非加熱製剤でエイズウイルス(HIV)に感染した被害者が国と製薬会社に賠償を求めた「東京HIV訴訟」で、賠償請求権が消滅する除斥期間(20年)の経過を理由に和解を拒まれていた原告1人について、和解が成立していたことが分かった。この原告は投薬日から提訴まで20年と4日かかったため、東京地裁での和解協議が長期化していた。
原告は81年5月7日に外科手術を受けた際、非加熱血液製剤を投与されHIVに感染したが、01年1月に告知されるまで感染を知らなかった。すぐに弁護士に相談しHIV感染証明書などを入手したが、提訴は同年5月11日になった。
民法は、不法行為から20年を経過すると賠償請求権が消滅する「除斥期間」を定めている。国と製薬会社は投薬日から提訴までの期間をとらえ、「除斥期間が経過している」と和解を拒否していた。
関係者によると、東京地裁の和解勧告を受け、9月に和解が成立した。ただ、和解金の総額は通常よりも減額されたという。
薬害HIV訴訟は96年3月に東京、大阪両地裁で、国と製薬会社が1人あたり4500万円の和解金を支払うことで集団訴訟の和解が成立した。当時、原告団に参加していなくてもHIV感染証明書などを得て提訴すれば、数カ月程度で同条件の和解ができるようになっていた。
除斥期間を理由に和解を拒否されている原告は大阪地裁にも1人おり、協議が続いている。
舛添要一厚生労働相は5日の閣議後会見で「わずかな時間で救済に差があっていいのかということだ」と述べた。【北村和巳】
毎日新聞 2007年10月5日 東京夕刊