◇山崎製パンの臭素酸カリウム使用再開の横暴と愚行に深い憤り◇  

2004年6月より山崎製パンが毒性の強い臭素酸(しゅうそさん)カリウムを添加した食パンを生産再開した事に憤りを感じると共に
日本パン工業会が生命倫理感を欠如したとも思える山崎製パンに追随し、臭素酸カリウムの使用自粛を放棄した事は同工業会が「食の安全と消費者の健康」より企業論理を優先したとも思われ深く憂慮しています。



    + 前回の臭素酸カリウム不使用に至った経緯から・・・ +
1977年に厚生省が臭素酸カリウムの変異原性を発表したことから、「臭素酸カリウムを追放しよう」という消費者運動が高まったのが始まりだったと思います。
1992年 国際機関「コーデックス」の合同食品添加物専門家会議で発ガン性があるため臭素酸カリウムを小麦粉改良剤として使用するのは不適当と発表。
同年、日本パン工業会・全日本パン協同組合連合会はその使用の自主規制を発表、臭素酸カリウムを含むイーストフードの生産も中止になり、現在はほとんど使用実態のないもの、つまり有用性、必要性の乏しくなっているという経緯を踏まえて、何故今、Y社は「グルテン無添加の国内産小麦粉で食パンの量産に成功」などという詭弁とも思える論を振りかざし、自社の利益追求に走るのか、その真の狙いはどこにあるのか、多くの疑問が沸いて来ます。

               参考:  山崎製パン臭素酸カリウム添加食パン発売広告

◇ 山崎製パン広告で判る問題点
  • 「正常の製パン工程を遵守するなら、プルマン型(角型)食パンには臭素酸カリウムの残存は検出されない」とありますが第一の問題点はここにあります。
    どんな優秀な機械設備であっても操作するのは人であり、作業マニュアルも、作成したのは人であり、作業するのも人です。ところが人の行動にはミスは付き物です。過去の重大事故を手繰れば人のミスから生まれている事が良くわかります。山崎製パンは事故を「起きない」「起こさせない」を前提にして居るようですが、この世に絶対という事があるでしょうか。
    食品工場で臭素酸カリウムのような毒物での万一の事故を防止するには工場内に持ち込まない事、つまり使用してはならない事であって「分析技術の精度が向上した」「科学的に安全性が証明され・・・」という事とは次元が異なり、臭素酸カリウムその物の安全性が証明されない限り使用してはならないと思います。
  • 次に問題なのが日本パン工業会が臭素酸カリウムの使用自粛を放棄した事です。これですべての製パン業者が自由に臭素酸カリウムを使用する権利を得た事になります。食品衛生法上でも臭素酸カリウムの使用を禁じていないのですから・・・
    製パン業者の多くは未だどこも脆弱な体質といっても良いと思います。(失礼・・)  信じられないかもしれませんが、中小パンメーカーの中にはデジタルスケールさえ満足に備えていないところもあると聞いております。
    又広告の中で「交差汚染を防止するための・・・」とわざわざ触れておりますがパン屋での問題点は正にここにもあります。パン生地の転用など日常茶飯事で行われます。解禁されたが最後、臭素酸カリウム入りのパン生地はさまざまの種類のパンを汚染して行くでしょう。
  • 「山型食パンにおける臭素酸カリウムの残存量を大きく低減することができた」とありますが、問題点は山形食パンではありません。他のテーブロールのようなパンにあります。バターロールのように焼成時間の短いパンの臭素酸カリウムの残存量は非常に大きいという事実は当初から指摘されていました。
  • 問題点は他にも。「1995年のJECFAで再確認された(微量残留するので)小麦粉処理剤としての使用は容認できない」という結論が出ているのに、パン屋一企業の研究だけで安全性が確立されたといえるのか、又分解された臭素酸カリウムの安全性については何ら言及されていないなどの等等、多大な問題点が残されています。
    JECFAとはFAO/WHO合同食品添加物専門家委員会のこと。
臭素酸カリウムの毒性は発がん性、催奇形性などであって、急性の症状が現れる訳ではありません、おそらく山崎製パン飯島延浩社長は「万が一の場合でも雪印乳業の二の舞の心配はない」と高をくくっているのでしょうが、はたしてこれで良いのでしょうか、この毒性は消費者の子孫代々迄引き継がれる事になるのです。我々消費者は臭素酸カリウムの使用、未使用のパンの選択の自由はありません。何しろ今の現行法規では毒性が明白な臭素酸カリウムを使用しても何ら表示の義務は無いのですから。
参考:臭素酸カリウムの毒性に関する報告
  1. 1982年、厚生省がん研究助成金による研究で、臭素酸カリウムに発癌性の疑いがあるという中間報告がなされた。
  2. 1983年、国立衛生試験所食品添加物部長谷村顕雄氏は、雑誌「NEWFOOD INDUSTRY」NO. 6 VOL. 25において「食品添加物の指定と削除〜特に発癌性の評価について」という論文を発表し、臭素酸カリウムの強い発癌性を指摘している
  3. 1995年2月14日〜23日、第44回JECFAがローマで開催された。この会議においては、小麦粉処理剤として使用された臭素酸カリウムがパン製品中に残留しているとの報告がなされ、改めて遺伝毒性を示す発癌物質である臭素酸カリウムの使用禁止の勧告がなされた。
  4. 英国農水省食品安全監督局が発行する定期刊行物「食品添加物と汚染」(FOOD ADDITIVES AND CONTAMINANTS)の1994. VOL11 NO. 6 633-639によれば、イギリス政府は、1990年にパン製造時における臭素酸カリウムの使用を全面的に禁止した。
◇ 臭素酸カリウムとはどんな添加物?
臭素酸カリウムはどんな添加物なのか、何故、パンに配合するのか、ほとんどの方はご存知無いと思いますのでちょっとご説明します。
臭素酸カリウム(しゅうそさんカリウム)は英語名でブロム酸カリ、ブロメート(臭素酸塩)、化学式はKBrO3で、自然界には存在しません。パン生地の中では生地改良材としての働きをします。
この添加物の働きはといいますと、機械を使用したパンの大量生産ではパン生地が非常大きなダメージを受けその後の工程で回復困難な製パン機械が何箇所かあります。例えば生地の分割機です。
みなさんは生地の分割はスケッパーで生地を分割しながら計量します。ところが流れ作業の大量生産では一々重量を測りながら生地を足したり、引いたりする訳にいきません。パン工場で稼動する分割機の構造は重量で計量するのではなく容積で測ります。マスに生地を注入してこの容量であったら500gとか測る構造なんです。こういう測り方では生地が膨れていたんでは正確に測れません。その為計量する前にガスで膨れた生地をピストンですさまじい圧力をかけ、ムギューと圧縮して生地からガスを抜くんです。もう生地はムチャクチャに痛みます。ボロボロになります。普通でしたら以後生地の回復なんて考えられないのですが、ここで登場するのが臭素酸カリウムなんです。この添加物を入れた生地はこの生地分割の工程以降で奇跡的に元通りの生地に回復します。
臭素酸カリウムの生地中での化学的メカニズムは頭が痛くなるでしょうから、これは省略しますが、どうでしょうお分かりになられたでしょうか。
まあ、逆の見方をしますと臭素酸カリウムが無かったら今のパンの大量生産は出来なかったとも言えるでしょう。
ここで皆さんは疑問になりますね、「臭素酸カリウムを使わなかったらパンの大量生産は出来ないんでしょう・・・・」と。
◇ ビタミンCについて
臭素酸カリウムの発がん性の疑いが発覚後、その代替物として研究開発されたのがフランスパンでも使用されていたビタミンCなんです。このビタミンCを利用する事でほぼ従来通り大量生産が可能になり現在に至っております。
ビタミンCの使用量はごくわずかで計量も難しい為通常はイーストフードの中に配合されておりますが食品衛生上はパンの包装紙にはイーストフードとビタミンCを分け併記する事になっております。
◇ 何故、国はそんな毒性の強い臭素酸カリウムの使用を認めているんでしょう?
臭素酸カリウムの毒性はハッキリしております。ですが臭素酸カリウムは熱に極めて弱く充分に焼成したパンの中では焼成後分解し臭素酸カリウムは検出されない。という事から来ているようですが何故今まで禁止措置が取られなかったかは判りません。
ただ問題が大きくなった1984年厚生省はそれまで使用可能な食品であった魚肉練り製品への使用を禁止し、パンについては使用基準を小麦粉1kg当たり0.05gであった基準を0.03gに改定し、焼成後のパンから未検出にする事を条件に加えたんです。
つまりここが大切なところなんですが、パンから未検出という事が前提ですから臭素酸カリウムを使用していても包装紙には表示義務がない、という事なんです。消費者には臭素酸カリウムを使用したパンかどうなのか全く判らない、選択の自由が無いという事なんです。
あるサイトに「イーストフードとビタミンCと表示があれば大丈夫」というような趣旨がありましたがこれは間違いです。山崎製パン広告にあるように臭素酸カリウムとビタミンCを併用すればその相乗効果が得られるいう事は以前からの研究結果で判っております。特に冷凍生地には多量の臭素酸カリウムとビタミンCを配合すると冷凍障害に対し、すばらしい改善効果が得られます。このような場合でも表示はビタミンCだけです。
ひょっとすると山崎製パンは傘下のお店に供給している冷凍生地の改良が真の狙いかも知れないですね。
日本パン工業会:山崎製パン、敷島製パン、神戸屋など大手パンメーカー27           社が組織する団体
全日本パン協同組合連合会:中小企業等協同組合法に基づき都道府県ごと                  に設立されている各パン組合の連合会
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