◎被災地復興プラン 県全体の地震対策にも運動を
石川県がまとめた「能登半島地震復興プラン」の第一次計画は、住宅再建支援をはじめ
百八項目にわたる幅広い内容となったが、被災地の復興を最優先するのは当然として、耐震化などの取り組みについては県全体の地震対策に連動させる視点がもっとあっていいだろう。
七月に中越沖地震が起きた新潟県では、三年前に中越地震を経験したにもかかわらず、
県内で住宅の耐震化が進んでいなかった現実が浮かび上がっており、同じ県であっても地域が違えば「のど元すぎれば」になりやすい。未曾有の震災の記憶を石川県全体で共有し続けることで、地震対策を着実に前へ進めたい。
過日開かれた県の復旧・復興本部会議では、第一次の地震復興プランを了承するととも
に、来年三月に復興関連行事を展開することが決まった。部局横断のプロジェクトチームで実施期間や内容を詰める方針で、ボランティア交流や誘客イベント、シンポジウム、心のケア研修会など多彩な催しが想定されている。
「被災後一年」という節目は全国から視線が集まり、復興をアピールする絶好の機会と
なろうが、震災の記憶がよみがえるこの時期こそ、被災地以外の県民にも広く地震への備えを訴えかける取り組みがあれば効果的だろう。
金沢市は十一月に、希望者を募って耐震診断や耐震設計を無料で実施するなど地震対策
は各地で進められているが、耐震診断にしても自治体がばらばらに実施するより、時期を合わせて一斉に行えば県民の関心も一層高まるはずである。個々の復興プランでも、被災地以外に広がりが期待できるものがあれば積極的に関連づけ、波及効果を引き出してもらいたい。県は風評被害対策として観光推進事業も実施する方針だが、金沢を絡めて誘客を図るなど県内全域に目配りした工夫も望まれる。
富山県でも、隣県で発生した能登半島地震と中越沖地震をきっかけに、木造住宅の耐震
診断や耐震改修に対する支援制度で面積要件を撤廃するなど踏み込んだ対策を打ち出している。石川県は被災県として、その教訓を最大限に引き出し、県全体へと広げるような取り組みが一層求められている。
◎南北首脳会談 伝わらぬ非核化の意思
韓国の盧武鉉大統領と北朝鮮の金正日総書記が「南北関係発展と平和繁栄のための宣言
」に署名した。朝鮮半島の平和体制構築を前進させるものであり、国際社会としても評価すべきであるが、朝鮮半島の真の平和体制は北朝鮮の核放棄によってもたらされるのであり、両首脳の口から直接、半島非核化の意思表示を聞くことができなかったのは残念である。
首脳会談では、黄海に平和協力特別地帯を設定することや、朝鮮戦争終結宣言のための
関係国会議の開催などに加え、現在の南北経済協力推進委員会を副首相級の南北経済協力共同委員会に格上げすることで合意した。盧大統領の北朝鮮訪問には韓国の経済人が多数同行しており、北朝鮮に対する経済支援が今後さらに強まるとみられる。経済支援は北朝鮮の最も望むところであり、推進組織の格上げ合意は北朝鮮にとって大きな成果であろう。
しかし、韓国の手厚い保護政策が結果的に北朝鮮の「時間稼ぎ」を許し、非核化の道を
逆に遠ざけるのではないかとの懸念もぬぐえない。共同宣言には、北朝鮮の核放棄をうたった〇五年の六カ国協議共同声明などの実現に努力することも明記されたが、非核化への強い意思が国際社会に伝わったとは思えない。韓国は六カ国協議の進展具合を見極めて経済協力を進めるべきで、突出した支援で国際社会の不信を招くことがないようにしてもらいたい。
南北首脳会談に合わせるように発表された六カ国協議の合意文書は、北朝鮮の寧辺にあ
る核施設の無能力化と「すべての核計画の完全で正確な申告」を年内に実施することを盛り込んでいる。しかし、どういう状態をもって無能力化というのかあいまいであり、「完全で正確な申告」も抽象的な言葉だけである。
要するに合意文書は玉虫色であり、例えば、米国が作業を開始するとされた「テロ支援
国家指定解除」の時期をめぐって紛糾することも予想される。日本としては拉致問題を無視しての指定解除は容認しがたいところである。米国を中心とした五カ国は、北朝鮮に都合のいい部分だけをつまみ食いされることがないよう、わきを固めて合意の履行を北朝鮮に迫っていく必要がある。