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2007年10月03日 23:00

文章の特徴を分析して個人を特定するプログラム

アリゾナ大学人工知能研究所の『Dark Web』プログラムでは、ネット上の書き込みを大量に研究し、文体上の特徴を分析することで、95%の精度で、複数の書き込みを同じ執筆者によるものと判断できるというシステムを開発したという。どのようなタイプの人が過激派の勧誘の影響を受けやすいか、また、過激な主張を人々に浸透させるにはどのような文章が効果的かについても、分析している。

Noah Shachtman 2007年10月03日

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Credit: Jupiter Images

オンラインでは匿名だから、勝手なことを書きこんでもバレっこないとお思いの読者も多いだろう。だがやはり身許が特定される恐れはある。

アリゾナ大学人口知能研究所では、米連邦政府の資金援助を受けて、インターネット上の人々の動きを、その人の書き癖から追跡する方法を確立しようとしている。

全米科学財団(NSF)のプレスリリースによると、アリゾナ大学のきわめて野心的な『Dark Web』プロジェクトは、「テロリストが作成したすべてのウェブ・コンテンツを系統立てて収集、分析することを目的」としている。

『Arizona Daily Star』紙の記事によると、この「分析」には、「執筆者1人1人を、文章のスタイルから特定し、追跡する」プログラムが用いられているという。

同紙の記事をさらに引用する。

この『Writeprint』と呼ばれるコンポーネントは、ネット上の書き込みを大量に研究し、用語的な特徴や意味論的な特徴、文体構造的な特徴などを分析することで、ウェブの匿名性との闘いを支援している。同コンポーネントは95%の精度で、複数の書き込みを同じ執筆者によるものと判断できる。

これによりDark Webは、1人の人の考え方が次第に過激化していくのを追跡する能力を備える。

同プロジェクトでは、どのようなタイプの人が特に過激派グループの勧誘の影響を受けやすいか、また、過激な主張を人々に浸透させるにはどのような言葉やレトリックが効果的かについても、分析している。

だが、次に引用するNSFのプレスリリースの記述からわかるように、この研究にはリスクも伴うという。

Dark Webはこのほかに、『Web spider』と称する複雑な追跡ソフトウェア群を使用して、掲示板のスレッドなどを検索し、インターネットの一角で行なわれているテロ活動の発見を目指している。だが、(アリゾナ大学の)Hsinchun Chen教授によると、テロリストが反撃してくることもあるという。

「(テロリストが)自分たちのウェブ掲示板に、巧みな罠を仕掛ける場合がある。そうすると、spiderがわれわれのマシンにウイルスを持ち帰ってしまう恐れがある」とChen教授は言う。

オンラインでこのような油断のならないかけひきが行なわれている以上、Dark Webは、テロリストが用いるこれらの対抗策に、絶えず目を光らせていなくてはならない。

アリゾナ大学のグループは既にかなりの期間、この種の研究を進めており、イスラム過激派のウェブページ90万件以上を精査している。

ワイアード記者のXeni Jardinも昨年、米National Public Radioの番組『Day to Day』で、Dark Webについて報告している。

また、Dancho Danchev氏のブログには、関連するプロジェクトについて興味深い記事がある。

Dark Webについての研究チームの論文は、アリゾナ大学人工知能研究所のサイトで閲覧できる。

論文の内容の一部を、前掲のArizona Daily Star紙の記事から紹介しよう。

Chen教授はある調査の中で、テロリストによるウェブサイトと米国の政府系サイトは、技術的レベルの高さにおいては同等だと結論している。

だが、テロリストによるウェブサイトのほうが、画像や動画などのマルチメディア・コンテンツの量が約10倍も多く、コミュニティーの形成効率についてもやはり約10倍高い。

また、テロリストによるサイトは、訪問者から質問を受けた場合に回答や指示を返すのが早いと、同教授は指摘する。


[日本語版:ガリレオ-江藤千夏/小林理子]

WIRED NEWS 原文(English)

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