要ですが、これこそ政治の課題です。有事法制よりも優先的に取り組まなければならない問題です。経済的な規制の撤廃を大胆に進める蔭で、社会的にどういうセーフティネットワークを万全に準備するかが、いま政治にもっとも必要な仕事なのですが、残念ながらこの二つの仕事が放置されてきたのが現状です。
この数年地方税・国民保険料など驚くべき倍率で増額されました。我々老齢者には労働組合もなくなされるままですが、最近の選挙結果は選挙を通じてこの路線に対するノーの反応が見えてきたように思えます。滋賀県の社民党推薦の嘉田由紀子知事の誕生、東大阪市の長尾淳三市長の返り咲き大山崎町の共産党員町長の誕生がそれです。宮崎では東国原知事が誕生しました。参議院選はじめ今後の選挙が注目されます。

さて、私たちの立場では、これからは、金融機関を国家の重要な一機関と政府がいくら位置づけても、外国の金融会社や新しい形態の銀行の進出に伴って、普通の倒産もあり得る株式会社と言う位置への移行が不可避ですから、わたしたちも銀行に対する考えを変えなくてはなりません。医療・介護などのシステムもそうですが、これまでいわば国家社会主義の中で生きてきたわれわれの頭を切り換えなくてはならないのです。

この辺りのことは以前にも書きました「いま考えていること 22(1999年03月)」、「いま考えていること 26(1999年05月)」、「いま考えていること 44(2000年04月) 」、「いま考えていること 56(2000年10月) 」、「いま考えていること 80(2001年08月)」、「いま考えていること 130(2003年05月)」、「いま考えていること 134(2003年05月)」、「いま考えていること 139(2003年06月)」、および「いま考えていること 141(2003年07月)」もご覧下さると、私の考えていることがお分かりいただけると思います。


繰り返しますが、自分も少しは研究して自分の責任で、失敗も覚悟で選ぶ時代に入っているのです。お金や株のことに触れるのは卑しいことだという考えがまだ残っています。私が思うのに、闇金融業者のように金儲けにふけることは卑しいことですが、冷静に経済を眺め、それに対応した自衛策を考えることが、これからは絶対に必要だと思います。

振り返ると、この50年のすべてに亘る保護政策・規制は農業だけでなく、金融その他すべてに及んでいました。平等な安心は保てましたが、これこそ戦争中の国家社会主義の名残で、これが活力を失わせた根元でしょう。授業中携帯電話にうつつを抜かしていても大学生であるなど、私の時代にはとても想像することのできない話です。これからはすべての面で本当に勉強して賢くなった人のみが成功し豊かになる時代に、もう一度向かうと思います。大学卒業など溢れるほどいて昔の中学卒業並だと思っています。悪しき平等は衰退を招きます。社会主義を標榜するにもかかわらず旧ソ連と異なって、中国が躍進しているのはこの市場競争の要素を大胆に取り入れたところにあると考えています。建前では日本は資本主義ですが、実は戦時下政府の指揮下に組み込んだ国民に独創性の代わりに従順さを求め、生活の不満をコントロールするために導入したナチス譲りの官僚中心の国家社会主義が戦中から今日まで続いてきたのです。

国家社会主義の退場と共に、資本主義本来の姿に戻るのでしょうが、その弊害と目される事象例えば貧富の格差の増大−−JRの利潤優先安全無視もその現れ−−や不正を防止するための最低限のネットは設けなくてはなりません。不正の横行を認めるわけには行きません。本来ならビッグバンに先立って準備されていなければならなかった金融商品販売法がやっと成立し、元本欠損を生ずるおそれの有無、ワラント債などのような場合の権利行使期間の制限などの説明が義務づけられており、違反にたいしては最高50万円の罰則もあります。このため証券会社からも最近改めて説明が送られてきています。日本ではこの手の説明を理解しにくいものとして、客の方もあまり真剣でなかったのが現実ですが、これからは私たちも理解する努力を避けるわけには行きません。金融商品販売法は基本的には利用者保護の立場にあります。金融商品販売法違反の事実の立証は顧客の側に求められているのですが、顧客への説明を確認する書類の作成を義務づけず、業者任せになっている点は、裁判沙汰になったとき業者の説明不足を立証する有力な手段を抹消していると言わなければならないでしょう。2001年4月から施行されていますが、この法律で義務化された「説明」も実際上理解は難しいと思われます。『自分が納得できない限り契約しない。印鑑を押さない。』ことが簡単で常識的な必要なルールです。

2001年4月に施行されたよく似た法律に消費者契約法があります。こちらは契約を結ぶ過程や内容に問題がある場合契約の取り消しが出来る法律です。大学入学金の返還訴訟もこの法律を一つの根拠にしています。しかし契約するときに業者がどこまで説明するか範囲が義務づけられていないなど不備が指摘されています。消費者の側も理解できるまでしつこく説明を求めるという態度が必要になってきました。

消費者の利益の擁護と増進のため既に1971年に消費者保護基本法が制定されているのですが30年も経過し、不備が目立ちますので、その改訂が議論されてきました。自民、公明両党は2004年3月5日、その改正案をまとめました。自民党案は当初、「消費者の権利」を新たに定めると同時に、消費生活に必要な知識の習得などを「消費者の責務」と定めていましたが、公明党が「トラブルの責任が消費者に転嫁されかねない」などと主張したのに配慮、「責務」の表現は削除し、努力規定にとどめました。 消費者の安全が確保されることなどを消費者の権利として盛り込み、法律名も「消費者基本法」に6月改められました。政府の消費者政策会議(会長、小泉首相)は2005年4月5日、(1)消費者の安心・安全の確保(2)消費者の自立のための基盤整備(3)消費者トラブルへの機動的な対応、を柱とする今後5年間の具体的な消費者基本計画を8日閣議決定しました。
2007年6月7日消費者団体訴訟制度が発足しました。詳しくは内閣府国民生活局発行のパンフレットを御覧下されば手がかりが得られると思いますが、要点を申しますと「消費者が不当な契約条項、例えば@業者の賠償責任を免除する条項A消費者に過大な違約金を設定する条項B信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項による被害を被ったり、不当な勧誘行為、例えば@不実告知・断定的な判断の供与A不利益事実の告知をしないB不退去や監禁などの不法行為の下での契約」による被害を受けた時に内閣府が認定した「適格消費者団体」が個人に代わって「今後その様な不当行為を差し止める請求」ができるようになりました。現段階では差し止め請求までで賠償請求はできない不十分なものです。

これまで少しドルに慣れるためにUSMMFドル投信を設定していたのですが、アメリカの対外純債務は2005年末で2兆5000億ドルですが、対外直接投資残高が3兆5000億ドルあり、また対外資産対外負債のフローの投資収益は2006年前者が6190億ドル後者が6199億ドルとほぼ拮抗しているので当面心配はないようですが、アメリカ連邦議会の予算事務所が2004年1月26日に発表した10年後のアメリカの財政状況予測は、2兆3800億ドルの赤字で、しかも実際はこれよりも赤字は大きくなりそうですから、ドルの将来に不安を感じて、また信託銀行のBIGも現状あまりにも低金利なので、オーストラリアドルMMF(5.960%;先月は5.812%)および対円相場で相反する動きを示している英ポンドMMF(5.543%;先月は5.248%)に投資しています。ニュージーランドMMFにも投資していますが、現在年利7.559(先月は7.626)%で、私の見るところ、国際的に見てすこし利息が高すぎる感じですが、この国の金融にはいろいろな国の金融も交錯していて、単純ではありません。外貨MMFは毎日付く利息は1ヶ月ごとにまとめて分配され、買い増していくので1ヶ月複利となります。これは運用上大きいです。今月は為替差益がでています。外貨MMFはホームトレードで売却してMRFに移し郵便局を使って簡単に引き出しもできます。シティ・バンクなどへの直接的外貨預金は、口座維持経費など考えて今のところ見合わせています。

ここで、ある日の管理簿の一部をお目にかけましょう。これはエクセルで行っています。ここにお見せした以外の株式・投信・銀行別残高・保険払込残高などもすべて入れてあります。また、これらソフトの持つ計算機能を利用して、時価を入力すれば合計、現在の含み損など自動的に集計されるように、該当セルに計算式を入力してあります(例えばM100セルに=B10と書いておきますと、B10セルにあった数値がM100セルに転写され、=SUM(L70:L100)-L75と書いておくとL70からL100にある数値の合計からL75の数値を差し引いた数値が入ります)。これで日常的な財布の中は別として1円に至るまで、現在の実態がたちまち捕捉出来るようになっています。この年令になると何時不意にオサラバということだってあり得ます。子供たちに現状が分かるようにという配慮も込めています。スペースの都合で、ここでは二段になっていますが、実際は横に長く続いています。この管理簿で資産の全損失を見てみますと、上の議論とは少し矛盾しますが、バブル崩壊後の1998年10月中旬に−735万円と底を打って以来、損失は減少し、1999年7月初旬は−162万円にまで回復していました。しかしそれ以後大幅に悪くなってきて止めどがなくなりました。ニューヨークテロの9月11日は歴史的な日でしたから、記録にとどめましょう。テロのあった翌日、2001年9月12日損失は−921万円になりましたが、2002年10月10日損失額は−1001万を越え最悪の状態を迎え、損失が1千万を越えたという点で私にとって記念すべき日になりました。株式の値上がりを背景に、現在2007年9月28日は株式で+723万(先月は+823万円)となりました。総合的に預金・投信と合わせて固定利益720万円を考慮しますとこれまで株式投資を始めてからの20年間の含み資産増は1,578万になります。" width="560" height="53" align="center" hspace="20" vspace="20">
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先に書きましたように当時当面世界的に景気は回復困難と読んで、2002年7月1日投資信託関係の大部分を処分し、また日立株を9月30日無償交付の端株以外処分してソニーを買いましたので、投資信託及び日立株売却損を固定償却しました。2002年7月1日を基準とした現在の損失に2005年1月の神戸製鋼売却分損失184万1000円、6月のソニー売却損20万6000円なども加えNEOMAX2000株の処分利益595万円(非課税扱い)その後の神戸製鋼・三洋化成・クラレ・NEOMAX売却益も加算したものが固定利益720万円で、現在の利得を加えつまり過去の総投入額に対する利得が上記の1,508万円です。現在の1,574万円は先月と比べると、この一ヶ月主に株価の上昇によって資産の含みが約62万円増加したことを示します。現在の資産額は投資額の136.4(先月は134.7)%相当額です。

さて、家内の分として掛けている簡易保険の掛け金は、年間約10万円(2002年までは25万でしたが、一部は払い込みが完了したのです)ですが、退職して年金で生活している私には、一度にこういう纏まったお金は用意しにくいのです。そこで、毎月郵便局から普通預金を集めに来てもらって、年払いにした簡易保険の払込月(11月)になると、簡易保険センターの自動引き落としにしています。毎月集めに来てくれますから、積立を忘れることもなく、手間も要らず、年払いの割引と利息が利用でき、さらに振替残額が約140万円出るようにしていますので、これを歳末年始の費用の一部に当てます。7月と12月には株式配当が合計40万ありますから、これもボーナスの一部にあてます。つまり勤めてない私にはいわゆるボーナスがありませんから、少額ですが自分でボーナスを設計したのです。

資産運用を勧める電話がときたま飛び込んできます。低金利時代に入ったいま、いよいよ異常に高い利息を払うというものは用心しなければなりません。外国の債券もこの手のものは先々債務不履行のことがあります。まして詐欺師の金儲け商法の甘い口に乗ってはなりません。乗るなら後で痛い目にあっても、それは自分の"欲"の結果ですから、人のせいにしたり監督責任があるからといって国や行政機関の責任にはできません。豊田商事事件の裁判結果からもこれは分かることです。だいたい国の監督といっても国は本来そんなに個人の味方として信用のおけるしろものでは無いのです。高利回りのPrinston Economics International発行の「プリンストン債」という外国の私募債を買っていた多くの一流会社が、債務不履行を被り多額の損失を出しました(1999年9月20日)。これなどは会計処理が原価主義から時価主義に移行するのを控えて、発生する損失を隠すために、欲に目が眩んで怪しげな私募債を買った付けのようです。(その上担当者への闇リベートがあったことも魅力だったのでしょう)。一流会社でさえがこれです。最近では、個人を対象に投資信託の装いをしたインチキ商品さえ出始めているようです。高収率で危険のない商品など絶対にありません。EB債なども怪しげなものです。
最近の例では、元手をつぎ込んでくれれば低利でその7倍まで融資し、株を底値で買って儲けましょうと言って、全国約200人から資金を集め、運転資金や遊興費に使っていたケースがあります。ご用心、ご用心!!

子供達にはよく「子孫のために美田を残さず」と西郷隆盛はいったそうな、と話しました。独立独歩こそがまず原点であり、財について親を当てにするようなことではろくなことになりません。この言葉を挙げたのは財産ではなくて、人づくりが親にとって大事な仕事だと言いたいからです。お金を借りて返すということも学ばせておくという知人もいますが、私は借金せずのやり方です。参考までに書いておきますが、2006年10月金融広報中央委員会の発表によりますと、借入金のない家庭が57.3%です。万一読者の中に貸金業者からお金を借りておられて法定利息以上に利息を支払われた方があればみなし弁済規定についての知識を持たれることも必要でしょう。やはり利子を付けて返すお金と多少とも利息が入ってくるお金では、上下大変な違いです。デフレは過去の借金の重みを増幅させるのですが、私にとってはデフレは完全な手持ち資金の価値の増幅です。昨年の利息・配当が総収入に占める割合は11.9%でした。若いときに蒔いた種が今実って、多少とも実りを手にしているという感じです。ローンなど借金がありますと、その返済のスケジュールが引っかかって勤めを辞められないということも、起こり得ます。それが無かったおかげで、家内の病気で勤めを急に辞めることになった時も自由に、即座に実行できました。人の一生、いろいろな事情で借金もしなければならないこともあるでしょうが、無理のないようにベースになる資金は常々自分で用意して置かねばならないと思います。昔の人も「恒産なければ恒心なし」といっていますし、チャップリンも「人生に必要なものは勇気と想像力、そしてほんの少しのお金」といっています。私のような精神修養の足らない凡人には、それが自分の心の自由を保障してくれるのです。人それぞれ心の自由というものほど、かけがえのないものはありません。

私は自分で“支払い魔”だと思っています。物を買ったり請求書を受け取ると即刻支払うのを原則にしています。こうすれば支払いが溜まって一度に多額のお金を準備する必要もありませんし、後で支払った方が安くなるのならともかく、払えばもうその支払いのことは忘れてしまえます。受け取る人も支払の速いことを喜んでくれます。

それぞれに事情のあることでしょうから、一般論として読んで下さればと思うことがあります。それは近頃銀行の貸し渋りが大きい問題になっていますが、バブル期といわずこれまでは右肩上がりのインフレ経済でしたから、借金してもその重荷は年月が経つに連れて自然に解消していったものです。企業も個人もこの傾向が当たり前のことになっていましたから、いわば“借金経済”が当然になっていたのです。銀行も土地を担保とした安易な融資に溺れて、その企業の将来性、企画・運営能力を審査することなく、また審査能力さえ不要という状態で融資をしてきました。その結果が焦げ付き−−不良債権化−−だと思います。銀行は貸さないと採算がとれないのですから、本来貸し渋りはあり得ないのです。
ところで日本の銀行は依然として担保主義で貸し付けをしています。このため不良化するかも知れない貸付を回避し、日銀が金融を緩和してもお金は銀行止まりで中小企業にはお金が回らないのです。企業の事業力を診断できないバンクマンの体質が変わっていないところに最大の問題があります。
銀行は現在70兆円以上(108兆円とも)の国債を保有して預金利息との差を稼いでいます。国も国債のよい買い手として利用していると見るべきでしょう。こうして間接的にわれわれ預金者の資金を国債購入に回しているのです。貸出先の選別能力を持たないので、本当にお金の要る企業への貸し出しはせず、中小企業への貸し渋りも起こしているのです。優秀な企業はこれから銀行からの借り入れではなくて、社債や新株を発行して市場で直接資金調達する方向を強めるでしょう。ビッグの役割が終わったのもこの現れです。金持ち優遇と云われようが、制度的にも株式投資の優遇策を取り入れざるを得ません。現状ではお金の循環が死に体に陥っているからです。個人も、デフレ基調の現在は銀行やクレジットからの借り入れ経済から、基本的には自立しないと利払い地獄状態に追い込まれて行くことは明かです。英語のことわざにも“Out of debt, out of danger"(借金がなければ、危険はない)というのがあります。今後いずれはまたインフレへの動きが国債の大量発行の裏返しに顕在化して来るでしょう。そうなれば、間違いなく借り入れローン金利は上昇します。

現在アメリカでは表面の繁栄の裏でローン地獄が進行していて、米連邦裁判所の発表によりますと2001年145万2030件、2002年は153万9111件、2003年162万5813件の個人自己破産がおこっています。米景気の急減速を受けて米銀でも不良債権が増加しており、連邦預金保険公社(FDIC)加盟銀行の2001年末の不良債権総額は429億1100万ドル(約5兆1000億円)と前年末に比べ30%増加しました。カードローンや無理な住宅ローンによる増加が目立っており、今後の個人所得や雇用動向しだいでは個人向けローンの焦げ付きが増えると懸念されています。NHKも2003年4月19日住宅ローンの破滅に伴って自分の住居を手放さなければならなくなったアメリカの人々の話を特集しました。皆さん住宅価格のバブル的高騰を前提に新しいカードを次々に作って消費に溺れ、ローンを増やしましたが、極まるところ利息も払えずカードも作れなくなって沈没する人が増えて行く物語でした。現在のサブプライムローンの破滅も住宅バブルを利用した人の投機の必然的な終着を示しています。r> under construction

最高裁によると日本でも2003年の個人自己破産申し立て件数は前年同期の27,743件増24万2377件に上りました。2002年の総申し立て数は21万4,634件、2001年16万0419件、2000年13万9,281人、1999年12万2,741件、1998年は10万3803件でしたからどんどん増えていることになります。1990年は1万1480件でしたから恐ろしい数値です。2004年は少し減って21万9390件、このうち個人は21万1402件でした。
東京弁護士会法律相談センター運営委員会によると最近はリストラや給料減によって住宅ローン返済ができなくなっている人が増え、負債額が1,000万円以上というケースも少なくないということです。何千万円も借りて手に入れた家のローンはそのまま残っていますが、家の価格は半値になって儲かるどころか資産としての価値も下がり、破産に追い込まれるのです。家が資産の時代は終わりました。借金を重ねていわゆる多重債務に苦しむ人も増えています。この苦しんでいる多重債務者を食い物にする悪い人もいるのです。世の中万事うまい話にはご用心。悪質な一例

強盗・殺人事件の多くに借金返済の困難が理由になっている例が増えてきました。(安易に借金をして最後に自己破産すればよいとお考えの方は、ぜひ司法書士 小澤吉徳 ホームページ - 自己破産なんでもQ&A(MENU) でも一読されるとよいと思います。かなりの費用を出して弁護士に依頼をせねばなりませんし、弁護士のバッジを付けていても整理屋と結託した悪徳弁護士も多いのです。裁判所が自己破産をすべて認めるわけでもありません。その後数年間はブラックリストに載せられますのでローンもクレジットカードも組めません。幸い一度破産免責を受けても、その後また借金をすると今度は破産法では10年間は免責を受けられないことになっています(第366条ノ9 裁判所ハ左ノ場合ニ限リ免責不許可ノ決定ヲ為スコトヲ得。4.破産者ガ免責ノ申立前10年内ニ免責ヲ得タルコトアルトキ)から、ヤミ金業者はよいカモと誘いの手を伸ばしてくるといいます。なお特定調停という制度も2000年2月にスタートしています。この場合も書類作成には弁護士か司法書士の資格が必要です。『返済がいったん止まる』という甘言で迫ってくる無資格悪徳業者も横行していますから注意が必要です。特定調停Q&Aも参考になりましょう。私の家も大正時代に米相場で破産を経験しています。その影響は祖父一代に止まらず、その後の世代にも及びました。
なお、2001年4月からは個人版民事再生法(個人債務者の民事再生手続に関する特則)も施行されています。

−−−今一番大事なことは生活運営の基本的な考え方を切り替えなければならないということでしょう。私はそう思います。竹下首相の各自治体への1億円ばらまき、公明党発案の地域振興券に乗っかった7000億円の小渕・森両内閣の施策は従来の考え方からすると当然の政策だったのでしょうが、私たちの将来への不安が何も解消されないと言う意味では、当時の緊急の対策として無効だったとはいいませんが、壮大な浪費でした。國の莫大な赤字は施政の手詰まりを招き「小さな政府」を余儀なくさされています。少子化の進行で今世紀は国民の数も減ります(いま考えていること 62(2001年01月)―21世紀を迎えて−これからの日本―もご覧下さい)。将来への不安をなくする政策、例えば経済構造を変革し、新しい分野への投資を大胆に展開して、新しい利便を創生し、雇用の機会も増やすとかして、舵を切り替えることが必要なのです。従来型の公共投資の限界は政策シンクタンク「構想日本」の論文でも指摘されたことでした。国民としては、やはり基本的には自己防衛のためすべての分野に亘って縮小、堅実化を大原則にした生活に切り替えざるを得ないと思います。今のステージで、「かっての繁栄を追い求めるのは幻想だ」と言っておきましょう。今年度も国の収入の30%強は国債であり、財務省の2007年8月24日の発表によりますと2007年6月末の国の債務残高は836.5兆円(2006年12月末832.3兆円)、政府保証債務は48.9兆であり、2007年度の地方財政白書によりますと全国地方自治体の負担するべき地方債・交付税特別会計借入金・企業債中普通会計負担分の合計残高は201.3兆円を加えても合計1087兆円に達しています。更に財政投融資事業の残額が2005年末で約300兆円あります。(以上総務省・財務省発表)。このほか地方が債務保証をしている借金もあることですからいくら国民の貯蓄が1536兆円あるといっても、すでに1500兆円以上も国や地方によって喰われているのです。国債・地方債など借入金は、いずれもこの瞬間も利息が膨れているのですからこの債務残高は致命的な意味を持っています。先にも書いたように、自分は国債など持っていないといっても、銀行や郵貯はあなたの預金で大量の国債・地方債を買い、証券会社に預けたMMFも国債を買っているのです。注参照。例えば国内銀行の国債保有高は2003年9月末で62兆7400億円、民間生命保険が26兆2800億円、郵便貯金が83兆9400億円となっています。国にとって頼みの綱の家計の貯蓄率も最新の15年版国民経済計算年報によると、平成13年度から0.2%下がって平成14年度は6.2%に急落しています。最近の資料によると平成16年度の家計貯蓄率はさらに下がって3%弱ということです。現役世代の貯蓄率は変わっていないのですが、原因として注目されるのが高齢者の大幅な増加で、無職の高齢者は金融資産の残高は大きいが、収入が少ないため貯蓄を処分して補っており、貯蓄率はマイナス15%程度とされています。 ここでまた景気対策といって補正予算を組み、ばらまけば、国・地方の借金がまたまた増えるのですから、この振舞酒に酔っていると 遠からず利子のついたビックリするような請求書が、消費税をはじめとする増税、あるいは、IMFや外国から借金しなければならなくなったり、あるいはインフレの形でやって来るのは必至です。おまけにアメリカから言われるままにイラク支援に膨大な支援を予定しています。政府は個人向け国債の販売に力を入れていますが、金利が上昇したりインフレになれば国債・地方債の価格は下がり、土地価格の低下と同様な悲劇を迎えますから私は買いません。輸入を抑えるためのセーフガードも一時的なものです。IT革命が進行し、貿易の自由化が避けられない現在では、まだまだ物価が下がるでしょう。資本の自由なグローバル化が進んでいる現在、極端に言えば日本国内の物価や人件費が高すぎるのです。デフレは避けられず給料の低下も進むでしょう。2007年08月16日修正された(月刊資産管理2007年9月号所載)野村証券金融経済研究所の2007年度〜2008年度経済見通しでは、全般に成長はやや低めに推移すると修正された。2007年は消費者物価は+0.1%(2008年に於いては+0.5%)、民間最終消費支出は2007年度+1.6%、2008年度は+2.5%となっています。また民間住宅投資も低めに修正され2007年度は+0.1%2008年度は+5.1(5月時点では+4.8%でした)と予測されています。やや高めに修正された民間企業設備投資は2007年度+5.3(5月時点では+4.0%)2008年度は+6.0(5月時点では+7.3%)となっています。公的固定資本形成は2007年度−6.5(5月時点では−6.8)%、2008年度−3.0(5月時点では−5.5)%で依然として低調です。名目国内総支出は2007年度+2.2(5月時点では+2.1)%2008年度+3.0(5月時点では+2.9)%でした。なお、完全失業率については2007年度+3.6(5月時点では+3.9%)、2008年度に於いては+3.4(5月時点でも+3.4)%。と予測され、実質GDPは2007年+2.2(5月時点では+2.1)%、2008年+2.6(5月時点では+2.6)%とみています。注目されるのは実質GDP成長率は依然として踊り場にあるが10−12月期には脱却すると見ていることです。レポートでは個人消費を弱くしている住民税引き上げ、ガソリン・食料品の値上げ、天候不順などの要素をいずれも一時的なものと見ているのですが、私は賃金上昇による国内景気の回復はそれほど期待していません。それは近隣諸国の人件費が安く、企業はそれを頭に置きながら工場立地なども考えるからです。その上現在は日本の基準金利の低さが円安を招いて輸出を促進しています。株式などの配当は増える傾向ですから株式保有者は潤いますが、全般には低調で、内需の成長はあまり期待できないと読みます。

このレポートにはいくつかの前提がありますが、その一つはドル円相場で年度平均2005年は109.4円、06年も110.0円でしたが、2007年は120.3円2008年度は120.0と円安が進むと見ています。変動の激しい原油入着価格は1バレル当たり2005年54.9ドル、2006年57.1ドルが07年70.6ドル08年73.0(5月時点では62.0)ドルとなっています。原油価格の高騰は続くようです。アメリカの実質GDP成長率は07年2.0%が堅調に推移し08年には3.3%になると予想されていますからやはり外需依存の体質は変わらないでしょう。



漱石の「こころ」上 先生と私 28節「君のうちに財産があるなら、今のうちによく能く始末をつけて貰って置かないといけないと思うがね、余計な御世話だけれども、君の御父さんが達者なうちに、貰うものはちゃんと貰っておくようにしたらどうですか。万一の事があったあとで、一番面倒の起こるのは財産の問題だから」。尊敬する「先生」の口からあまりにも生々しい言葉が出たので「私」は驚かされたのでした。遺産を巡ってのトラブルは絶えません。遺産を残すことを考えるよりも資金の投入によってその対象が活きてくるならば、思い切って生きているうちに使いましょう。子供たちにしても親が死んで転がり込んできたお金は本当の有り難みがわかりませんから、大抵は詰まらぬことに使ってアッという間に霧散してしまうものなのです。残さないで子ども自身の力で道を切り開かせる方が大事だと思います。

所詮自分のものなど何もありません。命をはじめ、すべては借り物、いつかは返して空(クウ)に帰るのです。私たちは不思議の国からの旅人なのです。  

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