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【国際】なぜか不人気、中国の日系企業 商慣習や待遇現地社員不満2007年10月5日 朝刊
中国に進出した日系企業は数万社に上り、中国社会で存在感を持つ。ただ、商慣習や人事、給与体系の違いなどから、そこで働く中国人たちの不満は大きい。学生らを対象にした就職人気ランキングで、日系企業が上位に顔を出すことはほとんどないのが現実だ。背景を探った。 (上海・豊田雄二郎、写真も) 日系大手家電メーカーで働く中国人の人事副部長(54)は今年二月に起きた労働争議の処理で、あぜんとした。発端は中国人課長の解雇。一カ月前に通知したところ、課長は退社直前に病欠届を出し、後に、病気を理由に解雇されたと訴えた。 副部長は過去の経験から、病院を調べようとしたが、日本人上司は「そこまですることはない」と指示。だが、事は次第に大きくなり、当局は最終的に「不当解雇」と判断し、上司は一転、「中国人スタッフの人事問題はすべておまえの責任」と副部長を責め始めた。 「多くの日本人は中国のことを分かったつもりになっている。でも、当局との交渉や法律の抜け道など、この国の“表と裏”に対応するのは無理だ」と副部長は言う。 欧米系とは異なり、日系企業のトップはまず例外なく日本人だ。最近は言葉や文化を学んだうえで中国にやってくる。だが、中国人に任せることが少なくなった分、この市場に揚げ足をとられる“危険度”は増したと副部長は感じている。 年収二十万元(約三百万円)近い待遇には満足しているが、働きがいという点では不満が募る。日本人とは待遇も給料も、出世の速度も違うし、何より、この先もトップにはなれない。 日系物流会社の中国人副社長(43)は「日本人社員こそ経費の無駄だ」と嘆く。新工場立ち上げにあたり、日本人十一人が応援に来た。彼らは会議で「社員の遅刻が多い」「ラインの途中でビールを飲む人がいる」と善後策の検討を始めた。 「それは、管理能力の問題。皆で議論する話ではない」と副社長は一蹴(いっしゅう)したかったが何も言えなかった。立場は上とはいえ、相手が日本人だからだ。 「日本人」という理由だけで、能力が低くても要職に就き、高い給料を得る。日本の本社は十年前から、現地に権限を委譲する“現地化”を叫ぶが、一向に進まない。日本からは毎月、出張者が来て“社内接待”に時間も経費もかかる。いずれも副社長には不満だ。 中国人の転職に対する考え方は欧米人に近い。若者たちは一、二年で職場を変える。日系企業は最近、欧米企業の“草刈り場”になっている。数年身を置き、仕事上のマナーやノウハウを身につけた後、給料の高い欧米系企業に転職していく。 中国で十五年、日系企業のコンサルタント活動をする稲葉雅邦氏は「優秀な人材ほど辞めていくのは、社員評価の仕組みがないに等しいからだ。給料は丼勘定で、担当者もなぜその額になるのか説明できない」と指摘。本社も巻き込んだ人事管理システムをつくるべきだと強調する。 また、ジェトロ上海センターの岩田泰副所長は「欧米系企業の待遇が良いと感じるのは、人や職種によってメリハリをつけるから。全員給料が高いわけではない」とし、「欧米系のマニュアル化された仕事に比べ、日系は想定外のケースにどう対処するかも時間をかけて教え“技術伝承”をする。いずれ良さが見直されるのでは」と話す。
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