時津風部屋の力士がけいこ後に死亡した問題で、日本相撲協会が緊急理事会を開き、師匠の時津風親方に対して解雇を言い渡した。解雇処分は、角界からの永久追放を意味する。協会の賞罰規定では最も重い処分である。
力士が亡くなったのは六月下旬だった。三カ月以上もたって、ようやく処分を下したが、協会は対応の遅れを深く反省しなければならない。
当初、協会の北の湖理事長は「警察にお任せするのが一番」と経過を見守る発言をし、当事者意識を欠く姿勢だった。認識の甘さに、監督官庁である文部科学省が北の湖理事長を呼び出し、警察の捜査と並行して協会独自に真相を究明するほか、結果を踏まえて関係者を処分するなどを指示した。
文科省の異例の指導を受けた協会は重い腰を上げ、今度は一刻も早くけじめをつけようとしたのだろう。警察の捜査が続いている段階にもかかわらず、処分に踏み切った。時津風親方は、理事会で説明の場を与えられ、行き過ぎた暴行はなかったなどと釈明した。しかし、協会は親方がビール瓶で力士を殴ってけがをさせたり、入門して日が浅いのに約三十分の激しいぶつかりげいこをさせたりするなど、師匠としての安全配慮義務を怠ったことを重視し、「処分はあくまで協会の信用を失墜させたことに対するもの」と説明する。
北の湖理事長は、今回の騒動の責任を取り、四カ月の減俸50%を自主的に決めた。他の理事、監事、役員待遇は三カ月の減俸30%とした。信用を失墜させたのは、時津風親方だけでなく、協会が適切な対応を怠ったからでもある。理事長らの責任の取り方は軽すぎないか。
肝心の真相究明についても、北の湖理事長は「この後は警察にやっていただく」とするにとどまる。強い危機感が伝わってこない。
事件で浮かび上がったのは、力士出身の親方衆だけで運営してきた協会の閉鎖的体質である。だが、改善への取り組みはなかなか進まない。協会は九月二十七日に「力士指導に関する検討委員会」を発足させたが、文科省は外部の有識者を加えるよう求めている。当然であろう。
先ごろ、他の部屋でも親方が弟子に暴行を加え、けがを負わせたとして傷害容疑で書類送検されたことが発覚した。角界に暴力がはびこっているのではないかと厳しい目が向けられている。協会は、国技として国民から支持されるために、今回の処分で一件落着とせず、閉鎖体質の改善を急がなければなるまい。
生命保険各社による保険金などの不払い調査で、二〇〇一年度からの五年間で件数は約百二十万件、金額は約九百十億円に上ることが分かった。ほぼ最終の結果だが、三十八社のうち中小の十五社はまだ調査を続けており、さらに膨らむ可能性がある。
今年四月の中間報告に比べ件数、金額とも二・五倍を超えた。形態は契約が失効した場合の返戻金や、がん、脳卒中など三大疾病特約の保険金不払いが目立った。
〇五年二月に問題が表面化した当初、意図的なものやコンピューターのプログラムミスによる不払いなどを主に調査対象としてきた。しかし、本来は支払うべき特約の保険金を、請求の案内などをせずに放置してきたことが徐々に明らかになった。
契約者の反発や金融庁の強硬な姿勢に押され、調査対象を拡大した。不払いの規模が膨らんだのは、業界の認識の甘さと自浄能力の低さが原因といえよう。
不払いを招いた要因として、チェック体制のずさんさや複雑な契約内容などが指摘されるが、根はもっと深いのではないか。新規契約の獲得優先と顧客軽視の土壌がまん延しているとされる。要するに契約者を増やし保険料を集めることには熱心だが、保険金などの支払いはないがしろにしてきた業界のゆがんだ体質である。
調査がヤマを越えたため、金融庁は行政処分の検討に入る。各社は経営責任を明らかにするとともに、体質の抜本改革と再発防止策の確立が急務だ。契約者本位の視点で社員の意識変革を徹底し、チェック体制など業務全般を根本的に見直す必要がある。着実な実践しか信頼回復の道はないだろう。
(2007年10月7日掲載)