爪はがし事件「虐待ではなくケア」

 今年6月に北九州市の病院で起きた看護師による認知症高齢者の「爪はがし事件」について、日本看護協会(久常節子会長)は10月4日、「事件は、虐待ではなく、看護実践から得た経験知に基づく看護ケア」という見解を発表した。日看協は、検察側・弁護側の双方が「(看護師の行為について)虐待するつもりでも、ストレス解消でもなかったと一致している」と指摘。「(看護師の行為は)患者により良いケアを提供したいという専門職としての責任感に基づいた積極的な行為だった」と述べている。

 この事件は今年6月、同市内の病院に勤務する看護師が「入院患者の高齢者4人の爪をはがす虐待があった」とする報道に端を発する。看護師は7月2日に傷害容疑で逮捕され、起訴。9月10日に身柄を拘束されたまま、第1回公判前整理手続が開かれた。

 事態を重く見た日看協は、マスコミ報道からの情報収集、当該看護師や病院関係者からの直接的な情報収集、法律やフットケアの専門家等有識者からの情報収集を展開。
 事件は当初、「看護師による虐待で、仕事上のストレスを発散する行為」などと報道されたが、当該看護師が「爪のケアをするのは心にゆとりがある時、時間的ゆとりがある時。爪切りはより清潔で安全を確保するための看護行為と考えている」と述べていること▽最近の報道では「動機について、『虐待するつもりでも、ストレス解消でもなかった』という点で検察側・弁護側の見解が一致している」こと−などを挙げ、日看協は「(看護師の行為は)虐待ではなく、看護実践から得た経験知に基づく看護ケアである」と判断した。

 また、爪の注意深い観察と状況に応じた清潔の保持に加え、マッサージなどで循環を活性化させる一連の行為を「フットケア」と呼び、特に糖尿病・血管疾患、高齢者看護の領域では「糖尿病看護認定看護師」や「皮膚・排泄(はいせつ)ケア認定看護師」等のスペシャリストが養成され、ケア技術の向上と普及が進んでいると指摘。
 当該看護師は「爪のケアは1回切って終わりではなく、長いスパンで行うもの。継続的にケアすることできれいになることを、自分の実践を通して見せて行きたい」、「日々の実践を通して得た経験を集積して、いずれはフットケアに関する病院のマニュアルを作成し、ケアの標準化を図り、ケアのレベルを上げたい」といった考えや目的を持って行動したとして、日看協は「(看護師の行為は)患者により良いケアを提供したいという専門職としての責任感に基づいた積極的な行為だった」と述べている。


更新:2007/10/04   キャリアブレイン

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