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「売れ残った本」半額に 出版社17社、ネットで本格販売

2007年10月07日

 再販契約で定価販売を義務づける出版業界で、「売れ残った本」をインターネット上で値引き販売しようという試みが、12日から本格的に始まる。これまでの絶版本や期間限定の割引販売から一歩進め、小学館や集英社、講談社、文芸春秋などの大手出版社が、絶版の一歩手前の「在庫僅少(きんしょう)本」を提供し、半額で通年販売する。出版不況で書籍の4割が読者の手に届かず返品されるなか、価格を拘束しない「第2の市場」を創設して本の復活をはかるのが狙いだ。

 販売するのは、小学館と集英社などの関連会社、昭和図書(大竹靖夫社長)が運営するインターネットのショッピングサイト「ブックハウス神保町.com」(http://www.bh−jinbocho.com/)。

 昭和図書の呼びかけで、今春から小学館、集英社など4社が、初版発売後1年以上経過し、在庫が少なく一般の流通経路には乗せにくい「在庫僅少本」の値引き販売を実験的に開始。他社にも協力を呼びかけたところ、講談社、文芸春秋、筑摩書房、主婦の友社など計17社が賛同し、本格運用に乗り出すことになった。約400点を手始めに売り出し、商品は半年ごとに入れ替える。今後も協力出版社を募り、「値引き市場」を育てたいという。

 再販制度のもと「定価販売」を続けている出版業界では、絶版前の書籍の「値引き」に根強い抵抗感がある。業界では、03年秋から年2回、期間限定でネット上で定価の5割引きで販売する「謝恩価格本ネット販売フェア」を続けているが、通年開催は一般書店での定価販売に悪影響を与える懸念もあった。

 それでも本格運用を始める背景には、市場の縮小と膨大な返品量に業界全体がもたなくなるという危機感がある。昭和図書の推計では、書店で売れ残って出版社に返品される書籍は年間5億冊を超え、そのうち約2割の1億冊が断裁処分になり損失は820億円に及ぶ。断裁するぐらいなら値引きしてでも読者に届けようという発想だ。

 同サイトでは絶版本の割引販売もしており、大竹社長は「『定価販売以外は駄目』という考えにこだわりすぎると業界全体が落ち込むばかり。将来的には1000万冊、40億円ぐらいの市場を目指したい。売り上げを新刊発行の原資にまわせれば、不況克服の一助にもなる」と話す。

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