後期高齢者の骨子がまとまる

 2008年4月からスタートする75歳以上の高齢者を対象にした「後期高齢者医療制度」の診療報酬について、昨年10月から1年間にわたって審議してきた厚生労働省・社会保障審議会の「後期高齢者医療の在り方に関する特別部会」(部会長=糠谷真平・国民生活センター理事長)は10月4日、最終的な骨子をとりまとめた。10〜11月に開かれる中央社会保険医療協議会に提示し、診療報酬の具体的な点数設定に引き継がれる。

 9月4日に開催した前回の審議会で了承された骨子案は、社保審の医療部会(9月14日開催)と医療保険部会(9月20日開催)に示され、両部会で出された委員の意見を集約して修正し、この日の特別部会で最終的な骨子案をまとめる流れで進めてきた。

【関連記事】
9月4日の特別部会―後期高齢者の骨子案を大筋了承
9月14日の医療部会―後期高齢者の主治医「診療所が相応しい」
9月20日の医療保険部会―「主治医」に意見集中、医療保険部会

 
 骨子案で示されていた「診療報酬に反映すべき事項」は、@外来医療、A入院医療、B在宅医療、C終末期における医療、D留意すべき事項――の5項目。
 この日の会合で示された骨子では、医療部会と医療保険部会における委員の意見などを踏まえて、「終末期における医療」と「留意すべき事項」の2つの項目を修正した。

 このほか細かな修正点として、退院後の在宅生活に向けて情報を共有する「ケアカンファレンス」を「カンファレンス」とした。また、主治医の役割として「他の医療機関の受診状況等を一元的に把握する」としていたが、「集約して把握」に修正した。

1.終末期における医療
 
終末期医療については、在宅患者の看取りについて診療報酬で評価する役割を「訪問看護」から「訪問診療や訪問看護」に修正した。
 また、がん患者の痛みを緩和する「疼痛緩和ケア」については、麻薬の管理や服薬指導などの点数評価だけでなく、「療養上必要な指導を行うことを評価する」とした。評価の対象となる緩和ケアについては、「入院、外来、在宅を問わず」とした。

2.留意すべき事項
 
骨子案で示されていた留意事項は、情報の共有と連携、頻回受診や重複投薬の抑制、効果的・効率的な医療提供――の3点。
 今回の骨子では、留意事項を「その他の留意事項」として「介護保険制度との関係にも十分配慮すべき」ことを加筆した。

 また、「後期高齢者を総合的に診る取組の推進」との項目を新たに設けて、「主治医」の説明を12行にわたって加筆。主治医について関係団体などから出された意見などを紹介し、「いわゆる主治医の『登録制度』を導入すべきという指摘や、患者のフリーアクセスの制限は適当でないという指摘があった」とした上で、「現在は総合的に診る取組の普及・定着を進める段階」とした。

 主治医の決定方法については、「患者自らの選択を通じて決定していく形を想定している」と明記した。このほか、主治医の研修や生涯教育についても触れ、主治医の役割を担える医師が増えること、患者が主治医の診療を受けられるような環境整備などを「期待したい」とした。

3.委員の反応
 
委員からは用語の統一などについて細かな指摘があったほか、在宅医療のシステム構築の必要性や在宅医療の質評価の仕組みづくりに関する意見が出された。

 全体として好意的に受け止める意見が多く、川越厚委員(ホームケアクリニック川越院長)は「よくまとまっている。感謝している」と評価した。
 鴨下重彦部会長代理(国立国際医療センター名誉会長)は「ちょうど1年たった。最初はどうなるかと思っていたが、事務局の努力を評価したい」と述べた。
 糠谷部会長は「骨子案の方向性は了解いただける内容だと思う」と感想を述べた。

 審議会を終えた厚生労働省保険局の原徳壽医療課長に対して、記者団からは主治医に関する質問が集中した。原医療課長は「昔の外総診(老人慢性疾患外来総合診療料)みたいにしたい。主治医が複数になる場合は“早い者勝ち”ということになるだろう。そこの問題は、まさしく“IT化”で解決すべきではないか」と話していた。


更新:2007/10/04   キャリアブレイン

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