奈良県田原本町で昨年6月に母子3人が死亡した放火殺人事件を巡り、殺人などの非行事実で中等少年院送致の処分を受けた当時高校1年の長男(17)の供述調書の秘密漏示事件で、奈良地検は長男の精神鑑定をした医師を秘密漏示容疑で立件する方針を固めた。鑑定医は供述調書を引用した単行本を出版したフリージャーナリストから「コピーなどを一切取らないから見せてほしい」と依頼され、調書を貸したとの趣旨を供述していることが判明。奈良地検はフリージャーナリストら鑑定医以外の立件の可否についても、最終的な詰めの捜査を急いでいる。
単行本はフリージャーナリスト、草薙厚子さんの「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)。鑑定医は奈良家裁から鑑定医に選任され、参考資料として長男や父親の供述調書の写しなどの提供を受けていた。
鑑定医は奈良地検の任意の事情聴取や関係者に対し、草薙さんから昨年9月ごろ、「(供述調書の内容の一部を)本とか雑誌とかに載せるかもしれないが、先生には絶対迷惑をかけない。コピーは一切とらないので、供述調書を見せてほしい」と要望され、「見るだけなら」と考え、調書を一時、貸したと話していることが分かった。その場には講談社の担当編集者も同席していたという。
毎日新聞 2007年10月5日 3時00分