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広島の救急医療 軽症患者の集中を防げ '07/10/9

 広島市内を中心に、軽症から重症まで大人の救急患者を二十四時間受け入れている広島市民病院で、軽症者の集中が問題になっている。長時間の診療待ちへの不満も根強い。軽症者に応じる夜間救急診療所の設置に向けた市と市医師会の検討作業が動き始めた。早期の実現を期待したい。

 新しい救急医療体制がスタートしたのは昨年十二月。小児科と内科の二十四時間救急を引き受けてきた舟入病院から、内科救急部門が広島市民病院に移された。重症患者も移送せずに対応できる点は高く評価されている。舟入病院も内科の診療受付時間を午後八時まで延長した。

 それでもなお、軽症患者の集中は深刻だ。広島市民病院の月間の救急受診者は約二千五百人。入院する必要のない軽症患者が全体の八割を占め、しかも午後六〜十一時の比較的早い時間帯に偏っているという。軽症者がこのまま増え続け、日ごろの検査や手術などにも支障が出るような事態になってしまえば、元も子もない。

 なぜ軽症者が集中するのか。二十歳代や三十歳代の患者が多い点からみると、「かかりつけ医」を持たない若年層が増えている実態がうかがえる。同時に、中年層も含め「昼間忙しいから」とコンビニ感覚で受診する人が多いことも拍車を掛けているようだ。

 ライフスタイルの変化や共働き家庭の増加といった社会的な背景があることは、それなりに理解できる。ただ、夜間の救急外来受診では、持病や体質を十分知ってもらうのは難しい。医療費も割高になる。日ごろから相談できるかかりつけ医をもち、日中に受診する方が安心ではないか。

 一方で、都市部では夜間不在となるビル開業の診療所が多く、夜間や休日は対応してもらえないケースもある。病院に一極集中させないために、開業医の側も午後十一時ごろまでの診療の受け皿を広げる方策を、真剣に検討するべきだろう。

 開業医が参加する夜間救急診療所の設置は、軽症患者を分散させる取り組みとして歓迎したい。場所の選定などはこれからだ。公設民営方式を導入している他都市のノウハウも取り入れながら、できるだけ早く市と医師会で具体案をまとめてもらいたい。

 市民の努力が求められることもいうまでもない。安心の救急医療は、行政と医師会、市民が手を取り合ってこそ築ける。




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