福田内閣が船出しました。共同通信社の調査では支持率は57・8%と五割を突破。発足直後のご祝儀もあるのでしょうが、都市と地方の格差拡大など、小泉、安倍両政権の構造改革路線による「痛み」を和らげてほしいという期待の表れとも言えそうです。
その小泉構造改革が「改革の本丸」と位置付けた郵政民営化で、日本郵政公社が株式会社グループに生まれ変わりました。貯金事業を引き継いだ「ゆうちょ銀行」は貯金残高が百八十兆円超。国内最大手の三菱東京UFJ銀行の二倍近くにもなり、まさにマンモス銀行の登場です。
民間の金融機関はその動向に神経をとがらせています。とりわけ地方の銀行や信用金庫などにとり、郵便局の圧倒的な店舗網は「地域密着」「足で稼ぐ」といった営業スタイルが足元から脅かされる格好となります。ゆうちょ銀は住宅ローンやクレジットカードなどの分野にも早期参入の意向で、競争激化は避けられません。
しかも、ゆうちょ銀は当分、持ち株会社を通じて国の出資が残り、信用面で民間金融よりも有利な立場にあります。もちろん、競争がサービス向上や料金引き下げにつながれば、民営化にも一定のメリットがあるのでしょうが、地域金融の体力低下は地場の中小企業に深刻な影響を与える可能性もあります。
郵政民営化では、過疎地の郵便局で集配業務が相次いで打ち切られる事態も起きています。改革が地域経済に新たな痛みを負わせることだけは避けなければなりません。
(経済部・桑原功)