福田康夫首相の所信表明演説に対する各会派の代表質問は4日、衆参両院本会議で行われ、沖縄戦で旧日本軍が住民集団自決を強制したとの記述が3月の教科書検定で削除された問題が相次いで取り上げられた。首相は検定について「軍の関与を否定するものではない。集団自決した住民すべてに自決の軍命が下されたか否かを断定できないとの考えで出されたものだ」と説明。そのうえで「文部科学省でしっかり検討する」と述べ、記述削除の見直しを容認する姿勢を示した。
この問題は、沖縄県宜野湾市で9月29日、約11万人が教科書検定意見の撤回を求める集会を開いたことで焦点化。この日代表質問した衆参両院議員6人のうち、沖縄出身で社民党の照屋寛徳、「そうぞう」の下地幹郎の両衆院議員を含む5人が、この問題を取り上げた。
照屋氏は「日本兵から『米軍に捕まる前にこれで死になさい』と手りゅう弾を渡された」との証言を紹介し、「真実を歪曲(わいきょく)・改ざんすることは断じて許されない。あいまいな政治決着では真の解決になりえない」と、記述の復活を迫った。
下地氏も「今回の問題は沖縄県民の誇りを大きく傷つけた。明確で納得できる解決なくして、(政府の)沖縄振興策は全く意味を持たない」と批判した。
これに対して、福田首相は「沖縄戦は住民を巻き込んだ悲惨な戦いだ。多くの人が犠牲になったことを学校で教えていかなければならない」と答弁。渡海紀三朗文部科学相は「検定には、断じて政治的介入があってはならない」と述べる一方、「(教科書会社から)訂正申請があった場合、真摯(しんし)に受け止め適切に教科書検定審議会の意見を聞くことになる」と答えた。【川上克己】
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