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韓国現代史教科書の問題点とは

建国大イ・ジュヨン教授に聞く

 先月定年を迎えた建国大学のイ・ジュヨン(65)名誉教授は、今回の『韓国現代史の理解』の代表執筆者だ。米国現代史を専攻し、建国大学の副総長と大学院長、歴史学会会長を歴任したイ名誉教授は、教科書の「代案」ともいえる今回の著書をベースに、教育現場で実際に使用できる真の「近・現代史教科書」を作成したい、と今後の抱負について触れた。

―『韓国現代史の理解』を書こうと思った理由は何か。 

 「現在高校で使われている韓国の“近・現代史”の教科書には、生徒たちに左寄りの考え方を植え付けかねない記述が多いと感じたからだ。これらの教科書のベースとなっている民族主義的左派史観は、北朝鮮を“正統”としているため、大韓民国の存在そのものを否定してしまう可能性がある。また、階級闘争と社会勢力の葛藤(かっとう)を助長し、“唯一純粋な存在は民衆”と考える民衆主義的な見方も問題だ。これは結局、民族と民衆の名分を重視する“道徳主義”や“理想主義”につながるもので、起こったことをそのまま書き記す史学の原則に反している。“事実”ではなく“望み”を書き記していくだけの歴史は、真の歴史とはいえない」

―では、『韓国現代史の理解』はどのような立場で書いたのか。 

 「まずは、“民族”よりも個人の自由や自己の実現を最高の価値と考える自由主義的な立場を中心に構成した。“民衆は常に善良で、エリートは悪”といった両極端な図式から脱し、時代をリードしたエリートの役目に対してスポットを当てた。歴史はあくまでも“現実”であるため、行き過ぎた道徳主義ではなく、実用主義的な観点を中心に構成した」

―大韓民国の歴史は「成功した歴史」ということか。 

 「新生独立国として貧しい立場から出発した大韓民国は、共産主義勢力の拡散を阻み、“自由民主的秩序”に伴う世界史的な成功モデルを作り上げることに成功した。法治主義や議会民主主義、自由市場経済をはぐくみながら、世界で第11位の経済大国にまでのし上がったことが、大韓民国の60年史だ。1980年代以降に左派的民衆主義が登場したことで、民主主義や経済の繁栄速度が損なわれた現実についても言及した」

―北朝鮮を韓国現代史に盛り込まず、「補論」を通じて別途に扱った理由は。 

 「北朝鮮を韓国現代史に盛り込むためには、現在の北朝鮮を一つの“民族”という名でくくることのできる基本的条件が必要だが、現在はまだその条件が備わっていないと判断したためだ。南北の間には、現在“共通の言語”と“共通の過去”が存在しているが、“共通の利害関係”や“共通の生活方式”は存在していない。その上、北朝鮮は韓民族という用語に代わり“金日成民族”という単語を使用している。今後、南北が統一されたら、これを一つの歴史としてくくり、記述することができる時代も到来するかもしれないが、現状では“大韓民国史”に北朝鮮を盛り込むことはできない」

兪碩在(ユ・ソクジェ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報JNS
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