JR常磐線の東京駅への延伸計画が大幅に遅れている。09年度末に開通する予定だったが、上野―東京間の駅周辺住民が、環境悪化などを理由に反対しているためだ。4日には県幹部や沿線の首長がJR東日本の本社(東京都渋谷区)を訪れ、早期実現を求めたが、打開の糸口は見えないままだ。
JR東日本が東京駅延伸計画を発表したのは02年3月。上野―東京駅間3・8キロのうち、途中の神田駅周辺の約600メートルについて、東北新幹線が走る高架橋の上にさらに高架を設けて重層式にし、一部の列車を東京駅まで乗り入れる計画だ。同社は混雑緩和や時間短縮などの効果があるとしている。
当初予定では、02年度から環境影響評価(環境アセスメント)や周辺住民への説明を始め、05年度に本体工事に着手するはずだった。しかし、04年度に終える予定だった東京都へのアセスメントの提出を、今年9月になって済ませただけで、着工の時期は未定という。
足踏みしている背景には、重層化の影響を受ける神田駅周辺住民の強い反対がある。重層化で神田駅周辺には7、8階建てビルに相当する「壁」が600メートル以上にわたってできるためだ。
地元住民らによると、70年代にも東北新幹線の上に高架を設ける重層高架の工事計画があったが、当時の国鉄は高架は新幹線だけにするとした「確認書」を地元と交わした。住民は「今回の重層化計画は『約束違反』だ」と主張する。また、環境や安全性を維持できないとし、延伸の地中化を求める声も出ている。
8月には同駅周辺の住民の一部が「生活に悪影響を及ぼす」として、東京駅延伸工事の一部取りやめを求める訴訟を起こした。
一方で県や土浦市など沿線自治体は、延伸の早期実現を要望し続ける。特に、つくばエクスプレス(TX)の開業で活気づくつくば市や守谷市などと対照的に、低迷から抜け出せない土浦市などは期待を増すばかりだ。4日には県の鈴木欣一企画部長や中川清・土浦市長らがJR側に事態が進展するよう陳情した。
県などの陳情と、住民側の反対の板挟みになっているJR東日本は「(住民の一部が求める)地中化は不可能。住民の皆様に理解を得られるよう努力していく」とするだけだ。同社は計画を修正する考えはないとしながらも、「スケジュール的には厳しい」と、09年度末の開通が不可能だとほぼ認めている。