公立保育園の国庫補助負担金がカットされたあおりを受け、全国の公立保育園で民営化の動きが進んでいる。奈良市でも公設民営の2園の完全民営化を手始めに、公立保育園を民営化しようと検討が始まった。子どもの成長に密接にかかわる保育の民営化の現状を取材した。【高橋恵子】
◇保護者ら反対署名提出へ
厚生労働省は、公立保育園運営のために支出してきた国庫補助負担金を04年度から一般財源化した。財政難の上、特定財源を確保できなくなった奈良市は、これまで通り負担金が支出される民間保育園への移管を検討。05年1月、市の委託で社会福祉法人が運営する公設民営保育園2園の完全民営化を決めた。今年3月には、他の公立保育園(22園)について協議する保育所運営検討委員会も設置した。
公設民営の2園のうち中登美保育園が4月に完全民営化された。鶴舞保育園は1月、現在の運営法人が来年3月で撤退すると市に通告したが、保護者への説明は8月とずれ込んだ。現在、保護者会が保育の質の確保を求めて、職員の継続雇用など法人募集条件や選定方法を市と協議している。
市林かずみ保護者会長は「市が保育所を手放すのは少子化対策に逆行する動き。保護者に十分な説明もなく民営化が進められてはいけない」と苦言を呈する。
市内6園の公・私立保育園の保護者でつくる「奈良市保育園保護者会連絡協議会」は、公立保育園の民営化に反対する要望署名を藤原昭市長に来月提出する予定だ。
小幡尚代会長は、他の自治体で保育士が一斉に変わって子どもが不安定になった事例があることや、コスト競争で保育士の人件費がカットされ、保育の質が低下することなどを指摘。「保育の質の基準だった公立園がなくなるのは困る。生身の子どもを扱う保育は、競争に適さない。国の改革のしわ寄せが来てしまった」と民営化に反対する。
西岡康夫市保育課長は「国の財政問題の一端が保育に出てしまった。保育園用の財源が確保できなくなり、民営化を進めなければならないが、保護者の理解を求めながらやりたい」としている。
10月5日朝刊
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