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お客から尊敬される飲食人を育てる!
グレイス株式会社 代表取締役 中村 仁氏

2007.7.20
「壌」で立ち飲みブームの先駆者となり、「豚組」でイベリコ豚など銘柄豚ブームの火付け役となった、グレイスの中村社長。2011年の株式公開を目指し、新業態の豚しゃぶを投入する。9月に六本木で1号店を開店予定。その後、都内で大型10店舗を展開する。その中村社長と共に上場を目指してくれる同志を探している。グレイスは成長し続けるために、お客から尊敬される人間を育てる教育体制を整えた。



グレイス中村社長


マルチメディアに憧れるも、居酒屋の社長になってしまった

 立教大学を卒業し、松下電器産業でテレビの営業企画を担当していました。3年半勤めました。その間、「マルチメディア」という言葉に出会い、世の中の仕組みを変えるコンセプトだと感じ、何が何でも「マルチメディア」を仕事にしたくなったんです。

 米国のゴア副大統領立ち上げた「インフォメーション・スーパー・ハイウェイ」という構想にワクワクし、米国に憧れました。「米国に留学したい!」と思いましたが、残念ながら上手く行きません。

 たまたま、外資系広告代理店から新しく日本法人を作るので、人を探していると聞き、松下電器産業を辞めて広告プランナーとして外国人ばかりの中で働きました。やりがいがありましたね。しかし、外国人社員と日本人社員の間に大きな待遇格差があるのに気付き、ケンカです。辞めました。

 フリーで広告やマーケティングの仕事をしました。その時、居酒屋で働いていた友人と、資金を出し合って居酒屋をやろうと出店を進めていましたが、直前でその友人から「やっぱり、辞めたい」とドタキャンです。今さら後に引けず、覚悟を決めて、一人でやることにしました。

 それが、2000年4月にオープンの1号店「西麻布 せいざん」。23坪で55席も設けました。西麻布で2千円以内で飲み食いできる店を作ったんです。


「西麻布 せいざん」店内


「西麻布 せいざん」店内




倒産の危機から、はい上がった

 原価率、FLなんて分かりません。従業員もたった23坪で何と10人いました。8ヶ月経って利益は出ませんが、客入りもそこそこでしたし、それほどがむしゃらでもありませんでした。

 しかし、お金が底をついてきました。このまま負けて終わるのは悔しい。2ヶ月間死にものぐるいでやってみよう、と思いました。誰も金を貸してくれず、とうとうサラ金にまで手を出しました。広告の仕事も止めて退路を断ち、居酒屋に専念し頑張りました。

 全てを見直しました。今まで、メニューをどんどん増やし続け、こだわりもなく100品目に。しかも、全品500円以下です。これを止めて、自分が自信を持って出せるものだけにしよう、と思い、40品目に絞りました。価格も500円以下にこだわらず価値のあるものを、適正な価格より少しだけ安い価格で売りました。

 また、安い居酒屋だとお客からばかにされてました。従業員も挨拶もしないような投げやりな態度で営業していました。これを改め、どんなお客でも下げられるだけ、頭を下げるようにしたんです。

 ここからです。月商が400万円から、毎月100万円、150万円がプラスオンになり、12月にはついに1000万円にまで達しました。


お客から尊敬される仕事をしよう

 しかし、居酒屋は世間の評価が低い。さらに、働く人のモラルも低い。面接で、ドタキャンは当たり前。短パンとビーチサンダルでやってくるは、コピーの履歴書を持ってきたり。常識の無い方々が多かった。

「お客から尊敬される仕事、お客と対等もしくは、お客から頭を下げてもらえる店を作って行こう」と思い立ちました。飲食業界の地位向上を引っ張っていける店になりたい。

 さらに、ブームだからと言って、モツ鍋に飛びつくようなことは止めよう。逆に、真似される仕事をやろう。誰もやってない事にチャレンジしよう、と考えたんです。


「西麻布 壌」店内

「赤坂 壌」外観


「赤坂 壌」店内


「新橋 壌」外観


立ち飲みブームの先駆者

 2003年8月に誕生したのが、立ち飲み「西麻布 壌」。当時、立ち飲みと言えば、店内が汚くて、侘しいオヤジが飲む店というイメージでした。不動産屋からも、立ち飲みだったら、貸さないと言われました。

 英国パブの立ち飲み文化は日本でも受けるだろうと思いました。造作には意図的に料亭並みの金を掛けました。おかげで、理想の店ができました。でも、同業者からは、イスがない、金を掛け過ぎだの、批判ばかりされました。もともと西麻布に住んでおり、自分が住んでいる場所で自分の行きたい店を作りたかっただけです。

 逆張りの発想、人の裏を行く業態開発のやり方を確信しました。今や「壌」は、西麻布、赤坂、新橋の3店舗にまでなりました。

 その後、2005年3月にイベリコ豚を始めとする銘柄豚を選べる高級とんかつ店「西麻布 豚組」を開店。とんかつ業態の革命児として、様々なメディアから取材を受けました。

「西麻布 豚組」外観

店内

銘柄豚のとんかつ


毎月が給与査定。権限委譲で自由に運営できる環境

 各店舗は独立採算制です。人事の評価基準は、まずは各店舗の業績です。その中で、その方がどれくらい貢献したのか。毎月評価で、随時、給料を変えています。

 社長の私は、店の細かいことに口を出しません。権限はなるだけ店舗に委譲しています。例えば、定休日を変えたり、ランチを辞めたりするのは店長の裁量です。方向性さえブレてなければ、私は口出ししません。

 店舗での営業利益は20〜40%もあります。「西麻布 壌」は7坪ですが、月商350万円もあります。従業員は1人だけ。たまにアルバイトを入れるくらいです。いかに利益率が高いか分かっていただけると思います。

 忙しいかも知れませんが、自分のやり方を発揮できる職場です。主体性があり、リスクの取れる方々にはぴったりです。独立予備軍のような力を持った方に働いて欲しい。

 スタッフの定着率も高く、ここ2年間、求人広告は出していません。社長としての私の役割は、従業員が働きやすくする環境を作ることです。資金を集めて、プライドを持って働ける店を作ることです。


お作法教室と連携した研修をスタート

 現場での研修が中心でしたが、体系的な研修制度を作ろうとしています。第一段として、9月からお作法教室を始めます。

 道徳やマナーに始まり、立ち居振る舞いなどおもてなしの基本やお華、お茶、日本舞踊に至るまで、多彩なカリキュラムを作っています。アルバイトも受けられるようにします。

 接客の基本を学んでいただくだけでなく、魅力的な大人になる、お客様の前に堂々と立てる自信を身につける、社会一般でも役立つ財産を身につける内容です。

 グレイスで働くことが、ただお金を稼ぐことではなく、アルバイトさんには就職活動の準備になったり、女性には花嫁修業になったり、そして、将来の人間関係作りに役にたってくれると嬉しいですね。


2011年、売上高40億円、営業利益率20%

「西麻布 豚組」の実績を元に、9月に六本木に「豚組 しゃぶ庵」を出店します。場所は、六本木の国立新美術館の近くです。今までの豚しゃぶの概念をぶち壊します。期待して下さい。100坪の大型店です。

 2010年までに80〜200坪の大型店を都内で10店舗出します。そして、2011年に上場を狙います。

 グレイスは飲食業ではありません。コトを提供できる「ライフスタイルカンパニー」です。「壌」では、立ち飲みのある生活を提供しました。「豚組」では、豚肉でもっと豊かな食生活を提供しています。

 実際に「西麻布 壌」を日曜にクローズしたらクレームが来たんですよ。犬を連れて散歩の途中に毎日立ち寄っていただいているお客様です。お客様のライフスタイルの中に入り込んで、なくてはならない店になってるんです、嬉しかったです。

 これからは、豚肉という食材を軸に、50年、100年続く老舗を作りたいです。付加価値の高い仕事をしたいです。

 私は、飲食だけをやりたくて、やっているんではないんです。飲食の中に閉じこもっているつもりはありません。常に挑戦しつづけたいです。

 私たちといっしょに、お客から尊敬される店を作りませんか、お客から尊敬される人になりませんか。




中村 仁(なかむら ひとし)

株式会社グレイス 代表取締役。1969年生まれ。東京都出身。立教大学卒業後、92年に松下電器産業に入社。95年にオグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン入社。2000年に有限会社晴山プランニングとして独立。その後、株式会社グレイスに社名変更し、飲食業に専念。居酒屋「せいざん」、高級とんかつ「豚組」、立ち飲み「壌」合わせて5店舗経営。06年6月期売上高2億4千万円。11年に売上高40億円で株式公開をめざしている。

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募集要項

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【取材・執筆】 安田正明(やすだまさあき) 2007年6月22日