早い話が

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録 Yahoo!ブックマークに登録
この記事を印刷
印刷

早い話が:僧衣の下の反中国=金子秀敏

 ミャンマーで起きた僧侶のデモは軍事政権による燃料価格の大幅引き上げがきっかけだった。だが、その底流には反中国感情があると専門家は指摘する(B・ラーマン「ミャンマー不安定は反軍政であり反中国だ」サウスアジア・アナリシスグループ)。

 それによると今年1月、中国とロシアが国連安保理でミャンマー非難決議案に拒否権を行使した。大多数のミャンマー国民は軍事政権を嫌っているから、中国の行動に嫌悪感を抱いた。

 2月、南部ラカイン州の港町シットウェに100人を超える中国人がやってきた。天然ガスの採掘調査に当たる技師や労働者だ。シットウェから中国・雲南省までミャンマーを斜めに縦断するパイプライン工事と天然ガスの採掘が始まったのである。

 ミャンマーは◇形をしている。右上の辺が雲南省との境界、右下がラオス、タイとの国境線、左上がインド、バングラデシュ国境。左下の辺がベンガル湾に面した海岸線だ。沖合には世界有数の天然ガス田がある。

 地元には、昔ながらの工法で天然ガスを掘る職人がいるが、中国企業に追い払われ、軍事政権に工具を没収された。だれかが青年僧侶団体の名前でビラをまいた。人権抑圧を助ける中国人がミャンマー人から職を奪っている--と、中国製品不買運動を呼びかけた。

 4月、数十人の地元民が中国の採掘事務所を襲った。反中国感情が次第に高まっていた。そんななかで軍事政権は8月、燃料価格を大幅に引き上げた。電力インフラの貧弱なミャンマーでは庶民は小型発電機に頼っている。発電機に使うディーゼル油値上げは痛い。炊事用プロパンガスも上がった。連動してすべての物価が高騰した。

 僧侶が抗議デモに立ち上がり、庶民が参加した。「燃料の値上げは中国人が天然ガスを奪ったからだ」--値上げ反対と反中国の民族意識が重なっていたという。

 中国にとって、ミャンマーはエネルギー戦略上、生命線のひとつだ。なんとしても安定を維持しなければならない。今回のデモが起きてから唐家〓国務委員がミャンマー外相を北京に呼び武力弾圧を回避するよう説得した。海外亡命中のミャンマー民主化勢力とも接触しているといわれる。

 中国の態度が少し変わってきた。ミャンマー国民の反中国意識を恐れたことも、ひとつの理由だろう。(専門編集委員)

毎日新聞 2007年10月4日 東京夕刊

ニュースセレクトトップ

エンターテインメントトップ

ライフスタイルトップ

 

おすすめ情報