サイエンス

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録 Yahoo!ブックマークに登録
この記事を印刷
印刷

がん:酒臭さ、がんのもと 原因物質が増加、うがいで予防を

 飲酒の翌日まで酒臭さが残りやすい人は、食道がんや咽頭(いんとう)がんに関係するとされるアルコール分解物の「アセトアルデヒド」が唾液(だえき)中に生じやすいことが、国立病院機構久里浜アルコール症センターの横山顕・臨床研究部長らの調査で分かった。世界保健機関(WHO)は、アセトアルデヒドを継続的に投与したラットに咽頭がんが生じた動物実験などから、アセトアルデヒドを発がん物質と位置付けている。横山部長は「飲酒前後の歯磨きやうがいなど、口の中をよく洗うことが、がん予防につながるのではないか」と指摘している。

 横山部長らは、前日まで飲酒していたアルコール依存症の男性80人を対象に、血中と唾液中のアセトアルデヒド濃度を測定。あわせて、アルコールを分解する酵素(ADH-1B)の働きを調べた。

 酵素の働きが正常な55人から検出されたアセトアルデヒド濃度は、最高でも唾液1リットル当たり26・3マイクロモル(モルは物質量の単位)で、中央値は1・6マイクロモルだった。一方、酵素の働きが弱い25人の濃度は同22・2~87・6マイクロモル、中央値は47・4マイクロモルで、正常者を大幅に上回った。

 口の中にはアルコールを分解してアセトアルデヒドを作り出す細菌が生息している。ADH-1Bの働きが弱い人は、口中にもアルコールが長く残り、酒臭さが続く。その間、細菌の働きで口中にアセトアルデヒドが作られ続けるとみられる。

 横山部長によると、日本人の約7%はADH-1Bの働きが弱い。アルコールが体内に長く残ることで依存性も強まる傾向があり、アルコール依存症患者ではその割合が30%程度になるという。【関東晋慈】

毎日新聞 2007年10月6日 東京夕刊

サイエンス アーカイブ一覧

ニュースセレクトトップ

エンターテインメントトップ

ライフスタイルトップ

 

おすすめ情報