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怪物王女:最強の“ツンツン”ヒロイン 仲間たちの危うさも魅力

ヒロイン「姫」の“ツンデレ”ならぬ“ツンツン”ぶりが注目を集めているマンガ「怪物王女」。アニメ化もされた
ヒロイン「姫」の“ツンデレ”ならぬ“ツンツン”ぶりが注目を集めているマンガ「怪物王女」。アニメ化もされた

 TBSの深夜に放送され、ヒロイン「姫」の“ツンデレ”ならぬ“ツンツン”ぶりが注目を集めている「怪物王女」。 金髪のロングヘア、燃えるような深紅の目に、黒いドレスというゴスロリスタイルの美少女が、チェーンソーを振り回して、敵の胴体をぶったぎる。常に冷静沈着で、言葉少なで、言い訳も一切しない。戦い終わっても、「デレ」という姿を全く見せず、まるで、時代劇で武士道を貫く剣客のような格好良さを感じてしまう。

 「怪物王女」は、光永康則さんが月刊シリウス(講談社)で連載しているマンガだ。物語は、メイドの姉を頼って、とある街にやって来た平凡な男子中学生ヒロが、いきなり車にひかれて死んでしまうところから始まる。すべての異形の者の上に君臨し、その血を与えれば死者をよみがえらせることができる王の娘である姫は、その事故に遭遇し、ヒロに血を与えて、ヒロを「王族の戦士」としてよみがえらせる。

 半不死の力を得て、姫に仕えることになったヒロは、「ふが」が口ぐせの可愛いメイド型人造人間「フランドル」、赤髪のショートカットにスタイル抜群、月夜には、腕だけが毛むくじゃらになる“オオカミ少女”の「リザ」、そしてセーラー服がよく似合い、少し陰のある美少女吸血鬼「令裡(れいり)」とともに、王族同士が血で血を洗う戦いを繰り広げる「王位継承争い」に巻き込まれていく。

 「ふが」という人造人間のフランケン(フランドル)、オオカミ男(女)、吸血鬼、そして王子(王女)と来れば、まさに藤子不二雄Aさんの名作「怪物くん」そのもの。ただし、怪物くんのしもべとなるモンスターたちは、ご主人様である怪物くんに絶対の忠誠を誓い、怪物くんのワガママに振り回されているだけだが、「怪物王女」のカルテットはより自律的で、主従というより、あいまいな“同盟”という関係だ。姫に絶対の忠誠を誓っているのはフランドルだけ。そもそもリザは最初は姫の命を狙っていたし、姫の命令にも口答えばかりで、言うことを聞かない。令裡にさらにドライで、姫とは常に一定の距離を置いていて、見下すような発言をすることさえある。危うい関係に見える4人だが、姫や仲間が危機に陥ると、互いの実力を信頼し、見事な連携で強敵に立ち向かう。その姿には、すがすがしささえ感じてしまう。

 また、それぞれの生きざまもすさまじい。怪物を統べる王位争いに巻き込まれた姫、時に逆上するほど兄のかたき討ちに執念を燃やすリザ、姫を助けたばかりに吸血鬼一族から命を狙われるようになった令裡。それぞれに重い背景を持っている。

 物語のポイントなるのは、姫とヒロの関係だ。寡黙な姫の代わりに、独白によって姫の心情を「解説」し、姫の“男気”を浮き彫りにしてくれるのがヒロの役割だ。最初は、うかつな行動で姫を危機に陥れたり、忠告を無視して暴走したりと、足を引っ張るばかりのヒロ。だが、姫に引かれながら、少しずつ「血の戦士」に目覚めていく。そして、姫の危機に徹夜で戦ったり、拉致された姫を救い出したりと、徐々にたくましい男へと成長していくのだ。

 アニメは、マンガ版とほぼ同じストーリー展開だが、ヒロが姫の「血」を吸う設定を、「青い炎」に変え、血が飛び散る残虐な描写も抑えている。だが姫の華麗な剣舞やアクションシーンが見られるのはアニメならではだ。 マンガでは、チェーンソーを振り回して相手を倒すなど流血の描写もある一方で、とどめをさす瞬間をシルエットにして配慮するなど細心の注意を払いながら、アニメにはない思い切った表現で姫たちの戦いが描かれる。物語も、他の王位継承者たちが次々と登場し、急展開を見せ、目が離せない。

■「ここまでハードボイルドになるとは…」 担当編集者の増田大祐さん 

 企画は、作者の光永康則さんが「血を飲むと生き返るという設定はどう?」と考えたのがきっかけです。ゲームや他のマンガで、お姫様といえば「か弱い」のですが、本当は高貴な女性はりりしいものです。姫の魅力は、いっさい言い訳をしないこと。とはいえ、ここまでハードボイルドになるとは……。 光永さんは、マンガへの取り組みが本当に真剣な方で、手を抜きません。ファミレスで徹夜の打ち合わせを3日連続でしたり、担当として一緒にのた打ち回りながら頑張っています。「萌え」の絵が多い昨今、不利を承知で流行に逆らう“勝負”をしており、姫はあえて“古典的”な「美少女」として描いています。日々努力をしているので、最初と比べれば、今の姫のほうが美人なのが分かってもらえると思いますよ。

 今後は、王族同士の戦いが展開しながら、伏線や姫以外のキャラクターの話も描かれると思います。アニメよりハードなシーンが多いので、初めて見ると驚かれると思いますが、コメディーも盛り込むなど、変化をつけていますよ。手に取っていただけたら、楽しんでもらえると思います。

●光永康則●シリウスKC 1~5巻(1~3巻 各540円、4~5巻 各560円=税込み)●月刊少年シリウス(講談社)で連載中

 2007年10月6日

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