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朝鮮人強制連行の全国調査資料集 7750人の名を記載

2007年10月04日

 太平洋戦争中に朝鮮半島から強制連行されて亡くなった朝鮮人の実態調査を進めている浜松市の地域史研究家、竹内康人さん(50)が、約1550カ所の連行先事業所と、亡くなった7750人の名前などを記載した「戦時朝鮮人強制労働調査資料集」を発刊した。20年以上かけ、行政資料や各地の市民団体の調査結果にあたり、関係者の証言を聞き取って一覧にした。これまで地域ごとに資料があったが、一つに集約されたのは初めてだ。

写真発刊された戦時朝鮮人強制労働調査資料集。朝鮮人の名簿や連行先が記載されている

 日本は、国家総動員法(38年制定)に基づく計画に沿って39〜45年に朝鮮人を雇用・徴用した。当初は「募集方式」で進めたが、42年からは監視つきの「官斡旋(あっせん)方式」、44年には徴用令に基づく「徴用」と変更。鉱山や工事現場、軍需工場へ連行した。

 働かされた朝鮮人は70万人、うち数万人が亡くなったともいわれるが、正確な人数は分かっていない。竹内さんは83年ごろから強制連行について調査を始めた。

 戦争末期の44年ごろに約2千人の朝鮮人が働いたとされる静岡県掛川市の中島飛行機の地下工場を手始めに、現場などを訪ねた。どこでだれが、いつ亡くなったのかなど基礎的なデータが不足していることを痛感し、資料集の作成を考えた。

 強制連行の事務を所管していた旧厚生省勤労局の「朝鮮人労務者に関する調査」や、旧陸軍の名簿などから連行先のデータを集めた。また、生き残った朝鮮の人々らから聞き取りをした。

 把握できた約1550カ所の連行先は国内だけでなく、フィリピンやインドネシアなど旧植民地だった東南アジア諸国の連行先も含まれている。

 ほかに、強制かどうか明らかではないが、朝鮮人の動員・就労が確認された場所やその可能性が高い場所計約1300カ所も記した。土木建設や港湾、軍需工場などの業種も明記。従軍慰安婦の慰安所も記した。

 名前が明らかになった7750人の名簿には本名と日本名、本籍地の住所、連行先の事業所名、死亡年月日、死亡年齢を記載。分かる限りで労災や病気、ガス爆発などの死因も載せた。

 発行元の神戸学生青年センターによると、在日朝鮮人らでつくる市民団体「朝鮮人強制連行真相調査団」などが各地で調査を続けてきたが、全国のデータをまとめた資料はなかったという。

 竹内さんは「被害を受けた人の視点で歴史を見ることが、平和に向けた歴史認識の共有につながる。今後は、当事者の証言などデータベース化を進める必要がある」と話している。

 資料集はB5判で234ページ、1575円。問い合わせは同センター(078・851・2760)へ。

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