市町村合併に伴う国民健康保険の保険料格差を解消することなどを目的に都道府県に設置された基金の利用が進まず、残高は全国で総額287億円に上ることが会計検査院の調べで分かった。基金は、市町村に貸し付けるため02年に国と各都道府県が半額ずつ出資して作られた。貸し付け基準が厳しいことなどが理由で、全国で総額300億円あった基金の95%以上が残っている実態を重くみた検査院は、厚生労働省に改善を求める方針だ。
基金は「国民健康保険広域化等支援基金」。国保は市町村単位で運営しており、1人当たりの年間保険料は各市町村で異なるが、医療費がかかる高齢者が多い自治体ほど保険料が高くなる。国保の保険料が異なる市町村同士が合併する場合、保険料が安い市町村の住民の保険料を増額していくが、その場合保険料収入が一時的に減り赤字になる恐れがあった。
基金は、こうした状況に対処するため無利子貸し付けを行う目的で、茨城、長野を除く45都道府県に設置された。国と各都道府県が半額ずつ出資し、全国で総額は300億円あった。ところが、各自治体への周知が不十分だったり、3年以内に返済しなければならないなどの貸し付け基準があったため、全国で総額約30億円分の貸し付けにとどまっている。28府県では一度も貸し付けがなく、最も多い山口県でも3億7000万円だ。
厚労省国民健康保険課は「貸し付け基準を緩和するなどして、有効活用できるよう見直しを進めたい」と話している。【斎藤良太、永井大介】
毎日新聞 2007年10月6日 7時32分