 3年連続地区シリーズ敗退が決まり、Aロッド(左端)らが待つベンチに松井は肩を落として引きあげた(撮影・戸加里真司、クリックで拡大) |
【ニューヨーク=上阪正人】ヤンキースの松井秀喜外野手は8日、インディアンスとのア・リーグ地区シリーズ第4戦に6番DHで先発出場。2打数無安打に終わり、4−6で敗れたチームは3年連続でリーグ優勝決定戦進出を逃し、今季の日程を終了した。これでトーリ監督の辞任も決定的。不調に苦しむ松井を擁護し続けた指揮官のクビで、松井はどうなる−。
またも悲願のワールドシリーズチャンピオンには手が届かなかった。ネクストバッターズサークルで終戦を見届けた松井は「悔しいのは毎年同じ。これが現状の自分の力だと思っています。オフはもちろん万全な体調にいなくちゃいけない。これからトレーナーと相談になります。右ひざにメスをいれる可能性? ドクターがその方がいいといえばそうします」と話した。
右ひざは相当痛かったはずだ。この日の松井は第1打席に四球。第2打席以降も一塁ゴロ、遊飛、四球で、2打数無安打、2四球に終わった。 ヤンキースは中3日で登板した先発の王建民が2回途中までに4失点して早々とKO。2番手のムシーナも2点を奪われて合計6失点。打線はインディアンス先発の軟投派バードの攻略に苦戦し、後半にAロッド、カノ、アブレイユの3本のソロ本塁打で追い上げたがついに届かなかった。
松井が5回2死一塁のチャンスで遊飛に倒れた直後には、スタンドのファンから激しいブーイングを浴びた。試合開始前のセレモニーで名前が呼び上げられた際には、「マッスイ、サック!(松井くたばれ)」の罵声がヤンキースの応援席から飛んだ。
ヤンキースファンには、松井の不調はがまんできなかったらしい。それでも松井は、精一杯、自分のできる野球を続けた。崖っぷちの前日のゲームでは痛む足をひきずっての激走で得た内野安打を含む2安打2四球。この日も2四球を選び、土壇場の2試合で6出塁4得点の成績をだれに責められよう。
2回の第1打席の3球目にはスイング中に相手捕手のミットがバットに触れたものの球審は打撃妨害をとらず、カウント2−0と追い込まれながら選んだ四球で得点に結びつけた。3回の一ゴロでも走者を三塁に進める最低限の仕事は果たした。第4打席の四球は、一発がほしいところで強振したい1−3のカウントから、がまんして選んでの四球。一発狙いを繰り返す大型打線の中で、あと何人か松井のような野球をする打者がいれば、勝敗の行方も分からなかった。
今回の地区シリーズでは4試合を通じて、トーリ監督は松井をスタメンに起用し続けた。結局タイムリーは1本も出なかったが、トーリ監督が松井を買っていた理由の一端を試合のなかで少なからず示してみせた。
今シリーズ第3戦の前に、ヤンキースのスタインブレナーオーナーが地区シリーズ敗退ならトーリ監督と契約延長を行わないことを示唆していた。去就問題が注目されたトーリ監督は試合後、「ヤンキースには未来がある。だがそこに私は無用だ。すばらしい12年だった」と、自ら勇退を宣言した。
そしてこう続けた。「ヤンキースに加わった若い選手たちに関しては、その能力だけでなく、そのクオリティにもなんの疑いもない」。トーリ監督が描くチームの明るい新生ヤンキースの未来には、松井を手本とする若い選手が躍動しているに違いないのだ。
【松井の全打席】
2回 四球
3回 一ゴロ
5回 遊飛
7回 四球
【プレーオフ通算】打率.182 本塁打0 打点0 得点4(11打数2安打5四球)
ZAKZAK 2007/10/09