2007年10月06日 更新

ロ軍勝利の立役者は松井稼!「自分でもビックリ」逆転満塁弾

自身メジャー初のカイカ〜ン。四回に逆転満塁本塁打を放った松井稼(ロイター)

自身メジャー初のカイカ〜ン。四回に逆転満塁本塁打を放った松井稼(ロイター)

 【フィラデルフィア4日(日本時間5日)】ロッキーズの松井稼頭央内野手(31)が、フィリーズとの地区シリーズ第2戦で、1点を追う四回にポストシーズンでは日本選手初となる満塁本塁打を放った。5打数3安打5打点の爆発で、チームも10−5で連勝。ナ・リーグ優勝決定シリーズ進出に王手をかける活躍に、ロ軍のダン・オダウドGM(48)は来季も契約を結ぶことを明言した。

 フィラデルフィアの青空に閃光が走った。松井稼が、値千金の逆転満塁弾。チーム初のリーグ優勝決定シリーズ進出に王手をかけた。

 「食らいついていった。自分が打ってチームが勝てばうれしい。自分でもビックリしました」

 1点を追う四回二死満塁で迎えた第3打席だった。カイル・ローシュ投手(29)の93マイル(約150キロ)の内角低め速球を強振。メジャーで自身初、ポストシーズンで日本選手初、西武時代に1本しか放ったことのないグランドスラムを右翼席に運んだ。04年開場以来、最多となる4万5991人を集めた敵地のシチズンズバンク・パークは静まり返った。

 「短期決戦で1番打者が不調だとチームに悪影響を与える。そういう(戒める)気持ちをもって打席に入っている」

 2打席目の中越え二塁打、4打席目は右中間三塁打を放ち、5打数3安打5打点の猛打賞。単打を放てば、ポストシーズン史上初のサイクル安打達成だった最終第5打席は中飛に倒れたが、勝利の立役者は間違いなく松井稼だった。

 この活躍にロ軍のダン・オダウドGM(48)も満足げだ。シーズン終了後、松井稼と契約更新の交渉を行うことを明言した。「彼がいたからここまで来られた。来季もぜひチームに戻ってきてほしい。再契約するための交渉を代理人とする」。昨年6月にメッツから移籍。今季は1年150万ドル(約1億7550万円)で契約したが、交渉では倍増の300万ドル(約3億5100万円)クラスのオファーとなるもようだ。

 「チームが、そう思ってくれることはとても感謝していますし有り難いです。契約を勝ち取れるような活躍を、もっとしなくてはいけませんから」。勢いに乗ったカズオが、再び嵐を巻き起こす。

★稼頭央に聞く

−−打ったときの感触は

 「打った後は、(右翼席に)入ったと思った」

−−満塁弾を打てると思った

 「まったく、考えていなかった。昨日、チャンスで凡退(4打数無安打)したから安打(狙い)という気持ちで迎えた」

−−最終打席でサイクル安打の可能性があった

 「多少は意識したけど自分の記録は関係ない」

−−日本でも満塁弾を打っているが

 「比べものにならないぐらい、今日の方がうれしいです」

−−あの本塁打で(敵地の)大観衆がシーンとなった

 「みんな想像しなかったことだから、ビックリしたのでは」

−−(地区シリーズ突破へ)王手をかけた

 「連勝は本当にいい形で勝った。王手は考えずに、同じ気持ちで集中しながらやっていきたい」

−−日本シリーズとの違いは

 「日本シリーズの方が緊張する。ワールドシリーズだったら、もっと緊張すると思うけど」

■稼頭央の由来

 “稼頭央”の由来1994年の西武入団時に本名の「和夫」でなく、「稼頭央」で選手名登録した。この日は、まさに打点の「稼ぎ頭」となった。松井稼は以前、名前の由来について「親戚が考えてくれた名前で、グランドの中央で頑張れという意味」と説明した。

■データBOX

 〔1〕ロッキーズ・松井稼頭央が満塁本塁打。地区シリーズでの満塁弾はメジャー史上16人目(ナ・リーグ9人目)。ポストシーズン(PS)出場2度目のロ軍では球団初。日本人選手ではPS全体で初の満塁弾。スコア2−3からの逆転弾で、PSの日本人選手の逆転弾は05年ホワイトソックス・井口(現フィリーズ)以来2本目。
 〔2〕PS1試合5打点はヤンキース・松井秀が04年のリーグ優勝決定シリーズ(対レッドソックス)第1、3戦で記録したのに次いで日本人2人目(3度目)。松井稼自身はメッツ時代の04年7月2日にヤンキース戦で5打点を記録している。
 〔3〕単打が出ずPS史上初の快挙となるサイクル安打を逃したが、PS1試合で「本塁打、三塁打、二塁打」を記録したのは68年ワールドシリーズ第4戦でカージナルス(対タイガース)のルー・ブロック(史上2位の通算938盗塁)だけ。

◆松井稼の活躍にロッキーズのクリント・ハードル監督(50)

 「非常によくチームに適応している。本当に素晴らしい選手だ。ジョークでナインも笑わせる明るい男でもある」

★そのとき

 PL学園高時代の恩師、中村順司監督(61)=現名商大監督=は「彼は高校時代から勝負強い男だったけど、大事なプレーオフでうまく乗れましたね」と声を弾ませた。この日は午前中から愛知・日進市のグラウンドでから野球部の練習があったため、ニュースで知ったという。「最近は低めをうまくさばいている。最近は連絡を取っていないが、シーズン後に祝福したいね」と話した。

■裏話

 フィラデルフィアは、シルベスタ・スタローン主演の映画「ロッキー」の舞台になった土地。「全作、数え切れないくらい見ていますよ。ロッキーは大好きです」と松井稼。フ軍のチャンスになると、有名なテーマ曲が流れるが、逆にカズオにとっては応援歌となり、アドレナリンが噴出する。04年のメッツ時代、遠征で訪れた際に「乗ったタクシーの運転手が、映画でロッキーが走った道をわざわざ通ってくれたんです。感動しましたよ。今でも忘れません」。この日はカズオが、まさに“ロッキー”となった?