厚生労働省は5日、08年度の診療報酬改定で、妊婦の救急搬送を受け入れた医療機関の報酬を加算する方針を厚労相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)の小委員会に示した。奈良県の女性が8月、9カ所の病院から診療を拒否され死産した問題を受け、救急体制の整備を促すほか、産科医の減少に歯止めをかける狙いもある。
妊婦の受け入れ態勢が整っていない背景には、慢性的な産科医不足がある。もともと労働条件が過酷なことに加え、2.5キロ未満で生まれる低体重児や40歳以上の高齢出産など、生命の危険性が高い出産の割合が増え、訴訟に発展するケースが多くなっていることが、医師不足を招いている。
こうした現状を踏まえ、同省は妊娠22~27週の早産や40歳以上の初産婦で認めている報酬の上乗せ「ハイリスク分娩(ぶんべん)管理加算」を、妊婦が心臓疾患を抱えていたり、胎盤が子宮口を覆う前置胎盤の場合にも適用する考えを示した。
このほか、がん対策を推進するため、外来で放射線療法を受けることが可能な医療機関や質の高い化学療法をするために医師、看護師らを基準より厚く配置しているケースについても、診療報酬を上乗せする方針を示した。【大場伸也】
毎日新聞 2007年10月5日 23時28分