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ニュースの焦点 鳥取市で相次ぐ公金着服
2006/08/12の紙面より
鳥取市で公的機関の職員による公金の着服が相次いでいる。本年度に入り四カ月間で四件の不正が明らかになり、総額は分かっているだけでも約六百六十万円(一人当たり十三万−五百七十三万円)に上る。あぜんとする一連の不祥事で、問われたのはずさんな管理体制、職員の倫理観だった。
公僕の自覚どこへ 4カ月で4件発覚「市民に迷惑を掛けた」「深くおわびする」−。不正が明らかになるたび、竹内功市長や市の幹部、関係機関のトップは市役所で頭を下げ、同じ言葉を繰り返した。始まりは四月七日、河原町総合支所の職員による生活保護費などの着服が発覚した。続いて、用瀬町総合支所の職員が簡易水道事業費などを着服、詐欺容疑で六月に逮捕され、十一日に鳥取地裁で初公判が行われた。 さらに、市の外郭団体・市教育福祉振興会が運営する宿泊保養施設の職員による売上金着服が六月末、分かった。鳥取市社会福祉協議会は今月七日、職員が福祉団体の会費などを着服したと発表した。 □再発防止へ■「二度とあってはならない。襟を正して名誉回復のため頑張ってほしい」。鳥取市社協での不正が明らかになった七日夜、同市富安二丁目のさざんか会館会議室で、社協の井上清司常務理事が、全職員約百三十人に訴えた。複数職員で決裁するほか、管理職七人でつくる内部監査組織を九月に立ち上げる方針を決め、職員に周知した。設立約四十年で初の不祥事。井上常務理事は「公正で透明性のある仕事をしていかなければ」と力を込める。 市も新たな人材育成基本方針を作り、職員の法令順守を徹底。公金適正管理の改善方針を定め、今月から実施している。 市と市社協の職員による不正は、いずれも通帳や印鑑を一人で扱っており、とりわけ旧町村でのずさんな公金管理の実態を露呈した。 「合併で旧町村の人員は制限され、支所では一人が何役もこなさなければならない」。市代表監査委員の縄田捷彦さん(68)は問題点を指摘。「倫理観が乏しく、『お金は返せばいい』と安易に考え、罪悪感のない職員が多い。置かれている立場を再認識してほしい」と訴える。 □高まる不信感■市民の不信感も高まっている。男性銀行員(31)は「汗を流して納めている税金だ。いいかげんにしてもらいたい。問題を起こすのは一握りと思いたい」。市職員の一人は「市が絡んだ機関の不正も続いているのに、『市とは関係ない』と、組織全体の問題としてとらえてない。対策もその場しのぎにならなければいいが」と嘆く。六月定例市議会では三人の議員が不祥事関連で質問した。鳥取環境大学の前学長で倫理学者の加藤尚武さん(69)は言う。 「公職に携わる人は、倒産もなく給料がもらえる安全な職場と考え、使命感を感じていない職員が多い。公務員に倫理観を求めるのは現状では難しいが、まずは綱紀粛正、特にチェック体制に穴がないようにすることが大切だ。公共に奉仕する人材を重視して採用してほしい」 信頼を回復するのは容易ではなく、時間がかかるだろう。組織全体として、自浄力で不正を生んだ土壌のウミを出し切ってほしい。市民は厳しい目で組織改善の行方を見ている。
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